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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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実戦練習②、その内容は

ここまでのあらすじ


判定の儀を終えたコウはいつもの修行の日々を過ごしていた。

ある日、クエス師匠がこの先のことを考え実戦練習②に合格しろと言ってきた。


昼食を終えると俺は一足先に庭へ出ていつものように瞑想の準備として石の上に座る。


最近は瞑想を行う前にいつも2色同時発動の練習をするが、今は特に気合を入れて集中したいのですぐに瞑想に取り掛かった。

クエス師匠が俺には少し難しいとも言っていたが、こういう時こそ難なく難題とやらをクリアして師匠の鼻をあかして出来るところをアピールしておきたい。



瞑想を始めて10分した頃か、気配を感じ俺は瞑想を解く。

目を開けるとクエス師匠だけでなくボサツ師匠も一緒にやってきていた。


昼の練習ではクエス師匠がいないときにはボサツ師匠が指導してくれることが多いが、クエス師匠がいるときはボサツ師匠は別の事や用事を片付けていることが多く

どうしても2人要るときじゃないとここに来る印象はない。


2人共来たということは2対1ということだろうか。

まぁ、それなら実戦練習②というのもわかるが・・さっきの口ぶりからして、そんな単純なものじゃない気がするんだよね。


「お、やる気は十分みたいね?自信たっぷりみたいじゃない」


「いや、内容がわからないのでそんなに自信はありませんよ」

師匠の根拠不明のよいしょにちょっと警戒心が増す。


「でも気持ちは落ち着ているようですね」

「まぁ、いろんなことに対応できるような心構えはしているつもりです」


それを聞いて師匠たちは嬉しそうにする。

俺はさらに嫌な予感がした。



「さて始める前に一つ言っておくわ」


そう言うとクエス師匠は一歩前に出て、右側にアイテムボックスの入り口を作る。

何を取り出すのだろうと思っていたら師匠はそのまま説明を続けた。


「最初に言っておくと、コウにこれからやってもらう試験は難題ともいえるので、別に今日合格しなくてもいいわよ」


おぅ、今日じゃなくてもいいのか。

だんだん嫌な予感が増していたので、俺はちょっと安心する。


「だけど期限はつけさせてもらう。2ヶ月以内に合格できなかった場合は・・先ほど説明したようにコウを貴族街へ住まわせることは取りやめにする、いいわね」

クエス師匠は少し寂しそうな顔で説明する。


貴族街へ行かせない、つまり俺との師弟関係を解消するということだ。

そこまで重要な試験とはいったい何なのだろうか?随分ともったいぶられるので、必要以上に不安が増して逆効果だと思うですけど。


だが師匠に言われっぱなしな上に寂しそうな表情をさせてるからこそ、俺はここで男を見せるべきだと思い俺は決心を述べる。


「大丈夫です、師匠たちの力になるのが俺の目標です。なので、ちゃんと合格して見せますから」


その一言に師匠たちは少し笑顔になった。

やはり師匠たちは笑顔がいい。そのためにも俺はやり遂げなければならない。




「ふぅーっ」

クエス師匠が柄にもなく緊張した感じで息を吐く。


「じゃ、これからやることを説明するわよ」

そう言うと先ほどから作りっぱなしのアイテムボックスの入り口から剣が飛んできて俺の右前方に突き刺さる。


「それを手に取りなさい」

「はい」


俺は指示された通りその剣を右手で取り、角度を変えながら剣を詳しく観察する。

いつも実戦練習で使っている剣と明らかに違う点があった。それは剣の鋭さだ。


いつも使っている剣はこれよりもはるかに安物っぽくて、特に刃の部分はあまり切れ味が良くなく、切るというより叩きつける感じのものだった。

と言っても魔力を流せば物を叩き切ることくらいはできるので、一応剣として使えそうではあったけど。


だが今手にした剣は明らかに刃が鋭く簡単にものを切断する事ができそうなものだった。

今まで刃がいまいちなものを使っていたのでこの世界の剣は魔力頼みなのかと思っていたが、どうやらちゃんとした物もあるらしい。


「師匠、この剣はとても鋭いですね。これが本当の実戦用の剣ということですか?」


「ええ、そうよ。と言ってもそれは一般兵士用じゃなく高級品で、中隊長以上のそれなりの実力者が持つ武器になるわ」

「おぉー」


俺は偉い人用のお高い剣だと聞いてさっきまでフーン程度の感想だったのが、高価なものだから手荒に扱えないなと思い始めた。

自分で言うのもなんだが、俺って本当にお金に敏感な奴だと思う。


「それはもう一つ今までの剣と違うところがあるわ。コウ、いつものように魔力を剣に流してみて」


そう言われて俺は剣に魔力を流す。

その瞬間からすぐに気が付いた。


今まで使っていたものはいまいち効率が悪いというかなじみが悪いというかそんな感じだったが

この剣はぐんぐん魔力を吸い上げてくれるように、剣の刃が魔力で満たされていく。

今まで使っていたものとあまりに違うので、以前の剣が酷い粗悪品に感じてしまうほどだ。


「もうわかったと思うけど、それは今までの剣より多くの魔力を流す事ができ簡単に相手の魔力障壁を突き破って傷を負わせることができるわ」


「ですよね。これは今までの物と違い過ぎて・・びっくりしています」


今までの実戦練習で使っていた剣では、相手を切り付けたとしても相手の周囲に出している魔力による障壁、いわゆる魔力障壁で威力や(申し訳ない程度の)切れ味を相殺されいた。

これが型で作り上げた盾系の魔法障壁となると叩き割ることも難しいことが多々あった。


そんな粗悪な剣では結果的に叩きつけて打僕を負わせるか、相手を力任せに吹き飛ばすくらいしかできなかったが、これは明らかに相手を切ることができる武器だ。

感心しながら俺が剣をまじまじと見ているとクエス師匠が俺の名を呼んだので直ぐに振り向く。


「それで、散々引っ張ってきたけど今から試験の内容を言うわ」


それを聞いて俺は気合を入れなおす。

この剣を使って魔物でも倒せということなのだろうか。


魔物とか見たこともないのだが合格しなければならない以上、何にしてもやるしかない。

が、師匠の言葉は俺の予想したものとは大きく違っていた。



「コウはその剣を使って、私の腹を突き刺し、剣が私の体を貫通すれば合格よ」


え!?・・は?

さすがに聞き間違いだろう。俺はもう一度師匠に尋ねようと口を開こうとしたが、それにクエス師匠が気付いて再び俺に試験の内容を告げる。


「コウがその剣で私の腹を刺せばいいの。合格ラインはちゃんと貫通することね」


俺はテストの内容が、意味が、目的が全くわからずに戸惑う。

内容を受け止められなかったからか、俺はただ師匠のおなかあたりと剣を交互に見返した。


まず何でお腹なのかがわからない。

実戦練習ならば別にどこに負傷をさせてもいいはずだ。場所を限定する意味が分からない。


もっと言うと突き抜けさせるというのがわからない。

今までさんざん打撲や切り傷は負ってきたし、手加減している師匠にも少しは打撲などを負わせてきたはずだ。


なのに今更お腹貫通させるような大きな傷を師匠に負わせる必要性がわからないのだ。

はっきり言って練習なのにそこまでやるのはやりすぎだと思う。


今までの実戦練習で身をもって学んだことだが、この世界は残念なことに一般的なイメージのゲームや異世界と比べて回復魔法だけは異常に劣化している。

回復魔法を使えばたちまち傷が治ったり、回復薬をぶっかけるだけで簡単に傷が消えて元気になるのが俺の知っている異世界ってものだった。


だがここではそうじゃない。


回復魔法をかけてもらったり回復薬をかけたり飲んだりしても、傷が消えるのではなく傷の直りがかなり早くなる程度なのだ。

打撲系の傷は骨折やヒビまで行かない限りほんの1分程度で治ることが多い。

ここまでは他の小説なんかの異世界と大きくは変わらない。


だが骨折した場合は回復魔法をかけてもらうと修復速度がかなり増すものの、それでも元に戻るには最低1日はかかる。

もちろん前提として回復魔法をかけ続けてもらっての日数だ。なので通常は数日コースになる。

これは魔素体だけではなく、素体の者の場合でも回復する速度はそこまで大きく変わらない。


切り傷の場合はもう少し深刻で、ちょっとした切り傷でも傷が消えるのに10分ほどかかるし

やや深い傷になると元通りになるまでに半日くらいは必要になる。


そういう状況もあって、今まで師匠にはとにかく攻撃に対して回避や防御の仕方を重点的に教わってきた。

この世界の戦場では大きな傷を負えば負傷者として即後方待機になるので、負傷を最低限に抑えることこそが活躍する前提になっている。


そんなこの世界で刺し傷ならぬ貫通傷を師匠に与えろと言われたのだ。

しかも目標は腹に限定されている。


貫通傷ともなると完治までに2~3日はかかるんじゃないかということくらい、治療に詳しくない俺でも想像くらいはできる。

本当に師匠の意図が掴めない。


「ちょっと待ってください、師匠。貫通傷はたとえ腕でも中傷の部類に入ったと思います。程度によりますが悪いと完治に数日はかかるはずです」


「ええ、その通りです。コウはよく覚えていましたね」


ボサツ師匠がいきなり割り込んできて、俺を褒めてくれる。

この変な空気が漂うの中、いきなりボサツ師匠がいつもの雰囲気をぶっこんで来るとは思わず、俺はその雰囲気に引きずられて思わず気がそがれる。


「そうね、コウが言う通り2~3日はかかるわよ。まぁ初期の処置が適切で重点的に治療すれば、早かったら1日程度で回復できるとは思うけど」

クエス師匠もさも当然かのように傷の話をする。


俺の言いたいことはそうじゃない。

そんな傷を俺が負わせる必要性がないと、師匠がそんな傷を負う必要はないと言いたいのに。



「師匠、俺が言いたいのは・・」


改めて言いなおそうとしたところを、クエス師匠が右手を開いて俺の方へ突き出しそれ以上発言するなとという意思を示した。

そしてしばらく目を閉じて開いたかと思えば両手を横へ伸ばすと


「さぁ、ここよ。腹部なら少々ずれても構わないわ。コウがその剣でこの辺を強く突き刺せば試験は合格よ。簡単でしょ?」


とんでもないことを言っているのにクエス師匠は笑顔のままだ。

なんだかわからないが、どうしても俺に自分を傷つけさせたいらしい。しかも軽傷じゃすまない傷を。


これ以上は何を言っても仕方ないかと思い、俺は剣に再び魔力を流し突き刺す事ができるように構える。

が、どうしても1歩目が踏み出せない。


クエス師匠を傷つける事ができないわけじゃない。練習で散々擦り傷を負わせてきたし、クリーンヒットで軽く吹っ飛ばしたことも1回はある。

もちろん師匠は手加減した上でだが、それでも傷を負わせたことには違いない。


だけど腹は、無理だ。一歩違えば死に繋がる可能性が頭をよぎる。

俺はクエス師匠を尊敬しているし、かなりの好意を抱いているし、将来は側に仕えて役に立ちたいとも思っている。


ハーレムの夢は・・まぁ、いいとして、とてもじゃないけどそんな危険な傷を俺の手で負わせるなど出来やしない。

たとえ試験と言えども、それだけはやりたくない・・いや、できない。俺にはそんなことできないんだ。


「どうしたの、コウ。もしかして何かの罠だと思ってる?今回はそういうのは一切ないわよ。ただ刺せばいいだけ。

 全力じゃないけど私の体は当然私の魔力で満ちてるので、簡単には貫けないわよ。まぁ、サービスで背骨を貫けなくても合格とするわ」


師匠は平然と俺に刺せと言い続ける。俺がおかしいのか、師匠がおかしいのか。

だんだんわからなくなってきた。


でも、それでも、師匠に意味もなく重傷を負わせるだなんておかしい・・はずなんだ。


「師匠、意味もなく師を傷つけることは弟子のやることではありません」

俺は必死に反論するが、師匠は意にも介さない。


「意味があるからやっているのよ、さぁ、どうしたの?」


クエス師匠は両手を上げて俺の剣が来るのを歓迎する。俺からしてみれば悪夢のような光景だ。

だが、だが、やるしかない。じゃないと俺は師匠たちと離れ離れになる可能性がある。


とにかくクエス師匠を必要以上には傷つけないようにと剣への魔力を調整し、重い足取りで剣を師匠に向けながら俺は走り出した。


これくらいなら師匠も軽傷で済むんじゃないか、そんな俺の意図を完全に見抜いたかのように

クエス師匠は俺の剣を向けた突進をわずかにかすらせるかのようにしてかわす。


「えっ」


俺は師匠が回避すると思わなかったので思わず驚いてしまった。

がよく見ると師匠の腹部をかすった時に少し傷ができたようでそこから赤い血がわずかに流れ出していた。


「師匠血が、今すぐ回復を・・」

俺がそう言って<光の保護布>で傷を治そうとすると、師匠は俺の作った型を妨害した上に俺を怒鳴りつけた。


「コウ!!」

「は、はい」


「今のは何?ふざけているの?あの程度で私の魔力障壁を突き抜けて、魔素体の体を貫くことができると思った?」


クエス師匠から怒鳴りつけられるようにガチで怒られた。

いままで軽く注意されたことはあったが、ここまで怒鳴られたことは出会って以来初めての事だった。


「いえ、ですが師匠に重傷を負わせるのは・・」

俺は小声で反論してみたが


「私ははっきり言ったはずよ、腹を貫くように刺せと」

再び怒鳴るように怒られた。


「あっ、はっ、はい・・」

目の前で俺にとっては理不尽とも思えるお叱りに俺は完全に委縮してしまった。


そもそもなんで師匠にそんなことをしなければならないのかがわからない。

一体俺はどうしていいのかわからなくなってしまう。

今話も見ていただきありがとうございます。

ブクマ、コメ色々頂ければ幸いです。


次話も明後日には更新する予定です。では

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