カン違い
タケル…迷惑だったかな…
凄い困ってる…
ただ黙って黙々と歩くタケル。
僕に目もくれないで、何処かに向かって歩いてくんだ。
僕がタケルを見ても、タケルは僕を見てくれない。
何だか段々恐くなってきて、僕は何かとてつもなく悪い事をしてしまったのでは?と罪悪感と恐怖で頭の中が一杯になってくる。
特に恐怖の中で1番なのが、嫌われて捨てられちゃう事…。
お母さんに見放されて、一人ぼっちになった時の事を思い出したんだ。
段々お母さんの姿が小さくなって、見えなくなっていく寂しさ。
誰も居なくなって、喋る相手も居ないし、助けを呼んでも誰も来てくれない虚しさ。
次第に体力が無くなって、意識が朦朧としてきて、呼吸をする事すら苦痛になる位弱って、死を迎え入れる僕…。
゛もう二度とそんな思いはしたくない。゛
゛タケルと離れ離れになりたくない。゛
二度とこんな、タケルを困らせる様な事はしないから、嫌いにならないで…
゛僕を捨てないで…゛
タケルが大きい人間と話を始めた。
『センセー』って言う人間みたい。
センセーは僕とタケルを見ながらタケルに何か言っている。
「何とかお願いします。今日は家に誰も居ないんです…」
「ん〜…しょうがないから今日だけ職員室で預かるけど、今後は無い様に気を付けるんだよ?」
「はぁ〜い」
話のキリが付いたみたいで、久々にタケルと目が合った。
「じゃぁ大人しくイイ子にしてるんだぞ?休み時間には、ちゃんと来るからね」
ちょっと不安げに言うと、僕をセンセーに差し出したんだ。
゛え?゛
タケル?…どうして?
僕がいらなくなったの?
嫌だよ!置いてかないで!
僕を捨てないで!
センセーに抱き抱えられていた僕は、タケルに捨てられると思って、必死にセンセーの腕から逃げ出して、タケルを追い掛ける。
「あッ!コラッ!」
センセーのその声で振り向いたタケルに、僕は飛び付いた。
゛僕を捨てないで!゛
゛もう二度とタケルを困らせる事はしないから、タケルの傍に居させてよ゛
必死な思いでタケルにしがみついて訴えた。
けれどもタケルは、笑いながら僕を抱え上げるんだ。
「ちゃんと休み時間に遊びに来るから、ちゃんと先生の所で大人しくしててよ」
タケルが笑ってるのは、僕が居なくなってせいせいするから?
一度悪い方に考えると、何もかもがマイナスに思える様になるんだ。
だから、タケルがセンセーに僕を預けたのも、笑顔で手を振りながら僕から離れて行くのも全て、タケルは僕を嫌いになって、僕はタケルに捨てられたんだ、と言う風にしか考えられなくなってたんだ。
だから必死にタケルに、嫌いにならないで、と叫ぶ。
そしたらタケルは、僕の両頬を両手で挟み、頭を上に向けると、タケルは顔を近付けてきて、じッと僕の瞳を見つめた。
物凄く近いタケルの瞳を、僕も見つめるしかなかった。
「捨てたりなんかしないよ。ただ先生に放課後まで預かって貰うだけだから、心配しないで?」
じッと見つめられてる瞳を見てると、何かタケルの言ってる事が解った気がして、僕が勘違いしていた事に初めて気付いた。
タケルは怒って無い事。
タケルは僕を捨てる気は無いって事。
ただ単に、僕が勝手に思い込んでいた勘違いだったんだ。
だからタケルの瞳をみながら、徐々に安心していった僕は、力も徐々に抜けてって…
「クー?もしかして捨てられるって思ってたの?」
タケルが笑ってる。安心しきった僕は、タケルが笑ってるのを見てるうちに、段々恥ずかしくなってきて、タケルにソッポ向けてセンセーの方に歩き始めた。
振り向き様に、この間タケルがやっていた事を真似してみた。
不手腐れた時にやってた…
あっかんべーッ!