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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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買い物から食事へ

ここまでのあらすじ


買い物に来たクエスとコウだったが、目的の物は許可がないと大量に買えないものだった



「わかったわ、それなら担当者がここにきて許可を出すまで待つことにするわ」

「お手数をおかけしてすみません、クエス様」


「いいわよ、別に店長が悪いわけじゃないんだから。どちらかというとそれを知らなかった私に非があるのだから」

「いえいえ、決してそんなことは・・」


店長は師匠を何とかよいしょしようとするものの、師匠はそれを軽くあしらって俺を連れてこの店の他の商品を見て回る。

師匠が偉い人なのは十分に理解していたつもりだが、こういう公の場は初めてなこともありどうもこの貴族という立場には慣れない。


こんなことで謝罪するのは貴族としてあまり良くないのは理解できるが、謝罪して場を収めた気分になってしまう。

やはり偉い立場というのは俺にはどうにもむずがゆくて慣れる気がしない。


そう思いながら商品を物色する師匠の後ろを歩いていると、師匠がペットボトルほどの大きさの液体の入った瓶を手に取って俺に見せてきた。


「これはね、最近開発されたものでこの都市でしか売っていないアイテムなのよ」


師匠が話しかけてきたので付き人という体で答える。


「どのようなアイテムなのでしょうか?」

「これはね、魔力を追加するアイテムなの。開封し一度魔力を流して中の液体を出すと魔力を流した者の魔力として扱えるわ」


「ずいぶん、便利なアイテムなんですね。高価な物でしょうか?」

「それがねー、これで作り出された魔力は自分の出したものと違って扱いにくいのよね。だから魔力ブーストとして使いづらいのよ。だから高い割にはいまいちね」


うーん、今聞いた説明ではあまり役に立つとは思えないが

それでも売られている以上、何か有効な使い方があるのだろうか?


師匠にもう少し聞いてみようかと思ったら、すでに師匠は別の商品を確認している。

この商品に悪印象しか抱けなかったのですが、それが目的で説明・・じゃないよなぁ。

師匠の自由気ままっぷりは思った以上なのかもしれない。



そんな感じで10分ほど商品を物色していると先ほどの店員が戻ってきて店内が慌ただしくなる。

お偉いさんを連れてきたのだろうか?そう思って師匠の後ろから店の入り口を見るといかにもという人物が立っていた。


肩からひざ下まで真っ直ぐに伸びた白で装飾された黄色いロングジャケットのような衣装がいかにもお偉いさんの格好と言える。

ジャケットの中も水色と黄色で装飾されており豪華な服装だ。服装だけでこんなに威圧感を放てる人は初めて見た。


俺も師匠も他の都市に買い物に来るということで、アイリーシア家の一般的な格好をしているが(俺はその上に顔が隠れるローブ着てるけど)

このお偉いさんの服装の前では自分たちの服装もさすがに見劣りすると言わざるを得ない。


が、師匠は威厳など知るかといわんばかりに臆することなく近づいていき、そのお偉いさんと思しき人に話し掛ける。

師匠の度胸は本当にすごい。見習うべきかどうかは別として・・


「状況は聞いてる?魔力回復薬のGM2を60個買おうとしたら止められたのよ。で、許可が欲しいってわけ。許可が出せないならそう言って、ダメなら他の店に行くから」


「クエス様、失礼ですが他の店に行かれてもGM2の大量購入は許可が必要になりますよ」


「違うわ、この都市じゃない他の都市のお店よ。似た効果の薬は他の都市にも売っているし」


会話を聞いてて俺はちょっと恐ろしくなる。

向こうもあんな格好をしているのだし、貴族の可能性が高いだろう。しかもここはクエス師匠の一門のトップの首都だ。


その辺の人で片付かない王の直系の貴族様の可能性が高い。

それに対して遠慮なく突っかかるのはお付の立場といえども、恐ろしくて見守っているのもつらいものがある。


クエス師匠の攻勢に少しまいったのか、そのお偉いさんは一瞬慌てるが息整えて話しだした。


「ま、待ってください。わかりました、クエス様。特例ですがここで特別許可を出しますので」


「ん、無理言って悪いわねレギト大臣。ボルティス様にも上手く対応してもらったと報告しておくわ」

師匠は嬉しそうに・・でもちょっと意地悪そうな笑顔で答える。


「ちょ、ちょっとそれは勘弁ください。ボルティス様はルールにうるさいので特例を出したとなると私にまで雷が落ちます」

「あはは、そうだったわね。それでこの許可は次回も使えるの?」


「申し訳ありませんが今回限りになりますので、次からの為に1年間の許可を発行いたします。記入は不要ですので数日後にはアイリーシア家に届けておきますので」


「何か何まで悪いわね。あ、そうそう。どうせならこの私の付き人にも併せて1年の許可を出しておいてもらえる?この先彼1人で買いに来てもらうこともあると思うから」


師匠が俺1人で行く事もあると言った時、やっぱりか、と思ってしまった。

まぁ、1年分の許可を事前に出しててもらえれば、こういったやり取りをしなくて済みそうだからいいんだけど。


「こちらの方も、ですか?失礼ですが身分証を」

なんか少し警戒されてる?と思いつつもレギト大臣に身分証を手渡す。


レギト大臣はアイテムボックスから銀色のカードリーダーを取り出して差し込む。

が、10秒ほど建っても大臣はカードを差しっぱなしだ。俺がそれを不思議そうに思っていると


「こちらへの登録はいつ行われました?」


と少し厳しい表情でレギト大臣が問い詰めてくる。

え?何?何かまずかった?と思い俺が戸惑っていると、師匠が即助け舟を出してくれた。


「さっき、20分前くらいに登録したばかりよ。カードは確かにうちが発行した物だし、保証人は私。直結タイプにつないで確認してよね」

「そ、そうでしたか・・」


そういってレギト大臣は店にある銀色のカードリーダーと手持ちのをつないで確認し始めた。

やはりこの世界での都市の出入りは結構厳しいチェックが行われているようだ。


さっきまでは気づかなかったが、ここのレジにもカードリーダーがあるということは購入時に人物を確認するシステムなんだろう。

本当にセキュリティー厳しいな・・。


そう思っているうちに確認が取れたのか繋いでいた線を取り外され、リーダーは収納してしまっていた。

大事なカードを返してもらったので、俺もすぐさま収納しておく。


「確認が取れました、登録して直ぐだったのでこちらまでデータが回っていなかったようです」


「仕方ないわ、本当に直ぐだったのだから。それより、この子でも問題なく許可出せるかしら?」


「ええ、一門の王族認可の方ですので発行可能です。ですが、これはクエス様にも付く条件ですが

 次からの購入時には前回使用したGM2の空瓶を持ってきて頂いた分+10個までしか購入できない制限が付きます」


「いいけど・・面倒な事をするのね」

師匠は面倒なのか不満そうにするが、レギト大臣は師匠に厳しく指摘する。


「もし使用せずに大量に溜め込んでいると疑われれば、つい先日のような騒ぎになりますので・・」

「あぁ・・そっか。確かにそうね」


師匠は少し嫌な事を思い出したかのように、気まずい表情をする。

師匠はいつもこの調子みたいなので、何かやらかしたんだろうと思いつつも、俺は触らぬ神に祟りなしとその話には触れない事にした。


その後無事に買い物が終わり、60個の回復薬を購入し師匠が清算する。

「1つ2千ルピですので12万ルピになりますね」

「ええ、わかったわ」


そう言って師匠は三重の四角のマークが刻まれた水色のプレートに右手を置く。

水色のプレートが光ると店員が「ありがとうございました~」といっていたので、支払いが終わったらしい。


俺は12万ルピという額に動揺しつつも高価な物だからと慎重に大きめに作った収納口に30個入りの硬い箱を2つゆっくりと収納する。


練習したようにもう少しすっと収納しなさいよ、といわんばかりの師匠の視線が少し痛かったが

12万ルピという尋常じゃない価格を聞かされれば、誰だって慎重になるってものだ。


他にも2箇所店を回って買い物を済ませる。

そこでは俺の練習に使うものだといって魔道具を数点購入していた。


どうやら完全に俺のための物を買いに来た買い物だった。購入するたびに値段を見せられてなんだかすごく申し訳なく感じる。

師匠はそれを察したのだろう。


「なに気にしているのよ、私は貴方に期待しているから色々と揃えているだけよ。気負うくらいならもっと修行がんばってよね」

俺は師匠の心遣いに感謝しつつ、気合を入れなおした。



「コウ、いい時間になったので今日はお昼を食べてから戻りましょ。せっかく街に来たんだし外で食べる体験もしておかないとね」

「えっ!?いいんですか?」


「もちろんよ、といってもコウはメニューを見てもわからないでしょうから今のうち希望を聞いておくけど、何が食べたい?」


何が食べたい・・か。

隠れ家での食事はパンとスープが多かったのでやはりここは肉が食べたい。


具体的にラーメンや焼肉が食えればいいが、たぶん具体名を言っても通じないんだろうな。

そもそもこの世界にどんな食事があるかを俺は知らないからなぁ。少なくともラーメンは無いと思うが。

とはいえ、せっかく希望を聞いてくれているのでダメ元で言ってみる事にした。


「えーっと、ラーメンとかはこっちにはないですかね?」

「ラーメン?・・あぁ!あの変わったスープの中に糸みたいな食べ物が入ってるやつね、あれ美味しかったわね~」


「知っているんですか?こちらにもある料理なんですね」

「あぁ、ごめん。残念ながらこちらの世界には私が知る限りないわ。コウをスカウトしに行った時たまたま食べたのよ」


師匠・・わりと日本、いや俺のいた田舎を満喫されていたんですね。

まさか日本でラーメン食べているなんて思わなかったわ。


この分だと日本でもっと色々と体験している可能性があるな、と思いつつも今は飯で何を食べるかだ、そう思い頭を切り替える。


「やはり隠れ家ではパン屋スープが多かったので、出来るなら肉が食べたい・・ですかね」

「そうね、肉よねやっぱり。コウが希望を言わなかったら私が肉にする予定だったし」


師匠が俺の両手を握って嬉しそうに笑う。

急な反応だったので俺は思わずドキッとしてしまう。


師匠が嬉しそうにすると俺もなんだかとても嬉しくなる。これが師弟関係というものだろうか。

数年父と不和な状況で過ごしてきた俺には、この関係性はとても暖かく感じた。


「肉料理ならいい店があるのよね、ささ、行きましょ」


急ぐ師匠の後を俺も早足で追いかける。

先ほどの店から少し歩いたところのにその店はあった。


このあたりの店は高さ統一の為なのか3階までの建物ばかりだったが、この建物は角に建っていて他の建物よりも一回り大きい。

周囲の3階建ての建物より一回り高いことから、たぶん各階の床から天井までの高さが他より高いのだろう。


ちょうど角部分が入り口になっていて黄色の絨毯が外まで敷いてある。

石造りの柱部分以外はほぼ全面窓ガラスになっていてキラキラと光っていて、すごく豪華な西洋風建築物に見える。


この店・・絶対高いやつだわ。俺はそう確信した。

師匠が気にせずに入っていくところを見ると、通い慣れた店なのだろうか。


普段はとても気さくなクエス師匠だが、こういうのを見るとやはり貴族様なんだなと改めて思い知らされる。

まぁ、今の俺もその貴族様の御付きであり、準貴族だし、クエス様が保護者の超好待遇なんだけどさ。


入口前の階段を数段上ったところにきっちりとした服装の受付の男が立っている。

師匠はその男に向かって軽く手を上げると彼は深々と頭を下げた。


「突然来て悪いんだけど、食事するための開いている個室はある?」

「はい、クエス様。3階の個室なら空いております」


師匠はさすが有名人だけはあるようだ。名前を呼ばれ笑顔で歓迎を受けている。


「今日は私と荷物持ちの連れの2人だけど、問題ないわよね?」

「もちろんです。クエス様、ご利用ありがとうございます。では、案内いたしますので」


簡単なやり取りの後、師匠が案内されて建物に入るので俺もその後を付いて行く。

こんな豪華な店に入るのは初めてなので、緊張してぎこちない動きをしているのが自分でもわかってはいるがどうしようもない。

これは楽しい気分で食事が出来ない気がしてきた。


2日空いてしまいましたが、今話も読んでいただきありがとうございます。

GW中はいつもより時間がとりにくいですが出来るだけ更新頑張っていく所存です。


ブクマや評価、感想などなんでもいただけるだけでありがたいです。

お買い物編?はもう少し続きます。

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