去勢手術とちゅるちゅる
今日はどんちゃんの去勢手術の日だ。
どんちゃんの保険証やお金など忙しなく動いている私の後ろを付いてくるどんちゃん。
「かぁたん今日は何するの?」
「どんちゃんの去勢手術の準備だよ」
「たまたまなくなる日だ!」
それよりお腹空いた~とご飯茶碗をカランカランと揺らしてる。
手術の関係で昨日の二十一時から断食させているため腹の虫が限界を迎えているのだろう。
「手術があるからご飯たべれないんだごめんね」
「帰ってきたら食べれる?」
「終わったら食べれるよ!」
キャリーケースを準備してどんちゃんに首輪を着けて一応リードも付ける。
どんちゃんはおでかけだ~と喜んで走り回る。
ワクチンで一度行っている病院だから安心なのか嫌がる素振りもなく安心した。
「今日もちゅるちゅるもらえるかな?」
「お母さんが買っとくから帰ってきたら食べようか!」
キャリーケースにどんちゃんを入れて背負いこんで家を出る。
電車移動なので時間に余裕をもって向かいたい。
朝の十時にもなれば外はもうジメジメとした暑さを肌に受ける。
「かぁたんの顔が見えないよ~」
「わかった前にするね」
前向きに抱え込む。
「かぁたん絵本持った?」
「持ってないよ~すぐ手術すると思うし、帰りはそのまま家に帰るからいらないよ」
どんちゃんを説得して駅のホームで電車を待つ。
すでに汗が垂れてくるのでハンカチで拭う。
「かぁたん僕重い?」
「大丈夫だよ~これからいっぱい大きくなるんだから気にしない」
小声でどんちゃんと喋る。
成犬になったら七キロ近く大きくなるんだから今は全然軽いもんだ。
病院に着いて待合室で呼ばれるのを待つ。
「絵本ないの?」
人間の小児科だと遊び場があって絵本もたくさんあるけど、動物病院には当然ない。
どんちゃんには暇な場所でしかないだろうなと思うが、人の目の前で絵本を読んでいるのも怪しい人に移るだろう。
不審者扱いされて警察でも呼ばれたらなんて言い訳をしよう。
そんなことを考えていたら「どんべぇくん」と呼ばれた。言い訳は思いつかないままだ。
「では、夕方お電話しますのでお迎えにきてあげてください」
「はいわかりました」
「どんちゃん頑張るんだよ」
「僕ちゅるちゅるもらうため頑張る!」
なんてちゃっかり者だ。
私は安心して病院を後にして、自分が勤めているペットショップに行く。
自転車で来てないので、歩きで向かうことにしたが、先ほどより日差しが厳しく照り付ける。
徒歩で二十分。私は溶けていた。
店内は特別涼しいわけではないが、外の気温差で幾分涼しく感じる。
「田瀬さん!どうしたんですか!?」
「ちょっと買い物です」
「どんちゃんのおやつですか?」
CAの広場で作業していた加藤さんに見つかった。
見つかったって酷い言いようだな。自分から行っているのだから。
「社員証取りにバックヤード入っても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ~」
初めての休日来るので、勝手に入るのもいかがなものかと考えたが、杞憂に終わった。
バックヤードに行き、働いているであろう鍋下さんを見つける。
「鍋下さんお疲れ様です」
「お、田瀬どうしたのさ」
おやつを買うため社員証を取りに来たことを伝える。
「溺愛してるね」
社員証を持って商品コーナーへ向かう。
ちゅーるとささみを持って歩いていたら洋服コーナーが視界に映った。
どんちゃんに着せたら絶対可愛いだろうなと思い見てたら怪獣をモチーフにした洋服が私の心を掴んだ。
これは可愛すぎる。緑色の体に黄色の鶏冠が付いている。
値段は可愛くないが、どんちゃんに着せたくて買うことを決めた。
レジに並んで竹本さんがびっくりしたような表情を一瞬したが、すぐいつも通りの真顔に戻った。
「その服可愛いですよね」
いつも真顔で何を考えているかわからない竹本さんから「可愛い」の単語が出てくるとは思わず、びっくりした。
「どんちゃんに似合うと思って」
「似合うと思いますよ田瀬さんが選んだものだし」
なんだか恥ずかしくなってきたので、ありがとうございましたとそそくさと立ち去る。
自分のセンスを褒められるのは嬉しいことだったけど、何故か恥ずかしかった。
夕方になり病院から麻酔が切れてきたので、お迎え大丈夫との連絡をいただいたので、迎えに行く。
病院に着いて、診察室に入ると診察台にエリザベスカラーを付けたどんちゃんがいた。
「糸は溶けてなくなるので、一週間はカラーをつけたままでお願いします」
「わかりました」
どんちゃんをキャリーケースに入れてお会計を済ませる。
「僕ちゃんと頑張ったよ!」
「どんちゃんすごいよ!!」
えへへとキャリーケースから恥じらいの笑顔が漏れていいた。
「この首のやつなに?取りたい!」
「手術したところ舐めないようにするためだから取れないよ」
家についてどんちゃんを出してあげて、キャリーケースを衣装棚にしまう。
買ってきたちゅーるを取り出して、どんちゃんを呼ぶ。
「ちゅるちゅるだ!!!」
「そんなに美味しんだね」
ちゅーるをものすごい勢いで舐め始める。
あっという間に無くなってしまったが、どんちゃんは一個しか貰えないと分かっているのか駄々を捏ねなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
去勢手術のお話でしたが、病院によって対応が違うと思ったのでうっすらになりましたが、このエピソードを書き忘れていました!申し訳ございません!
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