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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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転移門の修理と明日への対策

ここまでのあらすじ

転移門の修理で呼び出されたクエスは、女王と当主バカスにより隠しておきたかったコウの存在まで知られてしまう。


クエスが戻るとひびが入り明確に壊れている制御棒2本はすでに外されて新しいものに入れ替える準備の最中だった。

入れ替え完了後、位置を微調整しようとしていたところでメイアと反対側で位置を確認していたルディオスがクエスに気付く。


「クエス様!お話終わられましたか?今は明らかに壊れていた箇所を交換していたところです」


メイアが明るい声でクエスに声をかけると、ルディオスも続いてクエスに軽く頭を下げた。

その状況に気付いた他の制御棒を注意深く検査していたボルボリアもクエスに頭を下げた。


「悪いわね、ちょっと用事があって抜けちゃって。でも片付いたからこっちをさっさと仕上げるわよ」


その後はクエスの指示で商会のメンバーが動く。壊れていた制御棒を入れ替え終わった後

クエスが仮起動状態で制御棒を1本1本丁寧に確認するとさらに3本が劣化していたのでそれも交換した。


クールダウンに必要な装置も5つのうち3つが壊れていた為それも交換を指示する。

だが、出力周りには異常が無かった為クエスはほっとため息をつく。


魔石から魔力を抽出して必要な場所に装填する補助装置や、魔力の移動を補助する転送ケーブルの故障は発見自体に時間がかかるし

宙の属性に変化する変換機は交換となると数に余裕が無い。


大型の転移魔法発動用の魔道具一式にいたっては替えが全く無い。

出力に異常があればこれらをそれぞれ疑って総点検しなければならなかった。


「うーん、新型の負荷稼動はテストはしていたけど・・考えてみれば設置した製品での負荷故障はこれが始めてよね。想定内の壊れ方をして本当によかったわ」


クエスが転移門全体を見ながら感想を述べていると、メイアが壊れた制御棒を取り替え終わってクエスの傍まで来ていた。


「運用品もテスト通りいってクエス式の転移門は大成功ですね」

「まぁね、本当は壊して欲しくなかったけど・・」


クエスは疲れた顔で語り、それを見たメイアがにこりと笑顔を見せる。


「それで補助用の制御魔石ももう取り替えたのですか?」


「ええ、既にさっきの仮起動する前にもう取り替えたわ。あれに異常があると本体を起動するときに使う魔石とかに負荷が直接かかって壊れるからね。戻ったらどういう風に壊れたか記録の調査をお願いね。

 更なる改良のヒントになるかもしれないし」


「はい、そこはお任せ下さい」


クエスたちは最後にもう一度総点検した後、仮起動で全体を最終確認、さらに一度実際に転移門を起動し問題なく物が移動できたことを確認して修理を終了させた。

その後、その場で簡単にまとめた修理の明細書をバカス側の担当者に渡す。


「はい、これ請求の明細書ね。といっても今回はライノセラス家が支払う代物じゃないらしいから次自分たちで壊したときの参考までに見ておいて」

「わかりました御預かりいたします」


そう言って担当者が明細を見るなり目を大きくして驚いた。


特急料金:2千万(2倍適応:基本作業費)

制御棒全壊:150万×2

制御棒半壊:50万×3

脱魔力安定装置:65万×3

範囲再設定費用:10万

テスト起動費用:3.6万

各種点検費用:50万


総計2708.6万ルピ


新設すると1億以上かかる大型転移門が、完全に故障して修理にこれなら安いものでしょうとクエスは笑顔で担当者に語りかける。

担当者は払わなくていいという一言をもらっていたので一安心すると同時に、転移門の動作には本当に気をつけようと心で思った。


作業を終えて帰るために中型の転移門に移動する頃には昼間に比べると少し暗くなって夕刻になっていた。


「無事今日中に終わりましたね、クエス様」

「ええ、故障箇所がすぐにわかって交換と調整だけで済んだのは助かったわ」


クエスとメイアが話している周りをやや疲れた様子の護衛の兵士が取り囲みながら歩いていた。


「あ、ごめんメイア」

「何でしょうか?」


この瞬間、メイアは何か?と聞きながらも既に予想は付いていた。

この後クエスが作業報告書を自分に丸投げするだろうと。


周囲にいたルディオスとボルボリアもまたいつものだろうなと思いながら2人の様子を伺っていた。


「この後の報告書・・任せちゃっていいかな?」

「わかりました。と言うかそうだと思っていましたよ、クエス様」


「本当にごめん。明日と明後日やることが一気に出来ちゃったので色々と時間が必要なのよ」


一見身勝手なお願いだが、もちろんメイアに断るだけの権利は無い。

クエスはメイアにとって商会主であると共にこの国の王族でもある。


クエスにはそのつもりは無く、ただお願いしているだけだがメイアから見れば王族からの依頼であり、よほどじゃない限り拒否は出来ない。


(この前の総点検で回ったときは珍しく御自分で報告書を書いていらしたけど・・また戻っちゃったか)

そう思いながらもクエスは王族としてさらに一光としての立場で忙しいのだろうと考え、メイアは笑顔で答える。


「大丈夫ですよ、お任せ下さい。それより何かあったのですか?今後の予定はあまり無いと聞いていましたけど」


「まぁ、ちょっとね。ボルティスに報告に行かなきゃ行けないのと、明後日は会議の強制出席なのよ」


「ボルティス当主様にですか!?」


メイアは驚いた。下級貴族は基本的に中級貴族にしか報告に行かない。

下級貴族の王族が一足飛びで門閥のトップに報告事項となると家の存続危機や守護家(上に当たる中級貴族)とのトラブル、光の連合の危機くらいだ。


メイアの反応が勘違いしていると気付いたクエスは慌てて火消しをする。


「違う違う、アイリーシア家としてじゃなくて一光としての報告だから。緊急事態とかじゃないわよ」


「そ、そうでしたか。慌ててしまって申し訳ありません」

「私の言い方も悪かったわ。気にしないで」


そう言ってクエスが周りを見回すと、周囲の者たちも一様に胸をなでおろしていた。


「それでは、その件はミント様に報告しておいた方がよろしいでしょうか?」


「うーん、簡単にでいいから報告しておいて。大事にはしないでね。あと、色々押し付けて本当にごめんなさいね」


「構いませんよ、クエス様あってこそのアイリーシア家ですから」


「そう言ってくれるのは嬉しいわ。でも家を支えてるのはミントのほうでしょ」

笑って軽く返すクエスだったが、メイアは真剣なまなざしでクエスに返答する。


「もちろんミント様も無くてはなりませんが、御二人がいてこそです。御二人はアイリーシア家の両輪ですから!」


「両輪、ね」

メイアの言葉を聞いたクエスは、一瞬寂しそうな顔をするがすぐにもとの明るい表情に戻り、帰るためにライノセラス家城内の中型転移門を警戒している門兵に声をかける。


「アイリーシア商会6名よ、依頼された仕事が終わったので帰りたいんだけど」


兵士が来るときにもチェックした商会の認識証と来たときの映像や魔力パターンを確認し

クエスたちは問題無いとされて、周囲の障壁も一部が解かれ、堀に囲まれた転移門の中へと案内された。


クエスは転移先を指定する金属のパネルの前に立ち転移先のアイリーシア商会と連絡を取る。

向こうからの許可を取り転移門を起動してすぐ輪の中に戻り数秒後には商会へと帰ってきた。


商会に戻ったクエスたちは警備の者に挨拶すると、クエスは最低限の書類に必要事項を記載した後

すぐにメイアに任せたと告げて1名用の転移門でさっさとコウとボサツのいる隠れ家へと戻った。



クエスが戻った時はすでに夜になっていた。夜と言っても明るさで言えばそんなに暗くはなっていないが。

クエスは所持金表示を起動させ、左下に表示された時刻を見る。表示は21時10分だった。


「うわ、だいぶ遅くなったわね。向こうはこっちより明るいからどうも調子狂う」

そうつぶやきながら広い居間へとつながる扉を開けた。


「たっだいまー。さっちゃん、コウ、今日の修行は・・・」


そこまで言いかけてクエスは部屋の隅ですでに寝ているコウを見て言うのを止めた。

ボサツもすでにいないところを見ると寝室か研究室にこもっているのだろう。


クエスはコウに今日の件をすぐに説明したかったが、仕方がないので明日にすることにする。


「はぁ、まいったわ。明日説明してそのまま連れていくことになるなんて。ごめんね、コウ」

そういうとクエスは寝室へ向かった。



「さっちゃんただいまー」

「あら、くーちゃんおかえりなさい」


クエスが寝室の扉を開けると、ボサツは壁のパネルに何か文字を書いており<転写>でインクを誘導させパネルの文字をノートに写していた。

クエスが中身を見てみると、どうやらそれはコウの魔法の習得状況を示した一覧だった。


各魔法がどれくらいうまく使えているかで、〇や△や◎で表示してある。

と、クエスの目に<風刃>の表記が映る。風属性の代表的な攻撃魔法で確か必要LVは23だったはずだ。


「えっと、コウはもう風刃とか使いだしているの?あれは確かL23の中級クラスの魔法だったはずだけど」


「ええ。まだつたなくて半分は失敗していましたからあと数日はかかりそうですけど」


「魔力の扱いが相当上手いみたいね。普通なら精霊の契約に3体は必要だし、優秀な風使いでも練習開始の目安は早くて半年後のはずなのに」


「しかもコウはどんどん吸収するので教える方としては面白くてたまりません。こんなに興奮する指導は二度と味わえないかもしれません」


クエスはまだ数日しかたってないのに、と驚きながらもボサツが楽しそうで何よりとも思った。

ボサツは一人で黙々と研究しているときはあまり表情も変えず淡々としているからだ。


それがコウの指導で毎日笑顔が続いている。

もちろん、ボサツとコウがくっつくのに不安も不満もないつもりだが、クエスは姉として、保護者として何とも言えない微妙な気分になる。


が、とりあえずその気持ちは今は置いておくことにした。

明日と明後日のことでボサツと話し合っておく必要があったからだ。



「さっちゃんごめん、ちょっと話があるんだけど」

「ん?なんですか?」


「えっとね、今日転移門の修理で軽く罠に嵌められて・・・実はコウのことが女王様と上級貴族にバレちゃったんだよね」


「あら、えらく速かったですね。半年は隠せると思っていたのですが」


「そうなのよ。どうも私があらぬ誤解を受けてしまって、説明のためにどうしてもコウのことを話さざるを得なくて」

「からめ手で暴かれてしまったということでしょうか?」


「うーん、私のミスだけどそんな感じよね。結局私の動向を説明しなくてはならなくなったの、それでね・・」

クエスがそこまで話すと笑顔のボサツはクエスのお願いを最後まで聞かずに、返答した。


「わかりました。私も同行、ですよね。それでコウも連れて行かなくてはならないのですか?個人的には今はまだ貴族・・特に当主たちの興味の目に晒したくはないのですが」

「ええ、そこは私の門閥のトップにだけで抑えてもらったわ」


「そうでしたか。向こうも必要以上に切り込むのは下策だと思ったのでしょうか?」

「ははは、たぶんね~」


おかげで助かったと言わんばかりのポーズにボサツもふふっと軽く笑いで返す。


「で、ちょっとお願いしたいんだけど明日の昼までに付け焼刃でコウに最低限の礼儀を教えておいて欲しいんだけど」


「あぁ、くーちゃんのところのトップはボルティス様でしたね。可能な範囲となると、ほとんど発言をしない前提で礼節一式までになります。なんせ明日の朝しか時間がありませんので」


「ごめんねさっちゃん、私は朝のうちに面会の段取りをしておかなきゃいけなくて」


「いいですよ。1月後ほどに教える予定が少し早まっただけですから」


クエスはその後も簡単に状況をボサツに説明しつつ、明日も忙しいということでお互いに早めに寝ることにした。


今回は軽いクッション回みたいな感じになりました。

個人的には更新が順調なことが嬉しいです。

時間を有効に使いつつ、これからも頑張ります。 ブクマ等々頂けると幸いです。


今回も読んでいただき、ありがとうございます。


修正履歴

2019/04/10 会話の語尾を修正

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