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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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クエスの買い物と申請手続き②

これまでのあらすじ


クエスは買い物を後回しにし、各申請の手続きを先に済まそうとそれぞれの施設へ向かう。


その後クエスはそのまま貴族エリアにある魔法協会へ向かう。

コウの魔法使いとしての登録と弟子としての登録を済ましておくためだ。


魔法協会は魔法使いに関するいろいろな情報を取り扱う場所だ。

基本的にここに登録されている魔法使いが光の連合に所属している正式な魔法使いとして扱われる。


魔法使いとしての登録情報は各属性の協会ともやり取りされて、魔素体になった日・大まかな属性のLV・師弟情報・所属など各情報が魔法協会に保存される。

犯罪者や指名手配の認定なども他の機関と連携して行っており、魔法使いの管理を行っている場所と考えてよい。


この魔法協会は貴族エリアだけでなく、一般エリアにも存在する。

魔法使いは貴族だけがなれるものではなく、かなりの費用は掛かるものの一般の者でもなることはできるからだ。


ちなみに魔法協会への登録も基本的には偉い人が出向くことは少ないが、申請する貴族家の者たちはほとんど貴族エリアの協会を登録に使う。

理由は圧倒的な身分の差だ。



そもそもこの世界では貴族を除き、一般の魔法使いは意思のある道具(兵器)として分類されている。

と言っても実際に道具として扱われているわけではないが、素体である魔法の使えない一般の住民という扱いではなくなる。


特に国に所属していない魔法使い、いわゆる傭兵の地位は一般の住民よりも下の扱いになる。

もちろん、どこかの国に兵士として所属していれば、兵士という地位になり住民よりも扱いが上になるが。


このような扱いになっているのにはいくつか理由がある。


力のある傭兵の地位を住民よりも上にすると、対貴族の集団ができやすく階級社会の崩壊に繋がるからとか

一般人と傭兵が親密関係にならないようにするためだとか

兵士など国や機関に所属するメリットを作るためだとか

危険だと思った魔法使いを理由なく処分することが出来なくなるとか様々だ。


貴族は一般市民を保護する義務をある程度負っているが、傭兵は道具であるため保護する義務は全くない。

それゆえ魔物討伐などで行方不明になった傭兵たちを捜索する義務も、国や貴族には全くないのだ。


ただし地位は低いといっても、現状は魔法使いになれば多額の金を一般の者たちより得やすく

兵器という物扱いでも金は持っているので市中での待遇は言うほど悪くなく、この扱いに不満を持っている魔法使いはあまりいない。

(不満なら兵士になればいいんだし)



ほどなくしてクエスは魔法協会に着く。

光の連合の盟主国、事実上の連合の首都のような扱いのこの都市にある貴族エリアの魔法協会はとても立派な建物だ。


入口の両側の護衛にクエスは軽く身分を確認してもらって中に入る。

1階は色々な受付をやっているホールになっている。


「ここはささっと済ませて戻らなきゃね」


そう言ってクエスは申請用紙の置いてあるテーブルにさっさと記入していく。

周囲が自分にを興味を持って見ているのはわかっていたが、クエスは相手にしても意味はないので無視する。


クエスはコウのことを知られたくない為、複数の書類を記入するとそのまま総合受付へと進む。

「これ申請するのでよろしくね」

「あ、あ、はい」


普通は貴族のお使いとして準貴族が来るような場所に一光様であるクエスがきて申請書を出すものだから

受付は驚き申請書をじっくり目にすることなく震えた手で受け取った。


受付の不安感を抱かせる対応をみてクエスは言葉で付け足しておくことにする。


「ちょっといい?こっちの書類なんだけど」

「あっ、はっ、はい」


そんなに緊張されてもこっちが困るんだけど、そう思いながらクエスは少し不満そうに顔をしかめる。

だが大事な処理をしてもらわないと困るのでクエスはきっちりと説明する。


「こっちは魔法使い登録書。で、この魔石が彼の魔力パターン。責任者は私で契約場所はうちの城内ね。魔素体になった日もちゃんと記入しているから抜けは無いと思うわ、確認して登録をよろしくね。

 そしてこっちは師弟関係の登録書、6ヶ月は不確定で申請するので空欄のように見えるけど記入済みよ」


そう言ってクエスはコウに関する書類を2枚提出した。

魔法使いの登録書は光の連合国内で魔法使いになった場合は必ず必要な書類だ。


中立地帯で魔法使いになった者でも、光の連合へ足を運ぶものは光の魔法協会に情報を記載した登録書を提出しなければならない。

この書類が提出されていない場合はその魔法使いは存在自体が違法であり、光の連合にいることが分かっただけで処分対象になりうる。


魔法協会への登録書は光の連合内での精霊契約をする場合、契約の場である神殿側で記入して神殿から協会に提出される物だが

貴族の場合は精霊との契約を家内で行うこともあり、そういう場合はこうやって直接協会に提出しなければならない。


もう一つは師弟関係の登録書。これも協会が管理している情報の一つだ。

誰と誰が子弟の関係なのかは非常に重要な情報の一つである。


師弟関係とは貴族一家内の繋がりと同じくらい大きい関係になることが多いからだ。

特に貴族は派閥関係もある為、対外への所属アピールにもなる。これも提出しないと重くは無いが罰則がある。


今回クエスはコウの師弟関係を6ヶ月不確定で申請した。

師弟関係の提出では最長6ヶ月まで不確定で申請することが出来る。


不確定期間は協会に登録されることはなく不確定期間に取り消しても記録は残らない。

この制度は、本来今回のように対外的にばれたくないときに使う制度ではない。

弟子と師匠の関係は非常に濃い関係になりがちなので、お試し期間を用いたいときに使う制度だ。


特に魔法使いになりたての場合、事前に才能を知ることができるとはいえ本人の努力不足が目立つ場合、期待するところまで届かないこともある。

また優秀な才能でも思想的に問題がある場合に、早い段階で関係を無かったことにできるようにする為にもこの制度がある。


もちろんこの期間なら弟子からも関係を解消することが簡単に出来る。

師になるものがあまりに問題のある人物という場合もあるからだ。


余談だが、不確定で申請すると確定直前に両者の同意を確認する作業もある。そのため申請手数料も普通のより高い。


ちなみに貴族では普通不確定の設定を使わない。

優秀なお抱えの講師や、親兄弟、一門の中で優秀な者が師となる場合が多いので取り消す事例がほとんど無いからだ。


その事情を受付は当然知っている為、クエスが不確定で申請をしてきたのを見てクエスが弟子を持ったと解釈した。

クエスはわずらわしいことが嫌いな方で弟子など持たないと公言しているお方だ。そのお方が弟子を持った。


これは明らかに大ニュースだ。受付はそう思い目を大きく見開いてクエスと申請用紙を交互に何度も見直す。

(ちなみに不確定の場合は魔法により字が終了の直前まで表示されないので、そのままでは師も弟子の名前も受付には見えない)


「勝手に公表したら当然厳罰よ、私も公的な罰だけで済ませるつもりは無いから」


受付が明らかに挙動不審な態度をとるのでクエスは小声で受付に釘を刺す。

クエスに言われて受付の男は慌ててクエスを真っ直ぐ見据えて頭を下げる。


クエスの権力なら彼を職なしどころか一家処分の罰を下すことも不可能じゃないからだ。

ましてや一族殺しの異名を持つお方だ。実例があるだけに、脅しが脅しで止まるようには聞こえない。


「了解しております。書類に問題はないので受領いたします。不確定の場合は確認がありますので・・」


「わかってるわ」

「では、以上です。御手数をおかけいたしました」


そう言って受付は頭を下げ続けたのでクエスはそれ以上は何も言わずその場を去った。


クエスが去った後、その受付のところには人が殺到し


「何の用事でクエス様は来られたのか?」

「新魔法か?それとも貴重な情報なのか?」


と様々に質問されたが、その受付は何も答えられないと質問を拒否しつつ当日分の申請書類の中にクエスの分を紛れ込ませた。



「これで申請関係はひとまず終了ね。これならしばらくはコウのことで指摘を受けることもないし半年はごまかせるわ」


先ほどの魔法協会から出て、少し離れた場所で背伸びをするとクエスは独り言をつぶやきながらも少しほっとした。

そして気を取り直して周囲に注意を向ける。


魔法協会を出た直後から視線を感じていた為だ。

貴族エリアにはもう用は無いので門へ向かって歩いているクエスだが、明らかに誰かにつけられている


(ったく誰なのよ。貴族街の外を歩けるなら間違いなく貴族関係者だろうし・・思い当たる節が多くて見当も付かないわね)


貴族街と言っても貴族と準貴族しかいないわけではない。

許可書を持った貴族の遣いが結構うろうろしておりそこまで閑散とはしていない。


警戒しながらも、すぐにクエスは住民が住む一般街へ繋がる門までたどり着く。


門を出入りする者はそこまで多くは無い。

そのためクエスを追って来ると目立つのでこれ以上尾行はしないだろう、とクエスは思う。


(正体を暴くことは出来ないけどまあいいか、派手に問い詰めてもトラブルの元だし)

コウを弟子にして育成に注力したいクエスは、ここはトラブルを避ける為にもとっとと門を出て尾行をまいた。



そのままクエスは先ほどお願いした荷物を受け取るために、メルッシュ魔道具雑貨店へ戻った。


「メルッシュ、もう準備できた?」

「そんなに大声出さなくても聞こえるよ、もう準備できてるから持っていくかい」


クエスの大きな呼びかけに店主のメルッシュは少し渋い顔をして答えた。

クエスはまぁまぁ、と笑いながら受け流す。


メルッシュとさっきいた店員が店の奥からカウンターに箱を3つ持ってくる。

1つ30㎝角程の結構大きい箱だ。


置かれた箱からクエスは遠慮なく中身を取り出す。

光るパネルを虚空から取り出しては、数量や欠けているものがないか、一つずつチェックをつけていく。

それをしばらく続けてクエスは確認を終えたのかメルッシュを見てOKのサインを出す。


「流石メルッシュね、欲しいものが完璧に揃っていたわ」


「1月も追加の余裕があればうちじゃなくてもこれだけ揃えられるさ」


「いやいや、案外他所じゃ揃わないものなんだって。で、総額はいくら?」


「別に急ぎでもないし値段は変わらんよ、予定通り150万だね」

それを聞いて三重の四角のマークがあるパネルにクエスは手を当てる。触れて2秒ほどするとピーンと音が鳴って支払いを終える。


「ありがとう、もう1セットは在庫があるのよね。更にもう1セット注文してもらってていい?」

「あいよ、早くても35日はかかるのでそこは覚えておいて欲しいね」


「わかってる。もし私に何かあった時は、アイリーシア家に受け取るように連絡してもらえればいいわ」

「そうならないことを祈っとるよ」


クエスはさっさと箱の中身だけアイテムボックスに収納すると店主と店員に両手を振って感謝と共に店を出た。


「メルッシュ婆ちゃん、また仕入れて来なきゃね」

クエスは知らないがこの店員の娘は店長のメルッシュの孫にあたる。


「ああ、また材料仕入れから作成まで手伝ってもらうことになるが頼んだよ」

「任せて、もうだいぶ慣れたんだから」


店主とその孫は楽しそうに笑いながらクエスが店を出るのを見送った。


いつも読んでいただきありがとうございます。

「文中の傭兵は冒険者」と読み替えてもらえればわかりやすいかもしれません。

未知の冒険がない世界なので、冒険者という言葉を使っていないだけですので・・


ブクマ・感想・誤字報告・評価、ユーザー様の様々な対応に感謝しつつ、多分明日も更新します。

今回と次回が5k文字切ったのは・・切りどころがなかったからです・・ぐぬぬ。

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