早速バレる
「はい、クーちゃん。これでどうかしら?」
お母さんがズボンを渡してくれる。
それを履いてみる。
「凄い!丁度いいよ!お母さん!」
ズボンに尻尾が通せるようにしてもらったんだけど、丁度いい!
やっぱり尻尾が自由じゃないと何だかキモチワルかったのだ。
別に今まで着てなかったし、着なくても良かったんだけど、人間になったんだから服は着なくちゃダメって事で、お母さんが作ってくれたんだ。
「それにしても、本当に人間になっちゃったのね。クーちゃん」
・・・・・・
「岳琉!五月蝿いよ!早く寝なさい!」
バンッ!って部屋のドアが開いて、お母さんの怒った声が飛んでくる。
「あ…」
「あ…」
僕たちの声が揃った。
秘密にしようって言ってたのに早速見つかっちゃった…。
「…岳琉の友達かしら?」
ど、どうしよ…?ってタケルを見たんだけど…。
「あー…クーって言ったら信じる?」
正直、僕もまだ信じきれてなくって、また夢じゃないかな~とか思ってる。
お母さんはまだ怖い顔をやめてくれない…。
「岳琉…」
なんだかもう一発爆発しそうな感じが…
「ほ、ほら、耳、クーにそっくりでしょ?本物なんだよ!」
耳をクイクイされる。
お母さんの顔が、ん?ってなる。
「し、尻尾だってあるんだよ?クー人間になっちゃったんだ!」
尻尾が鷲掴みされてブンブン振られる。
お母さんの顔が、え?ってなる。
タケルの手が離れても僕は尻尾を振り続けて、耳を動かしてみる。
「ええええええええええ!!!!!!」
お母さん驚いてる。
「クー…だよ?」
僕が言うと、今度はお母さんが耳をクイクイしたり尻尾をにぎにぎブンブンしてきた。
「ほ、本当にクーちゃんなのね…」
一応信じて貰えたみたい。
それからお母さんはいつも通りで…。
「ズボン履こうとしたら尻尾が邪魔で半ケツって笑われた」って騒いでた理由を話したら、タケルが怒られてた。
ざまーみろ!
それからお母さんがズボンを尻尾が通るようにしてくれたのだ。
・・・・・・
「まだ僕にもよく分かんないんだけど、人間になっちゃったみたい」
ズボンがちゃんと履けたからこれでタケルに半ケツって笑われなくて済むね!
「ありがとう、お母さん!」
なんか服も着て、本当に人間になったんだな~って実感が少し出てきた。
ちょっと嬉しくなって服を見ながら回ってみる。
「岳琉もこの位可愛気があればいいのにねぇ…」
「お母さんウルサイ…」
なんか僕、褒められてる?
タケルは不貞腐れてるけど。
「そういえば、クーはいきなり喋れるんだね?漫画とかだと喋れなくて教えてたりしてるのに」
「うん。今までずっと隣で聞いてたから覚えちゃったんだ。喋ろうと頑張ってたんだけど、なんでか上手くいかなかったんだよ〜」
「まあ、狼と人間じゃその辺の構造が違うからしょうがないわね」
なんか、こうやって喋れるのも何だか不思議な気分だけど、すっごく楽しい!
「これでタケルともいっぱい遊べる!サッカーも一緒に出来るね!」
僕はタケルに抱きついた。
「お、おう!」
今までは飛びついて抱っこしてもらってたのに、今度は僕も抱っこできる!
あとそうだ!人間になったらやりたかった事…
「お母さん!僕、プリン食べたい!一口じゃなくて一個まるまる!」
「ちょ!クー!夜だぞ!寝る時間だぞ!ズルイぞ!」
「そうねぇ…」
お母さんはちょっと困った顔してる。タケルは最後に本音が出ちゃってる。
「…折角だし、持ってくるわよ」
お母さんをじっと見てたら、なんだか目をキラキラさせながらオッケーしてくれた!
「やったー!」
「ずるい…」
少しすると、お母さんがプリンを持ってきてくれた!
「はい、お待たせ。召し上がれ」
お皿に乗ったプリンが僕の前に置かれる。
スプーンの使い方も大丈夫!タケルの見てて覚えてるもん!
「いただきまーす!」
まずはスプーンで一口分をすくって…。うーん、プルプルしてて甘〜い匂いがして、おいしそー!
そして、そのまま口の中へ…。
「うーん…おいしい!甘くてトロってしてて最高!」
口の中に甘いのがブワッて広がって、トローって溶けて、前にタケルに一口もらった時よりも凄く美味しく感じる!
そして二口目、三口目。おいしい!人間最高だよ!
ふと、横に居るタケルに目が行く。
テーブルに肘ついて、ほっぺたを手にのせて不貞腐れてた。
「タケル?」
「岳琉ったら不貞腐れちゃって。毎日食べてるじゃない?」
「べ!べつに不貞腐れてないもん…」
なんか怒ってるような感じのタケル。
そっか…大好物だもんねタケル。
僕ばっかはしゃいでてもつまんない。タケルが笑っててくれないと、プリンも何だか美味しくなくなってきた。
「タケル?」
「あ?がぼ!?」
不貞腐れながらこっちに向いてくるタケルの口に、プリンの乗ったスプーンを突っ込む。
やっぱりタケルと一緒がいい!
「一緒に食べよ!」
「…うま…って、いいよ。一個食べたかったんでしょ?」
「いいの!タケルと食べたいの!そうじゃないと人間になった意味がないんだから!」
「ふふッ、クーちゃんは人間になっても岳琉が大好きなのね」
「当たり前だよ!」
僕はタケルの口と僕の口と交代でプリンを乗せたスプーンを入れてく。
うん。タケルと一緒だとプリンがもっとおいしい!
「岳琉、お兄ちゃんとしてちゃんとクーちゃんの面倒見るのよ?」
「ん?お兄ちゃんって…、おー!クーは弟か!」
「えー!タケルの方が弟って感じなのになー。毎朝僕が起こしてるし」
「クーが起きるのが早いだけだよー」
「遅刻ギリギリのくせにー」
プリンを食べ終わったから、タケルとじゃれあう。
「はいはい!もう遅くなっちゃったから二人共歯磨いて寝なさい!クーちゃんの歯ブラシはタケルの予備があるからそれ出しとくから」
「はみがきって、タケルがいつも口を泡だらけにしてるやつ?」
「そーだよ」
「はじめてだ!はみがき!」
・・・・・
「口の中がスースーする…」
ちょっと狭いけど、タケルと一緒にベッドで寝てる。
タケルはすっかり熟睡モードだ。
何となく分かるんだけど、多分ずっと人間のままじゃない。
どのくらいで戻っちゃうか分からないけど、ずっと人間のままがいいな…。
そう思いながらタケルのおでこに僕のおでこをくっつける。
だんだんと眠気が襲ってきて目を閉じた。
連続更新最終日!字数ちょっと多め!
とりあえずクーちゃん人間になった初日が終了しました。
2日目からどうしようかと色々考えて、早めに続きを投稿できるように頑張っていきますので、よろしくお願いします。
でわでわノシ