表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
62/483

秘密の三者会談

ここまでのあらすじ


クエス一行が転移門の修理に来ると、とある人物が話をしたいと言われる。

それが目的で転移門は破壊されていた。


クエスとバカスの周囲には誰もいない。クエスやバカスについていた護衛も、状況を察して遠巻きに待機している。


クエスはもともと故障を装った他の目的がある可能性を考慮に入れていたので、直ぐに状況を察して質問を切り替える。


「で、だったらすぐに本題に入りたいんだけど。私を呼び出したかったのはいったい誰?雰囲気からバカスじゃないみたいだけど・・」


「相変わらず察しが早い上に駆け引きもなく本題に入る奴だな。まぁいい、依頼は女王からだ。クエスと話がしたいらしく、な」


バカスがそう説明するとすっとバカスの大きな体の後ろから、すっと現女王が現れた。

それを見たクエスは即座に右手を握り左胸の上の方に当て、その後その手の位置のまま直立する。


クエスは三光のトップであり上級貴族にも対等に語れる非常に高い地位であるが、女王に対してだけは別だ。

三光とはそもそも女王直属の騎士のような存在であり、クエスにとって女王は直接の上司に当たる。


ちなみに上級貴族は女王に対しては軽く敬意を示せばさほど問題にはならない。

同じ地位の上級貴族当主と三光だが、女王に対してのみ対応が異なる。


三光がそういう微妙な地位になっている理由は、女王が当主たちに対抗するために作られたからだ。

女王がたとえ連合の盟主国のトップと言えども、当主7人相手に強気に出続けるのはかなり厳しいものがある。

その為に、戦闘力に特化したものを三光として側に置き、力・立場・人数で押し込まれない状況を作り出している。



クエスの礼を見て女王インシーは少しだけ安心した様子を見せる。

クエスは女王の少しホッとした様子を少し疑問に思いつつも口には出さず、女王が話しだすのを待った。


「悪かったわねクエス、こんな形で呼び出してしまって」

「いえ、何も問題はありません」


クエスは即座に応答する。

女王はバカスに目で合図し、それを受けたバカスは少し離れた場所で待機していたクエスの護衛と周囲の兵士を遠ざる。


そしてクエスと女王、バカスの3名でさらに離れた場所に移動した。

その後バカスが合図し、バカスの護衛が離れた場所からクエスたちの周りに<静寂の結界>を張り巡らせた。


クエスは<静寂の結界>が張られたことに気付きかなり深刻な話になりそうだと内心身構える。

この3人で他に聞かれてはまずい話となると、普通の世間話でないのは明白だからだ。


だがその予想に反してバカスは面白そうにしている表情を崩さないので、クエスはいまいち深刻さを掴めずにいた。

周囲の状況に問題ないことを確認終えたのか、女王はクエスに問いかけてきた。


「クエス、聞きたいことがあるんだけど・・最近あなたは何をやっているのかしら?」


女王の聞き方に少しだけ引っかかるものがあったが、クエスはこんな場をセッティングしておいて聞いてくるのはそれ?と思い不思議そうな表情になる。

そもそも聞きたいことがあるのなら、直属の部下なんだから自分を呼び出せばいいだけのはずだ。


それなのに、こんなまどろっこしいやり方で自分を呼び出すなんて、どう考えても普通じゃない。

私に会ったことすら知られたくない?そう思うが、女王が直属の部下に会うことを知られたくないなんて、そもそも変な話だ。


では、クエス側に配慮している行動なのかとも考えるが、クエスと現女王とはあまりいい仲でない事もありそれはそれで可能性は低い。

まぁ、クエス側には今のところは少し隠したいことはあるが、別に大きな事柄でもないのでクエスはある程度用意していた説明をしだす。


「女王様、最近は以前にご報告していた妹エリスの探索でさらなる実験と実地調査で飛び回っていました」


「そうね。そう聞いていたわ・・それだけ?」


「えぇ、はい。確かにかなり長期で遠出していましたので定例の会議などには出られませんでしたが・・それは事前に報告をしていたと思いますが・・」

「そうね」


女王はそう言うと、深くため息をつく。

バカスはまだ少し楽しそうにニヤニヤしている。

そんな楽しそうなバカスに気付いてクエスはちょっとイライラしてきた。


女王が転移門の破壊までやって極秘に呼び出すのだから、この質問はよほど大事なことなのだろうと思うものの

質問内容も大したことではなく、クエスはまだ状況をよく呑み込めていない。


「こりゃ間違いなくクエスは何にも企んでいませんぜ。だから言ったでしょう、クエスはそんなことをする奴じゃないと」


「もちろん信じていたわ、でも私が信じただけではどうにもならないからこうしたのよ」


「わかってますよ女王様。いやー、しっかし、クエスの無自覚っぷりもここまでくると問題だな」


豪快に笑いながらバカスはクエスの問題を指摘するが、それでもクエスは何の事かもわからず2人の話に入れずに困り続ける。


2人からなかなか本題を切り出されなくてクエスは困り果て、結局自分から切り出すことにする。


「えーっと、女王様。私が何か問題で・・」

「ええ、大有りよ」


クエスが尋ねた言葉を打ち切るように女王インシーは返答したので、クエスも思ったより深刻な状況だと理解したようだった。


「クエス、あなたが会議など出席しなかったのはどれくらいになるかしら?」


「確か3ヶ月程だと思いますが・・・」


「その間あなたは色々と不可思議なものを買い込んだり、びっくりするほどの多額のお金を動かしていましたよね?」


クエスは軽く上を向きながら考える。

確かに未知の場所(地球)に飛ぶのだからと色々と物は買い揃えた。


更にその前に、地球にエリスがいることを突き止めるための装置や地球に飛ぶための装置を完成させるため、相当レアな高い機材の買い物を金に糸目をつけずに色々とやった。

だけど少々ぼかしていたとはいえ女王には簡単に説明をしていたはずだし、問題となる部分が思いつかない。


「確かに色々と高価なものも買いましたが・・エリス探索のために色々と道具が必要になることや、時間も必要だと説明していたと思っていたのですが」


クエスはとりあえず自分が深刻な立場になっているのは理解した。

だが、まだ具体的にどこが問題だったのかいまいち理解できていない。


会議に3ヶ月も出なかったのがそんなにまずかったのかと思い悩む。

が、女王から出た言葉はクエスの想定外のものだった。


「クエス、あなたは今、反乱もしくはどこかの貴族を滅ぼそうとしていると見られているのよ」

「はぁ?私が??」


「あっはははは、クエスの反応はやっぱり面白いな。最高だ。やはり俺の嫁にふさわしい」

「茶化さないで頂戴」

「あんたの元に行くわけないでしょ。・・・で、その・・・なぜ私がそんな疑いを」


少しだけ話が逸れて空気が和んだが、クエスはすぐに話題を戻す。

裏切り者扱いされて黙っていてはますます不利になるからだ。

こういうあらぬ疑いは、即解決するに限る。


それに対して女王は改めてため息をついた。

そして女王はクエスにはっきりと状況を話すことにする。


「長い間公に顔を見せず、ずいぶん高額なものを含め色々と買い込む。それをやっているのがあの有名な一族殺しよ。周りが何とも思わないと思ったの?」


これでクエスも理解したかと女王は思ったが、当のクエスは「ええぇー」と困惑した表情を浮かべた。

その表情を見て女王は呆れ果て、バカスは再び豪快に笑いだした。


「じょ、女王様・・さすがにそれは・・私は先代の前でちゃんと連合に対して危害を加えないと宣誓してますし・・」


「クエスはもう少し自分がどう見られているか考えた方がいいわよ。策略とかの情報には結構敏感なのに・・困ったものね」


「まぁ、これがクエスのいい所なんだよ、女王」


「はぁ・・いい所なのは認めますが、畏怖の対象にもなっている本人がさすがにこれでは困ります」


女王がバカスに反論している傍でクエスは小声で「はい」と反省し軽く頭を下げた。


「これでクエスに問題がないことは確認できたわね。それでどうするかだけど」


「その、私が皆の前で余計な混乱を引き起こしたのを謝罪して・・ではダメですかね?」


「問題ないことを確認できたと保証する者が要るな、よし、俺がやってやろう。クエスという未来の嫁の為だ」


「誰が嫁よ!しつこい!冗談じゃない!」


「なぁに、俺に惚れるのも時間の問題ってやつだ、がはははは」


バカスのおかげで場に真剣さが無くなっていて女王は少しだけ頭を抱えるが、同時にクエスを追い込まなくて済んだので少し安心もした。

とりあえずクエスのここ3ヶ月の行動とその結果を聞き、バカスを保証人として置いておけば状況も落ち着くだろうと女王は思案する。


バカスはクエスと1対1なら好意?興味?を隠さないほどだが、大勢の前では以前に自分の配下の家を潰された立場としてやや対立側に立つことが多い。

そんなバカスが保証するなら真実味も増すということだ。


「クエス、ここ3カ月は例の妹を探すための準備とその探索に費やしたということでいいのね?」


「はい、ほぼそれだけですね。装置の作成と試験起動に2月ほど、実際の探索に1月といったところです」


「ほぅ、それで妹の・・エリスだったか、見つかったのか?」


「うーん、正確にはまだ。詳細は言えないわ。邪魔やおかしなことになるのは避けたいの」


「それならば継続調査が必要ということで報告した方がいいわね」

「ふむ、そうだな」


「それで、他に成果は無しでいいのかしら」

「あ、その・・あー」


クエスはとっさにコウのことを語ろうとしたが、コウの中には妹のエリスがいるので根掘り葉掘り聞かれるのはまずいと思い言いとどまった。

が、言いとどまったことで隠したい何かがあるとをばらしたことになる。


クエスに問題が無いと証言する立場の女王とバカスは見逃すわけにはいかなかった。

クエスもしまったと思いつつも、もう誤魔化せないことは状況からいって理解している。


普段はこういう隙はあまり見せないクエスだったが、あまりに想定外のことで周囲が騒いでいると知って驚いたため

対応を考えようと頭のリソースをそっちに使っていたからか、思わずミスをしてしまった。


「なんだクエス。ここでのことは言いふらしはしないから俺にくらい正直に言っておけ」

「ええ、他の者がどこからか知って私たちが知らないとなるとややこしいことになるから話しなさい、クエス」


「え、いや、そんなに重大なことではないのですが・・」

「ならとっとと話しておけ」


少しクエスは考えたが、この状況でコウまでも隠し通すのは自分にとってもコウにとってもデメリットになると判断して話すことにした。


「えーっと、成り行きになるんですが・・探索の時にいい魔法使いの卵がいたので、、まぁ、育てることにしたんです」


「あら、あなたが?」

「ほほぅ、弟子など邪魔でしかないと豪語していたクエスがか」


「ま、まぁ・・色々とあったんです」

クエスはからかうバカスを無視して女王に返答した。女王はまだ何かあるなと思いつつも話を進める。


「そう、とりあえずそれだけかしら?他にないならとりあえず弟子のことは会議の場で公表するわ、いいわね」

「そうーーですよね。あまり大事にしたくなかったのですが仕方ありません」


「そいつは相当の強者なのか?」

「まだひよっこよ。これからどうなるか、基礎を含めて一から面倒を見ているだけよ」

「ほぅ、そうなのか」


バカスは少し興味を失せたように答えるがクエスはその様子を見て警戒する。

バカスは豪快さや粗雑さを表に出して相手の気を緩めさせつつ、裏で動くタイプだからだ。

上級貴族の当主たちの中でも一番嫌らしい奴だとクエスは思っている。


「よし、それなら明後日には当主を全員呼んでその場で私とクエスから説明ということでいいわね。バカスは必要ならフォローに入って頂戴」

「ああ、いいぜ」

「はい、わかりました」


「そうそう、クエス。せめて貴方の門閥のトップのボルティスには事前に説明しておきなさいよ。今回の件で擁護するにも手札がなくて困っていたわよ」

「げっ・・はい、早急に説明しておきます」


クエスは参ったな、とこれからの対応を思案しだした。

特に報告しておけと言われた自分の上の上にあたる一門のトップであるボルティスは、真面目一徹なタイプで適当な説明では納得しないからだ。


その様子をクエス本人に気付かれないように女王は観察する。

女王はクエスが何か隠していると考えいた。


3ヶ月と大金をかけて弟子を1人得ただけならクエスはもっと不満を持っているはずと思っていたからだ。

それが女王から見た普段のクエスという人物だ。

それなのに今回の聞き取りでは愚痴一つ出ず、いつもよりちょっと素直に話したからだ。


「お、そうだ女王。門の修理費用はちゃんとクエスに払っておいてくれよ、絶対にふんだくる気だから俺に回されるとたまらんからな」

バカスは笑いながらもきっちりと女王にくぎを刺す。


それを聞きクエスも表情を硬くし、絶対に払ってもらいますとアピールしていた。

女王はやや呆れながらも仕方ないと言わんばかりに答えた。


「ええ、わかっているわ。あまり聞きたくはないけどどれくらいになりそうなの?」

「制御棒が数本いってるのは確実なので、2倍の特急料金も併せて数千万くらいになると思います。」


「た、高いわね。まぁいいわ、どうせ国の金で払うんだから。明後日の会合の時に明細つけて持ってきなさい。その場で商会に支払うわ」

「わかりました。そのように対応いたします。では、私は修理対応に行きますので」



そう言うとクエスは<静寂の結界>が無くなったことを確認し、女王に一礼して故障した大型転移門のある建物の方へ走っていった。

クエスが建物に入っていき見えなくなったところで女王は口を開く。


「バカス、私はクエスがまだ何か隠していると思うわ。あなたは?」


「まぁ、大方何か隠してはいるだろうが連合に牙をむくとかじゃないと思うぞ。そういう場合はクエスはもう少し淡々とした冷めた態度が出るからな」

「そう、ならいいのだけど」


「俺が見た感じなら、上がっていた疑惑は白と言っていい」

「私もそう期待はしていたけど・・クエスをよく見ているバカスがそう言うなら少しほっとしたわ。後は会合でうまくいくことを祈るしかないわね。明確に対立したがる者はいないとは思うけど」


「ははは、さすがにそんな奴はおらんだろ。スイッチ入ったクエスと対峙したいものなどおらんわ

 あれは化け物の類だからな。あの虹色使いと呼ばれた当時最強だったボサツでさえ模擬戦で1-4の惨敗だったんだぜ。

 とにかく俺はもう戻るからな。こりゃ明後日が楽しみだ」


そう言うとバカスは軽く前に飛んで空中で足の裏で爆発を起こして加速しながら帰っていった。

その様子を見送ると女王は近くに待機していたバカスの側近の者を呼びバカス家の秘密の転移門を使って光国へ戻っていった。


順調に更新できています。見てくださった方、ありがとうございます。

明日も明後日も更新を目標にしておきたい(希望形)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=977438531&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ