表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
79/483

平民と貴族の揉め事を目にして

ここまでのあらすじ


クエス師匠とコウは一緒に食事を済ませた。デートですね、これは。


師匠の後ろに付いて店を出てから少し歩き、次の買い物の店に入る。

ここは魔道具ではなく鉱石のようなものを置いている店だった。


カウンターの近くには良質な魔石あります!の紙が貼ってある。

魔石は基本的に魔道具を動かすための電池のようなもので、使い切りと再充填が可能なものがあるらしい。


もちろん高価なものは再充填できる魔石の方だ。

師匠はいくつかの鉱石と、店員に話して数個の魔石を選んで購入した。


これは師匠のものだろうから俺が持つことはないのかなと思っていたら、購入したものを箱に詰めて遠慮なく俺に渡してきたので素直に収納する。

そう言えば俺の役割は付き人という名の荷物持ちだったか。

値段見て無かったので手早く収納したが、きっとこれも高いものなのだろう。



買い物を終え店を出ると師匠が話しかけてくる。


「これからエリア2へと移動する門へ行くけど、エリア1の外壁まで行かなきゃいけないから、歩いたり移動板に乗っても時間がかかるし小型の転移門で飛ぶわよ」


「小型の転移門ですか」

「ええ、大きい都市の街中には結構設置してあるのよ。料金はかかるけど街中の移動には便利だからね」


転移門と言えばクエス師匠の仕事にもなっているアイリーシア家の得意分野だったはずだ。

やはりこの街の転移門もアイリーシア家が手掛けているのだろう。


そう考えると俺の所属する家って流通という基幹産業を支えている重要な貴族家なんだよな。

転移門に関して色々と興味がわいてきたので色々と聞きたかったが、俺は今は従者なので聞くのは隠れ家に帰ってからにすることにした。


店を出て歩くとすぐに小型の転移門がある場所へとたどり着いた。

外観は・・入口だけが透明の大きめの電話ボックスといったところだろうか。


いや、これは電話する場所じゃなくワープする場所なので転移ボックスという言い方が合ってるかな。

そんな1人しか入れなさそうな箱の前のプレートに師匠の指示通り俺の身分証をかざすと、両側に開き中に入れるようになる。


こういうところでも身分証を使うんだな、と身分証の大切さを改めて思い知らされる。

日本にいたときなんか、学生証なんて何に使うかわからない代物だったのに・・世界が変われば常識も変わるといったとこだろう。


師匠がプレートをかざした場所に手を触れると、ピーンと音がして転移ボックスの中が明るくなる。

どうやら支払いを終えたということみたいだ。


「操作のためにちょっと一緒に入るわよ」

そう言って師匠は俺を先に入れつつ、一緒に転移門のある狭い装置の中に入っていく。


中には地図が表示されていて飛べる先が地図上から選択できるようになっていた。

横に飛ぶ先の一覧や入力できる空欄もあることから、わかっている人は番号や住所っぽいものを入力して飛ぶ先を選ぶこともできるようだ。


「えっと、ここね」

そう言って師匠は地図上のエリア2へ移動出来る門の側にある転移門を選択する。


「飛んだら装置内の光が穏やかになり、扉が開くのですぐに出るようにね。じゃないと私がそこへ飛べないから」

「すぐに出て待っておけばいいんですね」


「そうよ、勝手に変なところに行っちゃだめよ?」

「い、行きませんよ・・この街は初めてでわからないところだらけなんですから」


その返事に師匠は満足そうに笑って転移ボックスから出ていく。

師匠が出ると1人と認識されたのか扉が閉まり足元が銀色に光る。


おおっと驚いているうちに、一瞬で外の風景が変わった。

もう飛んだということなのだろう。ここへ来た転移門と同じで一瞬だった。


すごく便利なんだろうなと思う反面、結構いい料金しそうだよなとも思う。

あまり安かったら使う人が多くて点在している程度じゃ足りなくなるはずだし。


扉が開いたので、転移ボックスから出る。外観を見たが、これはどれも同じつくりのようだった。

俺が外に出て30秒もしなうちに師匠が転移ボックスから出てくる。これってすごく便利な魔道具だな、と俺は感心した。


「さっ、行くわよ」


師匠の一言で俺は師匠の後ろに付き、エリアを行き来できる門へ向かう。

遠くからはいまいちつかめなかったが、目の前で見るとこのエリアを分けている壁はかなりの高さだ。

目分量で測っても10m以上はありそうだ。


これだけ明確に区切られているならさぞかし厳重なチェックがあるのかと思いきや

師匠と俺は身分証を兵士に見せながら歩いていくだけで簡単に素通りできた。


「簡単に、通れるんですね?」

俺が拍子抜けした態度で尋ねると


「ん?ええ、そりゃそうよ。貴族エリアにいる人が平民エリアに行くのだからチェックするだけ手間なだけじゃない」


「あ、言われてみればそうですよね・・」

「逆ならもちろん厳しいわよ、ほら、こっちからだと10人くらい並んでいるでしょ」


そう言って師匠が視線を向けた先には、貴族エリアに入る人々が列を作って並んでいた。

兵士の数も、さっき通ってきたところは2人しかいなかったのに、こっちには10人以上が監視している。


身分による格差はボサツ師匠から習ってはいたものの、目の当たりにするとやはり厳しすぎないかと思ってしまう。

日本ではちょっとした上下関係はあっても、公の場では一応平等扱いだったからなぁ。


風景も少しだけ変わった。

ここも全て地面には石のタイルだが、輝いている感じはない。

とはいえ綺麗にしてあるので古臭く感じるほどじゃないが。


車道と歩道の間には貴族エリアとは違って柵が設置されていて、時々緑のボードのようなものが地面から少し浮いて人を乗せて動いている。

中には巨大な四角な箱の底の様なものが大勢の人を運んでいる様子も見える。あれはバスみたいなものなのだろうか?


あまり人のいなかったエリア1とは違い、エリア2は人が多い。

これは師匠とはぐれるとやばいなと思い、あまりきょろきょろすることなく師匠の背中を見てついて行った。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



さかのぼる事、コウとクエスが買い物に行く前日の夜

ボサツとクエスは隠れ家の部屋で明日の街へ出かける時にやることに関して相談をしていた。


「事が起きても問題ないようにボルティス様にも言ってあるので、さっちゃん明日は頼んだわよ」

「ええ、任せてください。コウにとっても大事なことですからやり遂げますよ」


「それに8ヵ月後の事にも関わるからね」


「それはいいのですが、くーちゃんは連絡を忘れないようにしてくださいね」

「大丈夫よ、今回の買出しでコウを連れて行くのはこれがメインの目的なんだから。忘れるわけないじゃない」


そういうと部屋の明かりを少し落とし二人は眠りに就く。

明日コウがどう行動するのかを楽しみにしながら。



翌朝ボサツは朝一で自国に帰り用事を済ませると、昼前にはクエスとコウが来ている都市メルベックリヌへとやってきた。

そのままクエスが事前に打ち合わせていた男、ギラフェット家の第6王子ルトスと貴族エリアにある店で会う。


「お会いできて光栄です、三光であるボサツ様。私がクエス様と約束していたルトスです」


「はじめまして、ルトス。貴方程の人が協力してくれるとは思いませんでした、今日はお世話になります」


「こちらこそ失敗しないように気を付けます。父から協力しろとの指令もありましたのでそんなに気にされないで下さい」


簡単に自己紹介をすると、ボサツとルトスは今日の計画の最終確認を行う。

ボサツの前にはこの都市のエリア2の一部の地図が広げられている。


「この広間にクエスたちが入ってきたら、ショーの開始です」

「直前の合図はさすがにあるんですよね?」


「ええ、私から合図します。それよりも相手はちゃんと確保できていますか?」

「もちろん準備にぬかりはありません。そこそこタフな平民を1人金で契約済みです」


「わかりました。それでは私は直前まで下見と周囲の状況を監視しますので、ルトスも時間までには準備済ませて置いてください」

「はい、了解しました」


確認が終わると2人は別々に店を出て行動を開始する。

いよいよ手の込んだコウへの抜き打ちテストが始まる。


ボサツはコウがどういう行動を取るのかわくわくしつつも、万が一のために防御魔法が届く位置にスタンバイできるよう

簡単な変装をしつつエリア2の指定の広場へと先にやってきて、付近で待機した。



これはクエスの根回しによりボルティスも承認した、コウの実地での行動テストだ。

付近の兵士は遠ざけられ、万が一通報などがあったとしても動かないように事前に言われている。


クエスもボサツもあくまで確認という位置づけで重大な事として捉えていない実地テストだったが、この場を提供する一門のトップであるボルティスはクエスたちには興味のないふりをしつつ

内心ではここまでの事をやるのかと今回のテストに強く興味を示し、クエスたちには内緒で部下を数人連れて直接現場を見れるよう手配していた。


そして、その時がやってきた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



クエスとコウは黙って歩くこと数分、2人は目の前に開けた広場にやってきた。

この広場は真ん中には噴水が設置してあり、憩いの場といった感じの場所だ。


噴水の周囲には長椅子がいくつか置いてあり、平民たちが座り疲れを癒している。


さっきまでの貴族エリアには無かった風景に俺は驚きつつも、ちゃんとこうした場があることに

この国が住民サービスを怠っていない国なんだなと感心していた。


広場にある程度入ったところで、前を進む師匠の足が止まる。

師匠が振り向いたので、その視線の先を見ると2人の男がもめているようだった。


1人はやたら身なりのいい服装で、たぶん貴族か準貴族だと思われる。

もう1人は明らかにその辺の人たちと同じ格好で、たぶん平民なんだろう。


「平民と貴族がもめる事ってあるんですね」

と小声で俺が尋ねると


「他の都市では結構見る光景よ。ただこの都市ではそう見ない光景なんだけどね」

と師匠も小声で返してきた。


よく見てみると平民は必死に何かを訴えるが、貴族っぽいものはそれを聞く気はなく平民を問い詰めていた。

正直あまり見たくない光景だった。


周囲がただ見守る中で、上の立場の者が下の立場の者に一方的に攻撃を加える光景なんて、日本ではいじめっ子といじめられっ子の間でぐらいしか見れないものじゃないだろうか?

公共の場でいい大人がそんなことをやっていては、日本では誰かが連絡して即警察がやってくるだろうから。


この広場にいる人たちもエリアから考えてほぼ全員が平民なんだろう。

あまりあれに関わりたくないと言わんばかりに遠巻きで様子を見ている。


俺が解決できそうな問題なら、首を突っ込んででもこういう状況を何とか止めたかったが

当然ながら俺が下手な行動をとるとクエス師匠に迷惑をかけてしまう。


座学でボサツ師匠から「弟子の不始末は師匠にも責任」と習った事もあり、1歩踏み出したいが、どうしても1歩踏み出せない。

万が一、これだけ御世話になっている師匠の顔に泥を塗る結果になってしまっては、恩知らずもいいところだからだ。


俺が苦虫を潰したような顔をしているうちに、事態はもっと深刻な方へ動き出す。

貴族風の男が埒が明かないといわんばかりに、右手を握り締め平民の男を殴ろうとする。


問題なのはその右手だ。薄くはあるが、明らかに魔力が込められている。


まずいと思い俺は1歩踏み出すが、彼らとの距離があり間に合うはずもなく

平民は両手でガードするものの、衝撃を全く殺しきれず1m近く吹き飛ばされて仰向けに倒れた。


「師匠!」

俺は思わずクエス師匠に音量を抑えつつも声をかけるが、師匠は冷静な表情で俺を見て淡々と語る。


「落ち着きなさい、コウ。彼は貴族よ。この程度で済めばまだ許容範囲だと理解しなさい」


師匠の言葉に思わず次に言うはずだった言葉も詰まり、体も硬直する。

これくらいは許容範囲でよくある事らしい。

そんなよくある事に対して俺が飛び出してしまっては、貴族間での問題になりかねないということだろう。


師匠の一言で俺が動けない間に、その貴族の男はさらに平民に近づいていく。

どうやら一発殴ったくらいでは彼の腹の虫は収まらないらしい。


今度はさっきの拳よりも少し強めの魔力を足に集めている・・あの貴族は平民の男を蹴る気だと俺は思った。

さっきとは違い仰向けになっている男はガードする余力もない。これはさっきよりもまずい状況だ。


その光景を見ながら師匠が横でぽつりと言った。

「さすがにこれは、少しまずいわね」


俺はその言葉を聞き、師匠に思わず行動してしまった。


「すみません」

と謝ると同時に2人に走って近づき、貴族の男が蹴りを出したところを<風の盾>で防いだ。


今話も読んでくれたこと、ありがとうございます。

そろそろお買い物イベントも佳境に入りました。

本来色々と買い物するだけのイベントだったのに、色々くっつけたのでちょっと長めのイベントになりました。


ブクマ・感想・評価・誤字指摘など、色々と歓迎しております。時間があれば・・ぜひ。

GW中更新できなかったのにブクマが増えたのは本当に感謝です。皆様ありがとうございます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=977438531&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ