SANGAと暗黒神エレボスとの戦い
1.サンガと10人の神官
人間時間の西暦2011年、天界のサンガである集会がなされた。神殿には10人の各神殿代表の神々が集結した。議題はこの荒廃した人間界を立て直しするという計画。
2.暗黒の神エレボス
長年地球の経済を初めとする総合的な意識は特別な人間が上から牛耳ってきた。その存在とは「暗黒の神エレボス」の意識を持った3人。世界はその人間を長とし絶対的権力で構成されていた、その長のひとり日本の久慈健栄(75歳)であった。
3.宮園風輝の覚醒
宮園風輝は札幌市で宮大工の仕事をしていた。大工仲間で花見に行った帰りに尊敬する大工の池田棟梁が交通事故死をした。その池田がフウキの覚醒の切っ掛けとなり、フウキは霊的体験をすることになった。
4.七人の使者Ⅰ
フウキは天界SANGAからの指示で仲間6人を集める旅に出ることになった。
最初に出会ったのが札幌の大通りや狸小路でこうしてギターを抱え歌ってる女の子と
沖縄で不思議な絵を描くアーティストと巡り会った。
5.七人の使者Ⅱ
次に飛んだのが京都の大原だった、そこには人を和ませる能力のある青年の姿があった。帰り道に急遽進路を東京に変えたフウキが小説家と出会った。
6.七人の使者Ⅲ
次に目指したのが仙台だった。そこでフウキは筆書きの独特の詩を目撃した。作品から伝わる独特のバイブレーションを感じた。その後鹿児島に飛んだフウキは出会いが無く東京行きの飛行機で戻ることにした。
7.SANGA結成
鹿児島市内のホテルに7人が集まった。フウキはこれまでの経緯とこれからの活動趣旨を報告した。会の名前は「SANGA」と命名された。
8.東京集会
花梨にとって初となる単独コンサートが始まった。SANGAが結成されて1年が過ぎ意識の確認と波動のチューニングを兼ねて東京に集まった。
9.シバとアグニ
アグニは原宿を拠点に活動し始めた。上場の滑りだしだった。アグニとシバはコーヒーを飲みながらはなした。シバが時間の観念が崩れ始めるらしと。
10.意識のチューニング
SANGAの存在が明るみに出た。フウキは今までの抗議と違った形の意識の引き上げを試みた。フルパワーのフウキがそこにあった。
11.よみがえり
久慈からSANGAへの妨害工作が始まった。時を同じくして摩耶はひとりの老人から書の依頼があった。その書を見て喜ぶ老人めがけ一台のトラックが暴走してきた。
12.山河
寄付によって運営されたSANGAの事務所の壁には大きな書が掲げられていた。毎月8日をSANGAの日と定め無料開放の特別な日とされた。
13.束の間の平安
SANGAには相談者の数が日増しに増えてきた。そんな中でフウキは緊急の波動
チューニングを施すことになった。フウキにしか解らない事情がそこにあった。
14.ね!
シバが「これが最後になるので一気に引揚げますから」の意味が気になっていた。
フウキは会を離れフレイという名で旅をする。旅先で出会った少女を花梨に託した。
15.ONE
世界はONEを合い言葉に自由を呼びかけていた。花梨の書いた曲が世界に無料配信されその曲は「KIZUNA(絆)」という題名で著作権フリーとされていた。
16.最終章
SANGA7人の物語終結。
【SANGA(神々の戦い)】全18話
1「サンガと10人の神官」
人間時間の西暦2011年、天界のサンガである集会がなされた。議題はこの荒廃した人間界を立て直しするという計画。
長年にわたり陰で人間界を操つり支配してきた魔界を消滅させる必要があった。今の人間界はそのネガティブなエネルギーに強く支配されてる為、逆三角形のような構図が展開されており、
魔界の存在はそのダークなエネルギーを食して生きていた。
彼らの苦手な事は愛や慈しみといった他人を労る心や行為。
上辺だけ繕う偽善が得意で、世界もそれによって巧みに運営されていた。
人間時間2011年夏。天界サンガの神殿に10人の神々が集結した。
・創造の宮(神官アメン)それを囲むように
・美の宮(神官イズン)
・智の宮(神官ウル)
・太陽の宮(神官ユーギル)
・月の宮(神官オーズ)
・アマテラスの宮(神官トール)
・風の宮(神官フレイ)
・地の宮(神官ミーミル)
・光の宮(神官ヘル)
・水の宮(神官エイル)
計10の宮が存在する。各宮を取り巻く形で無数の集団が存在しサンガの都は構成されていた。
それぞれの宮には神官と呼ばれる長老がおり、その宮特有の役割が設けられており、それら総てを統括するのが「創造の宮」であり神官の長がアメンであった。
同時にサンガの都をとりまとめる長でもある。
アメンが「本日の議題は人間界の心なき暴走と破壊についての対策である。ぜひ皆の意見を仰ぎたい、このままでは地球が破壊されかねない。今後の地球の方向性を決定し、その方法を決める為に集まってもらった。順番に意見を聞きたい」
美の宮イズンが「私の宮からは数十人の魂を人間界に降ろし、報告も受けておりますが、皆さんご承知の通り地球は暗黒の神エレボスの支配下になり数千年が過ぎ心なき物質文明も此処にきて終焉を間近にしておりますが今も悪あがきをしております。それに携わってる民衆も古き習慣を捨てる覚悟が全然出来ていません。それどころか格差がいちだんと激しくなっております。
国によっては聖戦と称し神の名を借りた戦争や宗教の
弾圧・洗脳など相変わらずの社会です。
この社会の在り方は違うと気付いている人間も大勢おりますが、そのような人間に限って社会的に力がありません。
力なき言動には民衆も耳を貸しません。それが大まかな人間世界の現状であります」
智の宮ウルが「宗教はもはや政治権力と結びつき布教と称し世界各国で人心を操り、挙げ句の果てに植民地化と化す合法的な占領等々、キリストやモハメッドの意に反する教えが主流とされ、仏教は智を満足させる為の手段となり、哲学化された教えは知識のみの仏教で、もはや形式だけが残る宗教と化した。新興宗教も教祖の死後は形のみが先行されております。これが今の地球の宗教事情でございます」
月の宮のオーズが「本来教義がない自然崇拝の宗教も形骸化され、我々への捧げ物や生け贄などと称し、未だに動物を殺してお供えしてるが、我々はそのような事は一切望んでおりません。人間の愚かな解釈には困っております」
水の宮エイルが「先の神々と同じ見解でございます。人間はどうも御利益的要素と信仰を混同している様でございます。
我々は祟りを与えるなど全く思った事もなく、人間が勝手に作り上げた妄想で人間自身が苦しんでおります。」
太陽の宮ユーギルは「人間の愚かさは昨日今日の事ではないが、
これだけ地球のエーテル層にまで影響を及ぼす事となってしまっては、はやいとこ手を打たねば地球存亡にかかわる。よって暗黒の神エレボスを排除せねば真の平和は望めないだろう」
アマテラスの宮トールは「私もユーギル様に賛成でございます。
但し、エレボスも元は我々と同じ神の一員。葬るのは容易い事ではございません。いかなる方法で対処すれば良いものかと・・」
風の宮のフレイが「風の宮からは25年前、使者を人間界に降ろしました。その者、宮園風輝と名乗りすでに準備が出来ております。あとは本人の最終自覚があればいつでも交信が可能でございます、なんなりとお申し付け下さい」
最後に神官アメンが締めくくった「そろそろ結論を言おう。
知っての通り我々、神界の者は人間界に直接関与出来ない。
よってサンガから転生させたその宮園風輝に使命を悟らせ、その風輝の下に天使の役目を持つ者数人を各宮から選抜配備させ速急にエレボスと対決してもらう事とした。
他にも各宮で話し合って奥の手を用意しておいてもらいたい。
相手はエレボス。今から遡ること三千有余年の間、陰から人間界を操ってきた邪神。今度こそ奴を抹殺し平和な地球に立て直そうではないか・・・以上!」
2「暗黒の神エレボス」
世界の経済は不調を来たしているとテレビや新聞等で報道されていたが、街には物が溢れ様々な様相の人間と物が入り乱れていた。
不景気とはほど遠い感がそこにあった。
世界は人口が過剰になり、明日の食料にも事欠く地域や、中東のある都市では、贅の限りを尽くした街が存在していた。
世界的に格差が一段と増してきた。
東京の一角に超高層ビルが建っていた。その名はKUJIビル。
近代建築の粋を結集したハイテクビル。その最上階に鎮座するのが、日本の政治・経済・文化・スポーツを思いのままにする陰の最高権力者久慈健栄(75歳)である。
人は彼をエレボスと呼び、彼に歯向かう者は存在しなかった。
彼の勢力圏は主にオセアニア諸国で、世界には同じような立場の人間がアメリカに一人、イギリスに一人と、世界はこの三人の権力者が君臨し陰で政治経済を左右していた。
エレボスの元に大手電機メーカーの野口代表がやってきた。
「久慈様、私どもニッセイ電気はご承知の通り今、経営の危機に瀕しております。度重なるリストラで急場をしのいでおりますが、この不景気でなんとしたものか・・・
一向に業績が上がりません。そこで、久慈様のお口利きで銀行融資を承りたくお願いにまいりました。なにとぞ日銀へ手回しをよろしくお願いいたします」
「野口さん、あなたの会社の直系従業員数と関連会社の従業員数は?」
「・・・はい、約二万五千人です」
「そうですか。現在ニッセイ電気さん独自の特許数とそれに関連する売上げ収入は他社のメーカーさんの三分の二ですね。
この数字では先が望めないと判断しております。
どうやら野口さん、あなたは方向性を見間違えてるようですね。
私の知る先代社長さんは気骨がありました。たぶんあの方なら社員を簡単に切る様な真似はなさらなかったと思いますがね。
ここらでニッセイ電気を閉めましょう。
特許の数が少ないと云うことは電気メーカーとしては致命傷です。野口さんも知っての通り、近年電気の分野は特許の申請をしてる間に次の新しい技術が開発され、先の申請した特許が下りる前にもう古い技術と化します。
どうやらニッセイ電気も潮時が来た様ですね」
「久慈様、そう言わずに何とぞ御思案下さい」
「残念ですがもう遅いですね。大切な従業員の事も考えてどこかの傘下に入れてもらいなさい。それも立派な社長職の仕事ですよ・・・お疲れ様」
その後、久慈は某電機メーカーの社長に電話を入れた「今、ニッセイ電気の社長が帰りました。打合せ通りに事が運びました。
もうじき世間を賑わすでしょう。あとはあなたの手腕で頑張りなさい」
それからひと月後、新聞に「ニッセイ電気破綻」の文字が大きく一面トップを飾り日本中の話題となった。
久慈の後ろには悪神エレボスが憑依しており、今回の件もエレボスの指示通りに久慈は動いていたにすぎない。
このように人間本人が考えている様に見えて、実は陰でネガティブエネルギーが憑依し誘導するというケースは非常に多い。
その様子をサンガの神々が天界より視ていた。
智の神ウルが呟いた「相変らずエレボスは姑息な真似をする・・・彼の思考は金と権力でいっぱいのようだ」
その頃、政治の世界では日本に対して農作物の貿易自由化
法案が叫ばれていた。
国民の絶対数の意見は反対派が占めており、与党議員の中でもその法案に反対する議員が多くいた。
内閣総理大臣の多田が久慈に面会していた。
「久慈様の思惑通りに事を勧めてまいりましたが最近、野党はもとより世論までもが強くて困っております。
たぶんこのままだと年内に解散総選挙という事になりかねません。そうなれば我が党は絶対不利になります。どうしたものかと思い参上致しました」
「多田君よくやった・・・ご苦労だった。予定通りじゃて・・・心配するな。君もここらで一休みしなさい。
ここらで野党にまわり、のんびりと高見の見物でもしてなさい。
今にアメリカは中近東で戦争に荷担し、日本は又金銭援助を余儀なくされるはず。
今後の総理大臣も大変だが国民はマスメディアの流す、表面の情報しか見てないから上手くいくだろう。そのうちまた君に動いてもらうよ。その時まで羽を休めなさい」
人間界ではエレボスの言ったとおり戦争が始まり、日本は直接参加せずに援助金と支援物資や燃料を国連軍に供給し間接的に参戦をした。
闇の世界の3人は長年思い通りに世界を独占してきた。
3「宮園風輝」
宮園風輝札幌市で宮大工として働いていた。風輝の憧れはイエス・キリスト。憧れの職業も当然大工という単純な発想であった。
桜が満開に咲く5月初め、フウキは大工仲間から誘われ
桜の名所、円山公園の花見に出かけた。
ジンギスカンを囲みながら缶ビールを数本飲んですっかり
出来上がり、フウキは夜桜を楽しんでいた。
棟梁の池田が「おい、フウキ酒飲んでるか? いっぱしの大工に
なるには酒も大いに飲んで遊びも大いにやれよ・・・」
フウキの尊敬する大好きな棟梁の池田だった。
池田もフウキの事を息子の様に可愛がり、叱咤激励しながら
いつも面倒をよくみてくれていた。
その日、フウキは花見でひとしきり酒を飲んで家路についた。
風呂に入って間もなく携帯が鳴った。納谷先輩からだった。
「風輝、棟梁のこと聞いたか?」
「・・・何ですか?」
「池田棟梁が車にはねられて死んだ・・・あの帰り道で、
棟梁の前を子供が車道に飛び出したらしい・・・
急に路地から車が出て来て子供を引きそうになったらしい。
咄嗟に棟梁がその子供を抱え、自分が盾になって車に激突して頭を強打。意識不明のまま死んだらしい・・・即死みたいだ」
受話器の向こうで納谷のすすり泣く声がしていた。
葬儀は社葬となり、公私にわたる関係者が大勢列席し棟梁の人柄を偲んだ。
通夜の席で背後から「フウキ・フウキ」という声を聞いた。
それは聞き慣れた棟梁の声。が、耳でなく違うところで感じていた。辺りを見回すも誰もいない。
「あれ??確かに棟梁の声だったけど・・・??」
「フウキ、フウキ、俺だ。池田だ」また声がした。
今度はハッキリと解った。
フウキも「池田棟梁ですか?」と心で話した。
「そうだ。俺、車にはねられて死んでしまったみてえだ。
でも全然、痛くねえ・・・って言うか、ふわふわと良い感じだ」
「棟梁、僕、聞こえます。棟梁の思ってる事が伝わりますよ・・・」
「そっか!俺、死んで解ったんだけど、お前はこの世でとんでもねえ役目があるようだ。フウキが目覚める切っ掛けを与えるのが俺の天命だったって訳さ。
これからフウキは覚醒に向け勉強しないとならない事があるんだ頑張れよ。そんな訳で俺のこの世での役目は終わった。
この事は誰にも云うな・・・他言無用。女房子供にも云わなくていいからな。
あいつらも生まれる前からこの事は了承済みんだ。
そう云うことで頑張って下さい・・・スサ$&#%さま」
以降フウキには二度と棟梁の声は聞こえなかった。
葬儀も終わり心身ともに疲れ果てたフウキは、自宅のソファーに横になり棟梁との会話を一語一句噛みしめていた。
そのうち寝に入った。
突然、身体を揺さぶられる感覚で目が醒めた。
あっ!ついそのまま寝てしまった。今日は風呂に入って寝ようと思った瞬間。何かがおかしいぞ・・・??あれっ??身体が浮いている?それにソファーに横になって寝ている僕がいる・・・?
「フウキ!」
「???」
「フウキ、黙って聞いて下さい。私はフレイと申します。
あなたの魂の知り合い・・・私の声が聞こえる様になるまで
この日を待っていました。
池田棟梁のおかげでこうして話が出来るようになりました。
この地球の為に早い覚醒を・・・」
フウキは我に返った。
なにこれ・・・?夢にしてはリアル過ぎ・・・
それを期にフレイからフウキへの教育は始まった。
「今日はパラレルワールドを経験させよう。パラレルワールドとは平行宇宙の事。この地球が同時に幾つも存在し自分も複数存在する。
但し、各々が独立した世界で社会を形成してるから、全く同じ世界や自分は存在しない。
夢を思い浮かべて欲しい。夢の世界では自分が経験している。
でも夢を見ている自分とは違うことが解る。実際にパラレル
ワールドを視て解って欲しい」
そう言い終わると二人は違う世界を上空から眺めていた。
「これもひとつの世界。同じ札幌でもどこかが違う。よく見て下さい」
「あっ!札幌駅が無い?大通りも公園じゃなくただの林になってる」
「パラレルワールドとは似て異なるもの。ここの住人はこちらの世界が本物で、フウキさんの世界が写し世と思ってる。次にこの世界のフウキさんを視てみましょう」
次の瞬間、もう一人のフウキの上空にいた。
この世界のフウキはイラストレーターの仕事をしていた。
フウキが言った「僕もイラストが好きなんですよ・・・」
「好きと云うことは持って生まれた才能もあるし、このように別パラレルの君がやっている事もある。では、別の世界を視に行きましょう」
今度垣間見る世界は現実の世界と大きく違うものだった。
「ここもパラレルワールドのひとつで、アセンションした
もう一人の君の世界」
フウキは目を凝らした。
「この世界はもう天国の様な世界ですね。建物も緑も空気も全てが違う。透き通っている・・・いや、ピュアーって云った方が方が表現しやすいかな?」
「ここの住人は半霊半物質。フウキさんの住んでる世界と霊界と呼ばれる世界の間に位置します。
細胞的には振動数が早いので粗雑なフウキさんの世界から視ると半分透けて視えるんです。向こうの住人もフウキさんを確認出来ますよ。もう一人のフウキさんを視に行きましょう」
次の瞬間、二人は大きな建物の中にいた。
「あそこで瞑想しているのがフウキさんです」
瞑想しているフウキは二人に気が付いた。
「やあ!もう一人の僕が来るとは初めての経験だ。ようこそ」
「こんにちは」自分に自分が挨拶している事にフウキは妙な感じがした。
「君の世界では邪神エレボスが好き放題やってると聞いてます。僕に応援出来る事があったら何なりと申しつけ下さい。
役に立てると思います。遠慮無くどうぞ・・・僕はあなたなんですから」
「ありがとうございます」
この世界は思いが伝わって来るので、その気持ちの純粋さにフウキは心が高揚した。
「なるほど、多元宇宙はこうなってるのか」
翌日の夜、フウキは誰に教わるでもなく自然と瞑想に入っていた。
フレイもそこにいた。
「今日は自然と動物の世界の波動の確認をしてみましょう」
二人は十勝と日高の上空を散策した。
「フウキさん山の呼吸、大地の呼吸を感じ取って下さい」
「山々と大地の沸上がるエナジーを感じます」
「それから?」
「生命力と優しさを感じます」
「はい、ではあの滝を感じて下さい」
「はい、凛とした空気と独特なエネルギーを感じます」
「その独特とは?」
「息吹?・・・龍?」
「はい!次はあの動物(鹿)と波長を合わせて下さい」
「はい、これから母親になろうとしていて気が少し立っています」
「では、あのフキの葉の下に集中して下さい」
「はい!小人さんが見えます。人間のような感情が感じられますが、意識は自然を意識しています・・・妖精?」
「あの方達はコロポックルといい、昔から北海道で動物と共存して暮しています。人間と比べると多少神経質ですが平和主義です」
「北海道の土産物屋さんにある彫刻とよく似てます。人間でも
視える人がいるんですね」
「そう、昔はアイヌと共存してましたからね。
では位置をもっと上に移動しましょう」
眼下には北海道があった。
次の瞬間、意識は宇宙に漂っていた。
「今度はこの位置から地球を視てみましょう」
「フレイさん、この地球なんですけど薄暗く落ち着かないの
ですが・・・」
「よく視ておいて下さい。 これがアストラル体の地球。
人間世界のアストラルと共鳴して黒ずんでいるでしょ。
これだから自然災害が頻発するんです」
フレイの説明にフウキは心が痛くなってきた。
「今日は疲れたでしょう・・・次で最後にします」
意識が下に引き込まれたと思った瞬間母親の子宮の中にいた。
・・・ああ心地良い。ずっとこのままでいたい・・・
そして意識は再び宇宙に漂っていた。
同じだ・・・母親の子宮内と宇宙の波長は同じだ・・・
フウキは瞑想を解いた。
今日は沢山の事を学んだから少し疲れた。そう思いながら眠りに入った。
その後、フレイの指導がひと月ほど続いたある日。
フウキは北海道神宮の社殿の修繕工事を会社から言い渡された。
いつものように熨斗紙を口に加えて作業をしていると、意識が半分だけ身体から離れ神社のご神体の前にあった。
もう一人の自分は無心に作業をしていた。
同時に意識が2つある体験は初めて。
ご神体の前のフウキの意識は電流が走ったように痺れていた。
その後、何事も無かった様に作業を終わらせその日は終わった。
今日のあの体験は何だったんだろう?霊的体験はもう馴れていたが、1度に二つの意識は初めての経験だった。
風呂から出て居間で何気なく天井を見た瞬間それは起こった。
自分がこの世に生れてきてから、今までのことが瞬間的に脳裏を走馬燈のように駆けめぐった。そして、すべてが一瞬にして解ってしまったのだった。
宮園風輝の覚醒の瞬間。
フウキはとにかく泣いた。止めどもなく涙が溢れてくる。
自分が総てとひとつ・・・いや、この宇宙とひとつだった。
それ以下でもそれ以上でも無い。
フウキの意識はサンガにあった。
そのサンガで10人の神官を前に改めて人間界での決意を
表明した。10人の神官全員がフウキを讃えた。
そして最後にアメン神官から「よくやった。だがこれからが正念場。各宮からも君の援護をする魂を既に地上に送り込んである。
その数6名。各々天賦の才能があり、君の手助けをする為に下界した魂。
フウキ君を含め7名の波動を日本中に広め、そして世界へと広げていただきたい。同じ動きは世界で起きる。
もう一度言います。
邪神エレボスを撃退するのではなく、民衆を目覚めさせて欲しい。
それが神のやり方です。決してエレボスに危害を加えてはなりません。
我々も力を惜しまない。思う存分やって下さい」
衝撃的な一日を終え、数日間寝ないで覚醒を味わった。以前の
フウキと覚醒後のフウキとは猿と人間ほどの違いがあった。
フウキは瞑想中「まず六人の同士を探そう・・・」どのような
現れ方をするのか、どんなタイプなのか妙にワクワクしていた。
4「七人の使者-Ⅰ」
雨上がりの大通り公園。アカシアの花の香りがとても心地よかった。
自分の意識の違いで当たり前の風景が、こんなにも違って視えるんだ。そう想いながらでベンチに座っていると、遠くから女性の歌声が微かに聞こえてきた。
声の波長からその人の意識が解るようになっていたフウキは耳を傾けた。声の主は20代前半と思われる髪の長い飾り気のない女の子。
フウキは女性の近くに移動し目を瞑り歌に集中した。
彼女の歌声から意識の広がりを感じていた。透き通った歌声・例えるなら台風の後のような澄んだ青空。
次の瞬間アトランティスの都、ウルの神殿で歌っている光景が
視えた。何曲か黙って聞き、歌い終えるのを待って話しかけた。
「君の歌って透き通っていて、とっても良いね・・・もうすぐテレビやラジオから流れるようになるよ。
もっと曲を沢山作ってね・・・」
「はい、ありがとうございます。私もあなたのその眩しいオーラに吸い込まれそうになりました。何している人ですか?・・・」
「僕は大工見習いだよ・・・」
「解った!宮大工さんでしょ?」
「何で?」
「私、神様に携わってる人はなんとなく解るの」
「じゃあ、何故僕が君とこうして話してるか解るかい?」
彼女は軽く目を瞑った「・・・・人集め???」
「ハハッやっぱりか、僕は宮園風輝っていいます宜しく」
「私は花梨です。何かを表現したくて大通りや狸小路で
こうしてギターを抱え歌ってるの。その何かはまだ解らないけど・・・」
「ずばり聞くね。花梨さんは僕のこと・・・」
フウキが言い終わらないうちに「知ってるかって聞くつもりでしょ?ハイ知ってます。だから私こうして路上で歌っていたんだわ・・・縁ある人と出会うために。今、あなたを観て理解できました・・・」
フウキはことの経緯を話した。
花梨は「解りました。これで私の天命が少し理解できました。
私でよければお手伝いさせて下さい。とりあえず何をすればいいの?」
「歌を作って下さい。歌を作ろうとするのではなくエナジーを感じと良いかもね、曲が降りてくるのを・・・降りて来たら譜面に起こすかメモって下さい。花梨さんなら出来ます。と言うより、もうやってますよね?」
「解りました。それでフウキさんは残り五人をどうやって探すんですか?」
天を指さし黙って微笑んだ。
二人はアドレス交換し、大通りをあとにした。
フウキは自宅で瞑想を始めた。次に出て来たのが「沖縄」というふた文字。
翌朝チケットを買い那覇に飛んだ。
国際通りにホテルを予約し平和通り商店街をぶらついた。
ここはかつて文明が栄えていた所か、なるほど・・・懐かしい・・・
呟きながら歩いていたら、1時間前に飛行場で食事をした
はずなのに急に空腹感をおぼえた。
足を止め見上げた店が「ソーキそば」と看板にあった。
暖簾をくぐり席に着いた。
「メンソーレー、いらっしゃいませ」 出て来たのは50歳前後の男性。
「いらっしゃいませ、何に致しましょうか?」
「ソーキそばお願いします」
「はい、かしこまりました」
そばを食べながら「違う・・・この人ではない・・・そんなに早く見つかるわけないか・・・」
会計を済ませもう一度店内を見渡した。
そこに一枚の絵が目に入った・・・なにか気になる・・・
「すみません、この絵を描いた方はどなたですか?」
「ああ手前どもの息子ですが・・・何か?」
「今こちらにご在宅ですか?」
「ええ、居りますが・・・あなたは?」
「突然ですみません。私は今日札幌から来ました宮園と申します。
こういう絵を探していたんです。是非、息子さんにお会いしてお話し聞きたいのですが・・・宜しい出でしょうか?」
「構わないサー、チョッチ待って下さいネ」店主は二階に
目を向け叫んだ。
「おーい、アグニ~~!・・・」
「なに・・・父さん」上から返事が返ってきた。
「お客様がお前と話をしたいとさ」
「・・・?うん、今降りるさ・・・」
階段から降りてきたのは柿の種のような目が印象的な、
二十歳位の青年だった。
「はい、何か用ですか?」
「初めまして。突然ですみません。僕は宮園フウキと申します。
今日、札幌から来ました。ソバを食べていたらこの絵に興味があり、お父さんに頼んで君をよんでもらいました」
「・・・はあ??・・・」
「もし差し支えなければどこかでコーヒー飲んで
お話ししませんか?」
なに?この人???「・・・良いですけど・・」
「お父さん、チョット息子さんとコーヒー飲ん来ても
いいですか?」
父親が「??はい、どうぞどうぞ・・宜しくねぇ~」
二人は近くのミルキーコーヒーに入った。
「急に呼び立ててごめんね。改めて、僕は札幌から来た
宮園フウキといいます。大工をやってます」
「はあ・・・僕は具志アグニといいます。・・・で僕に何か?」
フウキは目を瞑りアグニを透視した。
「君は今、上京したいと考えてます。そして本格的に絵を勉強したい。と考えているが父親一人を沖縄に残しておくのも心配だし、自分が我慢するしかないと思ってます・・・」
フウキの突然の言葉に目を丸くし「えっ?あなたはユタ(沖縄の霊能者)ね?」
「唐突でごめん。でも、黙って聞いてくれるかい?・・・そして君は小さい頃に離別した母親が東京にいるのを知っていて是非会いたい。でもお父さんの手前少し躊躇している。その葛藤で悩んでいる。友達に相談しても意見は二つに分かれるし、自暴自棄になっている・・・」
「やっぱりあなたはユタさぁ!・・・言いたい事があったらハッキリ言ったらどうね?」
「僕はユタでも何でもない。ただ、アグニ君の絵が世界を変える一役になると視ているんです。今言った一連の事はアグニ君のガイドが教えてくれたのをそのまま言葉にしただけだよ・・・」
「ガイド・・・?」
「そう、ガイドだよ。俗に守護霊と言うけど、僕は宗教が嫌いだからガイドと表現します」
「なんか解らないさぁ、僕は絵しか描けないし急に世界がどうとか云われてもなんのことか解らないさぁ、それにお金もないさぁ」
「今に解るよ。今日は国際通りのホテルに泊まるから、夜、気が向いたら酒でも飲もうか・・・気が向いたらでいいからね。
携帯に電話ちょうだい。じゃあ・・・」
メモに電話番号を書いてアグニに手渡し二人は別れた。
夜になりフウキの携帯が鳴った。
そのまま二人は会話の出来る地元の人しか行かない酒屋に入った。
「乾杯!」
アグニが「今日はつんけんした態度でごめんなさい。唐突だったからびっくりしたさ~~」
「いや、こちらこそごめんね。普段は大工していて話し方知らないから、思ったまま話しちゃった。反省してる・・・」
それから二人は軽く世間話をして本題に入った。
話し始めたのはアグニからだった。
「今日の話の中で解らない事があるんだけどさぁ、絵が世界を変える手助けになるって・・・どういう事ね?」
「絵や音楽って云うのはひとつのエネルギーなんだ。優しさであったり恐怖や癒し、それぞれにパワーがあるんだ。だから人はその時の心境にあった音楽や絵画などを好むんだ。その手助けをするのがアーチストの仕事なんだ」
「僕の絵が?」
「そう、アグニ君の絵が」
「もうひとつ聞くけど、札幌からなんでわざわざ沖縄まで?」
「うん、君に会いに来たんだ」
会話していくうちに段々とアグニの心が目覚め開いて来たのを
フウキは感じた。
「アグニ君、ちょっと目を閉じて眉間に意識を集中してみて」
アグニは指示に従った。
「フウキさん、何だか光がゆらゆらと視えるさぁ」
アグニはビールジョッキを持ったまま意識が飛とんでいた。
5分程してアグニは意識を戻した。側ではフウキが笑みを浮かべていた。
「不思議さぁ。色んな景色が視えたし動物もいたさぁ。
僕に何かしたわけ?」
愛情を込めて言った「それもひとつの世界。こちらがイリュージョン。つまりこの世は幻影なんだ。僕は目覚めたけど大半の人間はその幻影の中で生きている。
そこで君の描く絵や、これから紹介する札幌の花梨という女の子の音楽が必ずキーポイントになってくる。
目覚める人を手助けする働きがあるんだ。君の描く絵のエネルギーが人を変える役に立つ、と言うよりも切っ掛けになる・・・」
二人は翌日もミルキーコーヒーで会う約束をして別れた。
「じゃあまた明日」
アグニは首を傾げながら手を振って別れた。帰路の途中何度も
自問自答した。
アグニはそのまま風呂に入りベットに入った。
翌朝、早く目が覚めたアグニは目を疑った。
家の中が少し光って見える・・・こんな朝は初めてだった。
昨日までと違う・・・何か上手く言い表せないけど・・・
光ってて新鮮。ワクワクする・・・昨日の事が頭の中を過ぎった。
その状態のままアグニはミルキーコーヒーに入った。
店の向こう側でアグニに手を振っているフウキの姿があった。
「やあ、おはよう。よく眠れたかい?」アグニは朝の事を克明に話し聞かせた。
「良かったね。いい朝を迎える事が出来たね」
「フウキさん、こうなる事知ってたの?」
「知らないよ。予測は出来たけど・・・好い経験したじゃない。
ところで僕は1時45分のフライトで帰る。
絵を書きためておいて。頭で描くんでなく感性で描いてね・・・
7人全員が揃う時は札幌か東京で再会しよう。しばしお別れ・・」
「フウキさん、僕、なんか・・・吹っ切れました。
ありがとうございます」
フウキは沖縄をあとにした。飛行機の中ではもう次の事を
頭に描いていた。
札幌に戻りさっそく花梨と落ち合い、沖縄土産を渡しアグニの
事を話した。
「フウキさんって凄いパワーですね!会って話してるだけでフウキさんのその独特なエネルギーが伝わってきます」
「それは僕のせいだけじゃないんだよ。受け取る側の問題さ。
既に準備が出来てるから受け入れる情報量も多くなるんだよ。
僕は単なる切っ掛けに過ぎない・・・それだけ」
「で、フウキさんはこれからどちらに行くんですか?」
「まだ、指示が来ないからとりあえず職場に復帰しないとね」
「どこからの指示ですか・・・?」
フウキは天をさし人差し指を立てた。
5「七人の使者-Ⅱ」
沖縄から帰郷して2週間が経っていた。
瞑想中に啓示があり、関西空港行きのチケットを購入していた。
京都に入り大原の三千院を拝観した。
「あのう・・・すみません。写真よろしいですか?」
一人の老人が写真を撮って欲しいと頼んできた。
「はい、よろしいですよ」
フウキはファインダーから覗いた刹那、老人の後ろに人影を確認した。撮り終わって辺りを見て回ったが何処にも人影はなかった。
もともと三千院は地域的に嵯峨野の様に地域がら観光客の
多い所ではない、今日は特に人影が少なかった。
先ほどの老人もいつの間にか姿が無かった、そろそろ帰ろうかと
山門近くに来ると、どこからか読経の声がした。
振り向くと数十人の僧侶がフウキのあとを
追うように歩いてきた。
フウキは思わずその一団に道を譲った。
刹那、一人の僧侶がフウキの方を見て微笑みかけてきた。
と思った瞬間その一団は跡形もなく消え去っていた。
フウキは立ち止まり天を仰いだ。
次の瞬間声なき声が聞こえた「僧侶」
「僧侶か?何故に三千院まできて僧侶なのか?」不思議に思った。
腹が空いてきたので精進料理の店に入り豆料理を注文した。
料理を待ってるとさっきの僧侶の一行が唱えていた読経の声がまたした。
聞こえてるのはフウキだけのようだった。
「お待ちどおさま」料理を持ってきた青年は髪型は
今風だったが、さっき三千院で視た僧侶の集団で
ひとり微笑でいた彼と同じ顔だった。
「この三千院は今日が初めてなんだけど、何時もこんなに
観光客が少ないのかい?」フウキから声をかけた。
「今日は特別少ないですよ、たぶん重要なここに縁のある人がお出でになるやも知れまへんねえ。このお寺は不思議なんですわ」
「君はここの人なの?」
「いいえ、アルバイトです」
「何でここなの?」フウキはもう彼の事を解っていた。
「お兄さんも変わった事、聞きはりますね?」次の瞬間その
青年はフウキの事を霊視した。
そう、青年には透視能力があった。
「あっ!あなたは?」刹那、彼の目から涙が落ちていた。
「わざわざこんな所まで出向いて頂き恐縮でございます。
お久しゅうございます」
「私は今世では宮園風輝といいます。久しぶりですね」
「僕は山田印度羅と申します。ようこそ大原へ」
「先ほど三千院で君の前世の姿を視させてもらったよ」
「はい、過去に僕が世話になったお寺が三千院でしたから」
「ところで君に?・・・癒しの能力が・・・」
「はい、僕がいると、どういう訳か周りが穏やかになるみたいです。子供の頃から親や学校の先生から言われております」
「癒しの人か・・・面白い」フウキは事の今までの経緯を
丁寧に話した。
インドラは「解りました。僕でよければお手伝いさせて頂きます」
二人は堅く約束した。
「ところで急遽、札幌から来たので宿を取ってないんだ。
この辺で民宿紹介してくれない?そして今日の夜、暇なら
僕に一杯付き合いなよ、ご馳走する」
その夜、二人は大原の居酒屋で会食をして別れた。
翌日、フウキは京都駅にいた。
時刻表に目を向けると「東京」の文字が金色に光った。
「・・・此処まで来たら従ってみるか」フウキはそのまま
目的地を東京に変えた。新幹線の中でこんな事を考えていた。
ここまでは順調に来た。まだ見ぬ三人との出会いが楽しみ。
東京に着きとりあえず山手線に乗り適当に渋谷駅で下車した。
渋谷のスクランブル交差点を井の頭線への通路から眺めていた。
もう時刻は夕方になっていた。
ホテルの部屋で瞑想をしていたが天啓がないのでとりあえず
渋谷の繁華街に出る事にした。
これが物質文明の行き着いた姿・・・そんなことを考え
ながら街をぶらついた。
歩いていると突然、若者がフウキに声をかけてきた。
「お兄さん元気?」フウキは無視して通り過ぎようとした
「チョット待ってよ」その若者は行く手を阻んだ。
「お兄さん、チョット遊びに行かない?」
「行かない」
「何処から来たの?」
「札幌」
「良いところだよね札幌ってさ」
「で?何か用事でもあるのかい?」
「だからぁ、遊びに行こうよ楽しい所知ってるよ。女の子も
沢山いるし、渋谷に来たついでに楽しまない?」
「女の子よりも君の方が見ていて楽しいよ・・・」
「物分かりの悪い兄さんだね。俺の言ってる意味解らない?」
「解らない」
そのやり取りを聞いていた仲間と思われる3人連れがやって
きて、獣のような目をしてフウキを囲んだ。
「いい店を知ってるから遊ぼうって、こいつは親切に言ってるのね。だから兄さんはハイお願いしますと黙って、こいつについてきたらいいんだよ。云ってる意味・・・わ・か・る・よ・ね!」
「わからない」
その4人はいきなりフウキの両腕を抱え強引にビルの
陰に誘導し、通用口のような所から地下の倉庫に連れ
込みドアに鍵をかけた。
「おい、札幌の兄さん。俺たちは遊ぼうかって云ってるのよ。
その態度は好くないと思うけど・・・言葉の意味をよく考えて」
「君たち、回りくどい言い方はよしてハッキリ言いたい
事を言いな・・・」
4人はお互いの顔を見合わせて笑った。
そのうちの一人が日本刀を持ち出しフウキの顔面に
ちらつかせた。
「こういう事・・・解った?」
「だから、言葉で表現しなよ」
フウキはその場で禅を組み日本刀を持った若者の目に
視線を向けた。
程なくしてその若者は日本刀をその場に棄て後ずさりした。
仲間の一人が「???・・・おい、どうした・・・?」
もうひとりが、その日本刀を拾い上げフウキの胸元に当てた。
しばらくすると、さっきと同じようにその男も後ずさりした。
「何だよ、お前ら。どうしたんだよ?」
仕切っていた男が日本刀を取りフウキにかざした。
フウキの眼光は強烈だった。
その若者は今までの気魄をそぎ落とされた様に「じゃあ帰っていい。渋谷の街で何かあったら、俺の名前はヤスって言うんだけど、
俺の名前使って構わねえから。気をつけて・・・それじゃ」
フウキは何事も無かった様に平然と外に出た。
後ろからその光景を見ていた若者が「ヤスさん、どうかしたんすか?三人とも狐に摘まれたような顔して何かあったんすか?」
ヤスが口を開いた「あいつは狂気か何か知らんが、目が完全に座ってた。あんな人間初めて見た。お前らはどうだった?」
「あいつ絶対、変ですよ。薬の時の目とも違うし・・・
初めてですよ」
「俺も最初はいつものように日本刀でびびって財布を出すかと思って簡単に考えたけど、なんか解らないけどあいつの顔が鬼に見えたんだ。そしたら身体がこわばって動かなくなったんすよね・・・すいません」
この街はいろんなのが居るからなあんなのもいるさ。
フウキは相手の波長を鏡のようにそのまま3人に送ったのであり、3人は自分自身の心に驚いたのであった。
フウキは何事も無かったようにまた渋谷の街を闊歩していた。
本屋の看板が気になったのでその本屋に入った。
店内を歩いていると小説のコーナーに30歳前後の凛とした
雰囲気の男性が立ち読みしていた。
「この人か?」フウキはその男の横に立った。
ゆっくりとした口調で話しかけた。
「こんにちわ。僕に合う小説、選んでくれませんか?」
いきなり話しかけられた男だったが「宜しいですよ。どんなジャンルが好きですか?」
「あなたが選んでくれる本なら何でも結構です」
「はあ・・??」
男は並んでる書籍の中から一冊を取り上げ「これなんて
どうですか?」
「はい、ありがとうございます。これに決めさせてもらいます」
フウキが本を片手に去ろうとした瞬間男は「それ、著者は
僕なんです」
「そうですか、この本をあなたが・・・是非拝読させて頂きます」
本を購入し店内を廻り本屋を出たところに、先ほどの男が
立っていた。
フウキは「先ほどはありがとうございます。僕は札幌から渋谷見物に来ました。帰りの飛行機で読む本を探していた所あなたと出会いました。この本を紹介してくれてとてもありがたく思っています。もしお時間があったらコーヒーをご馳走させてくれませんか?何でも唐突ですみません・・・僕の悪い癖なんです」
男は笑いながら承諾した。
二人はドトールコーヒーに入り、向かい合わせに座った。
「僕は札幌から来た宮園風輝と申します」
「僕はその本の著者で芝山正彦です。通称シバ。本のご購入ありがとうございました。このような出会いは僕も初めてです。
僕の本を購読されてから友達になる事は当たり前にありますが、
購読前にお友達になる事があるとは、考えた事ともありませんでした。貴重な体験です。こちらこそありがとうございます」
話が弾み、そのまま渋谷で芝山行きつけの小料理屋に行った。
「今日は珍しい体験をしました。今度、僕の書くエッセイに取り上げたい題材ですよ。ところで今日は僕の話ばかりで・・・
君の話も聞かせてよ。本以外なにかの用事で渋谷に来たんで
しょ?お仕事ですか?」
「人捜しに来ました」
「人捜しですか?それでお探しの方は見つかりましたか?」
「はい見つかりました。あなたです」
「???ははは、冗談が上手いですね」
「いえ、本当です」
「と言いますと?」
「いいえ芝山さんはもう気付いてるはずです」
芝山の目つきが変わった。
「やはり、あなたでしたか。今日の夕方近く、急に渋谷の紀伊国屋さんに行きたくなり気付いたらその店の前に立ってたんです。
何処へ行ったらいいか解らず、とりあえず自分の本を陳列している所に足を運んでみようと思いました。
すると後ろから君が声を掛けてきました。僕は流れのままにしました。 そしたら君は帰ってしまったので勘違いかな?と思い店を出た所、再度声を掛けられたので間違いないと思い今に至っております。どうして私を捜しに札幌からわざわざ?」
「それもあなたは感づいていると見受けられますが?」
「ははは、かなわないなぁ宮園さんには・・・その通りです。
僕は悟りは開いていませんが、ある程度の事は解るるつもりです。
何故、僕なのか。何故、僕が小説を書いているのか宮園さんを視て自覚しました。それで全部で何人集める予定ですか?
現在何名なのか教えて下さい」
フウキが人集め中なのを芝山は既に察知していた。
「僕をフウキと呼んでいただいて結構です」
「全部で僕含め7人集めようと動いております。
現在は5名で残り二人も時間の問題かと思います」
「その5人の能力はどんな?」
「まず僕はある人の死を切っ掛けに覚醒しました。僕の役目は人の覚醒補助。
札幌の花梨さんは音楽家。この人の音楽は感動を与えます。
沖縄のアグニ君、彼は絵描きで独特の波長を絵で表現します。
京都大原のインドラ君は人を癒す能力があります。ヒーリング能力があります。まだ本人は自覚してませんが手かざしで身体も癒えるでしょう。
そしてシバさんは小説家で高次元の情報を小説に書き上げる力があります。アカシックレコードを読み、まとめる事が出来るでしょう。
今のところこの5人です」
「あと二人ですか。7人は強い縁で繋がってると思います。
頑張って下さい。僕に出来る事でしたら何でもお手伝いします。
僕がアカシックレコードですか?面白いです試みてみます」
「大丈夫ですよ。あなたは過去世でもやってましたから充分能力はあります」
「是非やってみます。フウキさんと話してると不思議です、何でもやれる気がします。パワーが漲るというかフウキさんは熱い方だ、まるで澄んだ空気のような感じのする人ですね・・・
解りましたお互い頑張りましょう!」
シバは心地よい酒を久々に味わった。フウキとの運命の出会いに感謝した。
フウキは札幌に戻った。
6「七人の使者-Ⅲ」
悟り後のフウキは日常の価値判断が今までと180度変わり、一般の価値判断とのギャップに苦しんでいたが、当初よりは上手に立ち回れるようになっていた。
ことあるごとに【この世は上手く出来ている】と実感していた。
東京から戻り半月が過ぎようとした頃。休憩中に先輩の納谷さんが「おう、フウキ今月は休まねえのかい?」
「今の所、予定ありません。」
普通ではあり得ない会話である。納谷は良き理解者でフウキの予定に合わせ仕事を組んでくれていた。納谷のおかげで全国を移動できた。
フウキは見えない力で応援されている事に感謝していた。と同時に納谷の言葉から、もうじき次の指示が来る事を予感していた。
ここは東北仙台は槻木にある農家。そこにマヤという名の女性が居た。マヤは不思議な夢で目が覚めた。
その夢とは・・・槻木町のある友人宅の部屋から空を眺めていると、東の空に十二支の雲が並んで漂っていた。
その雲をよく見ようと外に出て目を凝らした。すると黒いとてつもなく大きな黒い龍が上空を飛んでいた。
マヤは金縛りにあった様に身動き出来ず只呆然と眺めていた。
そしてマヤの目と龍の目が合った瞬間、龍は20メートル位の小さな白い龍に変わっていた。
その龍は先程の異様までのリアルさは無く、荒削りの白い彫刻の様であり口に白い玉をくわえていた。
そして龍はマヤを見つめ口を開いた。その瞬間ドーンという雷のような天にも轟く音が辺り一面に響いた。
瞬間場面が変わり、今度は大きな野原にマヤは立っていた。
遠くに、一人の体格のいい男が現れマヤに向かって歩み寄ってきた。その男は毛皮のベストを着た熊祖のような猟師の出で立ち、男の左手には昔風の長い二本筒の銃を持ちマヤの方に笑顔で歩いてきた。
男はマヤの前に立ち持っていた銃を差し出した。その銃は二本の筒のうち片方にティッシュで栓がしてあった。そしてティッシュを抜いてマヤに銃を渡した。
「ありがとう」と礼を言って受け取りそこで夢は終わった。
夢の解釈をネットで調べたが見当が付かずにそのままでいた。
フウキは仙台空港で遅めの昼食を取り、仙台駅近くにホテルにを予約した。部屋で小一時間ほど瞑想し東一番丁通りをぶらついていた。見知らぬ仲間と出会う事を心のどこかで楽しみにしていた。
「さて、今日は何屋さんに飛び込もうか?」通りを歩いていると、
一件の書道具専門店が気になり店に入った。
書には別段、興味は無かったが店内の有名書家の作品に紛れて、色紙に書かれた一枚の作品が気になった。
早春の朝日に遊ぶ
黒龍の浅き夢ごころ
摩耶
フウキはその書から伝わるバイブレーションに興味を示した。
「すみません。この書にある摩耶さんって書家の方ですか?」
「あっ、それね、それは地元の娘さんで詩と書を色紙に書いて、
路上販売してる女性で、当店のお客さんでもあるんです。
お兄さんも是非見てやって下さい。即興でその人にあった詩と書体で書いて路上で商売してる若い娘さんなんです。地元ではあれで結構有名なんです・・・」
「そうですか。で、何処に何時頃行けば会えますか?」
「うちの店の前で九時頃になったら来ますよ。見てやって下さい」
「はい。ありがとうございました」
フウキは九時に出直した。
そこには年の頃ならフウキと同じくらい、飾らない感じの女の子がいた。
「摩耶さんですか?」
「あっ、ハイ・・・?」
「僕はフウキと言いますが、先程この店の店主から君の色紙を
見せられて来ました。僕に合った詩を書でお願い出来ますか?」
「あっ、はい、ありがとうございます。ではここにお座り下さい」
摩耶は改めてフウキを見直した。一瞬目を疑った。仕事柄、人の顔と雰囲気を観察するのが不可欠であったが、摩耶は初めての
体験をしていた。
目に映ったフウキは半分透き通って見えたからだった。
幽霊か宇宙人と出くわしたと思った。平静を装い口を開いた。
「お客さんは何処から?何をやってる人なの?」摩耶の精一杯の言葉だった。
「僕は、今日札幌から来たんです。仕事は大工・・・」
「私が聞きたいのはそういう事ではありません。あなたは何者かって事です・・・あっ・・・唐突ですみみません・・・」言い終わってからとっさに出た言葉を反省した。
フウキは笑みを浮かべ言った「今、言ったように札幌から摩耶さんに会いに来た大工ですけど」
「あっ、そうですか。・・・えっ?私???今、何て言いました?」
「札幌から摩耶さんに会いに来た大工です」
「新手のナンパか何かですか?そういうの私、興味無いので・・・
帰ってくれますか?」少しムッとした摩耶であった。
「話し方を変えますね。摩耶さん、あなたは僕を視て身体が半分透けて見えましたよね。それは摩耶さんが僕を霊視した結果なんです。気付いてると思いますがあなたはお客さんを霊視して作品を作っている。それが的確に表現されているからお客さんの評判がいい」
フウキがそこまで話すと摩耶の表情が柔和になり、心を開いていた。
「私は小林摩耶と云います。あなたが言ったようなかたちで
路上で商売しております」
「唐突でごめんなさい。僕は宮園風輝と申します・・・」
仙台に来た目的と今までの経緯を一通り話し摩耶の
顔色をうかがった。
「ご丁寧にありがとうございます。でも、私がそんな大役が務まると思いませんし、宮園さんのいうような人間ではありませんけど・・・」
「そうですか。僕は無理強いはしませんので、考えておいて下さい。明日札幌に帰ります。唐突に変な事をいって本当に申し訳ないです。最後にひと言いいですか?」
「・・・ど、どうぞ」
「干支の十二支はまず摩耶さんの気を引くため。次の黒龍はあなた自身のパワーを表わしてます。白い龍は神の使命を表わします。
次に出て来た猟師はあなたのガイドで、鉄砲の筒から紙を抜いたのは封印を解かれ、いつでも使用可能になったと伝えたかった。僕流の解釈はこうです・・・」
摩耶は衝撃に打ちのめされた。
「何故、私の夢の内容をフウキさんが事細かに知って
るんですか?・・・」
「摩耶さん、あなたのガイドがそう伝えてほしいと言いました」
しばらく二人の間に沈黙があった。
摩耶は顔をゆっくりと上げた。目には涙がにじんでいた。
「お役に立てるかどうか解りませんがやってみます」
フウキは微笑んで言った。
「お近づきの印に今夜は飲みませんか。他の仲間の話も
聞かせます」
摩耶は店を早仕舞いし居酒屋で話した。
翌朝、ホテルで朝食を取ってると突然金色に輝く「鹿児島」という文字が頭に浮かんだ。
フウキは急遽仙台から東京経由で鹿児島に飛んだ。
飛行機を降りて市内に直行しホテルを取ってから町を探索した。時間は夕方になっていた。
思い起こせばこれまでの五人の事は順調過ぎるくらい
上手く運んだ。
サンガの計画は完璧だった。
繁華街をぶらつき感じ入るものが無かったので夜の10時には
ホテルに戻りその日は終わった。
翌朝、ホテルの朝食を済ませ部屋に戻った瞬間頭の中で閃いた。
「10時05分羽田行き」
フウキは早速チェックアウトし、羽田行きのチケットを購入し、
何とかその便に間に合い飛行機は鹿児島をあとにした。
フウキは自問自答していた「いったい鹿児島は何だったんだろう?」そういうこともあるか・・・
飛行機は離陸しシートベルト着用のサインが消えた。隣の席に
座っていた若い学生風の男性がフウキに声を掛けてきた。
「あのう、すみません」
「はい?」フウキが応えた。
「お一人ですか?」
「はい、一人です」ここでフウキには上からの啓示の意味が解った。少し楽しんでみようと思った。
「おたくさんも一人?」
「はい」
「東京へ?遊び?それとも旅行?」
「僕、今朝、夢を見たんです。それが金色の文字で(今日、東京へ!)という夢でした。最初は無視したんですけど胸の奥で行かなくちゃという気がしてたまらなくなったんです。
それで今日、学校を休んで飛行機に乗っちゃいました。
変ですよね。
自分でも解ってるんですが・・・でも、チョット不安で・・・
誰かに聞いて欲しくて、つい隣の席にいたお兄さんに声をかけてしまいました・・・ぼく変ですよね、ごめんなさい・・・」
「話してくれてありがとう。僕は宮園風輝。札幌在住よろしく」
「あ、はい僕は宮越羅取です。鹿児島高校3年です」
「ところでラトリくん君の話からすると東京での用事が決まってないようだし、僕と半日程つき合わない?」
「はい、でも僕は宮園さんの事、何にも知らないからその・・・」
「そうだよね。でも僕は君の事を知ってるよ。君には二つ上の姉さんが居てしかも双子のね。君の彼女は髪が長くその香りはいつもレモンの様で君はとても気に入ってる。彼女が入っているクラブは吹奏楽ってとこかな?他にも言う?」
ラトリは耳を疑った。
「どうしてそんな事まで知ってるんですか?宮園さんは
神様・・・?」
「驚かしてごめん。君の情報は、今上から聞いたから知ってる」
「上って何ですか?」
「ガイドのことだよ。君の事をいつも見守っている縁の下の力持ち的存在をガイドと云うのさ。ある意味、君の事を今の君以上に知ってる非物質の存在だよ」
「それって守護霊の事ですか・・・?」
「そうとも云う。僕は宗教的な意味合いが嫌いだから、ガイドって表現するけど。もうひとつ付け加えると昨日、僕は急遽仙台からここ鹿児島に来たんだ。君に会う為にね。
君が未成年だと云うのは今解った。だから昨日はいつもの癖で
夜の町を探してしまったよ。だから会えず終いさ・・・
でも、今こうして東京に僕と君が向かってると云う事は、たぶん東京で何かがあるんだ。だから僕は半日つき合わないか?って
聞いたのさ」
「何だか解ったような解らないような感じです。でも話しかけたのは僕ですし東京で行きたい所も無いからおつき合います」
「了解!じゃあ、まず小説家のシバさんに会おうか?彼は僕より年上で小説家なんだ。羽田に着いたら連絡してみるよ。
その前にここまでの経緯を話すね。今、仲間は君と僕を含め全部で7人いるんだ・・・」
飛行中、一通りの流れをラトリにレクチャーした。浜松町から
シバに電話を入れ銀座で待ち合わせ、遅めの昼食をすませた。
シバが言った「近々7人で会って話しませんか?顔合わせもしたいし、皆の意思も確認したい」
フウキは「そうだね。とりあえず鹿児島で会いましょうか?
ラトリ君は高校生だから負担にならないようにみんなが鹿児島に集合しましょう。ラトリ君はまだ自覚してないようだけど、君は動物と会話出来る能力と自然界の空気、又は波動を読む事に長けている。自分を磨いておいて欲しい。コツは頭に頼らないで全身で感じて欲しい」
三人は再会を誓い銀座をあとにした。
7「SANGA結成」
2013年、鹿児島市内のホテルに7人が集結。
一室を借り会議が行われた。進行役はフウキ。
「今日は大変お疲れ様です。あらためまして進行役を務める宮園風輝です。昨年の5月に、仕事上の師匠の死に直面し、それを
切っ掛けにこの世での使命を悟り今に至っております。
基本的能力はオールマイティーですが、人間の能力を引き出す
力は過去世からやってる事なので得意です。
指名しますので、各々で自己紹介を簡単にお願いします。
初めは・・・花梨さんお願いします」
「はい、花梨と申します。フウキさんと同じ札幌市出身のミュージシャンです。歌手と言っても路上とか小さなライブステージで歌ってます。フウキさんは私の歌は聴く人の心を癒す力があると教えてくれました。皆さんよろしくお願いいたします」
「あとで彼女の歌を聴きましょう。僕の言ってる意味がわかりますよ」
「アグニ君、お願いします」
「具志阿国です。みなさんアグニと呼んで下さい。沖縄は那覇出身の絵描きです。僕も花梨さんと同じで、僕の描いた絵に力があると言われここに参加しました。よろしくお願いいたします」
「彼の絵を見て下さい。ここにいる皆は解ると思います。
インドラくん、お願いします」
「僕は山田印度羅です。皆さん、インドラと呼んで下さい。
京都の大原から来ました。僕は皆さんのような目に見える特技はありません。フウキさんに言わせると人の心を穏やかにさせる能力があるらしいです。よろしくお願いいたします」
「この方も解りますよね?マヤさん、どうですか?」
「はい、すぐに書けますね・・・」
「そのままマヤさん、お願いします」
「小林摩耶です。マヤと呼んで下さい。仙台から来ました。私は書と詩で表現してます。仙台の路上がわたしの表現の場です。依頼者の顔を視て、その方をイメージした書体で詩を作り書にして売ってます」
「一瞬で目に見えない特徴をつかみ書に表わします。素敵な才能です。続いてシバさん、おねがいします」
「芝山正彦と申します。シバと読んで下さい。東京から来ました。最長老の30歳で職業は小説家。高次元の情報を小説で表現してます。一度読んでやって下さい」
フウキが付け加えた「シバさんはアカシックレコードにアクセスして小説を書き上げてます。興味深い事が書かれてますから皆さんどうぞ読んでみて下さい。では最後にルーキーのラトリ君」
「はい、宮越羅取です。ラトリとよんで下さい。ここ鹿児島の高校3年生です。 僕は昨年、夢の指示に従ったらフウキさんと飛行機で出会いました。自分の能力がまだ判ってません。宜しくお願いいたします」
「彼はまだ自覚してませんが、彼の能力は未知数。特に夢による予知は大きな才能のひとつです」
「一通り自己紹介が終わったところで、次にこの会の名前を命名したいと思います。皆さん、お願いします」
「ひまわり会」
「暁の会」
「セブン・スピリッツ」
「はい。他にありませんか?マヤさんは無いですか?」
「はい、SANGAです」
シバが「それ、どういう意味ですか?」
「皆さんの波長に同調させたら浮かんだんです。
意味は解りません」
シバは「SANGA・・良い響きですね。僕の(暁の会)は
取り下げます」
アグニが言った「僕もSANGAはとても好いと思います」
全員一致でSANGAに決定した。
フウキが続けた「実に面白いよ。実は僕達7人は上の世界ではすでに知り合いで、その世界をサンガと呼ぶんだ・・・全く同じ
名前を皆は選んだのさ。さすがマヤさんだね。
では、これからこの会をSANGAと決定します。
アグニ・インドラ・カリ・シバ・ラトリ・マヤ・フウキの7人です。7というのは完成を表わす数字で変革の数字でもあり、改革を成し遂げる大きな影響力と実力を備えます。ここにSANGAの発足を宣言します!」
「次にこのSANGAの方向性を定義したいと思います。ここからがSANGAの皆さんがこの世に転生した大きな意味です。
テレビや新聞で知ってると思いますが、この世界には三人の黒幕が存在し、その一人が久慈健栄で日本の政治・経済・法曹界・
マスコミ・あらゆる分野にその力を誇示し、日本はおろかオセアニアにその影響力を及ぼしている。
彼らの正体はズバリ、後ろで暗黒の神エレボスが誘導しています。
昔から世界の在り方はエレボスの思惑通りに動いてきました。
エレボスの興味はずばり金と権力です。残念ながら他に興味は有りません。金があれば権力も思いのままと思ってますし、現に世界の在り方はそうなっています。
当然、異論を唱える者もこの世に多数存在しましたが、結局は無視され、中にはエレボスの傘下に入れられ、時には抹殺されてきました。
あのフォークソングの神と云われ、反戦歌を歌い有名になった
ボブ・サイモン、彼さえもその仲間に引き込まれたんです。
エレボスのやり方はいつも合法的で巧妙です。その卓越した洗脳の技術は完璧で知らぬ間に誘導され、人間はそれを良しとし常識としてしまいました。
集団意識の操作です。この在り方が地球をエレボス化してるんです。かつて地球は丸いと唱えたガリレオは宗教裁判で処刑されました。エレボスはガリレオの説を許さなかった。
このようなケースは山程あります。
武器を製造し売りたければ、戦争を起こせば武器が高い値段で売れる。同時に戦争に反対の対抗勢力も用意して、民衆の心のはけ口を設ける。彼らの得意とする手口です。
第二次世界大戦で日本はハワイの真珠湾を攻撃し、アメリカを
世界大戦に巻き込んだ。
アメリカ人の気質は自分の身は自分で守る・・・それを上手く
利用した事件です。
石油が儲かるとなれば動力源を石油依存の社会にし他の動力源は無視、もしくは特許を買い取り抹殺する。このように数えればきりがないのです。
しかし長年にわたり世界に君臨したエレボスの勢力も終焉を迎えます。今後、世界はSANGAの様な活動が確実に増えてきます。
今、僕はその勢力に対抗する方法として、従来の直接的なやり方ではなくSANGAの皆さんの特色を活かしたやり方を取ってはどうかなと考えて
います。僕の中にある構想を具体的に話します。
それは、SANGAの皆さんのバイブレーションを使うんです。」
「アグニさん、あなたは絵のバイブレーションを使うんです。
右脳に訴える絵を描いていただきたい。 言葉や音楽でなく視覚で伝えるんです。そんな絵を描いて下さい。
インドラさん、あなたは言葉とか要りません。集団の中に紛れ込んでいるだけで周りは段々と穏やかになり、その穏やかさの中から何かに気が付く人が必ず出て来ます。そういう力をインドラさんは持ってます。
早い話が、鎮静効果を人に及ぼす力を、生まれつき持ってる・・という事です。それを活かす方法を自分でも探して下さい。
花梨さん、あなたはずばり歌のバイブレーション。歌の持つエネルギーを伝えるんです。既に自分でも気が付いていると思いますが、そういう魂に響く曲を作って歌って下さい。近い将来、世に出る切っ掛けとなる事があるでしょう。その期を利用したら面白いかもしれません」
シバさんの小説は説得力を持ってます。小説は著者の意識が直接伝わりますから、それを上手く利用されて下さい。
今後はパラレルワールドにも触れて欲しいです。これは僕の個人的な要望ですけどね。あとSANGAの面々の事も面白い題材になりませんか?伝える事は沢山ありますから是非、いい小説を書いて下さい。
ラトリ君はいい夢を視て下さい。夢はこの世よりも上の世界に近いんです。そこからの情報はあなたの力に変わります。
焦らずにいて下さい。面白い能力が開花するはずです。
「摩耶さんは既にやってられますね。あとは客の悩み事を透視して、メッセージを含めた書も面白いかもしれません。
僕は個々の能力を覚醒させる手伝いをさせてもらいます。そして、より多くの呪縛が解けるよう行動します。
長くなりましたが僕からの話はこれで終わります。あとは皆さんの決意を順にお聞かせ下さい。
その後、個々に決意を表明し合い、会食をし翌日には全員が
決意新たに帰路に着いた。
新時代へ向けてのスタートがここから始まった。
8「東京集会」
ここは札幌文化会館小ホール。花梨にとって初となる単独ライブが始まった。オープニング曲は、大今ブレイク中のバラード
「AKATUKI」が演奏された。
作詞、摩耶・作曲、花梨の三番目の作品。
ジャケットにはアグニのイラストが描かれ、SANGAの
仲間初の共同作業となるこん身の作だった。
楽屋ではインドラが花梨のマネージャーとなり、まとめ役として
活躍していた。
我の強いミュージシャン同士の意地の張り合いも、インドラがそこにいるだけで自然と心穏やかにまとまり音楽と一つになれた。
花梨はその光景を眺めるのが好きで楽しんでさえいた。
「フウキさんが言うようにインドラって面白いよね!」
毎度の会話であった。シバはエッセイや小説などで事あるごとに、
みんなを取り上げていた。
鹿児島の高校を卒業し、フウキの住む札幌の大学をあえて選んだ。ラトリは今やSANGAの事務局的な役割をはたしていた。
フウキ曰く「ラトリは無駄のない的確な情報処理能力があり、自分の思考を入れず素直に人の言葉を伝える能力に長けているのでラトリの言葉はそのまま素直に受け取って構わない」と他の仲間に話していた。
花梨の歌声は日本全国子供からお年寄りにまで浸透していった。
本人思いはあくまでもライブでインドラから伝わる癒しの波長と花梨の歌声に触れて欲しい・・・というものだった。
シバからラトリに「今年は東京でSANGAの集会をしたい。
それで良ければ宿泊施設をリザーブしたいと思う。日時は忙しい
花梨のスケジュールに合わせたい」との申し出があった。
忙しい花梨も一年ぶりのSANGAの再会を楽しみにしていた。
スケジュールの合間をぬって東京でSANGA7人が集結した。
ラトリが進行した。
「昨年、鹿児島で集まりSANGAを結成してから一年が
経過しました。この一年間大変ご苦労様でした。
まずはフウキさんからひと言お願いします」
「はい、一年間お疲れ様でした。SANGAの影響は僕の予想より早く進行しております。僕はアストラル意識を視ています。
この世の現象と違います。このような動きは世界7ヶ所でほぼ
同じ時期に発生した動きです。神の仕組みって凄いです。
SANGAと同じ志を持った集団がここ以外の地域に6集団あります。
我々はこの一年間である程度の方向性を掴めたと思いますが、それは反対意識の妨害が無いから、ことのほかすんなりと出来ました。そろそろ反対の勢力は気が付く頃だと思います・・・
姑息な手を打って攻撃してきますので、皆さん心して下さい。
彼らは巧妙にしかも合法的にやってきますから、自分の心ににしっかりした芯を持って行動して下さい。
迷った時には心ニュートラルです。
我々の目的はあくまで、その勢力に反発する事ではありません。
反発しても絶対に潰されます。今の社会では・・・
目的はあくまでも自然発生の力を利用して目覚める手伝いをする事です。目には見えない心ウキウキワクワクの波長を発し伝える。それがSANGAの使命です。
そのことを決して忘れないで下さい。ありがとうございます」
フウキの力強い言葉だった。会議も終わりその後の茶話会に
移行した。
シバが「花梨さん、アルバムはいつ頃出す予定なの?」
「話しはあるけど、まだオリジナルが少ないからもう3曲ぐらい
作らないと・・・と思ってます。
今、摩耶さんに詩をお願いしてるの。ジャケットのデザインも
アグニさんに依頼してま~~す」
「楽しみにしてるね。僕は運転中でも聴いてるけど、
君の曲って鎮静効果があるような気がするけど?」
フウキが口をはさんできた。
「花梨の曲はシータ波を出してるので、聴く人によっては鎮静効果が悪影響する事もあるから運転にはあまり向きませんよ。
どうせなら安眠マスクしてリラックスし聴いてみて下さい。
体外離脱を誘う効果がありますよ」
花梨が不思議な顔をしながら口を開いた。
「フウキさん、それってどういう事なんですか?」
「θ波って眠りに入った時に現れる脳波なんだけど、花梨の歌声はそのθ波が出てるんだ。それだけじゃないよ。そのθ波が右脳と左脳両方に作用するんだ。しかも若干の周波数のズレが微妙にアストラル体に作用し体外離脱を誘発させてるんだ。
当然、個人差はあるけど」
フウキの説明に花梨は驚いた。
花梨は「初めて聞きました。そういえば私のライブに来ていて寝てる人がいるから不思議に思ってました」
ラトリが「僕も前から気になってました。せっかくチケット買って来て
るのに、何で寝てるのかな?って、そう云う事だったんですね」
フウキが「音楽はダイレクトに波長が伝わりやすい。それに絵や
小説・詩・物・風景等、みんな波長があるんだ。一番伝わりやすいのがあるけど・・・何か解る?インドラくん!」
「・・・?」
「解らない?なぜ僕がインドラに聴いたか」
「・・・人間ですか?」
「そう!人間。インドラの穏やかさが皆を誘うんだよ。そのうちもっと進化するよ。お楽しみに。インドラだけでなく皆もそうなんだけどもっと進化するよ。速いペースで・・・」
摩耶が「どう進化するんですか?」
「それを言ったら進化が遅くなるから今は言えないよ。
お楽しみに!。今、言える事は人間は無限の可能性があるって事。
自分に制限さえ付けなければね。そして僕の仕事はその制限を壊す手伝いなんだ。手伝いにならないことは言わないよ」
シバが「フウキ君がさっき反対勢力がそろそろ気付くって言ってたけど具体的にどういう妨害が考えられるの?」
「いくらでも考えられるよ。例えばシバさんが山手線に乗ったとする。女子高生が隣に居てその女子高生が痴漢!と騒いだとする。それを側にいた会社員風の男が止めろとばかりに、シバさんの
手を払ッたと仮定するよね。
当然シバさんは駅で事情聴取される。当然やってないと主張するよね、でも被害者と目撃者が最初からグルで同じ証言をしたら警察はどう判断します?
ほぼ無条件でシバさんを疑うよね。やってないという立証が出来ないから・・・
実際この手口で上げられた人も存在するんだよ。著名人になればなるほどマスコミも面白おかしく騒ぎ立てる。結果的にシバさんの書いた本にも影響する」
「なるほど、これからの言動や行動は十分な注意が必要になるね」
シバは言った。
シバが続けた「話し変わるけど、僕の今書いている本の構成がもうすぐ終わるんだ。そしたら表紙にアグニ君の絵と摩耶さんの題字を使いたいのでお願いしたい。頼むね二人で打ち合わせしてね。
内容は二風谷の妖精ピノが繰り広げる動物と人間と妖精のふれあいを描いたものなんだ。イメージは雄大な自然とちょっとメルヘンチックな感じで頼むね・・・」
アグニと摩耶は頷いた。
フウキが「インドラとラトリ以外の4人は想像が形になる
仕事していて気付いていると思うけど、創作の仕方に
チョットした変化を感じない?」
アグニが「変化って・・・?」
「うん、今ま以上に創作にリアル感が伴ってないかい?
違う言い方をするとイメージが勝手に湧いてくる感じとかさ」
摩耶が口を開いた「凄くあります。花梨とも話してたんですけど、自分の中からイメージが降ってくるっていうか不思議だよねって話してました・・・」
フウキは「創作の時にみんなの心がクリアーになってきた証しなんだ。 正確には天から降ってくる・・・というよりも自分の奥深いところと繋がりやすくなった・・・という方が的確かな。
みんなは自然にやってるけど、アメリカのミュージシャンや芸術家はそうなりたくてマリファナに頼ったりするんだ。
みんなはそれを自然に身につけてるんです。ここでは当たり前の話しだけど、本当はみんな凄い事やってるんだよ。
その方法が筆やペンだったりギターを使ってね。感性が磨かれれば磨かれる程内面と繋がり易くなります。
ラトリやインドラも、みんなと違う意味で1年前とは大きく変わってるよ。能力は使えば使う程磨かれます。みなさんこの1年で大きく変化してます。SANGAの今後が楽しみです」
無事SANGA集会も終わり、各々が意識の波動チューニングを済ませ帰路に着いた。
9「沈黙の勢力」
久慈健栄はニューヨークのとある高層ビルの一室、エレボスの影響を受けた久慈・アメリカのマーラ・イギリスのアンラ。
世界を陰で仕切る3人が同席していた。
久慈が「最近、世界の数ヶ所で我々の反抗勢力が動いているようだ。今のところ5つの国からの情報が私のところに入っている。主導者の名前はまだ挙がってないが時間の問題だろう。
取るに足らない。いつもの事だと思うが違うのは直接的な行動でなく、どうも潜在的に働きかけている風が感じられる」
マーラが「こちらもCIAに調査させてるが、今回は今までと
違い少し解りづらいようだ」
アンラが続いた「どんな勢力であれ問題はないだろう。金と権力で動かん人間はいないし出会ったことがない。それで動かん人間はハッキリ言って取るに足らない存在だ。もう少し様子を見ようではないか。
それよりも、ここらで中東辺りで事を起こし、武器をさばいて金にせんとならん。マーラさんには今まで同様手を打ってほしいのだが。久慈さんも協力願いますよ」
二人は頷いた。
程なくして中近東で戦火が登った。
日本は桜まっ盛りの季節となり、ここ札幌の街も遅ればせながら桜の花の咲く季節となった。
札幌の中心部を抜け、裏参道を通り円山公園から北海道神宮へ
向けフウキは歩いていた。公園では桜の花の下で焼き肉をしながら酒盛りをしている。
この光景を見ていると・・・池田棟梁の顔がよぎった。
ちょうどこの季節。子供を車から守ろうとして自分を盾に
して死んだ棟梁。
フウキはその事を期に覚醒という体験を経て、様々な出会いと気付きを得た。又ここに立ってる自分自身の運命を再確認していた。
神宮での参拝を終え、来た道を戻っていると突然ある
意識が伝わってきた。
「私はアマテラスのトール。あなたに育てて頂きたい人がいる。
その者は空・星・自分・未来」と直接意識に語りかけてきた。
フウキはしばらくそのキーワードの意味が理解出来ずにいた。
その者は空・星・自分・未来・か?
「空」青・宇宙・地・雲?
「星」惑星・月・宇宙?
「自分」自我・フウキ・ハイアーセルフ?
「未来」過去・明日・希望・来世?・・・
フウキにはしっくりこなかった。
ある時、花梨から携帯に電話が入り、ミルキーコーヒーで
待ち合わせた。 そこにはインドラとラトリも同席していた。
花梨が「フウキさん、呼び立ててごめんなさい。ちょっとした
相談があったの・・・」
「なに?」
「インドラとも話してたんだけど、最近不可思議な事が多くて。
何だろうと思っています?例えば興業先から突然の解約やコンサート依頼があって準備してたら直前になって依頼主からのキャンセルなど立て続けに続いたんです」
「うん、まだハッキリしないけど何かが動いている可能性もあるから様子みようか。何らかの勢力が動いているとしたら向こうからコンタクト取ってくるからね。
あったら久慈の勢力が加わってると考えられるよ。出方を見た方がいいね。もしかしたらシバさんにも何か動きがあるかも知れないその時はまた考えよう。
彼らはひとつの道筋を打ち立てるんだ。とっても甘く楽しそうな道筋を、そしてそれを断っても違う逃げ道というか2番手も用意してあるんだ。
ちゃんとね。
どちらを選んでも計画のうちなんだ。気が付いた時には自然と
彼らの手中に収まってるっていう事。人間の心理をついた巧みなやり方だよ。
彼らのやり方は無理のない誘導で合法的なやり方。それと人間の弱みを見つけるのが非常に上手い。コンタクト取ってきても時間を置くこと。そして感情的にならないでね」
インドラが「私達、メッセージ的な歌詞や言動は無い
はずなのに何故?」
「彼らも無知じゃない、君たちの波長にどんな力があるか知ってるから対抗策を考えてるんだ。そういうのを見極める力があるんだ。むやみに世界を仕切っていないよ・・・
必要なのは何があっても自分の中心線がぶれないようにね。
ぶれそうになったらSANGAの5文字を思い出してね・・・」
3人は気を引き締めようと思った。
その後、4人は食事をしにススキノの近くにある小料理屋リンちゃんに行った。店には男性客が1人いていつものようにママは
にこやかに出迎えた。
「あらフウキさん、久しぶりね。元気にしてたの?」
「ママさん、久しぶりです。今日は4人です。美味しいもの食べさせて下さい」
「はいよ!」
フウキは3人に「ここは死んだ棟梁が何回か連れて来て
くれた店なんだ。みんなも使ってやってね」
花梨が笑顔で「宜しくお願いいたしま~す」
4人は和やかなムードで食事をしていた。
ママはその男性客と話していた。その客が席を立ち4人の後ろを通った瞬間フウキは何かを察知した。
「ママ、彼は何やってる人なの?」
ママが言った「フウキさんも解る?あの人の気配。
今日、初めていらしたお客さんなのよ。星さんという名前なの・・」
星が席に戻ってきた。
ママはおしぼりを出しながら「星さんはお仕事、何なさってるんですか?差し支えなければ・・」
星は笑顔で答えた「僕の職業は、なかなか解らないと思うよ。
もし一回で当てたら焼酎のボトル2本キープします。
さて何でしょうか?・・・」
ママは視線を落とし右脳に集中し始めた。
「・・・あのねえ、大きな建物と黒板のような大きく黒い板が
視えるわ・・・前に座ってる人は私服・・・大学か専門学校かそれに類する職業か??・・高校より上の学校の先生か講師?」
星は目を丸くして言った「うそでしょっ・・・そこまで解るの?」
ママはフウキに目をやった。
フウキの顔もやけていた。
星は「噂には聞いていたけどママはそこまで視えるんだね」
「あらっ、なんの噂なの?」
「ススキノの外れにある小料理屋リンちゃんのママは
面白いっていう噂」
「私が面白いって?やだ、私は芸人じゃありませんよ」
みんな笑った。
「ところで正解は?」
「僕は大学で天体物理学を教えてます」
ママはビールをつぎながら「あら難しそう。まだ若いのに
ご立派ね・・・」
「いやぁ、珍しい分野だから札幌ではこの分野を教える人が少ないんです。だから僕みたいに若くても先生やれちゃうんです・・・」
横で聞いていたフウキが珍しく口をはさんできた。
「僕は宮園風輝と言います突然すみません。たまにこの店を利用する者ですけど、星さんは宇宙と自分いや宇宙と人間のかかわり、人間の核構造と太陽系の類似などに興味を持ってませんか・・・?」
フウキには珍しく、いきなりの質問だった。星は真顔になってビール飲む手を止めた。
「やっぱりですか・・・いやね、今日ここに来たのは理由があったんです。噂を聞いたというのはじつは嘘でして・・・ひと月程前から夢でRINって3文字を視るんです。
このひと月で5回も視ました。
RINって何だろうな?って考えてたんですよ。
そして今日の昼間、仕事でこの店の前を通ったんです。
そしたら字は違ったんですけどリンちゃんって看板が目に入り、
チョット気になったから暖簾を潜ってみたんです。
それがこんな興味の湧く人達に出会うなんて思いもよりませんでした。
ママさんの観察力や宮園さんの桁外れの洞察力に僕は今ビックリしてます。いや・・・ハッキリ言って今・僕は感動さえしてます。
もう少し宮園さんや皆さんと話しをさせてもらって宜しいでしょうか?」
ママが「ここはね、そういう人達が立ち寄る場所なのよ」そう言いながらジョッキーを出してきた。
星の音頭で乾杯をした。店はいっきに緊張が解けた。
それから6人はしばらく話を続けた。
花梨達3人のフウキとの出会いの事や、ママのシリパの会など
時間は瞬く間に過ぎた。
星が最後に「今日は貴重な経験をさせてもらいました。
普段、職業上僕は言葉を選ぶ立場にあります。目に見えない世界の話しは思っていても言葉で表現するのは御法度なんです。
でも今日はスッキリしました。僕の思ってた世界を現実に行動している人がおられるとは感激です。この出会いやSANGAの事、そしてこの店の事も同人誌で取り上げたくなりました。
よろしいでしょうか?当然、実名は一切出しません」
皆、頷いた。
星は続けた「皆さん、今度この店に集まる事があったら是非、
僕にも声を掛けて下さい。今日は本当にありがとうございました」
星もフウキも謎が解けた夜だった。
後日、2人は何度か会い、フウキはスピリチュアルな世界レクチャーをした。
そして星の云っていた同人誌が発刊された。しかし、その同人誌がやがてエレボスが支配する久慈健栄の配下の人間の目に止まる事となり、日本での妨害勢力はSANGAの面々の知らないところで着々と進行する予定だったが、闇の権力に入るSANGAの情報はいつも信憑性に欠けるものであった。
SANGAは講演会や集会のような表立った活動の記録が皆無、冊子や会報の類も出していないので実態が掴めないでいた。
花梨とシバの名前はリストに上がっていたが、その内容は決して久慈健栄に影響を及ぼす勢力といえない為、闇勢力は正直いって業を煮やしていた。
これはSANGAの思惑通り。
そう、SANGAの基本は目に見えない世界から人の意識を変える事を目的としていた。だから表だった活動が無いのであった。
10「シバとアグニ」
アグニは活動拠点を原宿に移しその界わい複数の店舗に
自作の絵を置いてもらい、その売上で生計を立てていた。
アグニの絵は沖縄の海を連想させるような明るい海の絵が多く
見ているだけで癒されると高い評価を得ていた。
原宿に集まる若い層に人気が集中していたが、最近はアーティスト風の人間が作品を購入する者も多くいた。
感性を大事にする人はアグニの作品に魅力を感じ、年齢や性別問わず購入する人も多い。
アグニは新作を持ってお得意さんの雑貨店にいた。
「こんにちは」
「おう・・・アグニ君、君の絵は評判良いね。ここに飾った3点の絵はすぐに売れてしまったよ。次回入荷したら連絡欲しいってお客さんまでいるんだよ・・・良かったね」
「はい、ありがとうございます。店長さんのおかげです・・・
感謝しております。これからもよろしくお願いいたします」
「なに、僕は君の絵が好きだから店に置いてるだけ、頑張って良い作品を作って。アグニ君の作品展開催したり、画廊に置いてもらえるように頑張ってよね・・・君が有名になったら僕もうれしいよ・・・」
「はい、ありがとうございます」
「これが3点の売上げね、はい」手数料を引いた代金を店長は
支払った。
アグニの絵は販売金額の30%を店側に支払い、残りはアグニの収入という取り決めで置かせてもらていた。
原宿という土地柄ファッション目当ての客の多い中で絵を売るという事は思ったより楽ではなかった。
そんな中で自分の絵にリピターがあると云う事はアグニにとって大きな喜びのひとつであった。
そしてアグニの最近の構想の中に、フウキから聞いている日本の
近未来の姿や潜在意識の表現や秘めた可能性、心の奥深い表現
みたいなものを絵で表してみたいと考えていた。
絵のことでは摩耶とも連絡を取合いながら話し合う機会が多くなった。沖縄から上京し個性的な人間の多さに心躍らせていた。
そう、アグニは人間ウォッチングがすっかり日課になってしまった。暇なときは原宿・渋谷・銀座・六本木や巣鴨にスケッチブックを片手に出かけていた。
沖縄では風景画を中心に書いていたが、フウキとの出会いから
人物の奥深さに触れ表現の自由さを学んだ。
御茶ノ水駅前のカフェ・フォルテッシモでアグニとシバは待ち合わせていた。
シバは執筆中の小説の大筋を聞かせ、その本の表紙と挿絵を
アグニに依頼していた。
一通り仕事の話しを終えるとシバが「ところでアグニ君最近、
変化は無いのかい?」
「変化って・・・?」
「意識変化のことだよ」
「SANGAの仲間と会ってる時は色々なビジョンが視えるけど僕だけでいると何の変化も感じられません」
「そっか、僕は時間が早く感じられて仕方がないよ」
「あっ!それは僕も感じます。最初は東京は刺激が多く沖縄は
のんびりだから、その違いかなって思ってたけど、普段家で絵を
描いてる以外でもとても早く感じます」
「これにはどうも事情があるらしいよ・・・」
アグニは目を丸くした「どういう事ですか?」
「だんだんと今の時間の観念が崩れ始めるらしい。先日、フウキ君からこれからの地球の在り方を聞いたんだけど・・・この地球はどうもパラレルの地球に分裂するらしい。
今までの在り方を良しとするタイプと、アセンションする新しいタイプ。この二つに地球は移行するらしい。
新しいタイプはバージョンアップされていて神に近い
人間みたい。
今までは思った事が形になるのに一定の時間を要していたものが、その世界は即形になるので、思いと現象が一体って事みたい・・・つまり時間軸がない世界だよ」
「嘘偽りのない世界か?・・・理想の世の中ですね」
「そうなんだよ。地球は過去に6回そういう事があって、今度で7回目らしいよ。でも、これが最後らしい、その後は無いって聞いたよ。7が完成で完結なんだってさ・・・」
「そうなんだあ。今の地球社会の在り方って偽りだと思ってないけど・・・すると・・・今のままで良しとする人間はどうなるのかな?」
「このまま欲望のみがデフォルメされて、争いや戦争のネガティブな想念の地球に移行するらしい。今の地球に近いらしいけどもっと個人主義っていうか協調性が無い世界みたい。
当然、自然界にも反映されるから地震や考えられない自然災害が
当たり前に起こるらしい・・・」
「地獄絵図みたいですね」
「大変な世の中になるらしい」シバが囁いた。
シバの話しは続いた「それでエレボスは最後の悪あがきを企んで、
自分たちの世界に引き込もうと奮闘してるらしい。
天界のサンガの影響を受けた魂との駆引きが水面下で繰り広げられていると云う事。で、最終的には新しいひとつの世界に移行し、
その世界は時間差が無い世界で、原因と結果が同時にあるから
表と裏も同時に存在するんだ。
なによりも大きく違うのは、人はみな神に近くなるという事。
分離から合一というわけらしい」
「・・・でも、現在はそんなに変わったと思わないけど
シバさんはどう思われます?」
「表面ズラは大きく変わってないけど、目に見えないところで何かが大きく変わったと実感してるんだ。
さっきの時間差が短くなったのと、今まで眠っていた事がだんだん表面に出て来てる感じがする。個人的にも、天の岩戸が開いてアマテラスが出て来たっていう感じだよ」
「?・・・すいません、具体的に?」
「うん、僕の知り合いでクニオっていう友人がいるんだけど、
ごく普通のサラリーマンでそいつが急に歌を作り始めたんだ。
作詞作曲してるんだよ。
一日で2曲っていうペースでもう38曲になったって云ってたよ。どんな感じ?って質問したら『曲が勝手に湧いてくる』って云ってたよ。
クニオは子供時代から音楽は聞きはするけど楽器や、それらしい事やってなかったんだぜ、それだけじゃないよ。
もう一人の友人はヒデミツっていう男なんだけど、こいつは高校の教師なんだけど、いきなり株相場に手を出し始めたんだ。
それがテレビの株式相場をたまたま見ていて、この会社の株が値上がりするって閃いたらしい。そしたら現実になった。
そんな事が何回か続いたので去年の夏に支給されたボーナスから
30万円で2社の株を買ったらしい。
それが3ヶ月後には52万円に跳ね上がったらしいよ。
そいつも真面目で株や相場をやるようなタイプじゃないし、実際、
株相場に興味なんか無かったっていうんだ。それで2人にはある共通点があるんだよ。何だと思う?」
「共通点???・・・解りません」
「2人とも、ある日突然閃いたという共通点があるんだ。
面白いと思わない?
それでフウキ君に聞いたら2人は前世でその仕事に携わってて今になって潜在していた能力が表面に出て来たって云ってたよ。
これからは潜在意識も表面意識もひとつになるからその証しかもしれない。たぶん、この2人は氷山の一角で、もっと沢山の人が同じような経験してると思うよ。
そしてフウキ君が云うように、これからの地球は表裏一体になるんだと思う」
「面白い・・・表裏一体か?・・・」
「ところで話し変わるけど、エレボスの影は見えてない・・・?」
「僕は絵だけの表現でしかも原宿だけだから全然そんな障害めいた事は無いですけど・・・」
「そっか、僕のほうはやたら原稿のチェックが多いんだ。思想や社会風刺めいた事を書くと途端にチェックが入れられるよ。
こっちは、めげないで違う言い回しを使ったりして誤魔化すけど、
着実にエレボスの影響だと解るよ。
こっちにはSANGAが付いてるから心強いけど・・ハハハ」
2人はこれから起こるSANGAへの妨害を全く予想していなかった。
11「意識のチューニング」
久慈の配下にあたる向井政晴から久慈に連絡があった。
「久慈様、兼ねてから久慈様がおっしゃっていた反勢力の全貌が
見えてまいりました」
「で?・・・・」威厳のある久慈の声。
「組織名はサンガといいまして、わずか7名からなる集まりでございます。今のところトップの人間の正体は全く解りません。
残りは今流行の花梨という歌手と女マネージャーの摩耶。小説家の芝山という男と原宿で絵を描いている若者具志といいます。
それと今年沖縄から札幌の大学に入学した男ですが名前は宮越。
もう一人は不明です。
計不明者2人と今いった5名からなる組織で組織名はサンガで
ございます」
「馬鹿者。この、わしに報告するのに不明者がございますとは、
どういう事なんだね?・・・君はガキの使いか?」
「た・大変申し訳ありません・・・すぐに」
「まあよい。若造のしかも7人とはのう?・・・・」
「はい、それが不可思議なんです。歌にしても本にしても、
絵にしてもメッセージせいが全く見あたりません。
もっと大きな組織で影響力のあるところは幾らでも存在します。
私の印象では単なる同じ意識を持つネットか何かで知り合った
集まりではないかと思われますが。
久慈様がサンガを意識されるほどの事ではありません。久慈様の下で働いて40年、初めての経験です」
「向井もまだ解ってないようだのう・・・まあよい。
とりあえずいつものやり方で始末せい。小説家は電車で痴漢
決定じゃ。週刊誌とテレビを通じて大きく騒ぎなさい。
その梨花という歌手とマネージャーはダブルブッキングの2回もしてくれりゃあ、大きな借金を負ってしばらくは立ち直れんじゃろうて。
残るは取るに足らんからそのままで良い。くれぐれも
悟られるなよ。解かりましたね・・・」
「はい、かしこまりました」
向井はその場を離れると事務所に戻り部下に指令を発した。
2人のやり取りをサンガの世界から地の宮の神官ミーミルは
じっと見下ろしていた。
「とうとう久慈が動き出したようだ。相変わらずのやり方か」
ミーミルは憂いの帯びた眼差しでみつめていた。
ここは京王井の頭線。シバは渋谷駅から吉祥寺に向かっていた。
電車が高井戸駅に差し掛かった時突然、シバの胸にある意識の言葉が響いてきた。
「シバ、聞きなさい。私は天界サンガの者。これより先は両手で
つり革を掴みなさい。今後、立って乗り物を乗るときは常に両手は上・・・」
そう、言葉にならない意識が伝わってきた。シバは指示に従って両腕は絶えず上げていた。
同じ車両に乗り合わせていた久慈傘下の仕掛け人3人はタイミングを掴めず業を煮やしていた。
彼らの計画は女性がシバの横に立ち小さい声で「やめて下さい」と2回云う。そこで側にいる男がシバの手を掴み上げ「やめろ!」と大声で騒ぐ。もう一人も騒ぎ始める。男2人と女性の3人は途中の駅でシバを下車させ警察を呼び女性に被害届を出させ、
男2人は目撃者として証言するという手はず。
ところがシバの両手は上げたままである。3人は予想外の展開に苛立っていた。シバは指示に従った。その後も列車に乗る時は必ず座るか混雑を避け空いている列車の時間帯に移動する事を心がけた。
一方、摩耶もサンガのエイルから「ダブルブッキングに注意せよ」と夢で何度か伝えられていた。シバからも久慈が動き始めたらしいから注意するようにと連絡があった。
彼らはしばらく注意しながら様子をみることにした。
向井が久慈にその後の報告をしていた「久慈様、どうもあの2人は警戒してか罠にはまりません。いっきに闇から闇に葬りましょうか?」
久慈はタバコをくわえながら「君が弱音を吐くのも珍しいのう・・・ところで奴らのトップは掴めたのかな?」
「はい、それがまだでございます」
「何故だね?」
「あ、いや、申し訳ありません。今度お会いする時はハッキリしてると思います」
「思います・・と云ったか?この私に?・・・」向井は失言したと顔を青くしていた。
「それにしても不思議よのう?実体があるようで無いような連中か?相手は幽霊か何かですかねぇ?
いいですか、次回、会う時までにハッキリしない場合は、あなたには今までと違う仕事をしてもらう事になります」
向井はハッキリと久慈に恫喝された。
自分の事務所に戻った向井はその苛立たしさを部下数人に浴びせていた。
「貴様らは何をやってるんだ!おかげであの久慈の糞じじいに恫喝されたんだ。このわしが・・」3人の部下は持っていたステッキが折れるまで殴られた。
フウキからラトリ伝令が入りSANGAが札幌に集結された。
フウキが「みなさん、今日は忙しい中、お疲れ様でした。緊急招集をかけた理由は既にエレボスが動き出しており、躍起になってこのSANGAの実体を探しているようです。
今のところダメージは無いけれどチョットした油断が命取りになります。たぶん実体を掴むまでそう長くはないでしょう。
それで今日は皆さんに、いっきに波動チューニングして天界のサンガと繋ぐパイプを太くしようと考えてます。
シバさんも今よりもっと太いパイプで繋がりましょう。
皆さんは、まず自分に揺るがない芯を作る瞑想をしてもらいます。
そして僕が隣の和室で一人60分づつ個人セッションします。
その内容は皆さんの波動チューニングして、いっきに天のサンガに体外離脱させ、サンガ13の宮のどこかにパイプを作る作業をします。
結果、1回でも大きく繋がると、この世界に戻ってからも天のサンガからの指示を意識的に受信できるようになるんです。
当然今までも繋がっていますが今度はハッキリと自覚できるようになります。今までは意識を集中させてから繋がってましたよね、今度からは意識した瞬間に繋がって会話できます。
時間差はありません。
アナログとデジタルほど違います。いやそれ以上です。まずは、
そこまでで今日は終了します。意見や聞きたい事ありますか?」
インドラが「ここまでは理解できましたが、その後はどう考えてるんですか?」
「うん、今日のチューニングが終わり次第で話し合おうと考えてる、これは今まで話してないことだけど、みんなの意識が同じくらいのレベルでないと実現できない事ってあるんだ、だから今回集まってもらいました」
全員がフウキの前に座った。部屋はローソクの明かりと微かな、
お香の香りが漂った異空間の感があった。
フウキが「まずは全員深い深呼吸を3回して下さい。では軽く瞑想に入ります。鼻から息を大きく吸って5秒止めて下さい。
意識は鼻から吸って尾てい骨に息を降ろして止める。
その後静かに背骨を登って口からゆっくりと吐く、吐き終わったら、また息を5秒間止めて下さい。約30分で終了します。
では開始して下さい」
部屋にはメトロノームが規則正しいゆっくりとしたリズムを刻んでいた。
SANGAの面々は日頃から瞑想は馴れていたので全員素早く深い瞑想に入った。
「はい、解いて下さい。ではアグニ君を残して全員退室願います」
フウキとアグニが対面して座り10分間の瞑想に入った。
「アグニくん座蒲団を枕に仰向けになって目を瞑って」
アグニは従った。
「じゃあ、身体から抜けてホテルの屋上に出ようか?
何が視える?」
「近所のビルの屋上が視えるよ」
「じゃあ、もっと高く上がってみようか」
「はい、北海道が視えます」
「じゃあ、もっと上行こう」
「地球が下に見えます」
「次はアグニのガイドにサンガに誘導願って。ハイ!」
次の瞬間アグニはいっきに次元を越え白いドームの様なところを
通り抜け白く光り輝くサークルのような所に居た。
正面には10数人の意識体があった。
隣にはフウキの存在も感じられた。
正面の意識集団の中からミーミルが語りかけてきた。
「アグニ久しぶりです、私は汝が地球に生まれる以前から汝のことを知る者、これからは私ミーミルが守護する。フウキを中心に働いて下さい」
アグニは深く頭を下げたと同時にミーミルの意識と重なり
合った。止めどなく表現しようのない歓喜の涙が溢れてきた。
数人の意識体から祝福のバイブレーションが2人に注がれた。
サンガでの学習経験は3日程続きアグニの意識はこの世界の身体に戻った。この世界では30分程の出来事だった。
フウキが声を掛けてきた「どう?」
「はい、ハッキリしたビジョンが視えました、夢とは全く違う
感覚ですね・・・」
「それでは誰とも話さずに自室に戻り、今の経験に慕っててよ。
食事の時間前にコールするから」
「はい、ありがとうございます」アグニは無言で退室した。
フウキがみんなに「今後この部屋から出た人は、まっすぐ
部屋に戻ってもらいます。人によって感じ方が違うから、
他の人に意識を植え付けないようにするためです。食事の
前に皆さんにコールしますから。つぎは、花梨ちゃん入って」
フウキの誘導のもと、花梨の意識はサンガにあった。
イズンの意識が花梨と重なっていた。サンガの空間には、
ほのかな花の香りと静かな音楽が流れていた。天国を絵に
描いたような風景がそこに
あった。花梨も3日間学習し戻った。
「次はラトリ入ってきて」
その後全員が終えたのは夜の10時を過ぎていた。
7人全員が集まった。
フウキが口火を切った「今日で天界のサンガと太いパイプが
出来たし、それぞれのガイドも決まった。従来通り各々の活動して下さい」
フウキはゼンマイ仕掛けのロボットが全部のパワーを使い
果たしたかのようにその場に倒れ込んだ。
「フウキさん・・・」
フウキは翌日の夕方まで部屋で寝ていた。側では摩耶が付き
添っていた。
シバの指揮の下全員チェックアウトを済ませ解散していた。
「うっ!摩耶かい?」
「フウキさんお目覚めですか?」
「嗚呼、よく寝たよ。パワー全開だったからね、もう大丈夫だよ、
摩耶ちゃんありがとう。ところでみんなは?」
「もう夕方の5時ですよ昨日から19時間近く寝てたんですよ」
「そんなに寝てたのかい?・・・」
「みんな宜しくって言ってました。今頃はみんな家路について
活動してる頃ですよ」
「ごめんね摩耶ちゃん」
「いいえ、どういたしまして」
「ところで摩耶ちゃん・・・僕腹減った」
「もう大丈夫ですね!」2人はチェックアウトし食事に向かった。
食事をしながらフウキは「ところで摩耶ちゃん、何か好い夢視たかい?」
「ハイ!今朝、龍の夢視ました」
「そうかい、龍は未知なるパワーの証明でもあるんだ。内在するパワーが漲ってる証しだよ」
「パワーですか?何か夢って面白いですね」
「そうだね、脳は眠ることがないから、肉体が寝たと同時に
別世界に入っるんだ、全く違う夢が重なることがあって支離
滅裂に思えるけど、ひとつの夢で2つの違う世界を視るから
なんだ。面白いよね」
2人は食事を済ませて別れた。