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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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修行:朝から水球、どーん!

ここまでのあらすじ


コウ、修行中。水の球をぶつける水球の魔法を始め色々覚えた。

穏やかな修行の日々は続く。


まだ薄暗い部屋の中、俺は布団から起き上がる。

早く寝すぎたせいか起きるのも早かったようだ。


寝ぼけ眼で水でも飲もうかと思いながら台所っぽいところへ行ったが蛇口が無い。

あるのは流し台だけだった。


「あぁ、そうだった水は自分で出さなきゃいけない世界だったっけ」


まだボーっとしている頭をすっきりさせる為に背伸びをする。

魔法を使うにしても、俺はまだある程度頭をすっきりさせないと出来ないからだ。



集中して水を生み出し、丁寧に魔力を抜く・・と水を制御できなくなったので宙に浮いていた水がそのまま洗い場に落ち排水溝へと流れていく。


「あ、しまった・・」

自分のやらかした失敗からどうすればいいか考える。


上を向いて魔力が抜けた水を口の中に落とす。

これだと顔面ずぶ濡れになるし、もう少しゆっくり飲みたいのでこれはパス。


それなら魔力を抜いた水が落下したところを両手で受け止めて水を飲む。

これならゆっくり飲めそう、、効率悪いけど。


本当はコップがあれば簡単な話なんだが、見渡してみてもこの台所と思しきところはコップどころか皿一つ置いていない為不便極まりない。

たぶん魔法で皿とか収納しているのだろうけどこれじゃみんなで使えないじゃないか。


俺は少し憤りながらもどうしようもないので、先ほどの案で両手で水を受け止め口を近づけて水を飲んだ。

最初は口の中をゆすいで吐き出し、2回目で水を飲む。魔法で生み出した水にはミネラルとか無いのかぜんぜん美味しくない。無味だった。


「さて、外で軽く昨日の魔法の復習でもしようかな」

そう言っていつものルートで玄関まで来ると玄関の扉に紙が張ってある。


<魔法を使う前は30分の瞑想を忘れないようにしましょう♪>


「きっとボサツ師匠だなぁ、仕方ない瞑想から始めるか」

まいったなと思いつつ外に出る。


外は昼間より気温が少し低いが、涼しいというくらいで震えるほどではない。

ここに来て師匠からもらった白いTシャツと水色のパンツという恰好をしているが、このスタイルでも問題ないのは助かる。


「そもそも昼間の明るさも太陽光じゃないからなぁ、この世界本当にどうなっているんだ」

ぶつぶつと呟きながらも芝生の庭へ行き、いつもの石の上で胡坐をかき瞑想を始める。


魔力を出して・・自分を中心として半径1m程の球状に魔力を出し維持する。

球状というが実際はまだ上手くできなくて少し表面が所々凸凹しているけど、これを維持しながら魔力を少しずつ動かし瞑想を続けた。



30分ほどの瞑想が終わり目を開けて周囲の魔力を霧散すると玄関近くにボサツ師匠が立っていた。


「コウ、おはようございます」

いつもの丁寧な師匠の挨拶に俺も立ち上がって30度ほど頭を下げながら挨拶する。


「師匠、おはようございます」


「先ほどの瞑想、だいぶきれいに魔力を展開できてましたよ。コウは慣れるのが早いですね」


「いえ、ぜんぜんです。お世辞にもまだ滑らかな球体とはいえませんし、中で魔力を動かすのはかなりきついので」


自分でも全然だめだなと思っていたので師匠の御世辞を思わず否定したが、師匠は笑って俺を諭す。


「まだ数日なのですから、十分な出来ですよ。確かに私の瞑想に比べればコウは酷いものですが

 そもそも何十年とやっている私と数日で変わらない出来栄えになられてはこちらがたまりません」


「はい、これからも努力します」


ちょっと褒められたみたいで嬉しくて笑顔になると師匠も笑顔で返してくれた。

笑顔の師匠を見つめると、師匠のきれいな金髪のに思わず見とれてしまう。


なにやら貴族の家を継ぐほど偉い人らしいけど、そうじゃなければ思わず告白して付き合いたいくらいだ。

いや、出来ないんだけどね。

そもそもそんな勇気ないし、、魔法を教わりながら何考えてるんだと怒られそうだし。



「さて私も体を動かすついでにコウの練習に付き合いますね」


そう言って師匠は昨日の水球の練習を提案してきた。

今回は師匠から水球を飛ばしてくることはない代わりに、師匠は木製と思われる剣と盾を装備している。


目標は10分の間に師匠に水球を当てるか、盾を使わせること。

師匠の剣は魔力を帯びていて水球をはじいたり切り裂いて無力化できるらしい。


前回は水球の投げ合いだったはずが、一方的にぼこられる結果になってしまったが、今回攻めるのは俺だけだ。

こうなれば防御を捨てて思う存分水球を唱えぶつけることが出来る、これならいけるのでは?

そう思って心の中で「よしっ」と気合を入れた。


「さぁ、どうぞ」


嬉しそうな師匠の声掛けと同時に、俺は野球ボールくらいの水球を2つ出して時間差で飛ばす。

もちろん簡単によけられるのは想定して済みだ。

(だからと言って追加の手はないんだが)


師匠は1つの球をかわした後に、もう一つの球に向かってあえて剣先を当てる。

水球が剣に触れた途端、破裂し勢いも殺されて真下に水が落ちた。

よく見ると剣先の魔力がドーム状になっていた。あの剣は遠間にあるシールドみたいな役目も果たすようだ。


1個、また1個と走って位置を変えながら立ち止まり、そこで水球を飛ばしながら師匠の様子を見てみるが、正面からの直線的な攻撃で師匠に水球を当てるのはどうみても無理だった。

この水球の魔法は水の球を発生させてから直線にしか飛ばせないので軌道が非常に読みやすい。


「コウ、正面から飛ばしているだけではさすがに当たってあげれませんよ?」


悩んでいるところに優しい声で痛いところをついてくる師匠。

わかってはいるが、遠くで魔力の型を配置するのは、今の俺には決して楽ではなく集中力がいる。


気持ちを切り替えて動かずに集中し、左右の斜め方向から1発ずつ勢いをつけて飛ばしてみる。


だが師匠はそれを苦ともせずスイスイとかわしていく。この程度じゃダメなのはわかっているけどどうしたら・・

そう考えるが名案は全く浮かばないのでやけくそに数を増やしてみることにした。


集中して魔力を多量に放出すると共に左右と正面に複数の水球の型を作っていく。

数打ちゃ当たるの作戦なので、正確さはこの際二の次だ。


師匠は俺のやろうとしていることをすぐに見抜いたと思うんだけど、ただ黙ってこっちを見ている。

これくらいでも余裕ということだろうか。

右6個左6個正面に4個、時間がかかりながらも型を配置して詠唱する。


「水よ、球となり相手に打撃を与えよ・・水球」


詠唱が終わると同時に周囲の魔力がごっそりと無くなり軽いめまいを感じる。

がそのまま師匠めがけて14発の水球が発射される。


左側で2個、右側で1個が球体にはなったものの勢いなく地面に落ちていく。型の組成がまずかったのだろう。

それ以外の13個は師匠に向かって飛ぶものの、多くの水球は2発を集中して飛ばしていた時ほどのスピードはない。


さらに狙いに正確さがなく、そのまま師匠が動かない場合でも当たりそうなのは5発ほどしかない。

そんな拙い攻撃だったが、これでも今の俺に思いつく精いっぱいの攻撃だ。


それを見たボサツ師匠はすぐに右側に少しだけ移動して、当たりそうな水球4個のうち1個、さらにもう1個を連続で剣で叩き無力化する。

残りの2つを体勢を変え上手くかわしながら、すべての水球を難なく処理した。


「なかなかいい攻撃でした。準備に時間がかかった分私は避けるコースをじっくりと考えられましたけどね」


俺の準備中に既に水球の飛ぶ方向まで見抜いて避ける方法まで検討していたのか。

確かに水球では型を作るときに魔核を円錐型にするので、射出方向が読めると言えばそうだろう。

俺にはまず無理だけど。


わかっていた結果とはいえ、悠々とかわされるとやはり悔しい。

俺は少し力が抜けてふらつくので、両手で膝を使って体を支える。


「やっぱり師匠には、、余裕でしたか」

「一度にあの数は驚きましたが、速度が落ち詠唱に時間もかかっていましたからね。即飛んで来たら少し危なかったですよ」


師匠はにっこりして答える。

渾身のぶっ放しでも余裕か、まぁそりゃそうか。師匠は凄い人なんだし。


そう思うがやっぱり悔しい。

ここで1発当ててかっこいいところを見せたかった。


と思いながらも疲労している格好のまま集中して師匠にとって死角になりそうな、師匠の真右に当たる場所にひそかに魔力を配置し水球を作る。

少し卑怯だけど会話しながら気を引いて不意打ち作戦だ。


ばらまいていた残りかすの魔力を即型にして水球を作り勢いよく飛ばす。

「いけ!」そう心の中で唱えたが、師匠は俺の方に笑顔を見せながら剣を右側に振り水球をはじけさせた。


「だ、だめかぁ」

がっくりと俺はうなだれるが師匠は結構嬉しそうだった。


「今のは結構よかったですね、人によっては結構当たると思いますよ。ただ最後に<行け!>って感じで意識を集中させ過ぎたので気付きやすかったです」


完璧に防ぎ、的確に指摘するボサツ師匠。

俺はまだふらつくので、少し疲れて座り込む。


結果だけで言えば今回も手も足も出なかった形だが、ちょっと褒められたので嬉しくなってまた師匠を見つめる。

金色の髪が明るくなってきた周囲の光をキラキラと反射して女神みたいだ・・とまた師匠に見とれてしまった。


悪いことじゃないんだけど、なぜかちょっと罪悪感が湧いてくる。

そんなこんな色々と考えていると師匠が声をかけてくる。


「さて、家の中へ戻りましょうか。そろそろくーちゃんが食事の準備を終わらせてる頃ですよ」


そう声をかけてきて、俺の手を握り引っ張って立たせてくれた。

そしてそのまま家の中へ手をつないだまま入った。

1発も当てれなかったけど、なんかご褒美をもらったみたいでちょっとだけ嬉しかった。



今日も師匠2人と向かい合って食事を始める。

ボサツ師匠が早速朝のことをクエス師匠に話している。


もちろんボサツ師匠が積極的に話し出したわけじゃない。

いつものようにクエス師匠が食事中にもかかわらず必死に聞き出そうとした結果だ。


なんかほほえましいと思えるいつもの光景を見ながら黙々と食べているとクエス師匠が話しかけてくる。


「そうそう、コウ、悪いんだけど今日も仕事で外れるから」


「仕事大変なんですか?」


「今日まではちょっと特別な呼び出しでね、それが終われば時々仕事行く程度で済むから、ごめんね」


クエス師匠が申し訳なさそうにする。

正直忙しいなら俺に遠慮がちに対応することないのに。


師匠は転移門関連のスペシャリストらしいので、状況によっては絶対に必要になる人物なのだろう。

そう考えると忙しいのも仕方ないと思うので、申し訳なさそうにされるとむしろこっちが申し訳なくなる。


「だ、大丈夫ですよ。ボサツ師匠に教わってクエス師匠をびっくりさせてみせますよ」

大丈夫をアピールするために少し盛って話してみたら


「あら、それは楽しみにしておくわね」


と意地悪そうな笑みを浮かべて返答されてしまった。

・・どうも余計なことを言ってしまったみたいだ。


食事を終え、少し時間が空いたので軽く瞑想でもしようかといつもの大部屋で胡坐を汲もうとすると

クエス師匠が見慣れないしっかりした格好で図書室に繋がる扉から出てくる。


普段の貴族感をあまり感じさせない普段着の格好も十分好感が持てるが、今の銀色のジャケットを羽織る姿は凛々しくて格好いい。

これがクエス師匠の仕事着なのかと思い、俺も助手で横に並ぶと様になるかな?と妄想したが

また心読まれそうなので、すぐに気を取り直して瞑想を始めた。


目を閉じたのでどの扉かはわからないが、すぐに扉が閉まる音がしたのでクエス師匠は出かけてしまったのだろう。

俺は魔力を球状に展開し、少しずつ魔力を動かし続けた。


いつもいつも、皆様ありがとうございます!

おぉ!ブクマ増えてる!!

ということでブクマ増加記念で?今日は頑張ってなんとか更新しました。

また切りどころが悪く5K文字切ったのはすみません。


ちょい先で建物の描写を建物を見ながら書いていると、必要以上に文が増えてしまった。

修正の時に削るべきか、そのままにすべきか。。ちと悩みます。

毎日はかなり厳しいですが、更新頑張りますので、これからもよろしくお願いいたします。

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