第三章)新たな輝星④ アルメシア=ブランドール
初めまして!
私、アルメシア=ブランドール。
メイシャとお呼びください。
半年前、ノガルド冒険者育成学校へ入学して驚きました。
去年まではなかった、特別クラスができていて、いきなり私もそこに編入させられたんですから。
私は愕然としました。
なにか問題でも起こしてしまったんでしょうか?
このクラスは、問題児のみを集めた隔離用のクラスなんでしょうか?
そんなことを考えていました。
だって、そこには私の他に、二人の先輩しかいなかったんです。
そう、この特別クラスは学年合同。
三年生のアロウ先輩とラケイン先輩、それと私だけの三人だけのクラスでした。
なんでだろう。
入学初日に遅刻しそうになって走ってたところを、歩いてた先輩に盛大にぶつかってしまったからでしょうか?
やっぱり遅刻しそうな時にパンを咥えて走ってると、角で人とぶつかるもんなんですね。
メイシャ、学びました。
そう、お約束ってやつです。
そういえば、結構小柄な方だったですが、大丈夫だったかな?
ちょっとだけ振り返ったら壁に半分くらい埋まってた気もしないではないんですが、きっと気のせいですよね。
……あれ?
今思い返したら、アロウ先輩だった気も……
いや、きっと気のせいですね!
恐らく、半分は本当に隔離の意味もあったんでしょう。
なにせこの先輩お二人、なんで育成学校にいるのか意味がわからないくらい、とんでもなく強いんです。
そりゃあ他の生徒さん達と一緒じゃトラブルも起こりますよ。
え、半分?
そりゃあ私がここにいるんですから、理由は他にもあるんですよ。
……多分。
アロウ先輩は、魔法剣士。
剣だけでも戦士クラスの人と互角に渡り合えるのに、繰り出す魔法は見たこともないほど強くて、しかも早い。
多分、普通に戦って勝てる人なんてそういないんじゃないかなぁ。
もう一人、ラケイン先輩、いえ、ラク様は、大柄で無口で最初は少し怖かったんですけど、すっごく優しくて、紳士的で、かっこよくて……
あれ? なんの話してましたっけ?
ラク様は、重量級の重戦士。
それってほんとに人間の武器? みたいな大きさの大剣を軽々片手で振り回すんです。
それだけでも素敵すぎますのに、空いた左手で徒手拳技までこなすんです。
最高にカッコよくないですか!?
それに特別教員?という担任のリリィロッシュお姉様も、とっても凛々しくてクールで知的でセクシーでとっても素敵なんです。
アロウ先輩も素敵なことは否定しませんが、ぶっちゃけラク様とお姉様と私だけならどんなに幸せなことか。
まぁ、お姉様と仲がいいみたいですので、そこは手を打っときましょう。
あれ? 度々何の話してましたっけ?
リリィロッシュお姉様は、現役のBランク冒険者で凄腕の魔法使いみたいです。
山一つ吹き飛ばすような魔法なんて、生まれてこの方初めて見ましたよ。
それでいて武器での戦闘もこなせるってどんだけすごいんですか。
大剣を使うのはラク様と同じですけど、ちょっと性質が違うというか、なんかこう、ラク様がゴォって感じだとすると、お姉様はヒュルンって感じなんですよね。
上手く説明できませんけど。
そんなお姉様が、パーティメンバー兼戦闘技術の講師なんです。
いやぁ、この学校入って良かったです。
そうそう、そう言えばこの特別クラス、指導方針も変わっていて、座学より戦闘! なのです。
一応、エレナ先生っていうとんでもない美人さん先生が座学も教えてくれるんですけど、とにかく修行修行修行勉強修行みたいな感じなんですよね。
うーん、脳筋なお姉さまも素敵です。
そんなこともあり、最初は授業という名の特訓について行くのは大変でした。
なにせ、私だけ常識的な一般人なんですよ?
まず移動が魔蜥蜴馬車って時点で頭おかしいんですよ。
普通ならギルドのトップ冒険者がちょっと奮発してようやく、ってくらいお高い、冒険者憧れの乗り物なんですよね。
それがなんですか、去年ちょっと捕まえてきたって。
あれ、子供の頃から農場で育てた大人しいやつを普通は使うんですよ?
馬や魔羊じゃないんですから。
野生の魔蜥蜴なんて、小型竜とそんな変わらないんですから、ほいほい捕まえないでくださいよ。
っていうかどうやって調教したんでしょうかね。
あ、私の得意なのは治癒魔法です。
治癒魔法もお得意ということで、座学担当のエレナ先生が私の面倒を見てくれています。
エレナ先生美人ですよねぇ。
噂ではファンクラブまであるそうなんですが、どうやって入ったらいいのか。
ま、私の最推しであり憧れは、伝説の聖女、勇者パーティの『僧侶』様なんで。
数年前に行方不明になったと聞きましたが、卒業して一人前の冒険者となった暁には、ぜひお会いしてみたいものです。
というような話を先輩方にしたら、すごく暖かい目で見られましたが、なんだったのでしょう?
入学から半年ほどたって、先輩達から冒険者パーティへのお誘いがありました!
先輩達とお姉様とで結成した《反逆者》という名のパーティで、なんとこの度Bランクに昇格したとか。
この半年、私の事見ててくれて、昇格を機に是非って。
はい、こちらこそよろしくです!
うぉぉ、滾ります!
《反逆者》……。
フフフ、こういう少年っぽいノリの名前、嫌いじゃありませんよ!
ところで登録上のリーダーがアロウ先輩なのはなんでなんですかね?
本来ならリリィロッシュお姉様が引率としてリーダー登録して良さそうと思うんですが、先輩たちの卒業後は解散するんでしょうか?
うーん、よく分かりませんけど、ラク様もお姉さまも当然のように納得していたので、新参の私が言うことは何もありません。
できたらラク様ともお姉様とも、もちろんアロウ先輩ともずっと一緒に楽しく出来たらいいなぁ。
しかし、晴れて冒険者として外に出てみたら、唖然としましたね。
まず、他の冒険者のレベルの低さです。
こう言っちゃうとなんですけど、弱い、弱すぎです。
そりゃ、私はともかく、先輩方みたいな規格外は、特別クラスに完全隔離で入れたくもなりますよ。
魔蜥蜴をさらっと捕まえてきちゃう人達なんて、逆によく討伐されませんでしたね。
そして、やっぱり御三方の強さもビックリです。
もともとBランクの冒険者と聞いていたお姉様はともかく、ラク様たちもはっきりいって人外魔境です。
お姉様に引けは取らないどころか、場面によってはサポートに回ってるじゃないですか。
全然、治癒術師の出番がないじゃないですか。
そんなこんなで、皆さんと仲良く冒険者として頑張っていたんですが、なんと驚愕の事態が!
わたしも僧侶の端くれなんで、先週からエレナ先生のお供で、地方へ治癒魔術の無料奉仕に出かけている間に、他のみんなで仲良く依頼に行ってると言うじゃありませんか!
ひどい!
鬼です! 悪魔です! 魔族です!
すぐさま《砂漠の鼠》に行って、《迷宮》で武器を受け取った話を聞き、いつもの訓練場所だと狙いをつけて、やっとのことで追いついたのです。
えっへん!
私を仲間外れにしようたって、そうは貴族の税免除ってもんです。
あ、言い忘れましたけど、私、少ぉしだけ、他の人より力が強いんです。
ほんの少ぉぉぉぉぉしだけ、ですよ?
か弱い女の子ですもん。
今日も治癒魔術の出番がない鬱憤をこのメイスにぶつけてやります!
決してみんなに置いてきぼりにされた恨みじゃないですよ!
ぷんぷん。
いつもの拠点に着くと、見慣れた魔蜥蜴馬車がありました。
よく見たらラク様のピンチ!
とりあえず、うりゃーっと岩でも投げときます。
そしてそしてぇ、馬車に積んであったこれが、たぶん私の新装備!
ふっふっふ。
さすがは《迷宮》、いい仕事してますよねぇ。
いざ、戦鎚〈銀賢星〉の初陣です!!
あれ?
なんか敵がもう爆散してる??
そんなぁ。
新キャラ、アルメシア=ブランドール。
メイシャです。
かなりお気に入りのキャラになりました。
メイシャはチビロリナイスバデーの予定ですので、そのつもりで読んでくださいね。
新キャラのメイシャを可愛がってやってください。
名前の由来
アルメシア→メイシャ→メイスです。
ラケイン→ラージ剣→大剣です。
アロウ、リリィロッシュは、先に名前が浮かんでいました。




