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病院とおやつを覚えたよ

「かぁたん!かぁたん!」


顔を思いっきり踏んづけられて目が覚める。

犯人は分かっているので声がカスカスだが、どうしたのと返す。


「おしっこ!」

「おしっこ!?」


すぐさまどんちゃんをベッドから下す。

時計を見ると六時半いい目覚ましだ。


「かぁたんありがとう」

「いいよ~首輪はどう?違和感ない?」

「これ寝るときいやだー」


慣れていないからかあんまり良くなかったみたいだ。

十時に病院なのでそれまで外すことにした。


「首すーすーする!」

「出かけるときだけ付けようか」

「ごはんちょーだい」


ご飯をあげその間に自分のご飯を用意する。

トーストにバター塗っただけの物を食べる。

あれこれ家事を済ませてどんちゃんとも遊んでいたら九時半になったので、病院に行く準備をする。

地下鉄で行くので、犬猫用のリュック型のキャリーケースを用意する。


「どんちゃんこれに入ってもらえる?」

「怖くない?」


初めての物に少し不安を覚えたようだ。

私も初めての事なのでどう説明して納得してもらえるか考える。


「全然怖くないよ~」

「僕歩けるよ?」

()()っていう乗り物に乗らないといけないからどんちゃんはこれに入っていくの帰ったらボロボロあげるから頑張ろう?」

「わかった・・・僕頑張る・・・」


とことことキャリーケースに近づき鼻をふんふんさせて安全かどうか確認している。

どんちゃんをゆっくりキャリーケースに入れてジッパーを閉める。

上の部分はメッシュ生地になっていて中にいる不安げなどんちゃんが見える。

今日は背中に背負うのではなく、前にしょい込もうと思う。慣れたら背中でもいけるだろう。


「かぁたんも行くよね?」

「かぁたんがいないとどんちゃん行けないでしょ~」


どんちゃんの保険証とお金とスマホを斜め掛けバッグにいれてどんちゃんを前にしょい込む。

ちょっと揺れたことでどんちゃんもびっくりしてたが、すぐ慣れたようで鼻をふんふんさせている。

戸締りをしっかりしていざ行く!


「お外だー!!」

「久々だもんね」


まだ十時くらいなのに日差しが出ていて暑い。

キャリーケースもあるから余計に暑い。歩いて十分ほどにある最寄りまで歩く。

どんちゃんに外の世界を早く知ってもらいたい。夏の草の匂い雨の匂い冬の寒さと春の日差しすべてを経験してほしいと思ってる。


「お外歩きたい!」

「今日は歩けないから来週だね」


最寄り駅に着いてスイカをタッチしてどんちゃんを連れて初めて駅のホームに来た。

どんちゃんはきょろきょろとして落ち着きがなかったが吠える仕草まどしないのでいい仔だなとメッシュ越しに撫でてあげる。


「かぁたんなにここ?」

「駅だよ電車ていうブーブーに乗るよ」

「ぶーぶー」

そこで初めて気づいたが犬相手に話しかけているのは可笑しい人ではないだろうか。

どんちゃんの声は私しか聞こえないが、私の声はみんな聞こえる・・・。


「どんちゃんちょっと静かにお話しようか」

「なんで?」

「静かにしなきゃだめだからだよ」


すぐに電車が来てゆっくり乗り込む。

どんちゃんを前に抱えているので足元が見えないため動作がゆっくりになる。

席が空いていたのでどんちゃんを膝に置いて座る。


「お外が動いてる!」

「そうだね~」


なるべく小さい声で返事をしてあげる。

救いなのが人が少ないことだ。平日休みが好きなのところでもある。

どんちゃんはずっとメッシュ越しに外を見ていて落ち着いていた。


「もう着くよ」

「もっと見る!」

「静かにしようね」


どんちゃんの声は周りからしたら吠えているだけに聞こえるだろうから焦ってしまう。

子供とは違うのだ。そこはちゃんと躾をしないとこれからが大変になってしまう。

私が車でも買えばそんなことは起こらないが、東京で車を買うと維持費が高すぎるので、電車の方が便利というわけだ。

動物病院のある駅に着き、階段をゆっくり安全に下りる。

電車の中が涼しかったからか外の暑さが増しているように思う。

どんちゃんも少しはぁはぁと舌をだして体温調節している。

病院に着いたらお水をあげようと歩みが早くなる。


「ここがびょいん?」

「そう病院」


自動ドアを抜け、受付で初めての来院を伝えると問診票を受け取る。

どんちゃんを床に置いて、問診票に書かれている欄を埋めていく。

書き終わった問診票と保険証を受付のおねぇさんに渡す。呼ばれるまでお待ちくださいと言われどんちゃんのところに戻る。


「どんちゃん水いる?」

「いらなーい」


駅から近い所でそんなに歩いていないから熱中症にはならないとは思うが、どんちゃんは初めての病院にそわそわしてるみたいだ。


「お待たせしましたどんべぇくん」

「はい」


診察室に入りどんべぇを診察台に乗せる


「何するの?かぁたん」

「大丈夫だから」

「今日はワクチンですね」


お願いしますと任せるとどんちゃんのバイタルを取り始める。

体重や目を見たり口の中や耳の中まで一通り終わらす。

どんちゃんは終始大人しそうにしていたが、「かぁたん何この人?」とこちらを見てる。

最後のワクチンの注射が一番心配だったが、看護師さんがおやつを与えて獣医さんがその間に注射を打つ何事もなくスムーズに終えた。


「さっきのおやつ美味しかった!かぁたんあれがいい!」

「ちゅーるか・・・」

「それ!ちゅるちゅる!!」


待合室で先ほど貰ったおやつを強請られている。

覚えさせたくはなかったが、こればかりは仕方ないと明日買いに行くから静かにねと言った。


帰りの電車では疲れたのかどんちゃんはキャリーケースの中で寝ていた。

私は起こさないようにゆっくり歩いて岐路に着く。


「お疲れ様どんちゃん」





最後まで読んでいただきありがとうございます!

どんちゃんを動かすのが楽しくて小説を楽しく書けています!

ブックマークといいねお星さまお力添えいただけますと幸いです

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