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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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補助魔法、疾風を教わる

ここまでのあらすじ


クエスの謀反の疑いも無事に晴らすことができ、コウ・ボサツ・クエスに再び平穏が訪れる。

ただし、その時間は限定されているが


コウが<風の板>を使いこなしている頃、クエスとボサツは会議を終えそれぞれ別のルートから転移門を使い隠れ家へと戻ってきた。


クエスはすでに疲れ切った様子だった。

クエスは一度、母国のアイリーシア家に戻りミントに今回の流れを説明したのだが、クエスに対する当主の対応にミントが怒り出しそれをなだめるのにさらに疲れてしまっていた。


「ふぅ、色々と参ったわ。今回の一件は」

「上手くバカスにしてやられましたね」


「まぁね、でもあいつはいつもあんなもんよ。でもあいつがうわさを否定して回っていたらしいしこれで貸し借りなしってとこね」


クエスはもうあいつのことはどうでもいいやと投げ気味の感想だ。

ボサツはそれを見ながら少し笑っている。


「ですが猶予は1年です。何かしらの手は打たないといけません」


「そうね~、まぁ貴族街に住まわせるという点だけ見れば不満はないんだけど、色々と探られたりごたごたに巻き込まれない為の手は打っておきたいわね」


「ですね。でも焦っても仕方ありませんし、色々とじっくり考えましょう」


「そうね。さっちゃんにも頼ることがあるかもしれないので、その時はよろしくね」

「はい」


想定外の結果になってしまったとはいえ、まだ1年という猶予もある。

2人は焦るよりも1年という期間を使いじっくりと考える方向で方針をまとめた。


おっ、そう言えばと言わんばかりにクエスはコウのことを話し出す。


「さっちゃん、コウの様子はどうかな?」

「そうでしたね。それではあの結果を調べに行きましょう」


クエスとボサツは出発前、この隠れ家にある仕掛けをしていた。


「くーちゃん嬉しそうですね」

「私は絶対チェックしていると思ってるからね」


そう言うと2人は自分たちの部屋に行き、扉のロックを解除して建物内の履歴を調べる。

履歴を見ると2人とも少しにやついた表情になる。


「やっぱりね~」

「うーん、私は予想を外しました」


結果を確認しクエスは満足げな表情を見せ、ボサツは残念そうな表情を見せた。


実は今回隠れ家を出る時に、コウが自分たちがいなくなった時どういう行動をとるのか観察することにしていた。

特に2人が気になっていたのは自分たちの寝室を探しに来るかどうかという点だった。


クエスはコウが欲望あふれる男の子なんだし、自分たちの部屋を必死に探すだろうと思っていた。

ボサツは逆に真面目に修行して多分そこまでは気が回らないと思っていた。結果はクエスの勝ちだった。


「やっぱりコウはむっつりの童貞君だからね~、ただもっと必死に開けようとすると思ったんだけど」


「むぅ~、魔素体になった男性の半分以上は性欲が減衰すると言いますから・・でも、これはこれで楽しみです」


ボサツはさっきまでは予想を外して少し悔しそうだったのに、今はむしろ嬉しそうにしている。

そんなボサツの様子を納得いかなさそうにクエスは見つめる。


「さっちゃん、むっつりなところを喜んでどうするのよ」

「いえ、根本的に性欲がない人を誘惑するのは難しいですから。コウはそうではないので安心しているのです」


「あ~の~ねぇ~」

「ふふふ、ではコウの練習の様子を見に行きましょう」


はいはい、といった感じに話を逸らすボサツの行動にクエスはそれ以上の追及をあきらめる。

こういう時のボサツはどこまで本気なのか本当にわかりにくいので、真面目に相手しても惑わされるだけだとクエスは学習しているからだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆



「次は・・・これやってみようかな?」


俺が<疾風>の魔法書を取って読みだした時、隠れ家の玄関が開く音がして師匠たちが顔を出した。

それに気づいて俺はすぐに師匠の方を見る。


「師匠おかえりなさい。お疲れ様でした」

俺は師匠を見て咄嗟に持っていた本を置き、礼をする。


師匠たちは笑顔で手を振って返してくれた。

俺がちゃんと練習しているのを見て軽くねぎらってくれているのだろうか。


ただこう2人を見てると本当に可愛い女性にしか見えないんだよな。

とてもすごい魔法使いには見えない。


師匠とデートとかしてみたいな・・両手に花とかロマンだよなぁ・・。

おっと、そうじゃない、今は魔法を教えてもらわなきゃ。



クエス師匠はニヤッと笑い、ボサツ師匠は俺に近づいてくる。


「今は何の練習をしようとしているのですか?」

ボサツ師匠は早速指導に入ろうとするので、さっき手に取った本を渡した。<疾風>の魔法書だ。


「おぉ、これは<疾風>ですね」

「これは風使いには必須なのよね。この魔法が欲しくて風属性を第2属性に選ぶ人が多いくらいだし」


クエス師匠の一言に俺は驚いた。

これがそんなにすごい人気の魔法だったとは。


もっと先に読んでればよかったと思いつつも、師匠に教えてもらえる方がより効率よく習得できるかなとも考える。

疾風・・すごく早く動けるようになる魔法なのだろうか。


早速、師匠の指導の下で型を作る練習から始め、何度かやるうちにようやく型を作れるようになった。

魔法核は18個とそこそこの難易度だが、今までの魔法と違い難しい点がある。


この魔法は自分から離れたところに作る通常の魔法ではなく、補助系の特徴である自分の周りや他人の周りに核を設置しなければならないので

今までの配置感とかなり違って慣れるまで少し時間がかかってしまった。



<疾風>を発動させると維持コストというものだろうか、少しずつ自分の周りに出している魔力を食いつぶしていく。


貧乏性な俺は少しずつ魔力が消費されるのを感じて、この魔法は使わない時は無理に維持するのはもったいないなと思った。

しかしこの魔法、黙って立っている分には何の効果なのかさっぱりわからない。


俺が自分の周りに効果が発動しているのを確認しながらもきょろきょろしているのを見かねたのか、ボサツ師匠がこの魔法の効果を教えてくれる。


「コウ、疾風はあなたの動きを補助する魔法です。試しに走ってみるとわかりますよ」


師匠にそう言われたのでとりあえずダッシュしてみると風が後ろから体全体を押す感覚を感じる。

すごく早くなったとまでは言えないが2割ほど速度が増した気がする。


追い風で陸上のタイムが良くなるという話を聞いたことはあるけど、それより遥かに効果がある。

背中だけでなく全身に前への圧が丁度よくかかるので、走る事自体も楽に感じた。


だが、すごいと言えばすごいが、普段よりちょっと早く走れるだけってのは正直いまいちと言わざるを得ない。

色んなアニメのようにシュン、シュンとワープできるみたいに移動出来たらすごかったのに。


そう言えば、クエス師匠はこの魔法を欲しがる魔法使いが多いと言っていたけど、俺にはどう見てもそう思えなかった。

俺がいまいち納得いかない表情をしていたからだろうか、ボサツ師匠がさらにこの魔法の有効な使い方を教えてくれる。


「いまいち納得いかないという表情ですね」


「あ、いえ。早く動けることは虚をつくことも出来るし良いと思うんですが、皆が欲しがる魔法かと言われると・・」


「なるほど。では実体験する方がいいと思いますので、コウは今から私が数発飛ばす<水球>をかわしてみてください」


回避能力も速く動けると上がるという体験だろうか。

いまいちピンとこないまま俺はボサツ師匠のいうように<疾風>を維持したまま師匠の攻撃を避けようと態勢を整えた。


ボサツ師匠の周囲に4つの<水球>ができる。

一瞬型が見えたと思ったら即、水の球になっている。


あの速さが俺にもできればいいんだが・・と思っているうちに師匠の声と同時に水の球がかなりの速度で飛んでくる。

「はやっ、やばっ」


不意を突かれて、思わず声を出しながら慌てて左に避けようとするも、これは厳しいかなと思った瞬間体の右側から左へ押す力がかかる。

想定していない力のかかり具合に師匠の攻撃は避けれたものの、バランスを崩して左側に倒れそうになり踏ん張ると今度は倒れないように体の左側から支える力が加わる。


「おぉ、これが疾風の力・・」


俺が動きたい方向へ動くときその動きを補助する。

移動中だけでなく回避中でも、バランスを崩して態勢を整える時でも。


なんだろう、動作を補助するパワーアーマーみたいなものか?なんにしてもこれは確かに有用だ。

接近戦でも回避するのにも役に立つとなれば、この魔法目的で風を第2属性に選ぶのも何となく理解できる。


ただ<疾風>発動中は通常の状態と明らかに違うので、修練というか慣れがは必要そうだ。

思ってた以上にいい魔法だなと思うが、LVもまぁまぁ高く風属性の才能がないと使えないから、使える人は限られそうだけど。



俺が<疾風>の効果に感心している横で「理解したようね」と師匠は二人とも満足そうだった。


そう言えば先ほど補助魔法と教わったし味方にもかけられるのだろうか?

出来るならこれが使えるだけで、パーティー内では結構貴重なメンバーとして扱われそうだけど。


「この魔法すごいですね、これって味方にもかけられるんですか?」


「ええ、いけるわよ。ただ自分じゃなくて味方だとこの魔法独自の特徴的な問題が出るのよね」


問題、とクエス師匠は言っているが特に問題らしきものは思いつかない。

便利なだけではないのだろうか?


「そうですね。この魔法を補助としてかけてもらうと、自分にかけた時と違って無意識的な押す力の調整がつかないのが最大の問題です」


「慣れた者同士だったらいいんだけどね。初めて組んだ補助士にこれかけられても動きずらくなるだけなんだよね」


うわ、それは使えないわ。

想定外の効果に俺は魔法も結構穴だらけにできているんだなと思ってしまった。


ただでさえ動いた時の感覚が大きく変わるのに、それが術者でそれぞれ違うのではぶっつけ本番で使うのは無理がある。

こりゃ、思った以上にポンコツな魔法だわ。


「それに味方にかける補助魔法全般に言えることだけど、特にこの魔法はその度発動時のストックから微量の魔力を消費していくので

 いつ効果が切れるかが正確に分かりずらいのよね」


「それって・・戦ってたらいきなり<疾風>の効果が切れてしまうということですか?」


「そうそう。発動時に精霊とかによって溜められた魔力がストックされるんだけど、効果発動ごとにそのストックから消費されるから

 疾風みたいにちょこちょこ使用してしまう系はいつゼロになるかがわかりずらく、持って欲しい時に切れるってイメージが強いのよ」


クエス師匠のさらなるデメリットの説明に魔法って色々と難しいんだなと思ってしまった。

想像していたような仲間に補助魔法!どや!というわけにはいかないこの世界では、有能な補助士っているんだろうか?とも思ってしまう。


そのあとボサツ師匠から補助魔法について細かい補足を教わった。


まず自分に補助魔法をかける場合は、魔力を使い続けて維持するか最初に多めの魔力を消費してそのストックを消費していくかの2通りが選べるらしい。

ストックにする意味は・・あまりなさそうだが。


次に他人に補助魔法をかける場合は、自分の時とは違ってストックから消費する形しか出来ないらしい。

魔力のストックは魔法発動時に術者や精霊様から蓄えられた魔力が元となるそうだ。それを食いつぶす形で効果を発動し続ける。


もちろん魔法効果の維持にも少しずつ魔力を削るらしい。

どれくらいで効果が切れるかは、かけられている補助魔法の魔力残の感じから大体は想像できる。

(あと何発自動発動の盾が持つかは減り方でわかる)


さらに、かけられた側はその補助魔法の効果をいつでも消せるらしい。

ただし打ち消すには魔力を少々使うそうだ。


消せないのは補助魔法ではなく、幻術や呪いの類に分類されるそうだ。

色々あるんだなと思いつつもとりあえず俺はざっくりと理解した。


また再び、修行まったり回です。

本日も読んでいただきありがとうございます!

ブクマが増えるのは本当にうれしいです。まだまだ頑張っていきます。

今回もブクマが増えていたので・・じ、次回もあ、あした・・更新します!

急いで最新話も下書きを書き足していかないと。これが嬉しい悲鳴というやつなのですね。


修行回の魔法は『魔法紹介』であえて説明するほどじゃないので省略しています。

あらかじめご了承くださいませ。

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