講義の項 魔装強化について
アロウの固有術式である、守護系魔法・魔装強化ですが、ここで一度解説させていただきます。
説明だけでまるまる一話使うわけにもいかなかったので、本文内では雑に進みましたから、補足です。
★魔装強化について。
守護系魔法・魔装強化
その正体は、
①体の表面に留める特殊な守護系魔法
②守護の重ねがけ
この二つを合わせた技術。
まず、
①通常の〈守護系魔法〉では、〈異なる魔力同士は反発する〉という、魔法の基礎理論に基づき、本来の強化よりだいぶ弱体化している、というのが前提。
これは、対象が自分だろうと他人だろうと同じで、〈本来身にまとっている魔力〉と〈付加させようとする魔力〉が反発しあうため。
また、
②複数の守護系魔法の重ねがけも、同様の理由で弾かれてしまうためにかけることが出来ない。
これを解決させるためにアロウが考え出したのは、体の外側に限定して作用させ、擬似的な守護状態を作ることで、対象との反発を軽減させるという技術。
①については、体の内部ではなく、外部へのコーティングのような状態にするために、体内魔力との反発が最小限に抑えられる。
②については、流石に同時に複数の守護を与えるのは難しいが、必要に応じて切り替える事で同等の効果を持たせている。
ただし、外部に作用させているために、当然この効果は剥がれやすく、特に、元々が馴染みにくい他者への強化の場合、その効果は一瞬しか発揮できない。
そのため、実際の戦闘では、
「左前腕部でガードの為に土属性付加」
「ダメージを治癒するため水属性付加」
「カウンターで攻撃、右腕に速度上昇の風付加」
「攻撃のタイミングで火属性付加」
「すぐに離脱するので風属性付加」
のような一連の流れを、数瞬で切り替える必要が出てくる。
ここで必要となるのが、〈意識共有〉の魔法。
〈繋魂〉の亜種と言える通信系魔法の一種で、対象と自分の思考を共有することが出来る。
この技術を併用することで、たとえ打ち合わせていてでさえ困難な守護の切り替えを二人の人間間で行える最低条件が出来る。
もちろん、これで誰でも魔装強化が使えるかと言えば、そうはならない。
既にここまでの条件でも、一流と呼ばれる一部の魔法使いにしか困難な条件だが、それ以上に、術者が対象の攻撃をある程度予測出来るほどの信頼関係にあり、そして、その攻撃の一瞬を見極められるレベルにあることが必要となる。
ロボットや戦闘機に例えるなら、他者への強化は、複座式のロボットの操縦に似ていると言える。
〈戦士〉が操縦し、〈魔法使い〉がそれを最大効率でサポートするということだ。
これ対して、自分へ強化した場合、意思共有が必要ない為、多少難易度が下がるかといえばそうでもない。
まず、非力な魔法使いが直接戦闘に関わるデメリット。
それを補うために、体力増加の土系守護を常に掛けておく必要がある。
となれば、常時展開に必要な魔法がさらにひとつ加わることになり、しかも余計な魔法反発をさらに招くことにもなる。
さらに、直接戦闘に加わる緊張やダメージなどを考えれば、むしろ難易度は高い。
先の例えで言えば、単座式の操縦に似ており、タイミングを合わせる必要はないが、その操作は困難となる。
いずれにしろ、精密な魔力制御と戦いのセンスが必要となり、マーマレードが初見で不可能と言い切るのも仕方ない程に、使いこなすことが難しい術式である。




