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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

洋上の幼女が養生して養女になる話

長編になる可能性がないこともない。

 おかしいな。

 なぜ僕は海の上に浮かんでいるんだろう。

 どうして僕はイカダの上に乗っているんだろう。

 防波堤に釣りに来たけど全然魚が釣れなくて昼寝をしていたんだ。

 そういえば、なんか凄く揺れてた気がする。

 もしかしてそれで津波に飲み込まれちゃったのかな。 

 だとしたらこれは凄く幸運なことなんじゃないか?


 というかこのイカダはなんだろう。妙にしっかりしているなあ。いや、だからこそ僕を助けてくれたのかもしれない。

 

 こ、これは…!

 イカダに僕の釣りセットが引っ掛かっている!

 ちょうどいい、助けが来るまで釣りでもしていよう。


 

 すごい鮮やかな魚が釣れたけど、なんだこれ。

 太陽の光かと思ったけどこれ、光ってるよね?新種かな。

 背に腹は変えられないし、食べようかな。

 まあ、お腹壊してもトイレには困らないのが救いだよね。

 それにこれって僕が釣った魚の中で1番大きいんじゃないかな。 

 よし、食べよう!天の恵みに感謝!

   

 

 デリシャス。ボーノ。きっと全てに当てはまる。言葉は違っても美味しいという感覚自体は共通しているに違いないと僕は思った。



 それから僕の主食はライトフィッシュ(仮)になった。

 海で拾った鏡で火を使い。海水を使って塩を作る。

 ただ、暇つぶしで来ただけの釣りで結果的にこんなにもサバイバル力が鍛えられるとはね。

 今では刺身に焼き魚干物だってお手のもの。

 幸いここ魚無限にこの一帯に湧いてるしお腹を壊したこともない。あと食べると元気が出る。

 家に帰れたらこの魚を使った飲食店でも開こうか。


 


 今、太陽が沈みました。これで僕が目覚めてから20回目です。

 なんで生きてんだろ……いや、これは哲学的な問いではなく生物学的な問いなのです。

 僕のご飯はお魚と海藻さんです。水はそろそろ切れそうです。

 助けてください。お礼は沢山釣ったお魚でどうでしょう?


 それにしてもこの身体は頑丈だ。こんな潜在能力があったならどうして体育の時に熱中症になったのだろうか。

 こんなに日が当たっても全然痛くならない肌も強い。もはや爬虫類になってしまったのではないだろうかと思ってつねってみるとやはり人間の肌だ。あと異様に白い。

 今日も無事に生きていられることに感謝します。南無ー。




 なにしよう。ここは海の上なので釣り以外何もすることがないね。

 スマホもない。本もない。話し相手もいない。

 嗚呼、死ぬなり。

 我が家が恋しい。自動車の排気ガスが恋しい。全てが恋しい。

 家に帰ったらまず髪切りたいな。すごい伸びてる気がする。

 それから柔らかいベッドで寝たいな。丸太は硬くて痛いよ。

 

 

 さて、目が覚めたら豪雨だった。

 凄く雨が降って前が見えない。波も高いし危なくない?

 波に飲まれた。息があまりできない。死にそう。

 でも前回も生き残ったし大丈夫な気がする。ごぼぼ………





 心地の良いリズムの振動を感じる。

 おや、どうやら人におぶられているらしい。

 お礼を言わなくちゃいけないんだけど、睡魔が襲ってきた。

 久しぶりに人肌に触れたせいかとても安心する。

 この背中、気持ちいいなぁ。お礼は起きたらでいいよね。


 

 


 知らない天井だ。あと、背中が柔らかい。僕はベットで寝ているのか!

 ああ、なんて気持ちのいいベッド。ここで一生暮らしたい。

 

 「あ、目が覚めたのね!」


 ベッドで幸せを噛み締めてぬくぬくしていると声をかけられた。

 可愛い女の子だ。

 あ、何か言わないと。


 「ぁ……ぁぁ…?ぁぁぁ。」


 声が出ないや。

 どのくらい漂流してたか覚えてないけど随分長いこと声を出していない気がするから枯れたのかな。

 落ち着いてゆっくり言ってみよう。


 「ぁぁ…ぁぅぅ……ぁ」


 駄目だ。かすれた音しか出ない。


 「大丈夫、今無理して喋らなくても良いのよ。あなたもう二日も寝てたのよ。今は三日目の朝、とにかく目覚めてよかったわ!」


 ああ、だからこんなにも日差しが気持ちいのか。

 そして目が覚めると美少女がいたなんてラノベの主人公気分。

 

 「今、呼んでくるから待っててね!」


 元気よく部屋を飛び出していく。元気な娘だなぁと思っていると、すぐにお父さんを連れてやってきた。

 少女の顔を見た時にも思ったけどここはどこだろう。お父さんは金髪できっと少女のきれいな髪はお父さん譲りなんだろう。

 しかし、僕はどこか外国にでも漂着してしまったのか。いや、それにしては少女の日本語はとても流暢で日本人としか思えない。

 いやぁ、それにしてもお父さんお顔が整っていらっしゃる。そりゃこんなにも可愛い娘さんも生まれるというものですよ。   


 「目が覚めたようだね。二日間も意識がなかったから心配したよ。」

 「あ、この子声がまだ出ないみたいなの。」    

 「そうなのか。じゃあ詳しい話は君が元気になってからにしようか。今はここでしっかり休んでくれ」

 

 なんと、ここの家の人は天使かにか何かだろうか?漂流していた僕をこの暖かいベッドまで運んでもらうどころかここで養生させてもらえるなんて……!

 恩が大きすぎてしばらくは返しきれそうにないね。

 まずは魚をたくさん釣ってこよう。あの漂流期間、昼寝か釣りしかすることがなかったから釣りに関してはプロの域にいると自負している。

 

 「じゃあじゃあ、その間この子の面倒は私が見させて!早くお友達になりたいの!」

 

 女の子がお父さんに迫ってる。

 「まあ待て。君、娘はこう言っているが構わないかな?」


 もちろんです!あ、声が出ないんだった。僕は縦に頭を振って意思表示する。                 

 それにしても『この子』って。

 確かに僕は身長も低くて童顔だったことは認めるけどそれでも身長は160あったし、れっきとした高校生なんだけどなぁ。

                    

 でも日本人は外国の方から見ると若く見えるらしいからね。                        

 まあ、声が出るようになったら改めて自己紹介をするとしよう。

 

 「そうだね、女の子同士そのほうが気も使わなくていいだろう。」

 「やった!私レオナっていうの。よろしくね!」


 うん、よろしく。自己紹介はまた今度。 

 っておや?聞き間違いだろうか、とても不穏な言葉が聞こえたぞ?

 僕が女っておいおい。童顔だとは言われたことあるが女顔だとは言われたことないぞ。

 僕にはな、この身長には似合わない立派な………ん?

 ……………………んん?

 …………………………………………んんん?

 ないぞ。ないぞ。僕の僕が僕であるための象徴がないぞ!

 声が出なくて助かった。きっと声が出せたら大声で絶叫していたことだろう。

 まさか、波にぶった切られたとでもいうのか…

 

 少し呆然としていると少女もといレオナちゃんに抱き着かれた。

 美少女に抱き着かれた僕は先ほどのダメージもあり魂が抜けた。


 「ああ、とっても可愛いわ!私こんな妹がほしかったの!」

 「うん、髪の毛もフィーネのような綺麗な銀髪だからこうしていると本当の姉妹みたいだね」


 え、僕って銀髪になってたの?いやいや、僕の生来の黒となんかの白と海の青が混ざって銀髪っぽくはなってるかもしれませんけど。いやね、僕の髪を綺麗って言ってくれるのは嬉しいけどそこまで大袈裟に言われてはちょっと困ってしまいますよ。

 波に飲まれただけで変わりすぎじゃない?

 

 そうしてしばらく抱き着かれているとドアがノックされたのでお父さんがドアを開けると正真正銘の綺麗な銀髪のこれまた綺麗な女性が手にお盆を持って入ってきた。

 

 「あらあら、もう仲良くなったのね」

 「うん!でも髪のおかげかもしれないけどなんか妹ができたいみたいな感じなの!」


 こんな不審者の僕を妹として見てくれるなんて……!

 もう僕は女でいいです!そしてレオナちゃんの妹になります!よろしくお姉ちゃん!

 

 「あら、いいわね。仲が良いのはいいけどご飯持ってきたからちょっと離れてくれるかしら?」

 「じゃあ、私が食べさせてあげる!この子は家にいる間は私がお世話することになったの!」

 「そうなの?ふふ、じゃあ任せるわね」

 

 レオナちゃんはお母さんからお盆を受け取るとレンゲでお粥を掬い、僕に差し出した。

 こ、これはこれは。まさか美少女のあーんを体験できる日が来るとはね。人生何があるかわからないね。

 

 「はい、あーん…」

 「んん…」

 「可愛い!なんて可愛いの⁉︎はい、もう一口、あーん…」

 「あんん…」


 美味い。

 今まで食べた卵雑炊の中で1番おいしい。

 これは食が進む。

 レオナちゃんがどんどん差し出してくるけどどんどん食べられる。そして完食してしまった。

 はぁ…満足です。

 魚を持っていくだけでは到底恩を返せないぞ。

 これは僕が編み出した至高の干物でお返しするしかないな。


 「よく食べたね!お腹空いてたのかな?」

 そうだね。まともにご飯を食べるのは久しぶりだ。

 だからかな、眠気が……いかん。このまま寝るのは申し訳なさすぎる。これではただの図々しい乞食ではないか。

 

 「あ、眠たくなってきたのかな?いっぱい食べたしね!」


 バレてしまった。

 んんんんんんんんんっっっ!

 目よ〜閉じるな〜意識よ〜頑張れ〜!


 「頑張って起きてなくてもいいんだよ?色々あったから疲れたよね。ごめんね、はしゃいじゃって」


 そんな…あなたのお陰で凄く安心できた。

 ずっと1人だったから寂しかったのかな。

 ああ、もしかしたら女の子になったからなのかな?

 だから……ありがとう。ここがとても居心地がいいから眠くなっちゃったのかも。

 ああ、眠い。ごめん、寝るね…

 

 「おやすみなさい。また明日ね。」


 うん、また明日。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 「寝ちゃった。」


 なんて可愛い寝顔なんだろう。

 私多分1日だって見ていられるわ。

 こんな可愛い子と一緒にいられるなんてお父さんには感謝しないとね。

 

 2日前、お父さんが小さな女の子を拾ってきた時には驚いたわ。どこから連れてきちゃったんじゃないかって。

 だってその子、凄くお母さんに似てたのよ?特に艶のある銀髪なんてお母さんそっくり。変ね、お母さんはまだ生きてるのに。聞いてみるとどうやら砂浜に打ち上げられていたらしい。


 寝ている間も寝顔を眺めてたけどその時は可愛いという気持ちよりも心配な気持ちで落ち着かなかったわ。

 でも3日目にやっと目を覚ましたの。

 疲れのせいなのかわからないけど声がまだ出ないらしい。

 

 でもね、この子の目が感情を伝えてくれるの。

 1番輝いていたのはお粥を食べた時かな?すごいキラキラしてたの!分かる、私もお母さんの料理は毎日食べてるけどすごく美味しいよね。だから私も調子に乗ってどんどん食べさせちゃったけど全部食べてくれたわ。

 

 あと、私が仲良くなったってことをお母さんに言った時も凄くキラキラしてたわ。

 早く喋れるようになってたくさんお話ししたいわ。


 はぁ、本当に妹になってほしいなぁ…


 

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