表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/52

大好きでいっぱいにして

二日後はどんちゃんの去勢手術の日だ。

もちろん休みだ。

日帰りで帰れるので、私は安心だがどんちゃんが不安にならないかが心配だ。

手術を受けるのはどんちゃんで私は何もできない。


「田瀬今日どうしたのさ浮かない顔して」

「明日どんちゃんの去勢手術の日なんですよ」

「あーね」


鍋下さんにも心配される程顔に出ていたみたいだ。

仕事では新人教育を任されるし、アルバイトの域を超えているように思う。


「ここって社員になれますかね?」

「田瀬ならなれると思うけど、店長にしつこく言わないと忘れ去られるよ」


今の給料や業務に不安があるわけではないが、将来を見据えなくてはならない年齢になってきた。

どんちゃんもいるし、今は半分社員のような働き方をしているから社員になっても変わらないと思う。

ノルマがきつくなるのかも知れないそれが難点だった。


「田瀬も新人教育任されるくらいなんだからなれるよ」


その言葉に新人の柊さんを思い浮かべる。

今は加藤さんが見てくれているが、加藤さんが居なかったら私が世話をしなければならない。

アルバイトの私が務まるのかそれも不安要素でもあった。

初日の印象が最悪すぎたのだ。仕方ないことだと自分に言い聞かせて良い先輩として接しよう。


「加藤休憩に回さないとだ」


決心して間もないのに鍋下さんはひどいことを言う。

表に立っているのは柊さん一人。必然的に私が行くことに・・・。


「田瀬ゴー!」


はい・・・と力なく返事をして表に行く。

表に行くと柊さんが犬舎の窓を拭いていた。


「あ、田瀬さん」

「今日はペットショップこころのモットーていうかサービスを覚えましょう」

「わかりました」

「メモ帳とかある?」

「ないです!」


私は使わなくなった紙を渡す。

メモ帳を持っていないことでいちいちびっくりしている時間はない。

初対面が衝撃だったのだから尚更だった。


「分からないことがあったら言ってね」

「わかりました!」


加藤さんが戻ってくるまで、お店のサービスの説明をして平和に終わった。

バックヤードに戻り鍋下さんにお疲れと労いの言葉を貰ったが今日は大丈夫でしたと報告した。

その後も平和に残業して帰宅した。

一階にある郵便受けを開けて中にあるチラシとお目当ての品を取る。


「どんちゃんただいま~絵本届いてたよ~」

「おかえりかぁたん!!」


玄関で出迎えてくれたどんちゃんを撫でる


「絵本届いたの!」

「そうだよ~」


袋から取り出してあげる。


「二冊ある?なんで?」

「こっちはお母さんのおすすめの本」

「ずーっとずっとだいすきだよ?」


私が小学生の頃、教科書に載っていた絵本だ。

どんちゃんは「大好き」に弱いからこれも好きだろうと思って買ってみた。


「読んでいい?」

「いいよ~」


私はシャワーに入り汗を流した。

風呂から出て服を着てどんちゃんを見ると絵本を読んでいた。

どんちゃんの読むスピードだともう読み終わってもいい頃なのに不思議だったが、何度も最初から読んでいるだけだった。


「分からない文でもあった?」

「ぼくも毎日大好きって言ってほしい!」

「どんちゃんが寝てるとき言ってるよ?」

「寝てじゃだめなの!」


気に入ってもらえて嬉しいし、要望も可愛くて撫でまわす。


「わかったよ~毎日言ってあげる!」

「ほんと?そうしたらかぁたんも寂しくないね!」


私の事も考えてくれるほど絵本の影響を受けてくれている。

買ってよかったと思った。

この絵本大好き!大切にする!と前足で器用にページを捲る。


「どんちゃん寝ようか!」

「うん!」


私の横に寝転んだどんちゃんに毛布を掛けて


「どんちゃん大好きだよ」とつぶやく。


「僕もかぁたんだーいすき!」


腕をぎゅっとしがみ付いて言ってくれたどんちゃんを抱きしめる。

今日も明日も大好きだと言おう。私とは違うスピードで大人になって老いていく生き物だ。

一日一日寂しい思いをさせないために私は頑張れるんだ。








最後まで読んでいただきありがとうございます!

今回のエピソードには「ずーっとずっとだいすきだよ」ハンス・ウィルヘルム絵と文久山太市訳の絵本を出させてもらいました。大人になって改めて買いなおして読んでみると悲しい物語とは感じなく温かい絵本に感じました。大人に読んでもらいたい一冊です。

ブックマークといいねお星さまレビューお力添えいただければ幸いでございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ