どんちゃんの我儘
二日間どんちゃんと菊池は驚くほど仲良くなり菊池が帰ると泣き出すほどだった。
あんまり泣かないどんちゃんの姿に驚きながらあやすのが大変だった。
「保育園いくよ~」
「保育園行ったらおじさんに会える?」
「わからない!」
最近この会話の流れがずっと続いている。
相当気に入った様子だ。
私は会わないようにしなくてはと考えているが、それは大人の都合の押し付けなのかな・・・。
自転車を走らせてリクの里に着くと校門の前で園児たちを迎える高橋さんが居た。
「あ、どんべぇくんもう大丈夫なのかい?」
「たかあし先生!」
「ご心配とご迷惑かけてすみません。鼻水も治まって元気です」
「良かった~」
どんちゃんを預けて職場に行く。
生暖かい風が髪を揺らす。
早番なので、お店には私一人しかいない。この時間が好きだったりする。
朝ごはんをふやけるまで待つ。
犬たちにご飯をあげていると、店長が出勤してきた。
「この間はありがとうございます」
「全然大丈夫だよ!どんちゃんの様子はどう?」
「すっかりよくなりました」
「ここも託児所作れたらいいのにね」
そう言ってバックヤードに消えていく。
私の今の状態はシングルマザーと同じなのかもしれない。
でも、人間の子供ではない。人間並みの知能を持つが、体の構造は犬と同じ。
普通の子とは違うのだ。育て方も違うのであろう。
どんちゃんの魔力はこれからも続いていくであろう。
「お父さんって必要ですかね?」
遅番で出勤してきた鍋下さんに突拍子もないことを言う。
聞かれた鍋下さんは一瞬固まって「どうしたの」と業務を進めながら聞いてくれる。
「この前どんちゃんが風邪ひいたとき友達が助けてくれたんですけど、どんちゃんその友達のこと気に入ってしまって、お父さんいたらどんちゃんも寂しくないかなって・・・」
「どんちゃんは、その友達が好きなだけでしょ?お父さんが欲しいって言われたの?」
「いや、言われてないです・・・」
「だったら深く考えなくていいんじゃない?」
鍋下さんに言われ、自分が焦っていることに気づく。
セフレだったにしろ二日間なんやかんやで楽しい時間を過ごした。
どんちゃんも気に入ってるし、セフレからも関係を戻そうと言われている状況は都合が良く感じた。
それだけじゃダメなのはわかる。すぐ別れたりしたらどんちゃんの傷になる。
慎重にならなくては・・・。
どんちゃんを迎えに行き帰りの自転車でも「おじさんに会いたい」と連呼される。
帰ってから夜ご飯を作っている最中も言うので無視してたら積み木やぬいぐるみを投げる。
「危ないでしょ!!」
「会いたいだけぇぇ」
大きな瞳から涙がぽろぽろと流すどんちゃんに根負けをした。
時間的に電話しても大丈夫だろうと思いスマホを持つ。
「電話して出なかったら明日またかける!出たら自分の口で会いたいって伝える!いいね?」
「うん!ぼく言うぅぅ」
泣きながら足にしがみ付くどんちゃんを離してスマホを操作する。
菊池を探して着信ボタンを押す。
「はい、出たらどんちゃんってお名前から言うんだよ」
「あい!」
スピーカーにしてるので、話し声は聞こえる。
四コールで出た菊池
「どうした?」
「ぼく、どんちゃん!」
「お!どんちゃんどうした!」
「おじさんといつ会える?」
「いつかな~お母さんに変われるか?」
はい!と渡されたスマホを手に取る。
なんだか申し訳なくなってしまった。
菊池だって仕事で忙しいのを知っている。
「変わったよ」
「いつ会いに行っていい?」
「来週の火曜日休みだけど、いいの?」
「仕事終わりで行くわ!次の日会社だけど泊まらせてもらえれば着替え持っていく」
「わかったそれでお願い。最後にどんちゃんに変わるね」
足元で変わって変わってと飛び跳ねてるどんちゃんにスマホを渡す。
「会いに来てくれる?」
「来週の火曜日だからあと五回寝たら会えるぞ!」
「やった!」
「それまでお母さんの言うこと聞くんだぞ?」
電話を終えておじさん五回寝たら来てくれるって!と笑顔が戻ったどんちゃんに頭を悩まされる。
これが癖着いたらどうしようか・・・。
私は夜ご飯作りに戻り、どんちゃんも投げてしまった積み木で「お城を作っておじさんに見せる」と創作に取り掛かる。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
今回は我儘の対処に困る主人公を書きたくて書きました!
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