プロローグ
僕は狼。
ふさふさの毛皮に覆われて、四つの足で歩く狼。
今日は、そんな僕の初めての外出。と、言っても今まで怖くて引き篭り気味だった僕を、お母さんが無理矢理連れ出したんだけどね。
出てみると意外と怖く無くて、明るくてすっごい広いのにビックリした。
見た事の無い物ばかりで好奇心を擽られて、嬉しさの余り僕は夢中になって走り回った。
どの位走り回ったろうか。突然何かに足が引っ掛かって転んでしまう。
゛痛い゛
それに気付くのに少し時間が掛かった気がした。
お母さんが僕の様子を見て、慌てて駆け寄って来て僕の足に噛み付いてる変な奴をどかそうとしてくれる。
けれども、ビクともしないそいつにお母さんは、とうとう諦めて僕を置いて行ってしまう。
必死に叫んでもチラリと見るだけで、姿が見えなくなっても僕は叫び続けた。
日が沈み、夜が明ける。噛み付かれてる左の後ろ脚の感覚が殆ど無くなってきて、叫ぶ元気も無くなっていた。
゛僕…死ぬんだ…゛
半年しか生きてないけど、何と無く悟った…
゛絶望゛
夜になるとお腹が空いて空いて、立ち上がる気力すら無くなって、足の痛いのも無くなっていた。
夜が明けたのも薄く開いた瞼の間から差し込む光で解る程度。
まだ明るいうちだけど、足音が近づいてくる。
ゆっくりとした足音と、小刻みな足音。
お母さんや兄弟達とは全然違う足音。
゛僕…食べられちゃうのか…゛
何処かお母さんを信じて待っていた心が完全に途切れて、死を迎え入れた瞬間だった。
そして僕は、ゆっくりと意識を手放して、生きる事を辞めた。
読んで頂きありがとうございます。どの位まで続けられるかは解りませんが、長編にチャレンジしてみようかと書き始めてみました。更新のペースはマチマチになってしまうかと思いますが、付き合ってやってみてください。