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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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修行:攻撃魔法<水球>の習得

ここまでのあらすじ


コウは魔法の修行中。飲み水を作り出せるようになり、さらに修業は続く。


「次に教えるのも水属性の魔法です。でも今後は攻撃系の魔法です。結構使える魔法なのできっちり習得してください」


師匠がそう指導するものの、水で攻撃系と言われても放水ぐらいしか思いつかない。

そう思いながら師匠の手本を見学する。


師匠が型を作り魔力が注ぎ込まれ、水でできたボールが目標へ飛んでいった。この魔法は<水球>というものだ。

何だかあまり大したことのない魔法に見えるが、水の球が素人が投げた野球の球並みの速さで飛んでくるらしくなかなか怖いものがある。


「まずはコウに威力を体験してもらいます。コウの手にめがけて<水球>を飛ばしますので受け止めてください」

「えっ?え?」


俺は戸惑いつつも右手を胸の高さの斜め前に突き出す。

俺の動きを確認して、師匠は俺の手に向かって速度を緩めた水の球を飛ばしてくる。


手のひらにぶつかって水風船みたいにはじけると思いきやそのまま左手が後ろにもっていかれそうになって

慌てて腕に力と魔力を集中させ踏ん張ると、ペイントボールが壁にさく裂したように水が飛び散った。


どうやらこの魔法は、当たるとすぐに水風船みたいに割れると思っていたがそうではなく、ぶつかってもある程度の時間球体を維持しつつぶつかって来るので想像以上に破壊力がある。

俺の手のひらや腕周辺にまとわせた魔力と相殺したのか、水に魔力が無くなると球体ではなくなったが

魔力で守っていたからこの痛さで済んだと思うと、魔力をまとっていない生身で当たることは想像したくない。



何度か練習するうちに俺もそこそこ使えるようになったので、師匠と投げ合いっこをした。

水の球と言っても固められた雪の塊に近い感じの威力なので、遊びのような投げ合いでも、魔力で体の周囲をがっちり防御しておかないと悶絶する羽目になる。


師匠から3発水球が飛んでくる。一瞬で型を作って飛ばしてくるので全然余裕が無い。

俺から見るとインチキしているかのような速さだが、これでも手加減しているんだろうなと思うと不満も言えない。


とにかく躱せないものは受け止めるしかないと考え<水球>の型を作る。

俺は飛んできた水球の1発にこちらの水球をぶつけて相殺すると1発はかわして1発は魔力を集中させた手で受け止める。威力を減衰させて手に当たるがそれでも少ししびれるくらいだ。


「こうなったら俺も複数放ってみせる!」


俺はそう意気込んで3秒ほどかかって3つを生成を試みる。

正面にいる師匠は俺が何をするのか楽しみにしているのか、様子をうかがったまま動かない。


出来上がった3つのうち1つはちょっと魔力の配置が悪かったようで崩れた球体になっているが構わず飛ばそうとしたその時

警戒すらしていなかった真左から水球がわき腹に当たる。


「ぐぉほ」

俺は思わず悶絶する。


3つも同時に作る魔法の発動直前だったため体にまとってる魔力が薄くなっていたせいか結構もろぐらいした。

発動していた3つの水球は狙いも定まらず飛んでいき、崩れていたものはそのまま地面に落下する。

もちろん師匠に当たるはずもなかった。


「こういう風に多量の魔力を使うときはある程度自分の魔力を残すか、一度大量に放出してから使わないとカウンターで痛い目に遭いますよ」


また人差し指を立てながら指摘する師匠。

実に実践的でわかりやすい指導でした、と言いたくても言えず悶絶する。


その時師匠が俺に回復魔法っぽい物を使ってくれる。

心地よい風が俺の周りを囲ったかと思うと、かなり痛みが薄らいだ。


「ありがとうございます、た、助かりました」

「元は私がぶつけたものですから、指導とはいえ大丈夫でした?」


「はい、今はもう大丈夫・・です」


すこしわき腹がズキズキするがさほど支障はない。

こういう風にすぐに気遣ってくれるのなら、ボサツ師匠相手では全力で挑戦して失敗しても大丈夫そうだ。



その後も実践のような練習を続け何発か水球をぶつけられたから、服がずいぶん濡れてしまった。

その濡れた服を乾かすため師匠が<脱水>の魔法を教えてくれる。

対象物(物のみ)の含んでいる水分を割合で抜いてくれる魔法らしい。


「師匠、乾燥と言えば火のイメージがあるのですが」


服を乾かすと言えば火の魔法のイメージがある。温めて水分を飛ばせるからだ。

それを師匠に言うと師匠に笑われてしまった。


「コウ、水分がすぐ飛ぶほど温めると服を着ている者が大変なことになりますよ?水でぬれた物を単純に乾かすのは水属性の領域です」

師匠に呆れられて少し恥ずかしかったが、すぐに納得して脱水の魔法に挑戦する。


型作りを何度か繰り返すうちに師匠から合格をもらう。

魔核を5個しか使わないシンプルな魔法だったので簡単に習得できた。


そして覚えたての<脱水>を自分の服に2回ほど使うと俺の服も程よく乾いた。

うん、これは便利な魔法だ。地球ならこれだけで雨の日に商売が出来そう。



3つほど魔法を覚えた頃には夕方になっていた。

夕方と言っても夕日はない。そもそもこの世界には太陽が無い。


ではどうやって昼には明るくなっているのかというと、今はよくわかってはいないが

見たままに言うと世界全体が何となく明るくなり、夜になると何となく暗くなる。


言い方を変えると夜になるにつれて世界全体の明るさが落ちるといった感じだ。

もちろん月もないがとにかく昼間より少し暗くなってきたら夕方ということはわかるので、あまり問題はないと思う。


そろそろ終わりかな、という雰囲気になってきて肩の力を抜いていると

師匠が俺の方を見て話しかけてきた。


「じゃあ、最後に宿題をあげますね」


師匠がそう言うと両手のひらを上に向け、両腕を斜め前に出すと、両手の上に直径10㎝ほどの魔力の球を出す。

何をするんだろう?と俺が見ていると俺から見て左側の球が光の属性に変わる。そして遅れて右側の球が水の属性に変わった。


「おぉ」

と俺は声を発するものの2色同時に使えるのか~、という軽い感じで受け止める。

試したことはなかったが、今まで魔法の修行で困難にぶつかっていないので、これもそのうち出来るようになるかなという感じだった。


「これが2色同時発動です。これはとても難しく才能のあるコウと言えども簡単にはできないと思いますが、ぜひ毎日少しずつ練習をしてください」


師匠が珍しく真剣な顔つきになって語るので思わずつばを飲み込む。

ちなみに真剣なまなざしでもかわいいと思ったのは内緒だ。


クエス師匠みたいにホイホイ心を読んでこないのでそういう想像をしても多分バレないから安心だ。

そういう想像と言ってもエロ路線じゃない。ちょっといちゃつくようなイメージを、した、だけです。


妄想を払しょくして真剣に考えてみると、思えば俺も今まで1色しか使っていない。

まだ数日の練習だが、確かに2色同時に使ったことはなかったはずだ。


「その、2色同時だと何のメリットがあるのでしょうか?」


「ほとんどの魔法使いは2色同時には使えません。1色しか使えないと魔法を使う前に事前にその属性に変更しなければいけないので相手が対策を取りやすくなるのです。

しかし、2色同時だと相手は対策を取りにくいし1色しか使えないと思われているとフェイントをかけることもできます。これは戦闘でかなり有利になりますよ」


「なるほど~、そういうものなんですね。ひとまずやってみます」


そう言って俺は右手に風の魔力を作り出す。

そして左手に属性のない魔力を出してそれを水に変えようとするが、いくらやっても水にならない。


俺の足元の魔方陣は風を表す薄緑色に光ったままで、何度挑戦しても水色になりはしなかった。

逆に先に水の魔力を出して風を作ろうとするもやっぱりうまくいかない。


「ちょっと、出来そうにないです」


落ち込んだまま俺はそう師匠に言った。

そうすると優しい笑顔で師匠は言葉を返す。


「さすがにいきなりできるとは思っていませんよ。私やクエスでも5年はかかった代物です。実際光の連合の中でも2色同時が出来るのは数十人もいないはずですから」

「え、そ、そんなに難しいものなんですか?」


「ええ。でも毎日めげずに続けていれば出来るようになりますよ、才能のあるコウでしたら」

そう言ってくれるのは嬉しいが、ちょっと何とも言えない気持になる。

重い期待というか、無茶ぶりにも感じるというか。


「まぁ、将来の目標として捉えてください。そして2色を混合させると」


そう言って師匠は両手の光と水の魔力を合わせる。

師匠の足元の魔方陣は黄色に光っているから光属性使用中にしか見えない。


がよく見ると五芒星の周囲に表示される記号のようなものの一部が青く光っている。あれがヒントになるだろうか。

そう思いちょっと目を離している間に、師匠が両手の間に1つの魔力を抱えていた。

その魔力の球からは光と水の両方の属性を感じる。


「2色の混合・・これが」

「ええ、2色混合の魔力ですね。これを使うとさらに複雑な魔法が使えるようになります。光る水を作れたり、すごい速さで動かせる水の刃が作れたり。魔法がさらに一つ上のステージになりますね」


「ええーーーと、、これを、俺が出来るようになる、でしょうか?」

「もちろんですよ。コウの才能はこんなものじゃないと信じていますから。ですから毎日少しずつ練習してくださいね」


「は、、はい、やってみます。よし、暇があったらまめに練習してみます」


少し戸惑いはあったがさらに上のステージがあるなら目指すべきだろう。

何はともあれ、毎日少しづつ練習してみることにした。


そういえば師匠からはっきりと期待されたのは初めてじゃないだろうか。

そう思うとますますやる気がわいてくる。俺はこぶしを握り締めて自分に絶対達成するぞと発破をかけた。


「ふふっ、それだけやる気を見せてくれると、私も師匠として嬉しいですね。そうですね・・もし半年で2色を同時に扱えるようになったらコウの望むご褒美を上げますよ」


えっ!?その一言を聞いて俺は思わず師匠を見る。

別にエロイことを考えたわけじゃない、わけでもない。


と、とりあえずデートでも、、なんて考えたけど・・よく考えたらボサツ師匠は確か次期国王になる貴族様だったはず。

それじゃだめかぁ、とか考えていると


「もちろん、私が欲しいとコウが言うならその願いも聞きますよ?」


と師匠が意地悪そうに微笑んだ。本気にしていいんだろうか?

なんにしてもこまめに練習してみるしかない。


まずは半年以内、ここでは170日ぐらいだったか。毎日がっつり練習してやる。そう決心した。

決心はしてみたのだが・・


「だけど師匠で5年ほどかかったんだよなぁ」

どう考えても無理じゃない?と思い、さっきのやる気が嘘のように意気消沈した。


いつも読んでくださりありがとうございます。

1.4万字ほどをうまく半分に割れなかったので3話構成にしてしまいました。


評価やブクマを頂ければ、恐縮であり・・ありがたくもあり・・。


次話はクエスのお出かけの話になります。

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