出会い
気が付くと、温かくてフカフカした感覚があった。
目を開ければ眩しい光が差し込んでくる。
あまりの眩しさに、もう一度目を閉じてしまう位に。
徐々に目を開けて光に目を慣らすと、見た事の無い光景が広がってた。
゛これが天国なのかな…゛
お母さんが前に言っていた、死んだ後の世界。
こんなに心地良いなら悪くないかも…。
でも、誰も居ない。
物凄く静かな場所。
何だか寂しくも感じる様な気がして、心がざわつく。
どの位だろうか?僕がまどろみの中で色々考えていると、ぱたぱたと足音が近付いて来る。
それは今まで聞いてきた足音とは全然違う。でも、何処か聞き覚えのある足音。
ぁぁ…気を失う前に聞いた足音だ。
扉の開く音がして、何かが僕の居る所に入って来る。
「おじーちゃんッ!狼、目が覚めたよーッ!」
入って来たのは…多分゛人間゛。僕も一度だけしか見た事無いけど、多分当ってると思う。
天国じゃ無かったみたい。人間の巣…だったんだ。
何か叫んでるけど、どうしたんだろ?僕が突然現れたから怒ってるのかな?
゛それとも食べられちゃう…?゛
頭の中にそんな事が浮かんできたけど、不思議と恐くは無かった。
一度諦めると何か開き直ったみたいに全部どうでも良くなっちゃうみたい。
けれど、僕の考えが外れたのか、人間達は僕に手は出さず、何か喋ってる。
そして、小さい方の人間が僕に手を延ばすと、優しく頭を撫でてきた。
゛温かくて、心地良い゛
何だろ?不思議な感じがした。
お母さんとは違った温かさ。
お母さんとは違った心地よさ。
違和感…は無い…と思う。素直にそう思えたからね。
でも、警戒は解かないよ?人間は信用出来ないって、お母さんから教わったし。
取り敢えず起き上がろうとして、足に力を入れると、後ろの左足から激痛がやってきた。
「駄目だよ!まだ寝てなきゃ!」
小さい方に、いきなり怒鳴る様に言われて、ビクッとしてしまう。
ゆっくりと身体を横たわせると、優しく身体を撫でられる。
さっきは怒ったくせに、今度はまた優しくしてくる。
良く解んないなぁ…。
「早く治るといいね」
小さい方に撫でられながら、僕は不手腐れた様に眠る事にした。