スロープと今更
連休最終日いつも通り六時に目が覚める。
どんちゃんが起きないように起き上がろうとするが、右腕を枕にされていた。
撫でたら起きてしまうかもしれないので、じっくり見つめる。
長いまつげに黒いお鼻はすーすーと静かに音を立てて寝ている。
視線を感じたのかどんちゃんのゆっくり目が開く。
「かぁたんだ~」
「どんちゃんだ~」
謎の点呼を取りどんちゃんは起き上がり背伸びをする。
私もバキバキになった体を伸ばす。特に右腕を重点的に回したり伸ばしたりする。
「かぁたん下して~」
「はーいよ」
どんちゃんをベッドから下してあげる。
今日の昼間にネットで買ったスロープが届くはずだ。
どんちゃんが自由にベッドを昇り降りできるはず。
どんちゃんのご飯も用意して、自分のパンを焼き始める。
部屋中に焼けるパンの匂いが充満していく。
「いい匂い~」
今日は目玉焼きも焼こうと思い、冷蔵庫から卵を一個取り出す。
フライパンに油をひいて卵を割る。
水で蒸すやり方ではなく、油で白身の端を少しカリカリにするのが好き。
トースターから焼き終わった音が聞こえたので、こんがり焼けたパンを取り出す。
その上に目玉焼きを乗せる。
「かぁたん少しちょーだい!」
「人間のものはだめ」
テーブルに言いい匂いをしているパンを真ん中に置いてコーヒーを淹れる。
どんちゃんが食べないように見張りながらインスタントのコーヒーを淹れる。
コーヒーを飲みながら席に着く。
「いい匂いがいっぱいする!」
「そうだね~」
私の横で鼻をふんふんさせているどんちゃん。
迎える前から人間の食べ物は与えないと決めていたので心を鬼にして食べる。
黄身のとろみ具合がちょうどよくお皿にぽたぽたと落ちる。
どんちゃんの視線が痛いので、早く頬張る。
食べ終え、お皿をシンクに持っていきその場で洗う。
どんちゃんはぬいぐるみ相手に「強いのはぼくだー!!」とブンブン振り回している。
その後スロープを配達員さんから受け取った。
「それなに?かぁたん」
「どんちゃんの階段だよ~」
「かいだん?」
箱から出してベッド際に置いてみる。
高さもぴったりだったので、あとはどんちゃんが上り下りが出来るかだ。
「どんちゃん上れる?」
「はーい」
初めての階段なのでちょっと不格好だがベッドに上れた。
「じゃぁどんちゃん下りてみようか」
「お布団に上れたのに~」
そう言いながら階段を下りる。
「できた!」
「これで夜トイレ行きたくなったらこれで下りて上ってベッドに戻るんだよ」
「はーい」
その後夜ご飯までどんちゃんと遊んでご飯食べてまた遊んでいた。
どんちゃんをギューッと抱きしめる。
「かぁたん苦しいよ~」
そう言いながら尻尾を振っていたのでまんざらでもないようだ。
そのまま高い高いしてあげたらキャーっと楽しそうにしてくれる。
その時ピコんとスマホが鳴る。
私はどんちゃんを下してスマホを見る。
まだやってー!と膝にしがみ付くどんちゃんよりスマホに釘付けになる。
相手は元セフレからだった。内容は「暇?」というだけだった。
たった二文字だが私の気分を落とすのには十分だった。
なんで今更メッセージを送ってきたのか考える。
私はお互いのためにならないから縁を切ったのに私の勇気を簡単に踏みにじってくる。
気分が晴れないのでシャワー入ってくると、どんちゃんに伝えて衣服を乱暴に脱いで洗濯機に投げ入れる。
最初に出てくる冷たい水で顔を濡らす。
だんだん温かくなってきた水を頭からかぶる。
外ではどんちゃんが「まだー?」と言ってドアの前で待っていてくれている。
手早くシャワーを済ませてタオルを取り体に巻いて外に出る。
「やっと出てきた~」
「遊んでればいいのに」
「かあたんと遊ぶの!」
髪をタオルで水分を取るようにガシガシする。
軽くタオルドライ出来たらどんちゃんのご飯あげて、自分のご飯を作る。
今日は生姜焼きにしようと肉と玉ねぎと生姜を出す。
玉ねぎはどんちゃんが食べないよう床に落ちないよう慎重に切る。
豚肉を焼いて火が通ったら玉ねぎ入れてしんなりするまで炒める。
「かぁたんのご飯はいつもいい匂いするね!」
「毎日変わるからね~」
お酒とみりんと醤油とすりおろした生姜を入れて炒めたら完成。
お皿に盛る手間が面倒くさいから鍋のまま食べる。一人暮らしだから出来ることだ。
明日のお弁当用に少し拝借して、鍋を鍋敷きの上に置いて食べ始める
「かぁたんいただきます!」
「あ、いただきます!」
どんちゃんが見てる中ちゃんとしないと真似しちゃうと思うとしっかりしなければならない。
セフレのことも片付けないといけない。
全部どんちゃんのためだ。強くならないといけない。
「明日は休み?」
「明日は仕事だよ」
「そっか・・・」
明日仕事だとわかるとしょんぼりとぬいぐるみを咬んでる。
私も行きたくないが行かねばどんちゃんを養えなくなる。
「どんちゃん寝ようか」
「はーいこのぬいぐるみと一緒に寝ていい?」
どんちゃんは羊のぬいぐるみを持ってきてうるうるさせた目で聞いてくる。
「いいよ~」
「やった!」
ぬいぐるみを咥えたままスロープは登れそうにないし、危ないのでぬいぐるみをベッドに置いてあげる。
「僕はここから上る~」と早速スロープを活用してくれる。
買ってよかったと思う。私も布団に潜り今日の事を振り返る。
頭によぎるのはセフレから来た連絡だった。今更何を思って連絡したきたのだろう。
どんちゃんが来るまではセフレしかいなかったが、今はどんちゃんがいてくれる。
私は依存しやすいタイプなのかもしれないと、ぬいぐるみを前足で挟んで寝ているどんちゃんを撫でる。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
もう12エピソードまで来ました!毎日どんちゃんが喋ったらなんて言うか考えるようになりました。
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