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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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ルトスvsコウ 訓練場で再び

ここまでのあらすじ


コウは街中で買い物を済ませたが、ボルティスたちの作戦にはまり以前街中で戦ったルトスと再び手合わせすることになった。

コウがルトスとの手合わせに誘われる数日前



ボルティスはコウをクエスの言う条件を満たした上で訓練場に連れて行くためにメグロと詳細な作戦を練った。

コウの今までの情報から、コウの師への信頼が強い点や割と性格が固そうな点を鑑みて、メグロが主体となって作戦を練るのがベストという判断だった。


「上への信頼が強いといえば我々のメンバーの中ではお前が最適なのは間違いないだろう」


「そうですね。実際あの時の広場での戦闘を見ていても少し似たところを感じましたので、間違っていない判断かもしれません。

 正直、自分で言うのはちょっと変ですが


「それでどうだ、そう言う人物、つまりお前自身ならどういう言葉だと誘いに乗りそうか?」

メグロは自分をその状況に置いた時を想像したのか少し考えたが、すぐにボルティスに回答した。


「まずはボルティス様自身が行かれるのがベストだと思います。とっかかりは面識のあるルトス様がいいかもしれません。

 知らないものよりは話さざるを得ない状況を作りやすいでしょうし、さらに親子関係ですんなりボルティス様を登場させれます」


それを聞いたボルティスはふふっと笑いながらメグロに説明の続きを促す。


「後はボルティス様がクエス様と同等の立場だというのをアピールしつつ、暗にクエス様に迷惑をかけたくないだろうと持っていくのがベストではないかと」


「ふむ、だがそれならかなりの悪印象になるだろう。今後の為にもそこまでの悪印象を与えるのは良いとは言えまい」


メグロはしばらく考え、急に何かを思いついたようで再び提案を始める。


「ならば褒美をつけるのはどうでしょうか?圧をかけてまでわざわざ師匠の言いつけを破らせた分の侘びとして必ず受け取れる形で」


「だがコウという奴はほとんど外には出ていないし、買い物も言いつけの物しか買わないそうだ。以前は中立地帯にいたらしいしあまり欲しいものが思いつかないぞ」


「彼は師への信頼が強いと聞いてますので、クエス様が得するような事などはいかがでしょう」


「そんなもので釣れるやつがいるのか?」


「私自身ならば状況によっては悪くないかと思いますので、私に似ている彼ならば成功する可能性は高いと思います」


「ふむ・・」



◆◇◆◇◆◇



あの時メグロと色々と考えたが、まさかここまでこの作戦がはまるとは思わなかったとボルティスは感心した。

コウを案内しながらもあの話し合いを思い出しボルティスから思わず嬉しくて唇がゆがむ。


確かにコウは師への信頼は強いように見えた。

現時点ではメグロくらい真っ直ぐに師を慕っていると言ってもいいくらいだった。


(しかし、あの身勝手なクエスがここまで真面目な弟子を得るとは・・本当にこの世はわからないものだ)

ボルティスは後ろにいるコウの存在を感じながら、想像できなかったクエスとコウの関係性に感心した。


案内のために歩きながらも、ボルティスはコウという魔法使いがどこまでの実力なのかが楽しみだった。

ボルティス一行は用意していた移動用のプレートに乗り一気に城門まで移動すると、周囲に魔法障壁を張った訓練場へと急ぐ。


クエスと約束したコウの実力を見極める時間はたった30分しかない。

ボルティスはルトスとコウにとにかく準備を急かす。

ルトスとコウが訓練場に着き、手合わせの準備を終えた今の時点で既に15分は過ぎていたからだ。


コウが案内された訓練場は150mほどの距離のある長方形に近い形をしていて、少し高い位置にモニターを複数配置した観覧席ともいえる場所がある。

地面や壁はコンクリートに近い質の石でできていて魔力が溢れており、周囲への被害を抑える仕組みになっていた。


コウは訓練場に立つと、師匠からもらった特別製の白銀の剣を取り出す。

それを見たルトスも白銀の剣を取り出した。


観覧席にはボルティスとメグロ、そしてコウの到着を聞いて急いでやってきたトマクが各方向から映したモニターからコウの一挙手一投足を観察していた。


「おっ、あれが例のコウってやつですかね。短く切りそろえた黒髪に・・身長は普通か・・特に特徴ないなぁ」


「別に特徴がないとクエス様が弟子にするというわけでもないのだから、そこはどうでもよくないですか?

 それより周囲の魔力展開を見た感じだと大したことないですね・・今は様子見でしょうか?」


トマクとメグロがコウを観察しつつ第一印象を述べている。

ボルティスはそれを聞きながらコウをじっと観察していた。


「まぁ、でもひきこもって訓練だけしていたという割には肝が据わっているな、実戦に慣れる機会少ないだろうに。元々そういうタイプなのか?」


トマクのつぶやきに特に反応を示さなかったが、ボルティスも内心同意していた。

トマクやメグロは知らないが、ボルティスだけはコウが魔法使いになってからまだ1年経っていないことを知っている。


普通の魔法使い1年目なんて魔法を覚えるのが楽しい時期で、1対1の戦闘訓練なんてやる者はあまりいない。

早くても2年目で単純な魔法のぶつけ合い程度、一般的には4年目くらいから徐々に魔法を使っての戦いを練習していく。


だが目の前のコウは1年に満たないにもかかわらず、臆することなく相手に剣を向けている点だけ見ても普通じゃないと判断できる。

これなら師になれる最低ラインは超えているかとボルティスは考えていた。


「以前の街中の戦闘では少し腰が引け気味だったが、それよりはずいぶん成長したようだな」


「そうですね。そこを指摘されると確かにあの堂々たる態度は別人に見えるといってもいいと思います」


ボルティスの指摘にメグロもわずかにあった違和感はそれかと気づかされ、すぐに気づかなかった自分を心の内で反省した。

そんな話をしているうちに、コウとルトスは動き出し3人は会話を止めじっくりと観察し始めた。



◆◇



闘技場の二人、コウとルトスは互いに剣を取り出し相手へ向けて構える。

相手との位置はまだ100m程ある状態でコウは剣を下ろし軽く頭を下げた。


「よろしくお願いします」


コウの行動にルトスは少し驚いた。

確かに訓練と言ったしそういった挨拶は不自然というわけではない。


だが対して知らない者達にいきなり連れてこられた挙句、剣を向け合う状態になっているのに

始まる前にわざわざ礼をするなんてよっぽど頭が平和ボケしているのか、よっぽどこちらを信頼しているのか

何にせよルトスにはコウがちょっとおかしな奴に思えた。


とは言え相手は一光であるクエス様の弟子であり、無理やり連れてきた状況もあるのでルトスも仕方なく剣を構えたまま言葉を返す。


「ああ、こちらこそよろしくな」


その言葉と同時に即座に<光の槍>を2本作り上げコウに向けて放った。

コウはそれにすぐに反応し水属性に切り替え相手の魔法に対して鋭角に<水の盾>を作り攻撃を受け流した。


コウは練習中、クエス師匠に何度もそう言った不意打ちの対処をさせられていたのでこの程度の不意打ちにはだいぶ慣れていた。

互いにさっきの相手の行動、展開されている魔力等から相手の情報を出来るだけ整理し、有効な戦い方を考える。


ルトスは半年前の街での戦いが記憶にあったことから、押しまくれば十分勝てると判断し攻めの姿勢を

コウは先ほどの型組の速さだけではまだ判断できないと、相手の実力の底を見極めるべく守りに徹する姿勢を取ることにした。



ルトスは距離を取ったまま<斬撃光>を剣に使うと、剣を振るいその軌跡をコウに向けて飛ばす。

それと同時にその斬撃より早い<光の槍>、さらに早い<光一閃>で直線の光を飛ばし、速度の違う3種の飛び道具でコウを追い詰めようとする。


だがコウも負けてはいない。

同時にコウの元へ到達するように飛ばす攻撃には、魔力多めの<水泡の盾>を2枚張りにして全てを受け止める。

<光一閃>でコウに避けを促しつつ、避けやすい方向には斬撃の光を飛ばしておく攻撃には、その状況を見切り無理をせず光一閃のみを防ぎ対処する。


上手に回避と防御をこなしつつ時々<水刃>で反撃するコウは効率よく魔力を使っていくが、ルトスは多段攻撃により多くの魔力を使い消耗が激しかった。

そんな飛び道具での応酬がしばらくの間続いた。


以前の戦いと違い回避が使える状況だからか、コウが型を判断して飛んでくる方向まで読んでるとしか思えない対応の早さで回避を見せるので、放つ魔法が有効な一撃に繋がらずルトスは苛立っていた。


コウの防御や回避が正確でよどみがないので、このままでは消耗戦になりコウに勝てる未来が見えずルトスは危機感を覚える。


これはあくまでコウを試す訓練となってはいるが、父であり当主のボルティスが見ている御前でもある。

無様な戦いを晒してしまっては今後ルトスの待遇にも影響が出かねない。


「やるな、以前とはずいぶん違うじゃないか」

何か違う流れを誘おうとルトスはコウに声をかける。


「ありがとうございます」

コウはそれに乗って返答をすると移動しながら咄嗟に身をかがめる。


そして、その後ろに作っていた横一線の<風刃>を2つ、自分の真上で交差させつつ、左右に回り込むように曲げて着弾するような軌道で飛ばした。

ルトスはそれを見て飛んでくる早さから回避よりは防御がいいかと判断し、2枚の<光の強化盾>の型をを正面やや左と右側に作る。


型を作り出した時点で相手は動かずに防御だと確信したコウは、ストックしていた<加圧弾>を自分の背に作り出し

横移動していた体勢を急に変えてルトスに向けて剣を向けて走り出す。


「ん!?」


ルトスはその様子に気付くも狙いが直ぐにはわからずとりあえず魔力を周囲に多く放出する。

下手をするとただの魔力浪費になるが、不意を突かれた時でも相手の魔法の威力を軽減できる安全策でもある。


だが、コウの方が一手早かった。

自分に<疾風>をかけると同時に<加圧弾>で作り出した圧縮した空気を前方に開放し、自分の体全体を押しルトスへ向かって飛ばされるようにしながら剣を向けたまま突撃した。


「くそっ」


ルトスはすぐに狙いに気付き、ストックしてあった非常に硬い<光の集中盾>を多量の魔力を消費しつつ、自分の目の前に斜めの配置で発動させる。

斜めにしてあるのは、風魔法の勢いで飛ばされるように突撃してくるコウをそのままジャンプ台のように上空に飛ばすためだ。


だが残念ながらコウはそこまでは想定済みだった。


集中盾の手前でコウは疾風の力により無理やり体勢と進行方向を左側へと傾け、集中盾をかわすように横を通り抜けると

集中盾の裏を狙って剣を突き出して直前に風刃を受け止めたルトスの左側の強化盾を砕きつつ

そのまま剣でルトスの左わき腹数cm切り込みを入れた。


無理な体制で剣を突き出し攻撃した代償として、コウの体勢はかなり前のめりになってしまい右肩を地面にこすりながら倒れ込みつつ止まる。

ルトスは切られたという屈辱に耐えながらも、コウが倒れ込んでいる今がチャンスと言わんばかりに剣を振り下ろすが

コウが先ほど滑り込むように切りつけた時にその場に置いてきた<風爆弾>がその場で爆発。


圧縮された空気が全方位に解放され、倒れ込んでいたコウも切りつけようとしてもろに爆発を受けたルトスも共に飛ばされて2人の距離は開いた。


戦闘シーンになると時間がかかるわ、書き直しが多いわ、その割には文章力無くて分かりにくいわと、本当に厳しいです。

一撃でドカーンと片付ける主人公って作者に優しいなと思ったり。


いつも読んでくださりありがとうございます。次話は明後日までには上げます(断定)

魔法紹介は・・時間かかるけど・・書こうか。


魔法紹介


<加圧弾>風:圧縮した空気を作り出し、一定方向に開放する魔法。基本動かせないが自分との位置固定は可能。

<風爆弾>風:圧縮した空気の塊を飛ばし、爆発もどきを起こす事ができる。

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