表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様は財宝竜  作者: 久遠
23/50

第二十一話 楽園残滓機構③

『現在、この……エレ……ターは使用する……とが出来ません』


 固く閉ざされた金属製の扉の前で、三名と一体は立ち往生していた。


「うーん、ここもダメっぽい。いくつもあるのに一つも使えないとは……」

 

 レノラが左右を見渡す。そこには同じような扉が設置されているが、どれも固く閉じたままで動く気配はない。クローディアも目の前の扉をノックしてみるが何も反応は帰ってこなかった。

 

「弱りましたわね。アインさんが目指す場所に行くためには、これらの内どれか一つでも通る必要がありそうですのに。そもそもどういう仕様のものかもわからないのですけど……。レド、貴方何か分からないかしら?」

「んー……、昇格機と同じようなものじゃないですかね」

 

 話を振られたレドが暫く考えた後にそう答える。


「昇格機……。大灯台にあったアレですわよね?」

「ええ。レバーの代わりにこの横についている矢印を押すと扉が開いて、中に入れば上か下まで連れてってくれる、みたいな……。いや、多分ですけど。アイン君が上向きの方の矢印を押してますし」

 

 レドが視線をやった先では、アインが指で矢印を連打していた。無機質な動きだが、何となく苛ついているようにも見える。


「なるほどそういう仕組みの機械かこれ」

「機械?」

 

 リノラがポツリと発した聞きなれない言葉にクローディアが首を傾げた。


「ほら、時計みたいに内部の仕掛けである程度勝手に動いてくれるヤツ。東の国ではカラクリとか言ったかな? こういうのはたしかゴブリン達が得意なんだけど」

「ゴブリン……」

 

 クローディアは頭の中に緑色の肌と尖った鼻が特徴の小人の姿を描く。そして過去に出会ったことのあるその内の一人が、音の出る不思議な箱を修理していたことを思い出した。確かに彼らであればある程度自動で動くようなものは作れるかもしれない。


「なるほど……、ということはこの遺構は元々彼らのものですの? 人形達も彼らが作ったと?」

 

 でも何か違うような気がする。そもそも彼らの元の文明であるならもっと家具や生活用品がこじんまりしたサイズに収まるはずだ。だが自分が目にしてきたものは、まるで人間と同じ大きさの存在が扱うような代物ばかりだった。いやむしろこれはひょっとして人間達の……。と、ぼんやり思考を巡らせたところで自分の問いに答えるレドの声が聞こえ、現実に引き戻される。

 

「いえ、彼らが機械に詳しくなったのはこの世界に来て欠片遺構から発見された別文明の遺物を取り扱うようになってからです。元々好奇心旺盛で手先が器用だったことが機械と上手く合致して、熱心に取り組むようになって今に至ります」

「今じゃ、『分からない機械の事は研究者かゴブリンに聞け』と言われるくらいだね。とまあそれは今どうでもいいんだけど。どれもこれも使い物にならない以上は別の方法を取るしかないなー」


 リノラが面倒くさそうに小さなため息をついた。


「別の方法……?」

「きわめて原始的な方法ですねー……。ほら、アイン君もそっちの方向かってますし……」

「あー……」


 レドが指を刺した先の光景を見て、クローディアもため息の理由を理解する。それは目の前の機械を使うことをあきらめたアインが階段のある方面へと向かっていく姿だった。



───────


「どこまで行くのでしょうこれ……」

「相当大きな建物でしたから、一番上まで行くとすると恐らく二十階以上じゃないですかねー……」

「……よし、飛びますわ」

「あっ、一人だけズルは禁止だぞクロちゃん」


 クローディアが背中から竜の翼を出して飛んだ瞬間、リノラが彼女の尻尾を掴む。


「こらリノラさん、尻尾を掴むのは禁止ですわ!! 破廉恥ですわよ!!」

「うおおおおお!! 振り落とされるぅ!! わー!?」

「何やってんですか二人とも……。戦闘用の人形と遭遇する可能性ありますし、迂闊に飛ぶのは駄目ですよー」


 ある程度飛んだところで尻尾が左右に激しく振られ、思わず手を離したリノラが落下していった。やれやれといった様子でレドが駆け上がってくる。


「あててて……。まったくクロちゃんってば乱暴なんだ……うん? 何だ君ら?」


 リノラが起き上がった時、何やら多くの人形達に囲まれていた。武器は持っておらずそのまま戦闘という訳ではないようだが、じっとリノラを見つめている。

 次の瞬間、彼女を担ぎ上げてその階のフロアへと連れ去ってしまった。


「うわあああああ!? わっしょいされてるー!! 胴上げだーい!!」

「リノラさんが連れていかれたー!?」

「見失う前に追いますわよ!!」


 上ってきたレドの横にクローディアが着地する。そのまま二人で人形達の後を追った。緊急事態とみたのかアインもそれに続く。


「たーすーけーてー!! なんか拘束されたー!?」


 一時見失ってしまったものの、リノラの無駄に大きな叫び声で即座に見つけることが出来た。閉じた大型の扉の向こうから彼女の声が聞こえてくる。


「この向こうみたいですね……。んっ、駄目だ開きそうにない……」


 レドが扉の窪みに手をかけて横に引っ張ってみたがびくともせず、アインも扉の横についた装置を操作しているが一向に開く気配がない。

 

「少し待ってなさい、リノラさん!! 今、扉を破壊して……」

 

 クローディアが拳を構えて気を集中させる。


「あっ、ちょっと服脱がすのは駄目だって……。すっぽんぽんにまでする普通?」

「えっ」

 

 打ち込もうとしたところで手が止まった。瞬時にクローディアとレドの顔が真っ赤になる。


「乙女の素肌に酷いことをするのはリノラード条約で禁止されておりまーす!! そんなにお熱いものをかけないでくださーい!!」


 非常に気まずい。リノラの言葉自体は完全にふざけたものだがどうやら脱がされているのは真実のようだ。


「お嬢様……。えーと、早く……」

「レドの教育に悪いのでこれ以上は……」

「何、意味の分からないこと言ってるんですか!? そんな場合じゃないですって!!」


 とんちんかんなやり取りをする扉の前の二名。そのうち閉じ込められた一名の声が本気の焦りのものへと変わる。


「うぉい!! なにこれなにこれ、これ絶対やばいって!! それを何に使うつもりなのさ!?」

「ほらなんかそういう感じのアレと違う声じゃないですか!! というかそれならむしろ助けないといけないのでは!?」

「ええい!! 仕方ありませんわね!? レドは目を閉じておくこと!!」

「いや間に合わないってコレ!! ぐえーっ!? 残念、私の冒険はこれで終わってしまった!!」

「リノラさーん!!」


 悲痛な? 叫び声がその場に響く。暫くしてから扉が開き。


「あ、うん。なんか色々あったけど無事ですわボク」

「さっきまでの悲鳴はいったい何だったっていうんですか!?」

「身ぎれいになってますし、汚れてた体をお湯で清潔にしてもらっただけ……?」


 クローディアの言葉通り、リノラの体や髪は湯で洗われたかのように綺麗になっていた。服も着古した汚い物から青いローブのような綺麗な服に変わっている。ベルトだけ自分でつけ直して、腰に剣が下げられるようにしており。


「腕に針をブッスリ刺された上に謎の液体注入されたけどね」

「それ普通に大惨事では……? 体は何ともないんですか?」

「むしろ軽いくらい? 二日酔いも消えてるしよくわからないなー……」


 レドの前で軽く肩をまわすリノラ。クローディアが開いた扉の内を覗いてみたが、お湯が出る機械や謎の液体が入ったガラスの入れ物等の良くわからない設備があって、そこで人形達が先ほどの作業の後片づけをしている以上の事は分からず。


「人形達は業務を遂行していただけ、と考えるとやはり害ある行動はしていないと見るべきなのかしら……」

「分かんないことだらけだし、取り合えず階段まで戻ろっか」

「ですね。アイン君についていけばそれらについても分かるかもしれませんし。お嬢様もそれでいいですか?」

「ええ、ここで色々と考えたところで答えは出ないのでしょうし。彼にまた案内を頼みましょう」


 一行は来た道を戻っていく。時々またリノラが軽口を叩き、それをクローディアが諫め、レドが宥める。そんな緩いやりとりを繰り返しながら。




『ジジジジジ……。シンニュウ、シャ……』


 

 

 遺構の奥で大いなる脅威が自分達を待ち受けていることを知らぬまま……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ