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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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会議前、7人の当主たち

ここまでのあらすじ


クエスが謀反を企んでいるというデマをデマと証明するため、光の連合のトップが集まる会議にクエスとボサツは臨む。

弟子のコウは、隠れ家でお留守番。


こちらは会議室。


クエスたちが待合室に来る前、すでに会議室では上級貴族の当主7人全員が集まっていた。

クエスの件を調査した女王からの報告を待ちながら当主らはすでに雑談という名の情報の探り合いを行っている。


「速報としては問題ないと聞いてはいるが、本当にあの女はトラブルメーカーだな。いるだけで連合に不利益をばらまいているんじゃない?」

5年ほど前にエレファシナ家の当主に就任したルルー・エレファシナは露骨に不満をぶちまける。


エレファシナ家の配下にクエスの不審な行動で委縮している家があるだけでなく、ルルー本人がクエスに対する周囲の対応に不満があるからだ。

隣に座っている相談役のエリオスはルルーのその行動をただ黙って見守っている。


「それでもあの子はこの連合に必要なコマです。特に怪しい行動がないのなら問題ありません」

レディ・ポンキビーンはルルーを見ることなくつぶやくように語る。


「だよな。逆に敵対してなくて助かったってもんだ。早く話を聞いてさっさと戻り、うちの配下に安全宣言でも出したいとこだね」


シザーズ・リオンハーツは両手を頭の後ろで組んで、軽い口調で大して問題ではなかったかのように語る。

シザーズはある程度クエスを信用していたが、もし孤立しようものならクエス側につく気でこの会議に来ていた。


だが思った以上に他の当主たちがクエスのことを敵視していないことがわかると、下手な肩入れも不要だろうと考えのんびり構えている。


「とはいえ騒がせたのは事実だからな。一光とはいえ当人からの説明と軽い侘びはしなければなるまい」

クエスが所属する一門の当主ボルティス・ギラフェットは、一門のクエスの味方をするのではなく、あくまで一歩離れたスタンスをとる。


「ボルティスは相変わらずだな。そんなんではクエスもつらい立場のままだろう。制御しきれないばかりか負担になるならうちに家ごと預けてもいいんだぜ」


バカス・ライノセラスは笑いながらボルティスに話を投げかける。

だがボルティスはまともには相手しない。


「要らぬ世話だ。今回の件も把握しているし、うちにはメルルもいる」

「まぁ、それでも大変だったら俺に言えよ。うちなら大歓迎だからな」


「バカス、下らん話に割って入って悪いがあんたも確認したのだろう。本当に問題なかったのか」


バカスと同じ住民支配派のレディ・ポンキビーンはまだ完全には信用していない様子だ。

そこに同じ危機感を持っている仲間を見つけた!とばかりにルルーが畳みかける。


「バカスはクエスを嫁にと言い寄っている仲だよな。あんたの保証では薄っぺらいんじゃないか」


「ひよっこの小娘は黙っておいた方がいい。クエスの価値も知らんで批判しかできんようなら、口を閉じておいた方が身のためだぞ」

少々不快な言い方をされ機嫌を損ねたのか、バカスはやや怒気を含んだ声で反論する。


「あんたは贔屓のし過ぎでこの件では信用置け・・」

「まぁまぁ、本人も来るんだしここで言い合うのはその辺にしておこう」


ルルーがバカスに食って掛かり雰囲気が悪くなりそうなところを、シザーズが止めに入る。


場がいったん止まった状況で、クエスと同じ派閥のもう一人の当主リリス・レンディアートがバカスに尋ねた。


「バカス、あなたはクエスの言い分を信じたのでしょ?私は同じ派閥でもあるし、うちの守護家にいるクエスと親しいボサツからも話を聞いている。だからクエスは信用しているわ。

 だけどあなたは立場が違う。私はあなたが信用した理由を聞きたいわ」


自分が少数派だとわかり更にイラつくルルーは、バカスが答える前に会話に割り込んで来た。


「そりゃ、バカスの贔屓以外・・」

そうルルーが発言したところでボルティスは机をこぶしで叩く。


ドン!という大きな音が部屋に響く。それと同時に外に待機していた近衛兵たちが3名会議室の中に入って来た。

今はまだ雑談ということで扉も少し開いており防音の魔法がかかっていなかったためか、大きな音に外で待機していた近衛兵達が反応したようだった。


「大丈夫ですか!何かあったのですか?」


慌てる兵士たちにシザーズは、ちょいと荒れたので効果的に場を鎮める方法を使っただけだよ、と立ち上がって説明し、さらに言葉を続ける。

「とっさに緊急事態と判断したとはいえ急に乱入し居座り続ければ、当主の皆に対して礼節を欠いていると不評を買うことになるんじゃない?」

そう言うと、シザースは笑いながら手で追い払うように兵士を追い出し戸を閉めた。


ボルティスは近衛兵たちが出て行ったのを見計らい口を開く。

「ルルー殿、まずはバカスの意見を聞いてからでいいだろう。不満はその後にぶつければいい」

その言葉を聞き、これ以上は自分の立場が不利だと理解して、ルルーはとりあえず大人しくした。



「やるなボルティス」

嬉しそうにバカスは語る。


「バカスなりの根拠を聞いておきたかっただけだ」

ボルティスも淡々と返す。


「まぁ、今回クエスの行動を本人に確認したのは俺と女王とボルティスだけだろうからな。いいぜ根拠くらいは話してやる」


そう言うとバカスは机の上に片手を置きやや前のめりになると得意げに笑う。

ルルーを黙らせるためなのか、自分の立場を高めるためか、ただの癖のようなものなのかわからないが威圧感はあった。


「根拠は単純だ、クエスは非常に信頼のおける奴だ。その証拠にここ数年女王に信頼され一光の地位に居続けられとるし、ルールにうるさいボルティスも信用できるからこそ半分放任し自由を認めている。

 今回の件で騒いでるやつらはクエスが嫌いか、あいつのことをよくわかっていない愚か者だけってことさ」


その言葉を聞いた当主の反応は様々だ。

感心する者や警戒感を抱く者、軽く笑いつつも賛同するもの、そして訝しげにする者に、呆れる者。


「俺が信頼のおける奴だと認めているから他の者も信頼しろ、というの?バカバカしいわ。バカスは籠絡でもされているんじゃないの?

 そもそもあの女の話も尾ひれが付いてすごいことになっているだけじゃない?それとも今も夢魔法で楽しい夢でも見させられてる最中とか?」


ルルーはバカスにがっつり噛みつくが、バカスは相手にする気もなく鼻で笑う。

そこへレディも乗っかって来る。


「あなたがクエスにご執心なのは知っています。でもそれだけであなたが簡単に信用するとは思えません。もう少し根拠が知りたいですね」

レディは少しゆっくり話しながらも、バカスの反応を探る。


だがバカスは「そうですか」と言わんばかりの態度でなかなか隙を見せない。

そんな状況でルルーはここぞとばかりに爆弾を放り投げた。



「バカス、一言言わせてもらうわ」


ルルーはにやりと笑いバカスを見る。

だがバカスはまだ余裕なのかやれやれとといった態度で椅子にもたれかかり、何か知らんが早く言えよ、と手招きをした。


ルルーはそうしていられるのは今のうちよ、と勝ちを確信した表情で語りだす。

「バカスがどんなにクエスに言い寄っても一発でご破算にする情報を私は知っているのよ」

「ほぅ」


「あなたは以前アイリーシア家が壊滅した時、裏で手を引いていたんでしょ?この事実がクエスに伝わるだけで終わりよ。どんなにクエスの贔屓をしたって無駄な努力なの、わかった?」


ボルティスは眉をピクリと動かすものの、それ以上は動かない。

シザーズは大して反応を見せなかったが、他の当主は一様に驚いていた。


「バカス、あなた・・」

リリスは睨むかのようにバカスを見る。


レディはすでに平静になれたのかこの場の状況を観察している。

そんな状況に、やれやれと言わんばかりに頭を掻きながらバカスは立ち上がり、ルルーの教育係として隣にいるエリオスに対して指をさして言い放つ。


「おい、エリオス。教育係なら自分のところの当主にカードの有効な切り方くらい教えておけ」

エリオスはルルーを見るとすぐに視線をバカスに向けて軽くうなずいた。


「まぁ、いいさ。完全に無駄なカードの切り方だったが、せっかく切られたカードだ。俺が少しくらいは有効にしてやるか」

そう言うと再びバカスは椅子に座って話し始めた。


「俺がクエスを信用しているのはそこだ。あいつは俺が自分の家を滅ぼしたことに関わっている事をとっくに知っている」


さっきまでは落ち着いて展開を楽しみにしていた節もあったシザーズも驚いた顔をしている。

他の当主たちも、おいおい、本当だったとは、クエスも知っていた?と驚愕している。


「あれは俺がクエスをこの連合に有用だと認めた直ぐ後だったか、以前の野望を思い出して再びあいつを俺のもとに置けないものかと思い、俺の嫁に来いといった時だった。

 あの時の反応はすさまじかったぞ。さっきまで普通の態度だったクエスが即刻剣を抜いて俺に突きつけ『それ以上言えば殺す』と殺気を全開にしたからな。

 反応が遅れた俺の護衛が思わずクエスに向けて剣を抜きつつ魔法を唱えたが、それを俺がすぐに止めたので大事には至らなかったがな」


周囲は思わずおいおいと思ったが、バカスは少し懐かしい思い出のような表情で語る。

バカスの表情に呆れたのかはわからないが、他の当主はその続きを聞くためにただ黙っていた。


「あの時思ったのさ、クエスは既に俺が裏の首謀者だとすでに知っていた。だが、その時もそれからも今まで俺を殺そうと傷つけたことはない。

 後日気になってクエスに聞いてみたのさ、そしたら『家を再興させて頂く時に私は女王様に誓った。この連合のために動く、と。だからあなたが連合の役に立つ存在である限り手をかけるつもりはない』ってさ。

 正直、馬鹿正直で危険な奴だとは思ったが、その時からこいつは信用はできるとも思っているのさ。まぁ、あいつが嘘をつくなら、それは自分の家や命より大切なもののためだけだろう。

 もし今回、それほど大切なものの為に嘘をついているなら、それは触れない方がこの連合の為だろうよ」


「だ、だけどそれなら嘘をついてよからぬことを企んでていても、み、見逃すっていう気なの?」

ルルーはやや押され気味ながらもバカスに反論する。


「その嘘も連合を裏切るという意図とは無関係だろうからな。詳しくは言えないが、そもそも家のこともあるし、あいつが連合を裏切るというのは無いだろうよ。逆に根拠なく追い込んでクエスをキレさせる方がやばい。

 以前の話だが、俺が酷い目に遭った時のことをクエスに尋ねると『あの時は状況によっては自分を犠牲にしても女王と当主全員と刺し違える覚悟だった』とか

 平気な顔をして言うやつだからな。一般的な貴族の保身的な発想は欠片も無く頭のねじが飛んでるタイプだよ、ありゃ」


そんな奴に対して大した状況でもないのに追い込むとかアホとしか思えない、バカスのその考えをその場にいたものはとりあえず全員理解したのか

これ以上は本人がいないまま話をしても意味がないな、と皆大人しく女王とクエスらを待つことにした。


今回も切りどころが見つからず、4Kちょいの文字数で更新となりました。うむむ。

(その分、次話が6K字くらいあるはず)

3章は戦闘シーンを入れにくいので、人物同士のやり取りばかりの話になりますが・・それでも読んでくださる皆様には感謝しかありません。

本当にありがとうございます。

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