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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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実戦の練習に慣れていく

ここまでのあらすじ


大切な人相手でも武器を振ることができる、そのテストに合格したコウ。

そして本格的な練習が始まる。


ボサツ師匠を刺した日から7日後の昼。

俺はかなり緊張した状態で外に出る。いよいよ今日、この剣を使った実戦練習が始まる。


ふぅーっと息を吐き手の近くにアイテムボックスの入り口を作るとそこから師匠たちを刺すのに使ったあの切れ味のいい剣を射出し

柄が手元に来た瞬間に掴みそのまま魔力を通しつつそのまま軽く一振りをする。


この剣は「白銀の剣」と言われるらしく、腕のいい小隊長~大隊長クラスの魔法使いの武器としてよく使われる高級品らしい。

一応俺用にカスタムしてあるらしいが、どちらにしても高級な武器であることに違いはない。


一振りして感触を確かめると、同時に師匠たちを刺した時の感触もはっきりと甦る。

全く動じないといえばさすがに嘘になるが、今は少なくとも今日の練習に懸ける俺の強い意気込みの方が勝っていた。


周囲に濃い魔力を放出しつつ瞑想の時と同じように一定距離に固定化させる。

これでも俺にとってはなかなかの魔力障壁のつもりだが、師匠たちが同じ武器で本気で切ったら俺の片腕なんて簡単に切り落とせるだろう。


今はまだまだ覚えたい魔法、もっと効率や正確性を上げたい魔法があるので大きな負傷だけは避けたいところだ。

少し前のめりな気持ちで色々と考えていると玄関からクエス師匠が出てきた。


「おっ、コウが怖い顔をしているわね。あまり意気込みしすぎると空回りするわよ」


そう言いながら俺と同じ形の白銀の剣を頭ぐらいの高さから取り出すと落下させて柄をつかみ俺に剣を向けた。



「もう始めますか?」

少し大きく息を吐いて俺は師匠に尋ねる。


「そうね。でも始めは実戦形式じゃなくて剣合わせから始めましょ。急ぎ過ぎても無駄に怪我するだけだし」

そう言って師匠は微笑む。


俺を十分に負傷させることのできる武器を向けながら笑顔を見せる師匠に、俺は経験の差を強く感じた。

師匠の言う剣合わせは、いつも使っている切れ味の悪い・・というか切るよりも殴るといった方が正しい剣を最初に使い始めた時にやっていた練習だ。


やり方は、まず師匠が攻撃する場所に魔力の塊を先出しして俺に教えるので、俺がそれを受け止めるか避ける。

そしたらすぐに俺が同じように攻撃する場所に魔力の塊を先出しして剣を振るう。これを繰り返す練習になる。


要は事前に宣言しながら互いに攻撃や防御を繰り返して剣を使った戦いに慣れるための練習だ。

まぁ、最初の頃のような互いにほぼ動かないでやるぎこちないやりとりではなく、少しは動きながらの練習にはなると思うが。


剣を構えたままある程度師匠が近づいて来る。

「じゃ、始めるわよ」


そう言うと師匠は一歩踏み出し俺の左肩あたりに小さな魔力の塊を置く。

おれは体の左側を下げつつ、剣だけじゃなく周囲にまで十分な魔力を出しつつ師匠のひと振りを受け止める。


キン!という金属音共に俺の魔力障壁を易々と切り裂いたそのひと振りで師匠の一撃のやばさを理解した。

受け止めた剣に込めていた魔力も触れ合った瞬間に結構削られている。


万が一肩で受けようもんなら、今までの切れ味の悪い武器でも殴打痕が残ったんだ。俺はこの一撃で打撲痕では済まないことを実感する。

師匠の一振りの威力に少し驚いてワンテンポ遅れてしまったが、俺も師匠の右肩付近に魔力の塊を作り剣を振り下ろす。


師匠はいつもの練習の時と変わらない様子で楽々と受け止めた。

そのままお互い10回ほど剣を振り合ったところでストップがかかった。


「いい感じね、もう少し腰が引けてるのかと思ったけどコウは本当にすごいわね」

クエス師匠から素直に褒められるのは久しぶりだったので、緊迫した中なのに俺はちょっと嬉しくなり表情が緩む。


「いや、そんなことはないです。受け止めるたびに俺の魔力の中を容易に切り裂いてるのを感じるので恐怖もあってか必死で気が抜けないだけです」

「ふーん、あまりそんな風には見えないわよ。それに私への一撃も躊躇がない、ここまでとは思わなかったわ」


「あくまで何度もやった剣合わせですから。師匠が確実に受け止めるだろうと信頼できる分、思いっきり行こうと思ったんです」

それを聞いて師匠はまた笑顔になる。


非常に危険な練習をやっているのは自覚しているが、そんな中でも師匠の笑顔を見るのはやはり嬉しい。


「良い心掛けね。それなら次は今までの剣もどきでやっていた時の速さに近づけるわよ。ついて来なさい、コウ」

「はいっ」


一気に来る緊張感と同時に、それに臆さない程の気合いが自然と入る。

いつもの練習のおかげだろうか。あの時の師匠を刺した練習のおかげだろうか。

よくわからないが今は考える余裕がないので、一旦そのことは頭から切り離す。


キン・キン・キン・スッ・キン・スッ・スッ


短い間隔で剣と剣がぶつかる音と回避され空を切ったとき時の音が入り混じる。

俺はいつも以上に神経を研ぎ澄まし師匠の一振りを捌き即反撃する。


が、8回目の師匠の攻撃のときだった。

直前の攻撃で少し体制を崩して師匠の攻撃を受け止められないと判断した俺は、左肩への横切りをとっさに後ろに下がってかわす。


避けた剣先が俺の胸の少し離れた前を通り過ぎる。

やばかったと思ったその時、左肩に軽い痛みを覚えた。


とっさに見ると自分の左肩の下、二の腕の付け根辺りが横一線に切られていて出血していた。

傷の深さは最も深い部分で2cm程はあると思う。


慌てて俺は属性を風から水に切り替えると<治癒の水>を使って傷を塞ぐ。


「ぐっ」

と俺が少し苦しくて声を出したのもつかの間、師匠は俺の右胸辺りに突きの形の魔力を置くと即その場所を狙って剣を突き刺そうとする。


この剣合わせは相手が一定時間攻撃の合図であるマーカー用魔力を置かなかった場合は、相手の反撃は無しとして続けて攻撃をしていい。

これは相手が飛ばされていようが10回に達していなかったら関係なく行われる。


このままでは避けられないと判断し、剣合わせでは緊急時のみ認められている魔法を使う。

<風押し>で自分の右肩を押しつつ体をひねりながら避ける。


回避と同時に師匠の右胸をお返しといわんばかりにマークし突く。

師匠は豪快に回転しながら避けて俺の右二の腕に魔力のマークを出す。


俺は距離をとる為に少し飛ばされてもいいように足の力を抜いて、師匠の回転切りを正面で受け止めつつその勢いのまま1mほど飛ばされた。

そこで剣合わせの10本が終わりとなった。


「コウ、傷を負おうがお互いに10本終わるまでが練習よ。<痛覚鈍化>でも痛みはあるのだから、見ることなく傷を回復しなさい。次の1本はあきらめても相手の動きには注視し続ける事、いいわね」

「はいっ」


俺は傷の部分を軽く押さえて師匠の指摘を受け止める。

さっきせっかく褒められたのにまた怒られてしまうとは。


そう思いながら自分が受けた傷を再び見直す。

表面をかすった程度ではすまない傷、もう少し避けるのが遅かったら左胸辺りまで一瞬にして切り裂かれていただろう。


少しだけ怖くなるったが剣を力強く握り締め、まだまだと言わんばかりに俺は立ち上がる。



「まぁ、練習では反則扱いだけどさっきの風押しと体のひねりは悪くなかったわね」

「即反撃できるようにかわして直ぐ突こうと思ったので」


「でも実戦じゃ風の力を利用して突いた剣をそのままコウの方にスライドして切ろうとするやつもいるわ。気をつけるように」

「はい」


確かに俺ならそういう動きも問題なく出来る。


ただ速さが伴わないと近距離で型も感知されやすいし、俺が反撃したような突きをもろに食らう可能性もあるので、あまり有効な手とは思わないが。

まぁ俺でも出来る範囲ではあるので、一応頭の片隅には入れておこう。


「どう、まだ問題ない範囲で動ける?」

「左腕以外は・・ですね」


「なら一部がうまく動かせなくなったときも工夫して上手く捌けるように練習といきますか」

「わかりました」


止血したとは言えまだ危険な練習が続くのかと思って俺は驚いたが

実戦ではこういった状況はよくあるのだろうと考えると、良い練習になると言えるので傷を負ったまま師匠と剣合わせを続けた。


少し動きを遅くしてもらったのは助かったが、それでも体のあちこちに浅い切り傷をいくつも作って

10本の剣合わせ2セットを終えた。



途中何度も命の危機を感じて、俺はこの練習の恐ろしさを実感させられた。

その後は傷が多すぎといわれてこの隠れ家の奥にあるカプセルに数時間閉じ込められた。


まさかここまでボロボロになるとは思わなかったが

初めての実戦練習②で数時間の回復で済んだのはまだマシだと思うしかなかった。


治療が終わった後の夜、昼間の練習を思い出しながら考える。

今の俺は経験もないので実際の戦場がどのようなものか正確にはわからないが、戦場では傷を負ったので回復よろしくなんてことが直ぐにできるとは限らないはずだ。


「結構練習してきたつもりだったけど、まだ甘い認識だったかなぁ」

その日はきっちりと反省しつつ布団へと潜り込んだ。




コウの判定の義から3ヶ月ほど経過した頃


いつものコウへの指導を終え夕食を済ませた後、ボサツとクエスは2人の部屋に戻って話しをしていた。


「コウは日増しに良くなっていくわね。いやぁ、師匠ってこんなにやりがいのあるものだなんて思わなかったわ」


クエスはコウの今日の動きを撮影した映像を見ながら嬉しそうに語る。


「前も言いましたがコウが特別なんです。大体の腕のいい貴族は自分は実力があり偉いと思っているので、あのように素直に練習しませんから」


そういいながらボサツもクエスが見ている映像を横から覗き込む。


「まぁ、2ヶ月前位に一度コウがやらかしたからね。その時強く指導したのが効いたと思うわ。我ながらいい判断だったと思ってるわ」


「あぁ、コウの腕を切断したあの時ですね。確かに結果を見るといい指導でしたが、当時はやりすぎだと思いましたよ」


「さっちゃんの意見もわかるけど、コウは一応師匠になるんだから。ああいった行為は死に繋がると認識させる必要があったのよ」



それは練習用じゃない実剣を使っての実戦練習を始めた頃だった。

コウがちゃんと反応できるか試す為に少しだけ隙を見せると、コウがクエスの予想よりも早く反応して<風刃>を2発放つ。


それを慌てて<光の強化盾>で受け止めたときにコウは<疾風>状態ですばやくクエスの左側に回りこみ

<風刃>とほぼ重なった状態でクエスの左胸辺りから左肩辺りまでを切り抜こうとした。


クエスは<光の集中盾>まで使い風刃を食い止めたが、コウの剣の一撃は自分が隙を見せすぎた事への戒めとして

ある程度の魔力を集中させつつもコウの一撃をもろに食らってあげたのだった。


その時コウは遠慮なく全力で切った為クエスはそこそこの深手を負い、みるみるうちに血が溢れ出す。

それを見たコウは思わず慌てたのだろう、剣を離してクエスへ回復魔法を使おうとしたのだった。


この日の実戦練習は、師匠側が「よし」や「終わり」など宣言や合図をするまで練習は継続中というルールだったのだが

見た目ほど深手ではないものの綺麗に斬撃が決まった上での出血だったので、コウは慌てたのだろう。

だが、その様子にクエスは怒った。


クエスは傷を省みることなく回復を使おうと伸ばしたコウの右手に剣を振るう。


コウがやばいと気がついたものの気が動転して先ほど剣を手放していたので、受け止める事も出来ず反応も遅れていてかわす事もできなかったので

とりあえず魔法障壁として盾を2枚張ったが、クエスは遠慮なく盾ごとコウの右腕を切り落とし、終わりの合図を告げた。


「コウ!私はさっきまで終わりの合図をしていないはずよ、コウが切られたときは?」


コウは慌てて切り落とされた自分の右手を左手で拾うと、思いもよらない事態に慌てふためきながらいつもとは違う少しずれた型を作りつつ必死に回復を試み


「戦闘中でした。申し訳ありません」


と困惑しながらもはっきりと謝罪した。


結局その時はコウは1日ほどカプセルで回復させられ翌日の修行は全く出来なかった。

カプセルから出た後もクエスにがっつり叱られて、このときばかりはコウも相当落ち込んでいた。


「切り落とされた手を魔法で消失させられてたら1週間はカプセルに閉じ込められるわよ」


「相手が負傷しても油断しない。武器を手放し反応が遅れるなんて論外。コウが傷つけば回りを守るどころか守られる側にしかならないわよ」


等と散々言われていたので、コウが落ち込んでも無理は無かったのだが。



「確かにあの時以来、更にコウの隙が減りましたからね」


「あれなら師匠になる立場として見てもだいぶしっかりしてきたと思うし、コウ本人の不安点はだいぶ減ったとも思うわ」


「ですが、あんな指導を貴族のご子息様にでもやったら、直ぐに問題になりますよ」

「ふふっ、確かに」


「しかしくーちゃんはあんな方法をよく思いついた上に実行できますね?コウが耐えられずに壊れる心配はないのですか?」


それを聞いてクエスは少し考える。

そして少し寂しく笑って答えた。


「追い詰めるとやけくそになって振り切るところとか・・私に似ているところがあるって言ってたでしょ、その辺でね多分突破できるんじゃないかってね信じちゃうのよ」

「なるほど・・そういうことでしたか」


クエスに嫌なことを思い出させたみたいでボサツは少し反省した。


「まぁ、あれは私より危ないと思うけどね」

「そうですか?私には瓜二つに見えてきましたよ」


雰囲気を和らげたいクエスの誘いにボサツも乗って少し重苦しくなった雰囲気はどこかへと消えていった。

2人も軽く笑って和やかになり、再びコウの訓練の時の動きを見ながらも2人の会話は続く。


「そういえば魔法協会への師匠としての登録は無事に終わったのですか?」


「ええ、そっちも無事に終わったわ。道場としての登録準備も後は出すだけだし、建設もほぼ予定通りだし今のところは順調ね」


「さすがにコウが住むという事が決まっているので、邪魔やスパイもほとんどいないようですね」


「まぁ、油断はしていないけどね。嫌がらせしたい貴族は何やってくるかわからないから」

そこまで話すとクエスは一旦コウの動きを確認する映像を切りボサツの方を向いた。


「それでさ、ダメ押しにボルティスから師匠としての認定証を取っておこうと思ってるのよね」


「うーん、なるほど。悪い手ではないと思います。ですがボルティスと言えば何でも把握したがる癖がありますからやぶ蛇かもしれません」


「まぁ、そこは懸念しているんだけどね。だけど今回ばかりは私の時の反省もあってリスクをとってでも味方にならざるを得ないようにしておきたいのよね」


「そうですね。貴族として師匠になるのは協会の申請だけでも問題ないですが、今回はそれを使って道場への立ち入りを防ぐ狙いもありますからね」


「まぁ、数日後にボルティスに会って許可を求めてみるわ。ダメ元で」


「わかりました。後くーちゃん、ボルティスはくーちゃんの一門の当主なんですから様をつけておいたほうがいいですよ。一光でなくなったとき癖になっていたら大変です」


クエスは渋い顔をしつつも「わかったわよぉー」と力なく返事して自分のベッドへ戻っていく。

ボサツはその様子を見て軽くため息をつきながら、自分のベッドへと戻っていった。


今話も読んでいただき、感謝しています。

今回はちょっと切りどころがなかったこともあり、次イベント話の冒頭をくっつけました。

(きれいに切りたかったのですが、自分のスキルのなさを悔やむしかありません)


なかなか各作業が進まないので、次話は少し遅れると思いますが、ご了承いただければと思います。

では。

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