日常
「クー!こっちコッチぃーッ!」
あれから暫く経って、僕の怪我が殆ど治ると、外に連れて行って貰える様になったんだ。
そうすると、小さい方、多分『タケル』って呼ばれると良く何処かに行ってたから、名前だと思うんだけど、一緒に遊ぶ様になったんだ。
んで、僕はいつの間にか『クー』って名前で呼ばれる様になったんだ。
遊びに出ると、何時も草原みたいな広くて、フカフカした草がいっぱい生えてる所で遊ぶんだ。
タケルが投げる丸くて柔らかい玉を取りに行ったり、タケルにじゃれ着いたり、色々遊ぶんだ。
いつの間にか友達と言うか、家族の様にタケルとは仲良くなってた。
だって、タケルが居る事が当たり前になってるんだもん。
何時も側に居て、遊んでくれるし、甘えさせてくれるんだ。
もっと時間が経つと、言葉は解らないけど、何と無くタケルを見ていると何でも解る様な気がしたし、タケルも僕の事を解ってくれてた。
でも、ある日から突然、明るい間は居なくなるんだ。
だから僕だけの孤独な時間が増えた。
何もする事が無くて凄く寂しかった。
「クー!ただいまッ!」
タケルが戻ってくると、必ずと言って良い程、僕はタケルに飛び付いた。
そうすると、優しく抱きしめて頭を撫でてくれるんだ。
暖かくて、タケルの心臓の音が、トクントクンって聞こえて、物凄く安心するんだ。
この時が1番好き。あ、でも、一緒に寝るのも好き。
後、お風呂に一緒に入る時も好き。だけどお風呂で一回失敗した事があるんだ…。
タケルが僕の体を洗ってくれたから、僕も洗ってあげようとしたら、爪を引っ掻けちゃって、僕みたいに毛が生えてなくて、スベスベな背中に怪我させちゃった事があるんだ…。
幸い大した事無くて安心したけど…。
タケルがいつも居なくなってしまうのは、『ガッコー』って言う所に行ってるからみたい。
良くそう言ってるから合ってると思う。
どういう所なんだろ?今度コッソリ着いてってみようかな。そしたら驚くかな?
明日試しに着いてってみよう。
その日はウキウキしながらタケルと布団に入ったんだ。
タケルがどんな顔して驚くかな?とか考えながらね。
「それじゃぁ行ってくるね」
何時もの様に、タケルは僕を抱っこした後、そう言って手を振りながら出てく。
僕はコッソリその後を着いてく。
何かガッコーに行くのに、色んな所を曲がったり、色んな人間が居る所を通って行くんだ。
僕は初めての景色にキョロキョロしながら歩いてた。
「わぁ〜可愛い!子犬じゃない?」
たまに知らない人間に構われたりしたけど、タケルに着いて行きたいから、余り相手にしない様にして、見失ったら匂いを辿って、タケルを目の届く位置にしておくんだ。
゛…何でこうなるんだろ…゛
ガッコーっぽい所に着くなり、僕は人間達に囲まれた。
「可愛いッ!」
「子犬?」
「のら?」
「私飼いたい!」
何か…凄い騒がしくなっちゃったんだけど…。どうしよ…
゛タケル…恐いよぉ…゛
゛タケル…助けて…゛
知らない沢山の人間に囲まれて、タケルの姿が見えなくて、凄く恐くなって来て…。
おろおろする僕。ひょいと抱き上げられて、驚いて振り返るとタケルだった。
「クーッ!駄目だろ着いて来ちゃ!」
軽く頭を叩かれて怒られるけど、それも凄く嬉しかった。
だから僕は、必死にタケルにしがみついた。
゛恐かったよぉー゛
゛恐かったよぉー゛
タケルに叫ぶ様に言った。
そしたらタケルも解ってくれたみたいで、僕を人間達の中から解放してくれた。
「クー、何で着いて来ちゃったんだよぉー。何時もは家でちゃんと待ってるんに…」
タケルが困った顔をしてる…。
どうしてだろ?
僕が着いて来ちゃったから?
「一人じゃ帰れないだろうし、心配だからなぁ…。先生にダメ元で言ってみるよ」
タケルは溜め息をつくと、また僕を抱き上げて移動し始めた。
読んで頂き有難うございます。
ちまちまと書いていたら、前回から三ヶ月も経ってしまいました様で…ι
こんな亀更新ですが、付き合って頂けたら嬉しいです。