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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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魔法使いになって半年、判定の儀

ここまでのあらすじ


その者の才能の限界がわかるという判定の儀の前日、コウは軽い訓練で済ませた。

そして当日・・


昨日は早く寝たこともあって、今日は早く目が覚めた。

昨日は楽しい1日だった。


昨日のような厳しい特訓も無く、師匠と楽しく話して1日を過ごせたのは最初のころ以来初めてかもしれない。

おかげで調子いいまま判定の義の日を迎えられたと思う。


しかし起きてみると周囲はいつもの朝より少し薄暗感じだ。

さすがに夜中ではないものの早く起きすぎてしまったようだ。


早起きしたからといって朝から魔法の練習をしては、昨日何のために軽めに調整したのかわからないので、俺は布団から出るといつものように部屋の中で瞑想を行う。


俺が瞑想を始めてすぐ、いつもの師匠たちが来る扉が開いた。


「お、もう起きてるわね。早めに朝食済ませて判定の儀に行くわよ」

早いなと思いつつも俺はいつもの朝の挨拶をする。


「おはようございます」

「ん、おはよ」


俺が挨拶すると律儀にクエス師匠も挨拶を返してくれる。

普段は割りとざっくりしてるのにこういうところだけ律儀なのは変だと思うが、これはこれでクエス師匠のいいところだと思う。


「えっと、行くって、そんなに早く行くんですか?」


「ええ、早朝の方が目立ちにくくていいでしょ。ただでさえ私やさっちゃんは目立つのに、そこにコウがいたら

 例の弟子じゃないかって大騒ぎになるわよ」

「そ、そういうものですかね・・」


こういうときは割りと大げさに言ってるんだろうなといつもは思ってはいるが

考えてみれば一緒に都市へ買い物に行くと、必ずといっていいほどクエス師匠はあちこちから見られている。


たぶん、クエス師匠はいい意味でも悪い意味でも目立つんだろうな。

そう考えると割かし大げさな話でもないかもしれない。


「では、いつごろに行くんですか?」

「そうね、食事を済まして・・これから30分後には出発の予定で」


「え、は、はやっ」

「それじゃ、ぱぱっと朝食を用意するからコウは瞑想でもして待っていてね」


あまりに急なスケジュール決めに少し驚いたが、クエス師匠はあらかじめ予定を聞いていないと直前でしか言わない事が多い。

本人はそれでもいいんだろうけど、周り・・今回は俺だが、急すぎてちょっと困るんだけどなぁ。


さて、愚痴を言っても仕方がないので瞑想をしつつ食事が出来上がるのを待つ。

さっきまで会話していたが、その後ろでは既に皿や食材が動いていたので5分もあれば準備は終わるかもしれない。


そろそろ食事の準備を俺もやってみたいなぁ、そう思っていると師匠から食事が出来たと声が掛かり、瞑想を解きテーブルへと座った。


「あれ?ボサツ師匠はまだ起きてないんですか?」


「いや、もう先にメルティアールル家に戻っているわよ。向こうでの準備が必要だからね。

 あまり知られないようにする為には人を使えないから、さっちゃん自身で行ったのよ」


もぐもぐと口に食事を含みながら師匠は俺の質問に返答する。

食べ物を口に含んで話すのは、貴族としてはもちろん一般的にも礼儀としてNG行為だと思うんだけど。


クエス師匠は急いでいる時によくこれをやるんだよなぁ。

ボサツ師匠がいたら絶対注意されてるよ。



食事を終え、服装を着替えて隠れ家の中の転移門へと向かう。

師匠は目の前で一瞬で服装を着替えるが、俺はまだ自分で脱いで着るの動作が必要だ。


あの一瞬の着替えは新型の魔道具が必要なのと、着替える服を触れているまたはアイテムボックス内にある状態が必要らしい。


先日の約束から考えてこの儀式が終わった後からはささっと服を変えられるようになると思うので

これでゆっくり着替えるのも最後かと思うと感慨深いとも言える。


そんな余計なことを考えていたらクエス師匠に急かされたので、急いで着替えて転移門でいつものアイリーシア商会を経由しメルティアールル家へと飛んだ。



先に俺が飛び、その後クエス師匠が飛んでくるのを待って合流する。

飛んだ先はメルティアールル家の城内・・なのだろうか。


地面は綺麗な黄色の絨毯で覆われていて、周囲は白い石壁でできている廊下の行き止まりに転移門が設置してあった。

さらに廊下の行き止まりだからか兵士どころかいつもの魔法による障壁もない。

兵士の守りもないしなんか変だなと思いつつも、クエス師匠の先導について行き俺は判定の儀を行う儀式の間へとたどり着いた。


着いた部屋は結構広く中央には直径5mほどの巨大な魔方陣が描かれている。

魔方陣の外周には18個の色違いの棒が地面に刺さっていて、それぞれの棒の先はそれぞれ違う色のクリスタルが付いている・・いや少し浮いているようだ。


色んな属性の魔力が薄く部屋中に漂っているが、ごちゃごちゃ感はなくなんだか落ち着くいい混ざり具合だと感じる。

部屋にはボサツ師匠と知らない僧侶風の40代くらいの男性が立って俺達を歓迎してくれた。


その僧侶風の男は黄色のローブで縁はすべて金色になっている。

明らかに光の僧侶・・というか魔法使いなのはわかる。見た目のアピール力が半端じゃない。


「待っていましたよ、コウ。今日はここで判定の儀を行います。でも緊張しないで楽にしてくださいね」


「君が今日儀式を受ける者か。私はこの儀式を見守る役目でここにいる、光の神殿から来た者だ。まぁ、私のことは特に気にしなくていい」

「は、はい」


いきなり話しかけてきた上に、気にしなくていいとか言われてもめっちゃ気になるんだけどな。

しかもこの人、見届け人みたいな存在のようだ。まぁ、ぶっちゃけて言うと監視役なんだろう。


つまりこの人にこれから先のことを隠すことなどできないということだ。

俺の才能をあまり見せたくないと師匠達は言っていたのに大丈夫なのだろうか?


俺の心配をよそに判定の儀の最終準備が始まる。

ボサツ師匠は石の台座の上にある光るパネルのような物を操作した後、台に向かって魔力を流し始める。


師匠の行動からすぐに、魔方陣の外周にある18個の各種クリスタルが光り始めた。漂っている魔力に変化はないがなかなかきれいな光景で思わず見とれてしまう。

しばらくすると床にあった五芒星が中心に描かれた魔法陣がいろんな色に変化し始めた。


こんなことを言っては悪いが、なんだか小部屋に飾られたイルミネーションみたいだな、これ。

未届け人の男は少し離れてその作業の様子をじっと見つめている。

ちゃんと行われているかの確認でもしているのだろうか?


「コウ、今から儀式を説明します」

準備が完了したのか、ボサツ師匠が話しながら先ほどのパネルの場所から離れて俺の方に近づいて来た。


「儀式の中でコウのやることは簡単です。あの魔法陣の中心に立っていればいいだけです」

「立ってるだけ・・なんですか?」


「ええ、後色々と違和感を感じたりするかもしれませんがそれに抵抗しないでください」

「は、はい」


師匠の言うことなので、よくわからないがとにかく従うことにする。

少なくとも害はないだろうし。


俺はボサツ師匠の指示通り魔方陣の中央に向かう。

クエス師匠は後ろから「気楽にね~」と手を振って見送られた。


見送るって言ったってすぐ目の前の魔方陣に行くだけなんだけどね。

何かクエス師匠が楽しそうにしてると少し不安になる。本当に大丈夫なんだよね?


少し不安な表情でボサツ師匠の方を見たが、何事もなく笑顔で返されたので不安を主張することは諦めてそのまま魔法陣の中心へと進んだ。



魔方陣の中心に立つと、変な感じがする。

不快ではないけれど、周囲に様々な属性を感じてなんだかむず痒い。


「それでは魔力を放出しながら目を閉じてください。自分の魔力がコントロールを失ったように感じるかもしれませんが、抵抗をせずに動くままに魔力を預けてください」


ボサツ師匠の指示通り俺は特に抵抗することもなく魔力を出し続ける。

不思議なことに周囲の魔力と打ち消すのではなく、もやっと混ざり合ったかと思うと特定の方向にだけ広がっていくように感じた。


「これはちょっと時間かかりそうですね」

ボサツ師匠がぼやくかのように話している。


「色が多いのも原因の一つでしょう」

これは男の声なので、あの未届け人だろうか。


「才能があるのも原因の一つでしょうね。コウ、返事はしなくていいからそのまま楽な状態で1時間ほど待機しててね。そうそう、終わったら大きな声で呼ぶからとりあえず翻訳の魔道具も切っておいてね」


今度はクエス師匠だった。

目を閉じたままずっと1時間立ちっぱなしとは、必要なこととはいえなかなか苦行だと思う。


それと翻訳の魔道具も一度切らないといけないのか。

師匠の指示通り、体内にある翻訳の魔道具に対して魔力をカットした。


これで話しても通じないし、何を言われても聞き取れない。

だいぶこの世界に慣れてきたとはいえ、言葉も通じない状況になるとさすがに不安になる。


そのまま30分ほどたっただろうか、ただぼーっと立っていたら周囲が少し騒がしく感じた。

だが話している言葉がわからないこともあり、どんな雰囲気なのかもわからない。


周囲の魔力はなんか数か所俺に迫っているように感じるが、そんなことはどうでもいい。

俺は早く終われと思いながらもそのまま立ち続けた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



その頃、クエス、ボサツ、魔法協会から来た儀式の監視役の3人はコウの結果に感心していた。


「こ、これはすごい。ここまでとは思いませんでした。お二人が隠されるのも納得がいきます」


「ふぅーっ、これはちょっと私の自信が揺らいだ気がするわ。私は宙37、光32だったから別に負けてはいないけどさぁ」


「私も慢心してはいけないと思い知らされました。私は3色30越えでしたが・・最高33でしたから」


クエスもボサツもコウの結果を見てちょっと意地を張ったようなセリフを吐いていた。

そんな上の上の世界での戦いを聞いて、監視役の男はただ黙るしかなかった。


魔法使いになってから半年経ったコウの結果は風36、水34、光29、氷23だった。

光がLV30を超えなかったものの、どれか1色でもLV30超えれば精霊の御子と言われ丁重に扱われる。

この連合内では、貴重な存在とされるのに十分な結果だった。


しかし師匠であるボサツとクエスはこれでさらに警戒感を強めた。

この才能を知ったら貴族は絶対に放っておかないと確信しているからだ。


「今回の監視役は・・セルバスさんだっけ?約束通りこの場での記憶は相当ぼやけたものになるけど・・絶対に言わないこと、いいわね」


「も、もちろんです。それが争いを生まないためにもベストな判断だと私も理解しておりますので」


「クエス、心配しすぎですよ。事前に魔法も施してあります」

「わかってるわよ、でも念には念を入れてよ」


「ええ、そうですね・・しかしコウは本当に立派に育ちましたね」


「そうね。コウがよく言っているように、いつかは私とボサツと肩を並べて戦場で共に戦えるかもね。そのためにもこれからも厳しくいかなきゃ」


クエスのやる気を見てボサツは笑っていた。

監視役の男セルバスはそんな2人の話を耳に入れず、忘れるとはいえずいぶんなものの監視役を引き受けてしまったと後悔していた。


「さて、そろそろ正式な結果は取れた?」

クエスの質問にセルバスは慌てて動き出す。


「あ、少しお待ちください。きっちりと記録に残しますので・・予定通り3枚でよろしいでしょうか?」


「はい、3枚でお願いします」

ボサツは落ち着かせるように、ゆっくりと答える。


そしてセルバスは18色で縁取りがされている特殊な紙を取り出し、台座に紙をセットして上から輝く粉をかける。

粉が台座に置いた紙に触れ光りを発すると、その紙にコウの判定の儀での魔法LVの結果が転写された。


それを3度繰り返して無事に3枚の紙を作成すると、セルバスは少し疲れたように一息吐いた。

そしてその3枚をボサツ師匠に手渡した。


「こちらがコウ殿の本当の判定の儀の結果となります。3枚作成しましたのでお渡しいたします」


「ありがとうございます。それでは一度リセットして次は魔法協会に提出するための物を作らないといけませんね」


「こっちもちゃんと準備してきたわよ、判定の儀の偽装用の道具。うちの家に残っていたやつね」


そう言うと、クエスは紫色の手袋のようなものを取り出す。

この手袋を装着したまま判定の儀や魔法LVをチェックするこの儀式を受けると、本来よりも低い数値を出せるという代物だ。


普通は高く出た方が、将来いい相手を見つけられたり、精霊の御子として連合全体から支援を受けれたりと特典が多いため、こんな不利になるものを使う者はいない。

だがアイリーシア家は3姉妹の時に、その才能が明るみに出るのが危険だと判断しこのような物を作らせたのだった。


普通に考えると秘宝どころか何も役に立たない代物なので、この手袋は奪われることなく都市アイリーの保管庫に眠ったままになっており、今回クエスが持ち出してきた。


「そのようなものが存在していたとは・・」

「それだけ貴族社会がギスギスしているのよ」


呆れるセルバスに対してクエスはそう冷たく吐き捨てる。


その様子を少し寂しそうに見ていたボサツは気を取り直してコウに大きな声で呼びかける。

「コウ、もう目を開けていいですよ。ひとまず休憩にしましょう」



今話も見ていただきありがとうございます。今話は坦々と話が進んでいます。

次話は週明けになる予定です・・頑張ります。


気がつけばブクマがだいぶ50に近づいてきています。

3章終わるか100話までに50超えられると嬉しいな。

時間がありましたら、ブクマや評価、感想などなんでも頂けると嬉しいです。では。


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