1話
迷宮都市ユトゥリス。そこの中央にある100年前に空より降りて突き刺さった贖罪の迷宮の最下層には、人が神に赦されるために必要な青い血が湧き出る聖杯があるとされ、それは人が死後天国に行くために必要な物だと神話で伝えられている。
贖罪の迷宮は危険な魔獣が跋扈し、一歩踏み入れるだけで危険が伴う。
そんな迷宮に潜る者を、人々は敬意を込めて探索者と呼んだ。
アロン・ブリンクリーもその探索者のひとりだ。
魔法銃を使うガンマンだが、他にも手持ち大砲や実弾銃も使う銃火器のスペシャリストでもある。
そんな彼は今、酒場で正座させられていた。
幼馴染のカイム・オフラハティが呆れた様子で彼を責める。
「あのなアロン、僕もゴライアスじゃないから君のそのカスっぷりには黙っていた。そう、僕だけ迷惑する分にはね?」
「はい…」
申し訳なさそうに下を向くアロンに、パーティーメンバーのドーン・タヴァナーはアロンを責める。
「私の事一番好きって言ったのにミュンヘル薬屋の子にもそう言って付き合って、指輪までプレゼントしたとかホントありえない!」
「どっちも愛してて…」
「黙って。もう喋りたくない」
「はい…」
それに続くようにルシル・フィアロンもアロンに怒りをぶつける。
「ボクから借りた120万ヴルはいつ返してくれますか?」
「あの…タバコ代と酒代で今金なくて…」
「じゃあ体でも売って返して?」
「ッス―…」
最後のトドメにフレディ・ブラックストーンがアロンに言う。
「お前、この前俺に魔獣を押し付けたよな?その前はルシルちゃんを囮に使っただろ。お前はパーティーメンバーを何だと思ってるんだ?」
「大事な仲間ァ…ですか?」
「なんで疑問形なんだよ。ここで殴り殺すぞ」
一通り責められたところで、カイムが残念そうにアロンに言う。
「アロン、君はもうこのパーティーには入れてられない。………謝らないぞ」
「はい…お世話になりました…」
カイムの言葉で他の皆が溜飲が下がり、席に着くと静かに食事を始める。
アロンは皆に頭を下げてから酒場を出ていった。
その様子を見送った全員は、示し合わせたように同時にため息をついた。
「あいつは本当に腕が立つんだがなぁ」
「やめてよフレディ。…彼の代わりになる後方支援できる奴を探さないとなんだから。あーあ、私だけじゃ魅力がなかったのかな…」
「む、ドーンは悪くないです。ボクより胸大きいし、魅力的ですよ」
「ありがとルシル。…それで?幼馴染さんはどう思ってんの?」
ドーンに話を振られたカイムはエールを一気飲みしてから大声で叫ぶ。
「僕だって嫌ださ!あいつはクズでカスで救いがないけど、誰よりも優秀なガンマンさ!あいつは言ってた!ユトゥリス一番のガンマンになるって!実際そうだよ!なんであんなゴミなんだ!昔は…昔からか。おい!もう一杯!」
荒れに荒れるパーティーリーダーに付き合い、アロンの居たパーティー、『古き黄金』は全員ヤケ酒をした。