表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ラクシャ公爵家の日常

ラクシャ公爵主催。全く為にならない恋の相談室

作者: 呉月娘

よろしくお願いいたします。

「ハングリッド公爵、あの娘を手放すべきだ」

私はラクシャ公爵だ。

人の恋路に手を出す野暮なことはしない。


しかしながら、

しかしながらだ。


午後のお茶を飲みながら、失敗をした人間として6歳年上のスペンサー・ハングリッド公爵に忠告をしてあげる。


「何故だい?」

ハングリッド公爵は不思議に言う。


「愛する娘だ。手放すなんて、出来やしないよ」


その発言にゾワッとしてしまう。


愛する娘…愛する…娘…。


コイツ、マジか?


「氏素性もはっきりしない娘だ」


ヴァセル侯爵の人身売買。『恋を買う』店の『商品』であり愛人候補だった娘を、自分の『娘』にしやがってからに。


お前は摘発に行ったよな?


歪んだ関係は話を歪ませていくぞ。私でも分かる話だ。嫌というほどに実体験で経験したからね。


「ヴァセル侯爵の養女であり、我がハングリッド公爵家の未来の女公爵だ。氏素性ははっきりしている」


前々からヤバさを感じていたが、マジでコイツはヤバいことを言ってきた。


女公爵…?


跡を継がせる気か?そんなことしたら、


「君は利用されている。ヴァセル侯爵家はハングリッド公爵家を乗っ取る気だっ

!!」


「僕は娘に貢いで、利用されて生きて逝きたい…」

ポッと顔を赤らめて言うハングリッド公爵を見て、


ゾワゾワっゾワゾワっ。


寒気が頭の先から爪の先まで駆け抜ける。


銀髪に赤い瞳。姉であり、皇太子の唯一人の妻でレミアの弟だからか。人外を思わせる美貌なのに、考え方がキショい。


残念な奴だ。

本当に残念な奴だ。


こいつの180センチの体を構成するために必要なのは、阿呆の成分だったか。


必要なんだな。


阿呆の成分。


「だけどね、ハングリッド公爵。娘は妻になれないんだよ?」


娘じゃなくて、妻だろう。お前に必要なのは。


「君は肉欲に走り過ぎだよ、エルシード。僕は娘を愛している」


娘…他の男が触れただけで、そのドレスを燃やすのが娘に対する愛?


嫌だ怖いっ!!何その発想っ??


お前、男に触れられた姿を見た日には湯を持ってくるように使用人に指図して、その娘を怒り狂って水攻め並みに洗ったと聞いたぞ。


そんなのは父親の愛じゃない…。


もっとさ、父親の愛って純なものだろう。私が言うのも何だけどさ。


「僕は彼女に素敵な男の子を紹介して、幸せになって欲しい…」


無理だよ、ハングリッド公爵。

そんな願望は肥溜めに捨ててしまえ。 

君は君以外の男を認めないほどに、娘を愛している。



「…君を愛したらどうする?」

茶に口をつけながら質問をした。


「娘が僕を愛するはずはない。僕は娘が手に入っただけで充分に幸せだ」


「もし奥さんになりたいといったら?」

「だから無いって。そんなことしても彼女に何の得もないだろ?」


低い。


恐ろしいほどの自己肯定感の低さ。


パタパタと手を振って、笑顔で言うなよ。

悲しくなる。



「僕は娘に公爵の地位をあげるし、僕が死んでもハングリッド公爵の地位は一代限りではあるが彼女のものだ。生活の面倒は見るよ」


「あの娘はね、スペンサー…」 


一度今の関係を壊して捩じれを無くすべきだと言いたいのに、


「望んだ未来を視ることは出来ないから、僕は彼女には何も視ることはしないようにしている」


「スペンサー…」


「ラクシャ公爵、僕に期待させるな。頼むから余計なことを言って、僕の夢を壊さないでくれ」

赤い瞳を涙に滲ませながら、彼に懇願される。


「あのは僕の幸せそのものだ。だから頼むよ。あの娘を手放すことは出来ないし、何も願わないから壊さないでくれ」


「君はいいのかい?」


「僕はあの娘の人生に『いってらしゃい』が言えれば満足だ」

砂糖菓子を彼は摘み、

「エルシード、人の心配よりも自分の心配をすれば良い。未来を視ることが出来て、現実認識を改変により誤認させることが出来るハングリッド公爵の忠告だ」

私の口に入れてきた。


「スペンサー…」

さてとと彼は言い、

「君は善き人だよ、エルシード。近い将来、君以外の人の現実認識を歪ませる僕を許してくれ」

話をぶった斬るように立ち上がり、

「お茶をありがとう。ラクシャ公爵」

茶の礼を言って踵を返した。


その姿を見送りながら思う。


どうして私は、恋愛相談が上手く出来ないないのだろう?


絶対にあの娘、スペンサーのことを『女』の目で見ているし。スペンサーも好きなはずなのに。二人は両片想いなのに。


二人の愛の架け橋になりたいだけなのに。


「妻に慰めて貰おう…。世間は私に優しくない…」


自分に優しい妻に慰めて貰うのが一番いいと決意した。


噛めば砂糖菓子は甘いのに、知り合いの叶えようとしない恋は胸に苦い。


幼妻同盟組みたいのに…。


ポリポリと一人砂糖菓子を頬張りながら、上手くいかないと悩まずにはいられなかった。






※ハングリッド公爵は作者を悩ませながら、最終的に3部構成で書くことにしようかとしているのは本当に本当に裏の裏事情。


ハングリッド公爵、完全に完成させます。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] …この国大丈夫か?(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ