新しい発見
私の家には小さい怪獣さんがいます。
買ってあげた怪獣のお洋服を気に入って貰たのかずっと着ている。
「お洋服もいっぱい着たい!」
「わかったよ~」
朝の準備しながら答えるのにも慣れてきた。
今日は雨なので雨合羽を着て、出勤する。
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃいかぁたん!」
階段を転ばないようにゆっくり下りて自転車置き場に行き、自転車をハンカチで拭いて乗る。
今日は雨だからお客さん少ないだろうと新人教育しなくてはならいのかと憂鬱な気持ち足に乗せるかのように力いっぱい踏み込む。
職場に着いて合羽をバックヤードで干す。
「田瀬おはよう」
「鍋下さんおはようございます」
早番の鍋下さんがバックヤードに戻ってきた。
「この仔ウンチ緩いから投薬お願いするから把握お願いね」
「了解です」
引継ぎを聞き、今日はやっぱり新人教育に回ることが分かった。
雨だからだ。雨のせいだ。
私は表に立っている柊さんの所へ向かう。
「おはようございます!」
「おはよう」
「休みの日なにしたんですか?」
この子とはプライベートな会話を極力控えたいが、無視するのもひどいので簡単に返事しよ。
「愛犬の去勢手術とか散歩だよ」
「うわさのどんべぇだ!」
「今日は私がお客さん役やるからサービスの説明の練習しようか」
無理やり話を逸らす。
どんちゃんの話題でも柊さんと話す気にはなれなかった。
ペットショップこころのサービスを説明をさせて、レクレーションを一時間したが、サービスの説明でまだ読んでいるだけなので深く理解をしてもらうため意地悪な質問などした。
「家でも読んでみると疑問点出てくると思うから読んでみて」
「じゃぁline交換しましょう!」
なぜそうなった・・・。
line交換をしているのは鍋下さんと加藤さん二人とも仕事で交換しただけだ。
「どんべぇの写真もください!」
「今仕事中だから帰りに交換しようか」
それまでに忘れていてくれと願う。
業務を半分終わらせて次の仕事をしようとしたらバックヤードに柊さんが「お疲れ様です!」と定時に上がるため挨拶をしに来ただけだった。
「田瀬さんline交換しましょう!」
忘れていなかった・・・。
私が忘れていた。
「ちょっと待ってね」
「待ちますよ~」
スマホをロッカーから出してアプリを開く。
QRコードを出して柊さんに読み取ってもらう。
「ありがとうございます!」
「こちらこそありがとうね」
心にもないことを言う自分に嫌気がさす。
lineを交換した柊さんはそのまま帰って行き、取り残された私を鍋下さんが見てた。
「好かれているね~」
どんまいと肩を叩かれた。
何故こうなるんだろう。
好かれているのは嬉しいが、プライベートと仕事を分けたい人間なのでこれは予想外だった。
その後業務を終えてスマホを見ると柊さんからメッセージが来てた。
「田瀬さん彼氏できますように!」素でこの言葉を送る神経が分からなく神経を削がれる。
距離をどう取ろうか考えながら帰宅した。
「ただいま~」
「おかえりかぁたん!」
「かぁたんかぁたん!見て!」
今日のどんちゃんはテンションが高い。
どうしたの?とどんちゃんを見るとゆっくり二本の後ろ足で立った!
「立てるようになった!」
「すごいすごい!!」
二足でプルプル立っているどんちゃんを抱きしめる。
嫌な気持ちはもう忘れていた。
「ぼく歩けるようになるかな?」
「なるなる!絶対歩けるよ!」
練習する!とベッド際まで行き、自分で立ち上がりベッドを手すりのように使い一歩一歩進む。
私はどんどん人間みたいにどんちゃんが出来ることが増えている事に喜びを感じた。
ふと、どんちゃんの声は私だけしかわからないのか、それとも皆分かるのか疑問に思った。
「んしょんしょ」
「どんちゃん」
「なに~?」
「どんちゃんの声はみんなも聞こえるの?」
「わかるよ~」
歩きながら当たり前のように言う。
「今までどうしてたの?」
「かぁたんに聞こえるようにしてたんだよ」
私は新しい発見に戸惑いと喜びを感じた。
スマホを取り出して「犬が喋る」と検索してみるとこに。
ほとんどが、聞こえる風の動画や記事でやっぱりないか・・・と諦めかけたときに
「あなたの子犬が喋りだした時には連絡してみてください」との記事を見つけた。
ホームページに飛び、動画が載っていたので再生してみる。
黒いラブラドルレトリバーが「遊んで!ボール投げて!」と喋っている!
どんちゃんだけではないことを知ったが、なぜこんなにも話題にならないのか不思議が残った。
休みまであと二日。二日後に電話してみよう!
私はどんちゃんの事を知れるかもしれないと浮きだっていく。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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