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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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魔法を使う恐怖

ここまでのあらすじ

午後の実技の時間、風属性の魔法というとコウがやる気を出しました。(日記風)

俺のやる気を見て嬉しそうに師匠は魔法の説明を始める。

「まずは本格的な風の攻撃魔法、<風刃>を言ってみますね」


師匠はそういうと余裕を見せながら魔力の型になる魔法核を、俺に分かりやすく見せながらゆっくりと配置し始める。

1,2,3・・・結構配置していくなぁ、本格的といってたし仕方ないか。


と余裕をもって見ていたら、見る見るうちに増えていき25個になる

簡単に言えば弓形が前後に2つある形になるんだが、前と後ろで配置が違うし、その間にも配置された魔核があるし、かなり複雑な形だ。


魔力抜きの魔法はH型が3つ重なってて18点だったけど、あれは形が単純で楽だったがこれは更に魔核が増えた上に複雑だ。


「えっと。か、かなり複雑に配置するんですね」


俺が少し戸惑いを見せていると師匠はそう?と言った軽い表情だった。

これって、間違いなく難易度が上がっているんですが色々と急すぎませんか。


とにかくグダグダ言ってても仕方が無いので、師匠の型を見ながら見よう見まねで作っていく。

周囲に出した俺の風の魔力を各所に密集させ核にしてそれぞれを繋げて仕上げる。


前側の弓形で2点並んだ部分が広がりすぎか、、調整。

前後が離れすぎかな、、調整。心の奏で勘弁してくれと思いながらも、計7箇所ほど調整してそれらしい型が出来上がった。


「師匠、出来たつもりですが・・」


ちょっと自信が無い。大きさもとにかく見よう見真似で作っただけ、そうちょっとじゃない、かなり自信がありません。

俺の自信の無さを理解したからだろうか、師匠はちょっとにこやかな笑顔を向け優しく指摘してくれる。


「初めての割にはなかなかだと思います。ですが、これでは魔法発動は難しいかもしれませんね」


やはりか。俺はわかってはいたもののやっぱりショックだった。

ちょっとだけ、ちょっとだけショックだった。


やっぱり俺って天才でもなんでもなくない?と口に出そうだったが思いとどまる。

そんなこと口に出したら傲慢の塊に見えてしまうからだ。

まだ初挑戦なんだし・・練習、そう、練習あるのみなんだ。



「コウ、とりあえず私が魔法を発動しますので見て置いてください」


師匠がそう告げると魔法核の周りにだんだんと濃い魔力が発生し型を取り囲みだす。

4秒ほどで型の周りにあふれていた魔力がすーっと魔力核やそれをつなげている線を満たしたかと思うと師匠が発動の声を上げる。


「発動!<風刃>」


俺の今まで見た中でもかなり濃い魔力の塊となった弓なりの風の刃が真っ直ぐ飛んでいき

いつの間にか土の上に立っていた直径15cmほどの木の柱を上下に分断した。

上と下の木がずれているので完全に切断されたことがここからでも十分わかる。


うわ・・・これは・・危険なやつだ。俺の本能が危険だと警告している。

以前クエス師匠が使ったレーザーっぽい魔法で木に穴をあけた時も危険だとは思ったが、これはそれよりやばい。


「す、すごい威力ですね。この魔法は」

「ええ、切断力はなかなかのものですし発動後の速度も速くて使い勝手がいい魔法です。上手くなればコントロールも付加できますよ」


淡々と語る師匠を見て少し恐ろしさを感じる。

どう見てもこれは相手を殺す為に使う魔法だからだ。


「この風刃は・・その・・相手を真っ二つに出来そうですね」


俺は恐る恐る師匠に尋ねた。いや、ね、目の前に柱のような木があって実例を示したんだからわかっているんだけど。

だけど、どうしても、どうしても師匠に確認したかった。


「ええ、魔力を帯びていない物なら簡単に切断出来ます。ですが魔法使い相手となると相手の周囲の魔力で威力が相殺されますので食らっても軽く後方に飛ばされるくらいですね。

 もちろん実力差がかなり開いていたり、素体相手ならコウの言うように・・」


「あっ、はい、はい、ですよね。」


俺は師匠が言おうとしたことを咄嗟に遮ってわかりました、と返事をした。

ゲームの魔法使いだって火の玉ぶつけてモンスターを丸こげにしてるんだし、そりゃ人に使っても同等の効果があることくらいは想像できていた。


が、実際に目の前で見ると想像なんかよりもはるかに恐ろしかった。

相手を殺せる力を持つ。このことが。


アメリカで初めて銃を腰に下げたときもこんな気分になるんだろうか。

怖い、自分の練習している力が怖い、と同時にその力がなんか嬉しくも感じる。そしてそんな自分に気づいてさらに自分が怖くなる。



「コウ?」

俺の様子がおかしかったのだろう、師匠が心配そうに声を掛けてきた。


優しい声だ。声だけじゃない、俺のほほに手を当ててきて安心させようとする。

これ一つとっても師匠は本当に俺のことを大切にしようとしてくれている。しかも可愛い。

俺は本当に恵まれているんだなと思わされる。


だけど・・だけど、師匠がやる気になれば俺を簡単にひねり潰せる。先ほどの風刃を見れば一目瞭然だ。

今まで全く意識していなかったことを意識し初めてしまい、自分にも師匠にも魔法にも恐怖を感じてしまいだす。


「コウ・・怖くなったのですか?」


俺は少し震えていたのだろうか、師匠に一発で見破られてしまった。

そう、怖くなったんだ、魔法だけじゃなく周りのいろんなことが。


もちろん、師匠が俺に今すぐ危害を加えることなどありえないことぐらいわかっている。

だから師匠に恐怖を感じることは実に馬鹿らしいことだ。


だけど、わかっていても一度感じでしまったわずかな恐怖はなかなか消えない。

同様に自分も今からそんな力を身に着けよることが、とても怖く感じて仕方がなかった。


「コウ、聞いてください」

師匠にですら怖がっている失礼な自分に、ボサツ師匠は優しく語りかけてくれる。


「あなたはこの力が怖くなったのですね。それは当然です。それだけの力ですから、魔法と言うのは。

 ですがコウはこの魔法を相手を傷つける為だけに使いたいのですか?」


「い、いえ・・ただ、魔法がすごいものだとわかって使ってみたくて・・」


「そうですね。でしたらこの力を貴方が守りたい者の為に使えばいいんです。この世界は理不尽です。魔法使い崩れの盗賊もたくさんいます。

 その時に貴方に力があれば多くの者を守ることが出来るんです。その守る力を怖がっていてはコウは何も守れませんよ」


師匠の言葉は十分理解できる。

警察だってその辺の人をただ撃つ為に銃を持っているわけではない。事件が起きた時に、多くの人を守る為に持っているんだ。


俺に才能があってすごい魔法使いになれるというなら、それは多くの者たちを助けることにつながる。が、だが。。


恐怖からか気持ちが不安定になり俺が作った魔法の型もすでに霧散している。

師匠は・・俺に失望しただろうか。でもそしたら俺がここにいる意味はない。存在価値がなくなる。


でも、それだけはダメだ。何のためにすべてを捨ててここへ来たのか。

数日とはいえとてもよくしてくれた師匠達の期待を打ち壊すつもりなのか。


そう、こんな調子ではいけない。すでに俺はやるしかない環境にいて他の道なんてないんだ。

恐怖に怯える心と恐怖に立ち向かう心が俺の中で戦っているのがわかる。


もちろん恐怖に立ち向かう心が勝って欲しい。もっと強い心を持ちたい。

でも、心のどこかに、その戦い決着が付いて欲しくない俺がいる。

そんな考え方はだめだとわかってはいるのに・・・。



その時師匠が耳元で俺に優しく語り掛ける。


「うーん、そうですね。今日の午後はちょっとお休みしましょう。コウが葛藤を抱えながら練習しても身が入りませんし、なによりコウが苦しむのを見続けるのは私も望んでいませんから」


俺への優しい気遣い、その思いが俺の心を揺さぶる。そして申し訳ない気持ちをさらに強く沸き起こさせる。

精霊の御子を目指す、そう朝には誓ったはずだ。

なのになんだ、この無様な自分は。


師匠もこんな俺のために惜しみなく後押ししてくれている。

だったらこんなところで震えていてはいけない。

そう思い直すものの、それでもなかなか一度理解してしまった恐怖を押さえ込めない。


(はぁ・・・・・・に似てて、そういうところがあるのね、あなたは。仕方ないわ、私が手伝ってあげる)


ふとそんな声が聞こえた。耳元や周囲からじゃない、頭の中にふと浮かんだ感じだ。

誰だろう。でも聞き覚えのあるすっきりした声だ。


そんなことを思っていると急に心が落ち着いていく。

いや?今まで抱いていた恐怖が霧散していく感じだろうか?

恐怖が薄らいだ事で、俺のやりたいこと、やるべきことを明確に考え意識することができるようになる。


そう、俺はやるしかないんだ、魔法使いとして生きていくことを決めたんだ、この道で生きていくしかないんだ。

そんな気持ちだけをはっきりと持つことが出来て、今までの恐怖が嘘みたいにさっぱり消え去った。



ボサツはコウの変化にすぐに気が付く。

怯えていた目が明らかに真っ直ぐ先を見据えた目になった。

人格でも入れ替わらない限り、この変化はちょっとあり得ない。


そういえば先ほど一瞬だが、コウから氷の属性を帯びた魔力を感じたその直後からコウが明らかに変わった。


「エリス、さんでしょうか?あれが氷の心・・」


コウに聞こえたか聞こえなかったかわからないが、小さな声でボサツはポツリとつぶやく。

少しだけ面白くなさそうに。でも安心したかのように。



「師匠すみませんでした。もう大丈夫です。すっきりしましたので練習続けられます!」


よくわからないがさっきの恐怖感は無い、その上十分集中できる。

俺は師匠に修行の続行を望み師匠も笑顔で頷いてくれた。


その後、気を取り直し風刃を何度も練習するが、あくまで冷静になれただけで魔力操作が上達したわけではないので、型作りはなかなかうまく行かなかった。

ちなみに、失敗しても大丈夫なように師匠は事前に俺に<風の衣>をかけてくれた。


風刃の詠唱に失敗したときに2,3度周囲に小さな刃のような風が複数飛び散らかったが、師匠の魔法のおかげで傷一つ付くことはなかった。

師匠の風の衣の防御力に感動しながらも、完全に威力を殺せるのかと驚き、俺ももっと強くならないといけないなと秘かに誓った。



とりあえず風刃は継続練習として一旦置いておき、より簡単な型で済む魔法の指導へと移行する。

圧縮した空気の盾を作る<空気の壁>、パンチすると追加の衝撃が加わる<風拳>、さらに<突風>よりも強風を吹き続けられる<豪風>を習った。


そして各属性で使える共通魔法(型が共通で属性変えても発動する魔法のこと)である玉と矢と盾をそれぞれ風属性で習った。(風の玉・風の矢・風の盾)

共通魔法は割と簡単なものばかりだったので、すぐに習得できた。

こっちはほぼ合格ラインだと言われたことで、ちょっとだけ自信を取り戻した。


だが、型もほぼ問題なく発動できたと思っていた3つの風属性魔法は、どれももっと練習が必要だと指摘された。

発動は出来ていても使った魔力に対しての威力がまだまだらしく、型の精度がまだまだらしい。


もう一度それぞれの魔法の型を一通り見直し、修正後それぞれ何度か詠唱してみた。

そうこうしている内に空が周囲の森が少し暗く感じてくる。


まだ遠くが十分見えるんだけど、師匠に今日はここまでと言われて張り詰めていた気を抜きリラックスする。


「今日はどうでしたか?一度に多く教えたので大変だったとは思いますが、より精度を高めるためにもこれからも修練をお願いしますね」


「はい、風刃以外はそこそこ出来ていたのでもっと精度を高めようと思います。風刃は・・これからもちょくちょく・・練習ですよね」


「ええ、そうですね。あと、わからないことがあれば遠慮なく聞いてください」

師匠と楽しく会話を交わしながら少し薄暗くなった周囲の景色にお別れにして家の中に入った。


日々修行の穏やかな日々。淡々としたお話が続く感じですが・・読んでいただければ幸いです。

次話は、クエスのお話です。プチ裏イベント開始。


読んでくれた皆様には、感謝、サンキュー、謝謝你

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