お散歩
今日もタケルと一緒に、何時もの場所までお散歩。
タケルの右隣が散歩する時の、僕の定位置なんだ。
クルマとかジテンシャに気を付けながら、タケルが歩くのに邪魔んなんない様に一緒に歩いてく。
でも、時々目の前をヒラヒラ飛んでく蝶々とか追っ掛けちゃう事とかもあるんだけどね…。
だって、綺麗だし、何であんなヒラヒラするだけで飛べるか不思議なんだもん。
んで、今もそれで追っ掛けてる最中。
゛食べたら美味しいかな?゛
何となく思い付いて、右の前足で叩き落とそうとしたら、いきなり尻尾を引っ張られて、引きずり戻される。
゛痛ッ!!?゛
そう思うのと同時に、目の前を大きいクルマが通り過ぎてく。
僕は足がすくんで動けなくなった。
「クーッ!ちゃんと周り見ないと車に轢かれるぞ!」
タケルが僕を抱き抱えて、鼻と鼻がくっつく位まで顔を寄せて言って来る。
軽く頭を叩かれて、漸く僕はクルマに轢かれそうになったんだと解ったんだ。
タケルが僕を抱えたまま歩き出すと、タケルの肩越しにさっきまでの場所を見る。
道路に、さっきの蝶々が居た。
クルマに轢かれて、片方の羽が無くなっちゃって、横たわったまま、ピクピクと動くだけで…。
何だか凄く悲しくなったんだ。
何か…凄く呆気ないって言うか…何て言ったら良いんだろ?
そんな事を考えてたら、また違うクルマが蝶々を踏み潰してった。
白い羽だけが何処かへと飛んでく…。
僕はタケルにギュッとしがみ着いて、目線を逸らした。
「ん?どうした?」
僕はタケルの胸に顔を押し付けて、心臓の音を聞く。
トクン、トクン…
凄く安心する。
「クーは甘えん坊さんだな」
優しく頭を撫でてくれるのが心地良くって、いつの間にか寝ちゃってた。
気が付くと、いつもの場所でタケルの膝の上に居た。
タケルの笑い声が聞こえる。
顔を上げてタケルを見ると、僕じゃない所に視線が行ってる。
追ってみると、タケルの正面に知らない人間が居た。
タケルと同じ位の大きさの人間。
゛トモダチかな?゛
「あ、起きた」
タケルが僕を見て言う。
何でか解んないけど、安心した。
「クーは、狼なんに大人しいよなぁ〜。それに比べたらウチのなんて…」
トモダチがタケルに何か言ってる。
トモダチの視線を追い掛けると、僕より大きい体の犬が走り回ってた。
「そうでもないよ?好奇心旺盛だから、何か見付けると、すぐどっか行っちゃうんだから」
タケルがトモダチに言うと、僕の頭をポフポフと叩いてくる。
でも、タケルが笑ってるから、悪い気はしないよ?
「やっぱ狼でも、子供は子供ってヤツか」
「そうみたい」
またタケルが僕を見て、笑ってる。
僕は、タケルのこの笑顔が大好きだ。
けれども、今日は何となくトモダチが羨ましくなった。
だって、タケルとこんなに楽しそうに色々喋れるんだもん。
僕も人間だったら…タケルとこんな風に楽しく喋れるのかな…。
「クー?」
考える事に集中してたら、タケルが心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
"何でもないよ?"
タケル達とは言葉は違うけど、僕はそう言ってみた。
そして、タケルの腕をすり抜けて大きな犬と遊ぶ為に走り出した。