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起源の章 最終決戦

皆さんこんにちは。

場面は魔王と勇者の最終決戦から始まります。

厨二病が絶好調ですが、2話目からは多少落ち着いて読みやすくなると思いますので、末永くお付き合い下さい。


「──みんな、俺に力を貸してくれ!」


 『勇者』は、震えるひざを剣の柄で自ら殴り、声を張り上げる。

それは、味方への呼びかけというより、自分への叱咤の意味合いもあったのだろう。

すでに満身創痍。

余力などすでにない。

残された(すべ)は、精神力とは呼べないような、ただの意地。

勇者の仲間たちもまた、似たような状態だ。

砕けた鎧を脱ぎ捨てた『戦士』は、守りを捨て残るすべての気力を一撃に込めようと立ち上がる。

すでに魔力も底を尽きた『僧侶』は、己の生命力を糧に守護魔法の準備を始める。

同様に魔力などとうの昔に枯れ、回復薬をも使い切った『魔法使い』は、禁術をもってそれを補う。


 対して『魔王』は、見た目こそほとんど無傷だ。

しかし、その力は見るからに衰え、目を凝らせば(わず)かに息も上がっているように見える。

これまでの死闘によるダメージは、確実に積み重なっている。


「さすがは、神の代弁者。よくぞこの我をここまで追い詰めたものよ」


 勇者たちの裂帛(れっぱく)の空気を読み取り、魔王が声をかけた。

空気が(きし)む。

勇者と魔王のその距離、僅か5m(メーダ)

その短い距離の空間が、ますます濃くなる殺気と魔力に悲鳴をあげているようだ。


「──さあ、最後の戦いを始めよう。美しき剣戟の調べを!」


 魔王もまた、裂帛の気勢を上げる。

濃密な魔力の嵐が吹き荒れ、石床が割れる。

ぱきっ、その微かな音を合図として、勇者パーティーが駆ける。


守護系魔法(エンチャント)女神の抱擁(ホーリー)ッ!!」


 僧侶が勇者へと守護魔法をかける。

本来はパーティー全体へ対物理・対魔法の防御補正がかかる、守護魔法系の秘奥義。

しかし魔力が足りず、今は勇者のみへと補正がかかる。

それでも、魔力の尽きた身には過ぎる奇跡。

その反動により、僧侶はその場に倒れこむ。


装気剣技(そうきけんぎ)。──終剣技(ついけんぎ)・〈破山はざん〉ッ!!」


 曰く、その一振りは山をも砕く。

かつて魔界で名を馳せた剣豪が編み出した究極の剣技。

本来は、闘気を魔力で操り、不破の鎧や万物を切り裂く剣を顕現させる魔装闘術の秘技。

青い炎となり実体を伴った闘気は、一切の攻撃も防御も無効にする。

しかし戦士は、体を守るはずのわずかな闘気をすら、ただひたすらに剣へと込める。

元来魔力を待たない戦士が、己の生命力を代替品として、すべての闘気を剣に込めたその一撃は、さながら巨大なギロチンのように、魔王へと襲い掛かる。


 しかし、魔王もまた、究極ともいえる一撃を持ってそれを向かい撃つ。


崩壊する虚無カタストロフィ・ゼロ》ッ!」


 闘気を込めた剣に対するは、魔力を込めた拳。

黒い光という矛盾ある光景。

しかしその威力は絶大だった。

戦士の全生命力を賭けた一撃と重なった瞬間、比喩ではなく、まさに世界が震える。

戦士の青い光、魔王の黒い光。

それが重なると同時に、さらに赤い光が混じる。


「傷だらけの体でも、こういうときには都合がいいや」


 その光の源は、魔法使い。

傷だらけの肉体から吹き出す血液が、空中で魔方陣を描く。


「どのみち流れ出るだけの血なら、有効に使わないとね。召喚魔法(サモン)ッ……大いなる紅(フレア)ァァッ!!」


 己の肉体を生贄に魔力を生み出す禁術をもって行使するのは、自身が持つ最強の攻撃呪文。

炎を生み出しながらも、その術は、火炎魔法に(あら)ず。

その正体は、天を輝かせる太陽の力の一部を顕現させる召喚魔法。

魔の王たる魔王に自身の魔術が通用しないことは、これまでの戦闘でわかっていた。

ならばと、魔力を伴わない、物理的な威力をもつ炎を召喚したのだ。


「くぅ、こざかしいわ!!」


 右手で戦士の剣を受け止めながら、左手で魔法使いの炎に抗う。

その左手にも黒き光。

驚くべきことに、戦士の秘技と同質の技を、両手で同時に再現して見せたのだ。

しかし、これで魔王の両手はふさがれた。


「はぁぁっ!!」


 勇者が駆ける。

戦士と魔法使いによって生み出された、千載一遇の好機。

永きに渡る宿命の戦いに終止符を打つべく、魔王へ飛び掛り―─


「ガァアアアアッッ!」


 だが、魔王の咆哮が勇者を迎撃する。

魔力と強大な殺気を込めただけの咆哮。

それは、最強の魔物とされる竜種のみが可能とされていた吐息(ブレス)攻撃。

その一撃は、その気になれば一国の軍を丸ごと消し飛ばすほどの威力を秘めた、正真正銘、魔王の奥の手である。


 はたして、勇者はそこにいた。

勇者としても吐息(ブレス)攻撃など意識の外。

その窮地を救ったのは、僧侶の守護魔法だった。

まさに命をかけたその守護の祈りは、魔王の必殺の呪いに打ち勝ったのだ。


「ありがとう、僧侶。……うぉぉおおおっ!」


 再び、勇者の咆哮。

神によって祝福されたその力をすべて振り絞り、魔力、闘気、その生命力をも爆発させ、まさしくすべての力を一撃に込める。

そこに技は不要。

すべての力をただ一点に集めて振り下ろす。


「これで! 終わりだぁぁぁぁっっっ!!」


 勇者の剣は、白く輝きながら、魔王の身体へと食いこむ。

戦士の青い光を取り込み、魔法使いの赤い光を取り込み、魔王の黒い光を切り裂きながら、その剣を振りぬいた。


「ぐわぁぁぁぁっ!」


 黒い鮮血を振りまき、魔王はひざから崩れ落ちる。

今ここに、魔王は敗れたのだ。




「見事だ、神の代弁者……。いや、勇者よ」


 初めて、魔王は勇者の名を口にする。

その目にあるのは怒りや狂気ではなく、種族の限界を超えた強者に向けた敬意だった。

魔王としての矜持(きょうじ)

少なくとも無様な姿は(さら)さない。

今にも魔力へと還りそうな我が身を今一度奮い起こし、毅然として立ち上がる。


「安心するがいい。もはや我に抗うだけの命は残されていない。我は敗れた。胸を張るがいい勇者よ」


 すべての力を出し切り、それでもなお剣を取ろうとする勇者に声をかける。


「しかし、その前にひとつ予言しよう、勇者よ。我は蘇る。いつの日か必ず。光ある限り、闇もまたあるのだ」


 そう言い残し、立ち姿のまま、魔力へとその身を還し、意識は白い光へと消えた。







「──はぁい。まんまでちゅよー」




……え?

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