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第四章)煌めく輝星達① 白き刃

章は変わりましたが、ひとまずは閉会式の続きから。

今後の物語に関わってくる大物たちの登場です

 優勝旗の贈呈が終わると、大講堂の地下にある、舞踏会(プロム)の会場に移る。

ここからは無礼講だ。

もはや段取りもなく、テーブルには豪華な料理が並び、優雅に奏でられる音楽にのりカップルたちが踊る。

あるものは愛を語り合い、あるものは三龍祭の興奮を語り合う。


 だが同時に、卒業後は冒険者として各地へ羽ばたいていく学生としては、来賓の中から支援者(スポンサー)を見つけるいい機会でもある。

冒険者とならず、城勤めの騎士志望の生徒たちも同様だ。

逆も然り。

貴族や有力な商人からしても、将来有望な冒険者に名前を売っておく場でもある。

舞踏会(プロム)といっても、純粋に学生の特権である若い思い出を刻むものもいれば、未来に向けて暗躍する者もいる。

この場の楽しみ方は人それぞれだ。




「あ、ユー君だ。アロウ君、付き合ってくれてありがとぉ~」


 カーレンが本来のパートナーを見つけたらしい。

大きく手を振ってかけていく。

ユー君、か。

あのゴーワンさんの娘で、どこか浮世離れしていて、あれだけ可愛らしいカーレンの彼氏だ。

気にならないわけがない。

カーレンの走り去った方を目で追っていると、


「んんっ。先程はお楽しみだったようですね」

「リ、リリィロッシュ!?」


 後ろから、冷えきった声で睨みつけるリリィロッシュが咳払いをする。


「可愛らしい娘でしたね。確かゴーワン殿の娘さんでしたか。ええ、私など昔の配下、それも顔も覚えていないような下っ端に過ぎませんから」

「いやいやいや、誤解だよ! 彼女とは代理パートナーで一緒になっただけで、今も彼氏の所に帰ったんだって!」


 Bランク(高位級)の魔物と対峙した時以上のプレッシャーを感じながら懸命に言い訳を考える。

いや、実際にリリィロッシュはBランク(高位級)どころか、本来ならAランク(超位級)の実力を持つ魔族なわけなのだけど。


「ふふ、冗談ですよ。まぁ、アロウの慌てた様子を見て溜飲(りゅういん)が下がりました。ここからはきちんとエスコートお願いしますよ?」

「はい、分かりました!」


 これ以上ないほど綺麗な直立をして返事をする。

そしてぎこちない手つきで手を差し出すと、リリィロッシュも握り返す。


「えっと、リリィロッシュ。僕と踊ってくれるかな?」

「そういうのは手を差し出す前に言うことですよ? ええ、喜んでお受け致します、アロウ。」


 そして僕達はダンスフロアに消える。




「ラク様ぁ、メイシャと踊ってくれますか?」

「……いや、剣の修行ばかりでこういうのは不得手でな」

「大丈夫ですよ、メイシャがリードしますから!」


 このカップルは、いつもこういう感じなのだろう。

丁度音楽の切れ目で、僕達はたまたま合流できた。


「……リリィロッシュ先生のお怒りはとけたみたいだな」

「くっ、見てたんなら助けてよ!」


 最近、ラケインは、僕に対して口数が増えた代わりに扱いが軽くなっている。

嬉しいような、悲しいような、というやつだ。

そうして僕らが話し込んでいると、


「よう、ラケイン。アロウ。二人共やるもんじゃないか、こんな美人さんをパートナーにしてるなんて」


 リュオ、いやオーガ将軍がやって来た。


「よう、じゃないですよ。何がエティウの学生ですか。しかもリュオだなんて偽名まで使って」


 この人物の事は、最初から気持ちのいい友人のように思っていたが、身分を隠していたのだ。

その事に抗議すると、


「ん? 何も嘘はついていないぞ。確かに、俺はエティウの将軍ルド=オーガに間違いないが、同時に冒険者のリュオ=クーガだ。気持ちの上ではこっちが強くてな。親父と不仲で家を飛び出したんだが、何の因果か、名を挙げたせいで将軍なんてやらされてるんだ。それで本名の方がバレて、こんなことになってるわけだ」


 バツが悪そうに頭をかきながら説明する。

西の四大国・エティウが誇る無敵の将軍、“白獣の牙(グランファング)”ルド=オーガ。

最強の戦士の名にふさわしい数々の偉業が伝わるが、そのひとつに、冒険者としての逸話も含まれている。

兵士であると同時に冒険者でもあり、パーティ、そして個人としてもSランク(伝説級)冒険者の称号を持つ、まさに戦士職の理想像なのだ。

しかし、まさかリュオの本名が、あのルド=オーガだったとは。


「そんなことより、後ろの女性達を紹介してくれないかな? 見たところ、二人共かなりできそうだが」


 自分の事情をそんなこと扱いして、リュオがリリィロッシュたちに興味を示す。


「あぁ、そうですね。ご紹介します。こっちがメイシャ。僕達のパーティの治癒術師(ヒーラー)です。それでもう一人が魔法担当のリリィロッシュ。学校での立場上、僕達の担任となっていますが、パーティの一員でもあります」


 リュオは、二人の紹介を聴きながら、あごに手をやり考え込む様子を見せる。


「ふむ。アロウにリリィロッシュ、高位の魔法使いが二人も。しかも身のこなしから見るに、二人とも剣もかなり出来るな。腕のたつ剣士のラケインと治癒術師(ヒーラー)のメイシャ。ノガルドでこれ程の攻撃力を持った冒険者と言えば……。そうか、君たちが《反逆者(リベリオン)》というパーティか」


 なんと国外の、それも伝説級の武人に名前を覚えてもらっているとは。


「僕達のことを知ってたんですか!?」

「おぉ。冒険者たるもの、腕っ節だけじゃなくて情報も知ってなければな」


 そう得意げに腕を組み胸を逸らす。


「……何言ってるのよ。それ全部、私たちの受け売りじゃない」


 そう言ってリュオの後ろから姿を現したのは、明らかに高位の術者とわかる魔法使いの女性と、鋭い目つきの男女だ。

魔法使いの女性は腕を組み、ジト目でリュオを睨んでいる。


 いつの間に近づいていたのだろう。

こんなパーティの場とはいえ、リュオの存在感に当てられていたとはいえ、全く気が付かずにここまで接近されたのだ。


「わっはっは。まぁ、そう言うなよジーン。頼もしい後輩にいい格好させてくれよ」


 なるほど。

彼女達がリュオの本当のパーティなんだろう。

そして、リュオの性格とパーティでの立ち位置もよくわかった気がする。


「おぉ、紹介するな。魔法使いのジーンと、俺の従者のリンとロイ。知っていると思うが、これが《白き刃(ホワイトファング)》パーティだな」


 流石にわかる。

格が違う。

ジーンという女性が魔法使いとして、残りの二人も恐らくは支援型の戦士として相当な実力者だ。

彼等こそ、僕達の、いや、冒険者の目指す(いただき)だ。


「そう言えば、結局リュオさんは、今度の四校戦には参加するんですか?」


 そう、大事なことを確認しておかなければ。

まさか最強の武人たるオーガ将軍が、こんな見習いの学校行事に本気で参加してくるなんて大人気ないことは、


「おぉ、もちろんだ! いやぁ、あの骨巨人(ガイコツ)の戦いを見てから腕が(うず)いてなぁ。ラケインの剣も、アロウの魔法も垂涎ものだよ。四校戦が待ち遠しいな! ワッハッハッハ」


……ノリノリで参加するつもり満タンだ。

無論、手加減なぞ求めてないが、これは最悪ワンサイドゲームになりかねない。


「ちょっと、この子達が引いているでしょ。一応言っておくと、私達は参加しないわよ。そもそも学生ではないし」


 ジーンと紹介された魔法使いの女性が呆れながら言う。

やはり、この女性が暴走しがちなリュオの手綱を取っているらしい。

まだリュオとはたった二日の付き合いだが、日頃からの苦労が伺われる。

なんというか、ご愁傷さまである。


「いえ、安心したのは確かですけど、リュオさんと勝負できることは正直に光栄ですよ。僕達も負けるつもりで挑むわけではありませんから」

「ふふ、頼もしいわね。なんならこてんぱんにしてやってよ」


 こうして、僕達《反逆者(リベリオン)》と、《白き刃(ホワイトファング)》の初顔合わせは無事に終了したのだ。

ソシャゲ等で作者はよくリュオを名乗っているのでなかなか違和感がありますね。


ただ、このキャラは昔からリュオと決めていた、というか、ゲームネームのリュオをこっちからとったので、仕方ないのです。


本名 Rud Ougar ⇔ Ruo Cougar

傲慢な父親に反発して家出。

名を変えて冒険者として活動するうちに名を挙げ、ある事件をきっかけに王族と関わり、将軍にまで上り詰めた。

という設定です。


そのうちリュオメインの作品も書きたいのですが、いつになるやら。

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