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子狼と少年と  作者: 陸斗
6/13

一日

  僕の一日は、タケルを起こす事から始まる。


  "メザマシ"が鳴ると同時に僕は目が覚める。

  最初の頃は凄く驚いたこの音も、今はすっかり慣れた。

  けど、タケルは"メザマシ"が鳴っても全然反応しないんだ。

  たまにモゾモゾ動く位で、特に何とも無いみたい。


  "早く起きないと、また怒られちゃうよ?"



  タケルにそう言いながら起こそうとするんだけど、全然起きてくれないんだ。


  そして、ついにタケルのお母さんがやって来ちゃた…。


  「岳琉!早く起きないと遅刻するわよ!」


  布団を剥ぎ取られて、頬っぺたを何度か軽く叩かれると、漸くタケルが目を覚ました。 僕は半分呆れながらもタケルの頬っぺたを舐めると、タケルが頭を撫でてくれた。


  「うわッ!もうこんな時間!?遅刻しちゃうじゃん!」


  いきなり慌てて支度を始めるタケル。

  僕が起こした時に起きれば、こんなに慌てる事無いのになぁ…。


  ガシャーン


  あ、何か落としたみたい。ご飯食べる部屋からお母さんの怒る声と、タケルの慌てながら怒る声が聞こえてくる。


  その部屋に入ると、床には割れたコップがあって、お母さんが破片を拾ってた。


  「クー、危ないからちょっと待ってて!」


  割れた破片が光を反射してキラキラ綺麗だなぁ〜なんて思っていたら、タケルに「来るな」って言われた。

  ちょっと強い口調で言われたから、ビクッとしてその場で固まった。


  「お母さんが良いよって言ったら入っていいよ」


  タケルがそう言いながらキラキラの所を避けて、「行ってきまーす」ってガッコーに出掛けて行った。

  どうやらこのキラキラは危ないみたいで、近付くと怪我しちゃうみたい。

  取り敢えずその場に座り込んで、様子を伺う事にしてみた。


  それにしても…


  "お腹空いたぁー…"


  「ごめんねクーちゃん。ちょっと待っててね」


  僕の声が聞こえちゃったのか、タケルのお母さんが謝る様に僕に言ってくる。


  てきぱきと片付けが終わって、手招きされると漸く朝ご飯が食べれた。


  朝ご飯を食べたらタケルのお母さんと一緒にテレビを観るんだ。


  イヌとかネコとか色んなのの変な特技とかのコーナーを観るのが僕の日課。


  『ドアの上で寝るネコ』


  登るのは凄いけど、寝づらくないのかな?

  試してみたいなぁ…。


  そのコーナーが終わってタケルの部屋に戻る時、ドアを見上げてみる。


  "高いよぉぉぉ…"


  無理だと分かった僕は、未練を残しながらタケルの布団に潜り込む。


  まだ、ちょっとだけ残る温もりと、タケルの匂いの中でウトウトするのが至福の時間なんだ。



  「クーちゃんご飯よー」


  お母さんの声が聞こえて気がついたら、もうお昼だった。

  いつの間にか寝ちゃってたみたい。

  欠伸して、伸びしてタケルの部屋を出ると、良い匂いがしてくる。


 お腹いっぱいになって、お母さんと毎日欠かさずに見てる"ヒルドラ"を一緒に観て、お母さんが色々言ってるのを聞いてるんだ。

 あまり何を言っているか良く分かんないけど…。


 それからニュースとか観てゴロゴロしてると、いつの間にか寝ちゃってるんだ。

 お母さんも横で一緒に寝てたりするんだけど、今日は起きてた。


 時計を見ると3時になるとこだから、もうすぐタケルが帰ってくる。

 僕は、玄関まで行ってタケルの帰りを待つことにした。


 これも僕の日課。タケルが帰ってくるのを待ち伏せして、帰ってきたら抱き着くんだ。

 そうすると、タケルが頭を撫でてくれるんだ。

 僕はそれが嬉しくて、早く撫でて欲しくてこうやって待つようにしたんだ。


 徐々にタケルの匂いがしてきて、落ち着かなくなってソワソワしちゃう。


 玄関が開いて、タケルが入ってくるのに合わせて、僕は走って思いっきりジャンプした。


 「ぉあッ!?」


 タケルはちょっとびっくりしたみたいだけど、しっかり僕を受け止めてくれた。


 「いつもより元気いいから驚いたぞ」


 タケルが笑いながら頭をガシガシと撫でてくれる。

 これが僕の一日の中で、一番幸せな瞬間なのだ。


 それからは、一緒におやつを食べるんだけど、いつも僕が先に食べ終わっちゃう。

 だから、タケルの食べてるのを見てるともっと食べたくなっちゃって、タケルにおねだりをしてみる。


 「クーは食いしん坊だな~」


 笑って僕に少し分けてくれる。貰えない時もあるけど、それはタケルの大好物だから。



 食べ終わったらタケルと外に出て、いつもの公園に向かう。

 タケルの友達が飼ってる大きい犬とも友達になれたから、一緒に遊んでもらうんだ。


 公園に着いて、友達を見つけるとタケルを急かしながら走っていく。

 

 いっぱい大きい犬に遊んで貰って疲れた僕は、タケルの元へと戻っていく。

 抱っこをねだってタケルに抱えられると、さっきまでとは違って眠くなってくる。

 トクントクンってタケルの音と、温もりで僕は安心して眠りについた。





 気が付くと家に居た。

 すっかり熟睡してたみたいで、全然気が付かなかった。

 

 「あ、起きた」


 タケルが一番に僕が起きたのに気付いて声を掛けてくれる。


 「よ~く寝てたな~。帰り大変だったんだぞ?」


 笑いながら頭をわしゃわしゃしてくるタケル。

 

 "ごめん。重かったでしょ?"


 耳と尻尾も下げてタケルに謝る。

 けれどタケルは全然気にした感じじゃなくって、「別に良いよ」って言ってくれた。


 「クーご飯食べるでしょ?いま準備するから待ってて」


 そう言ってタケルは台所にパタパタと走っていった。

 そう言われると、丁度お腹が鳴る。


 それからすぐタケルが戻ってきて、僕にご飯を出してくれた。

 

 いっぱい食べた僕は、タケルに遊んで欲しくてじゃれつく。

 けれど、タケルが構ってくれない。


 「クーこれ終わってからね!」


 タケルはテレビに夢中なのだ。

 けど、僕だって遊んで欲しい!


 "タ~ケ~ルぅ~…"


 「待ってって!見ておかないと明日学校で話に着いてけなくなっちゃうんだってばぁ~」


 断固としてテレビから離れようとしないタケルに、僕は不貞腐れることにした。

 

 "だってー遊んでくれないんだもんッ!"


 「クーちゃん、お母さんが遊んであげよっか?」


 何か目が輝いてるお母さんが僕に向かって両手を広げてきた。

 とにかくこの鬱憤を晴らすために、お母さんに全力で抱きついた。


 「まったく岳琉はしょうがないわよね~」


 僕を抱っこして、お母さんが僕の手を取ってブンブンしながら行ってくる。

 それに僕は、"まったくだよ"って答えてお母さんに身を任せた。


 タケルとは違った温かさがあるお母さんも、僕は好き。

 タケルが遊んでくれない時に遊んでくれるし、抱っこされた時のふかふかで温かいし。

 だから、お母さんにいっぱい遊んで貰って満足した僕は、まだテレビに夢中になってるタケルを置いて部屋に戻った。


 タケルの温もりが無くって布団が冷たかったけど、タケルが遊んでくれないから寝ることにした。

 

 でも、やっぱり一人だと寝付けない。

 ちょっと寂しくなってきちゃった…。

 テレビなんていいから早く来てよー。

 タケル…。


 カチャって静かに部屋のドアが開く音がする。

 忍び寄る足音。


 「…寝ちゃった?」


 本当は嬉しくて抱きつきたいんだけど、たまには知らしめないと。

 僕は怒ってるんだぞってね。


 「ごめんね。明日はちゃんと遊んであげられるから…」


 ちょっと寂しげなタケルの声。

 やりすぎちゃったかなぁ…。

 優しく撫でてくれる度に、悪いことしちゃったなぁと罪悪感が増してくる。

 優しく撫でてくれる手が口元に来た時、パクッと指に噛み付く。って言っても甘噛みだよ?

 

 「お、起きた」


 "寝てないもん"

 

 タケルの言葉に即座に返す。


 「寝たふりしてたのか?まさか」


 タケルが居なくて寝付けなかったなんてバレたら恥ずかしいから、できるだけ僕は怒ってるふりをした。


 「さっきはごめんよぉ。あれ見とかないと明日大変なんだって」


 う~って唸る僕にタケルは少したじろいでいた。

 そして一緒にお風呂に入った時も、わざといつも以上に体を振って水を飛ばした。


 「ク~許して~」


 体を乾かして貰って布団に入る僕に、タケルが泣きそうな声で言ってくる。

 流石にタケルの泣き顔はみたくないのと、いい加減僕が耐え切れくなったから布団に入ってきたタケルに抱きつく。

 顔を寄せて来るタケルの頬を舐めてあげると、安心したみたいに僕を抱きしめてくる。


 「クーってもしかして反抗期?」


 タケルが言ってくるが、"はんこうき"ってなんだろ?

 僕が首を傾げて考えてる間に、タケルは一人で納得して寝ちゃった。

 だから僕も考えるのを止めて寝ることにした。

 

 今度はタケルの温もりの中で驚く程素直に眠りに付けた。




 

いやはや色々ありまして更新するのに何回年を跨いでしまったことやら…

ちょっとリハビリ的な部分があるので、ギクシャクした書き方になっていたらゴメンナサイ…。亀更新は変わらずですが、まだまだ続きがあるのでお付き合い頂けたら幸いです。


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