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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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街中での奮闘の反省会前

ここまでのあらすじ


コウが街中で平民を守るために貴族にちょっかいを出してしまう。

防戦を貫いたコウだったが、結局クエスが事解決してしまう。

街中での戦闘後、俺は黙って師匠の後ろについて歩いていたら転移門が見えてきた。

石で囲まれたエリアだし、兵士もいて障壁も張っていることからこれは他の都市へ飛べる転移門があるとすぐにわかった。


だけど、食事処での会話からもまだこのエリアで買い物が残っていたはずなのに。

多分俺のせいで早期帰宅に予定が変わったのだろうと思いつつ、申し訳なくも師匠が忘れている可能性も考慮して尋ねてみる。


「すみません、後1軒寄る予定のお店は・・」

「今日はいいわ、そっちは後でうちの者に行かせるから。今はとにかく隠れ家に戻るわよ」


師匠の言葉ですべてを悟った。

やはり俺がやらかしたトラブルで今回は緊急の帰宅ということだ。


今となっては本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

初めてのお出かけで俺は浮かれすぎていたのだろうか、とんでもないヘマをやってしまった。


この世界の常識に早く馴染んで欲しいとボサツ師匠にも座学で度々言われていたし

出発前にもトラブルを起こさないようにと再三クエス師匠に言われていたのにこの様だ。


とはいえやってしまった事は、もう無かったことにはできない。

せめて早く謝罪をと思い、俺は師匠に向かって90度に頭を下げ


「本日は本当に申し訳ありませんでした」


と、あまり騒ぎにならない程度の声で精いっぱい謝罪した。

本当は土下座でもしたかった気分だったが、ここでさらに悪目立ちすればそれは謝罪にすらない。

まだそれくらいの頭は俺にも残っていた。


「はぁ、別にいいわよ、コウ。そこまで気にすることじゃないわ。コウの判断は言うほど間違いってわけでもないし」

「えっ、いや、でも・・」


「例えば相手がボルティス様で、コウが向こう見ずに突っ込んで行けば、私は何が何でも止めたわよ」


ただでさえ迷惑をかけて申し訳ない状況なのに、その上慰められてしまい俺はもう何一つ言葉を発せなかった。

フォローされて謝罪も違うし、ですよね~と開き直るのも論外だ。正直何を言っていいのかわからない。


「なに?私が必死に止めてもそれを振り切れる自信でもあったの?」

「ま、まさか、そんなことはできませんよ」


俺が黙りこくっていたからか、師匠はうまく話をずらして俺に発言させてくる。

少なくとも何も言えない重苦しい状況ではなくなったからか、少しだけ俺の気分も落ち着いた。


師匠は本当に優しいよな、そう改めて思わされる。

そしてさらに気を使わせている俺は自分自身がみじめに思えて仕方なかった。


「さすがにここで反省会というわけにはいかないから、さっさと戻るわよ。せめて転移門に入るときはシャキッとしてね」

「わかりました」


師匠の笑顔にちょっとだけ心が晴れる。

まぁ、後からきっちり怒られそうだけど激怒状態じゃないことが分かっただけでも俺はほっとした。


その後転移門を使いアイリーシア家を中継して隠れ家へと向かう。

わざわざ中継するのはやはり隠れ家というだけあって秘密の場所だからなのか。


その辺りを詳しく聞きたかったが、さすがに今はそんな雰囲気ではないので次の機会にする。

今はただ、これ以上問題を起こすことなく隠れ家へ戻ることだけを考えた。



隠れ家に戻ると師匠は俺の前で服装をいつもの楽なものに一瞬で着替える。

いいな、それ。俺もそれ出来るようになりたいわ。


「コウもその堅苦しい格好はもういいわよ?いつもの服に着替えたらどう?」

「はい、すぐ着替えます」


そう言って俺は大部屋に置いていたいつものシャツとパンツに着替える。

やはり動きやすくて、すっきりしてて、さらに高くなさそうなこの服装は気分が落ち着く。


そういや今から反省会か、そう思って師匠を見上げると師匠は俺の目線に気付く。

「ん、あぁさっき言ったやつ?さっちゃんにもう一度説明するのも面倒なので戻ってきてからやりましょ」


「はい・・そうですね」

ちょっと拍子抜けというか、先延ばしにされてもやもやするというか。


「少し暇になるからコウは瞑想なり、魔法書読むなり、庭で型の練習をするなり自由にやってていいわよ。私は少しやることがあるから部屋に戻るけど、何かあったら大声で呼べばすぐに行くから」

そう言うとクエス師匠は自分の部屋へと戻っていった。


ちなみに師匠たちの部屋はまだ一度も見たことないが、今はそんなことを考える余裕も気力も無い。

自責の念が消えないので、型の練習をするにもいつものように集中できそうにないから、大人しく部屋の中で瞑想をすることにする。

心を少し落ち着けるにも、瞑想を行う方がいいと思ったからだ。



20分ほど経った頃だろうか、扉が開いたので周囲の魔力を球形に維持しつつも目を開くとボサツ師匠が帰ってきていた。

最近は瞑想をしながらも目を開けて話すことくらいは出来るようになった。

もちろん話に夢中になり過ぎると、周囲の魔力の形が崩れてくるのでまだまだなんだけど。


「ボサツ師匠、お帰りなさい」

「あら、コウの方が先に戻っていましたか。ということはくーちゃんも戻っているのですね」


「はい、多分部屋の方にいると思います」

「ありがとう」


ボサツ師匠は礼を言うとすぐに部屋の方へ向かっていった。

先に戻っていたことを言われた時に俺は瞑想で維持している魔力を少し乱してしまった。


少しは心を落ち着かせたと思っていたが、やはり自責の念は簡単には消えない。

まぁ、あれだけのことをやらかしたんだし当然だろう。

可能ならば今日の朝に戻って自分で自分に問題を起こすなと念を押したいくらいだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「くーちゃん、戻りましたよ」

扉を開けながらボサツは声をかける。


クエスは黒いパネルをいくつも浮かべ、今日のコウの行動を順番にまとめたものや、コウの一連の動きをまとめた動画を眺めていたが、ボサツの声に反応して振り向く。


「さっちゃんおかえり~、今日は本当にいろいろとありがとう」

と笑顔で答えた。


「いえ、コウのことをしっかりと知っておくために必要なことですから。こういうことでしたら協力は惜しみません」

「そうね・・でも色々とまいったわ」


そう言ってクエスは両手を頭の後ろで組む。

その様子を見ながらボサツは扉を閉めてクエス隣のふかふかの絨毯の上に座り、近場に会ったクッションを抱えてクエスと同じくパネルを見つめる。


隠れ家のボサツとクエスの共同部屋ではベッドや机、鏡のある化粧台や研究道具置き場以外の床の大部分に

ピンク色の温かいフワフワの高級絨毯が敷かれている。


ボサツもクエスも疲れた時はこの絨毯の上で寝転がり、ごろごろしていることが多い。

自国に帰った時は二人とも王族という立場上、メイドや侍女が目を光らせていることもありこういうことができないので、その点では二人とも隠れ家生活を満喫している。


「そういえば先ほどコウが瞑想していましたが、コウが先に帰っていたことを話すと集中がかなり乱れていました。あれは相当気にしてます」

「でしょうね・・おかげでどう切り出したものか悩んでいたのよ」


「そうでしたか。遠目で見ている分には今日のコウの対応は及第点だと思っていたのですが」

「うーん、まぁ・・ね」

クエスは煮え切らない返答をする。


返答に困ったのか、ボサツは横でしばらくコウの動きを録画した動画を見ていたが、コウが平民を守るために飛び出していく映像を見てクエスに尋ねる。


「コウは1度目は我慢していたんですね。では2度目はなぜ突っ込んで行ったのですか?」


「突っ込んで行ったときは私が軽く背中を押したからよ。とはいえ、あんなに勢いよく行くとは思わなかったわ」


そう言うとクエスは時系列順に並んでいる黒いパネルを1枚少し近づける。

パネルには『これは少しまずいかもね、のクエスの一言にコウが突撃する』と書いてある。


ボサツは少し考えた様子だったが、すぐにクエスに話しかける。

「でもそういう事ならコウはくーちゃんの制御に従っていたとも言えます。問題がないとは言いませんが、そこまで大きな問題にしなくてもいいと思います」


「そうだけど・・あの行動、融和~支配の思想で言えば超融和派になるわ。今後トラブルの種になりそうだし、下手をするとコウの身が危ないじゃない」


「ですが、私やくーちゃんの制御が効きさせすれば、その点は心配は薄いかと思いますよ」


「常に私たちの制御下ってわけにいかない場合もあるわ。それに不満を溜めさせればいつかは爆発するわよ」

そう言いながらクエスは思い出す。


コウは、いくらクエスが甘い言葉で誘惑したとはいえ、親どころか今までのすべてを捨ててこの世界を選んだ。

多分その時にエリスも何か後押ししたのでは?とクエスは思ってはいるものの


1日で全てを捨てると決めるその動きはよく言えば決断力があるが、悪く言えば思い切りが良すぎるし、計算もなく迷わず持っている物を捨てきれる危うさがある。

そのことをクエスが指摘すると、ボサツも真剣な表情で考え出した。


「一番の問題は超融和派の思考の上、窮地に立つと計算もなく行動するところよ。まさにいつ周りを巻き込んで爆発するかわからない爆弾よ、これは。策謀渦巻く貴族社会でコウが5年問題を起こさなかったら、正直奇跡だわ」

「ふふふっ」


クエスの問題部分を聞いてボサツは思わず吹き出してしまう。

その反応にクエスは怒りはしなかったものの、笑っている場合じゃないってと言わんばかりの困惑した表情を浮かべた。


「もう、ちょっとさっちゃん、真剣に考えてる?」

「ええ、すみません」


と答えるものの、笑顔のまま真剣な表情に戻らないボサツ。

そして、ボサツが笑った理由を説明しだす。


「確かにくーちゃんの言う通り、コウが自ら危険な状況へ飛び込む懸念は大きいです。ですが・・計算もなくかなぐり捨ててでも目的を達成しようとするのはくーちゃんそっくりじゃないですか」

「・・・・・」


クエスは意外な盲点を突かれ、うまく言葉を返すこともできず絶句してしまう。

その様子を見てボサツは楽しそうにしていた。


「クーちゃんから見たコウは危なっかしい存在なんでしょうけど、私から見れば危なっかしい存在が2人に増えただけです。そこまでおろおろしませんよ」

「いや、でも・・・まぁ・・・私はそれなりの地位があるし、さぁ・・」


クエスは何とか抗議してみようかと思うが、どう考えてもその指摘通りだとわかり困ってしまう。

と、同時に自分が客観的にはあんな感じなんだと言われた気がして、今までの自分行動で周囲に迷惑をかけた事に申し訳ない気持ちになった。


「でもコウは女性、今のところ私やくーちゃんに興味津々なのでまだ制御しやすいですよ。私たちへの敬意もとても強いですし」

「私だって・・・敬意くらいもっているわよ」


なぜかコウに対抗意識を燃やしだしたクエスに、ボサツはわかってますよ、と優しく笑いながら接する。

ボサツの発言に、コウを叱る気力も理由もすっかり奪われてしまったクエスだった。



「まいったわこれ。私は今日のコウを注意する立場にないとは思わなかった」

「まぁまぁ。でもくーちゃんはコウに、私たちへの迷惑を気にしすぎるのは良くないという事は言った方がいいですよ」


「そうね、そこも懸念だったのよね」

「ええ、逆にくーちゃんは驚くほど周りへの迷惑を気にしませんけど」


「いや・・まぁ、一応は気にしているわよ・・。もうこれ以上責められると・・コウを注意するだけの足場が無くなるから・・勘弁して」

結果的にクエスのまとめていた注意すべき点は3つから2つに減らし、コウに指摘することになった。


クエスの落ち込み具合からさすがに意地悪し過ぎたかとボサツは反省し、クエスを励ましながらコウのいる大部屋へと向かう。

ボサツは妙に楽しそうにし、クエスはとても足取りが重い。

なんだかんだ、仲のいい対照的な2人だった。


最近更新が遅くなり申し訳ないです。

GW期間中もブクマが増えたみたいなので、明日も頑張って更新します。

評価などなど、色々と頂ければ幸いです。ブクマがきりのいい数字に近づいてきたので何かできないかなと思案中です。

色々考えるよりは、まずは更新ですよね。


今話も読んでいただきありがとうございました~。

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