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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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修行:魔法で水を作り出す

これまでのあらすじ

修行中のコウ。昼から水属性の練習をするために魔力のコントロールに挑戦し成し遂げるものの

その過程で張り切り過ぎたのかばててしまう。

修行はまだまだ続く。


「コウ、起きてください。そろそろ修行を再開する時間ですよ」


師匠の優しい声と心地よい揺らし方に目を覚ます。

どうやら俺はそのまま寝てしまったらしい。


俺は慌てて飛び起きる。

立ってみたが、だるさやぼーっとした感じはすっかりなくなっていてた。


「すみません師匠、いつのまにか寝てしまって・・」

「いいんですよ、魔力の回復には寝るのが一番単純かつ有効な方法ですから。ですが、それはどこでも出来る行為ではないことを覚えておいてください」


確かにどこでも寝れるのは色々とトラブルのもとになるだろう。

魔物とか相手の戦いになると、寝る余裕も少ないので魔力配分は気をつけろということなのだろうか。


そう思いつつも今はそこまでは気にしないことにする。何せ今は修行中であって戦闘中ではないし。


「では、水属性を使った瞑想もうまくいったので次は水属性の魔法を覚えてみましょう」


そう言うと師匠は丸型の魔核を8個立方体の頂点のように並べる。

と、それぞれ隣の魔力同士を繋げて立方体の形にした。


そしてその一面の真ん中から少し離れた場所にもう一つ丸型の魔力を作る。

その一つとその面の4つの魔力をリンクさせ師匠が「水よ」というと、精霊からと思われる魔力があふれ何もない空間から水が出始めた。


立方体の横の面に作った一つの丸型の魔力が水の出る方向・・なのだろうか。

単純そうな魔法のようだが俺にもできるだろうか、そう考えている間もどんどん水は出続けている。


流石に水が出っぱなしなのでちょっと怖くなって師匠に聞いてみる。

俺がもし成功したとしても、水の止め方がわからなかったらシャレにならないからだ。


「あのぉ、師匠。それはずっと水が出続けるものなのでしょうか?」

「おっ、いい質問ですね」


そういわれて俺はとある人物を思い出す。

日本にいた頃に見ていたテレビ番組の司会者だ。


その司会者の口癖とよく似ていたので思わず思い出し可笑しくなる。

少し笑ってしまったが、師匠はさほど気にしていないのか、俺の行動を気にすることなく説明を続ける。


「えと、そうそう水が出続けるという話でした。これは維持タイプの魔法です」

「維持タイプ、ですか」


維持ということは、水を出し続けるのに魔力を継続的に使用するということか。

まさかずっと水を出し続けるという修行もさせられるのだろうか。

それはそれで集中力を持続させる必要がありそうで、きつそうな修行だなと思いつつも師匠の説明を聞く。


「魔法には基本的に使い切りタイプと維持タイプの2つに分けられます。昨日教えた突風はもちろん使い切りですね

 そしてこの水生成は維持タイプです。維持タイプは魔力を使い続けるとともに集中力も継続して必要なので、慣れないうちは維持するだけでも大変ですよ」


「そ、そんなに大変なんですか」


「そうですね・・まずは実感することも大事です。さぁやってみましょう。やり方はさっきじっくりと見ていたようなので大丈夫ですね?」


そう言われてとりあえずやってみることにした。


まずは等距離の感覚で魔力を配置、それぞれをリンクさせてほぼ立方体になっていることを回しながら確認する。

リンクさせるとある程度距離感を固定化できるので回転などが容易になる。


といっても今の俺ではゆっくりとしか回せないが。

別に横にしなくてもいけるはず、俺はそう思って最後の1個の魔力を立方体の下の面の真ん中から少し離して配置した。


 ◆◇


ボサツはコウがどれくらい上手く魔力を動かし魔法を成功させるのか、詳細まで把握しようとコウの魔力の動きに集中する。

コウは集中しだしてすぐ、全部で9個の魔力のうち立方体の頂点に位置する8か所の魔力を一気に出した。


ボサツはコウなら9個同時に出せるでしょうに、と思いながらも口にはしない。

ここは初心者で8個同時に生成したのを褒めるべき所だからだ。


初期位置はちょっとずれていたがきっちり立方体の頂点になるように修正できている。

が、残りの一個は・・ちょっと近すぎだ。あれでは出が悪くなるが今は指摘しない。


「水よ出ろ、<水生成>」


コウの声に反応してコウの作り出した型に魔力がどこからともなく注ぎ込まれ水が流れ出す。

先ほどのボサツが出した水の勢いに比べると半分程度だが、いきなり成功したことにコウは喜んでいた。


ボサツも内心感心している。まぁ、水生成と魔法名を言う必要は無いんだけど。

正直言うと水属性のLVが足らずに失敗するかも、もしくは配置そのものを失敗するかもと思っていたからだ。


「師匠出来ました!もちろん師匠よりは水の勢いがないですが、水がどんどん出てますよ」


コウの魔法の出来栄えと、本人の様子を見てボサツは指導ペースをまた上方修正することにした。

もっとコウに合った形でもっとより効率的に才能を伸ばせるように。


 ◆◇


「水を生み出し続けるために魔力が消費されているのはわかりますか」

「はい、というか吸い取られている感じに近いです」


「魔法の種類やその人によって微妙に感覚は変わりますが、それが維持する為の魔力です。

 その魔力を遮断すると水の出が止まります。魔力を止めると言っても周囲に張っている魔力までは止めてはいけませんよ、防御力が急激に落ちてしまいますから」

「わ、わかりました」


俺はちょっと自信なさげに答えた。

たぶんできると思いはしたが、まだやったことが無かったからだ。


「では、コウ水を止めてください」

「はい」


俺はそう答えると体全体から吸い取られるように水が出ている場所に流れている魔力を止める。

なるほど、瞑想などで魔力のコントロール力を上げるのはこういう時のためなのか、と勝手に自己解釈しつつ感心する。

やはり基礎練は大事だと改めて思い知らされる。


俺が吸い取りに抵抗するように魔力を止めると四角の水の塊に水が補給されなくなり

四角の中の水が減っていき、やがて空になって放水も止まった。


「おぉ、上手く出来たっぽい」

「ええ、問題なく出来ていましたよ」


師匠も笑顔で褒めてくれた。

出来たと大喜びしたいところだがちょっと小恥ずかしくて、俺は心の中までで喜びを止めておく。


結構な時間水を出しっぱなしにしたせいか、芝生の上はやや水浸し気味になっている。

この上を裸足で歩くのはちょっと嫌かなと思いつつ地面を見つめていると師匠が声をかけてくる。


「それではコウが撒き散らした水をあの塀の下にある溝まで運んでください」


その言葉を聴いて思わず「えっ?」と声を出して反応してしまった。

ボサツ師匠はにこりと笑う。無言の圧力なのか、それともできるかしら?という挑発的な笑みだろうか。


何はともあれ、師匠がやってみろということは今の俺でもできることなのだろう。

むろんやり方は知らないが、ここはやり方をただ聞くのではなく試行錯誤してみよ、という師匠の意思に沿ってみる。


だが、少し考えてみるものの、水を動かすみたいな魔法の型は知らないし、サイコキネシス的なものも習った記憶が無い。

まぁ物体を移動させる魔法を知っていたとしても、地面に放水し水浸しになった状態の水を動かくすのは無理だと思うが。


魔力を放出してみたが地面に放水された水に反応はない。

もう一度水を出してみるものの・・当たり前だが、地面に撒いた水の量が増えただけだった。


「えっと、どうやっていいのかわかりません」

俺は素直に師匠に質問した。


「どこがわからないのですか?」


師匠が俺が何がわからないかを尋ねてくる。

どこがって、どこも何もどうしていいのか全く見当が付かない。


「えっと、物体を動かすような魔法は型も知りませんし・・」

「なるほど、そういう観点でしたらそうですね」


俺が最後まで言い切る前に師匠は俺の言葉をさえぎる形で返答してきた。

俺があまり深く考えていなかったということなのだろうか?


「まず水を動かすのに物体移動のような魔法を使うことは少ないです」


師匠は人差し指を立てて説明を始めた。

こういうふとした動作にボサツ師匠は愛らしさを発揮してくるのでちょっと困る。

っと、いけない。今は魔法の修行中だ。


「水を動かすなら容れ物に水を入れて動かすことが多いですね。不定形のものはそちらの方が楽ですから」


俺はそりゃそうだろうね、と思いつつも黙ってうんうん、と頷く。


「ですが水属性を持つものなら、水に直接魔力をいきわたらせる事によって水そのものを動かすことができます。

 では、先ほど出した水を見てみます。その水はコウが出したものでまだコウの魔力が残っている状態です」


そういわれて俺は水属性の魔力を展開し、その水浸し一体の魔力を感知する。

確かに俺の魔力が水の中に溶けている?ような感じがする。

使った魔力に比べたらだいぶ少ないが。


「なんとなくですが、俺の魔力があるように感じます」

そう答えると師匠は満足そうに笑った。


「それでは、水の中にある自分の魔力を感知してその魔力を水と連動させて動かしてみましょう。コウならやれると思います」


そう師匠に促されてさっそく感知をする。

自分の魔力を帯びた水を動かす場合は、先に対象全体をはっきり把握した方がいいという師匠のアドバイスを聞き集中する。


全体を把握する、そう思いながら俺は集中する。

魔力を展開して周囲の空気、建物、様々なものを感じ取ろうとしていると突然師匠から待ったがかかった。


「コウ、一旦ストップしましょう。足元を見てください」


俺の足元の魔方陣が水色の光から薄緑色の光へと変わっていた。

変に周囲まで把握しようとした為に水を動かすはずが風属性モードになっていた。


これは失敗だと自分でもわかる。

周囲の魔力感知ではなく必要なのは水属性の俺の魔力を感知することだった。


「す、すみません全体を感知しながら水の中の魔力を感知しようと思っていたら・・気づかぬうちに変わってしまいました」

「ずいぶんスムーズに属性変更したので私も思わず見逃しそうでしたよ。属性変更してもコウ出した水の魔力はすぐには消えないのでもう一度やって見ましょう」


今度は失敗しない、そう思い自分の扱う魔力を水属性へと変換する。

なんとなく水を意識することですぐに属性の変更は出来た。


そのまま周囲に撒いた水を探すために地面の芝生を関知してみると、地面に俺の魔力と思しきものが広い範囲に感じ取れる。

今気づいたが、水以外にも師匠の魔力をはじめいろいろと関知は出来でいる。風属性の時よりも範囲はかなり狭いが水属性でも十分関知は出来るみたいだ。


「ん、わかったみたいですね。それを先ほどの瞑想の魔力コントロールと同じように動かしてみてください」


あの時と同じ要領か、そう思いながら地面の魔力をゆっくりとそのまま空中へ上げていく。

瞑想の時と少し感覚が違うのは、魔力だけじゃなく水と魔力だからだろうか。


その後、地面に広がった形のまま持ち上げた水を塀の方まで動かして、その広がった水の塊を先端から徐々に溝へ流し込んだ。

少し時間がかかったが空中に上げた水を全部流し込んで俺は一息をついた。


その様子を見て師匠が一声掛けてくる。


「うまくいきましたね、コウ。ですが地面から引き上げた水をそのまま広がった形じゃなく丸めた方が運びやすいし流しやすいですよ?」


何でそのままやるかな?と師匠は純粋に疑問に思ってそうな表情を見せる。

うん、言われて俺もその通りだと思う。

初めてのことなので余裕がなかったのは確かだが、これは少し恥ずかしい。


俺は顔を少し赤くしつつ

「すみません、集中してて考えが至りませんでした」

と自分の間の抜けた行為を反省した。


「さて、水生成に関してもう一つ教えておかなければいけないことがあります」


師匠は俺の赤ら顔が消えるのを待つことも無く次へと進む。

俺は照れている場合じゃないと、下をうつむくのは止めて師匠の顔の方へ向きなおした。


「先ほどのことでわかったと思いますが、水生成によって生み出した水には術者の魔力が残ります」


うんうん、と俺は二度頷く。

残っているからこそ俺が簡単に動かせたのだから。


「そのままではコウ本人はその水を問題なく飲めますが他の人は飲むと気持ち悪くなります。コウの魔力が満たされていますからね。

 もし、その魔力の濃度が濃い場合は最悪死に至る毒水の状態です」


「えっ、それマジですか・・」

「はい」


きれいな水を生み出せたし飲み水としか思えなかったが、飲めないと聞いて俺は驚いた。

それと同時に、じゃあこの魔法なんの役に立つんだよとも思ってしまう。


「まぁ、先ほどの濃度程度なら私なら師弟の愛で飲み干せなくも無いのですが・・」


ん?師弟の愛?師匠がいきなり変なことを言い出すので思わずびっくりするが

俺の反応は何も気にならないのか、何事もなく師匠は説明を続ける。


「とにかく、水属性が使えない者や素体の者はこの水を飲んでも気分が悪くなる可能性が高いです。これを解消しないと飲み水を生み出す魔法としては失敗です。もちろん料理にも使えません」


「方法は、、あるんですよね?」

なんか促されているように思えて流れに乗って質問してみた。


「ええ、もちろんです。1つは放出部分に魔力を抜く仕掛けを作る。2つめは自然放置、水なら術者や濃度にも依りますが長くても2日ほどで魔力は抜けます。

 そして3つ目は術者自ら水から自分の魔力を抜くことです」


「だったら1つ目のを習得するのがよさそうですよね」

「確かにそうですね。でも1つ目はかなり高度な技術です。ですから一般的に行われている主な方法は3つ目の方になります」


そう言って師匠は右側に20㎝角程の水を出す。

それは魔力の配置などは一切見せることなく水を出したように見えた。


実演のために水生成を使っただけで他の意図はないのだろうが、一瞬でそこに自分との圧倒的力量差を見せつけられてしまった。

ただ最終目標がどれくらい高いかを今見れたのは有難かいことだ。

あの域を目指すぞとひそかに心に誓いつつ、その後の師匠の動作に注視する。


「コウはこの水の中に魔力は感じますか?」

「はい、全体に魔力を帯びてる感じをしっかりと感じます」


「それではここに水属性の魔力で作ったこの形を水の中に入れて<魔力抜き>」


師匠の魔法発動と共に水の中から魔力が抜け空中から固定されなくなって落下する。

そしていつの間にか下に置いてあった木製の桶のような容器に水がすっぽり入った。


「コウ、この容器の中の水からは魔力を感ますか?」


別に上から容器を覗き込まなくてもわかる。魔力を全く感じなくなっていた。

あのH型を3つ重ねたあの構造の魔力配置をしっかりと覚えておく。

これがなければぶつけるための水しか生成できないのだから。


ん?この魔法って、水をぶつけるためなら不要な魔法だよなぁ。

更にいうと俺以外が飲むときにしか使う必要はないような気もする。

いつ使うんだろう、これ。そう一瞬思ったがそれ以上は今は考えないことにした。


「はい、魔力は完全に感じません。そうやって飲み水を作るんですね」

「ええ、その通りです。後で暇な時間に復習しておいてくださいね」


そう言うと師匠は次の魔法を教える準備をする。

昨日は1つだったのに今日はやけにペースが上がった気がする、しかも途中から。

まぁ、不満はないんだけど。


むしろ魔法のレパートリーが増えるのはこちらも願ったりかなったりだ。

早く色々と魔法が使えるようになって、師匠たちに恩を返せるよう頑張りたい。

読んでくださりいつも感謝しています!

修行回長そうだなと思われる方もいるでしょうが、お付き合いいただければ幸いです。

修行の裏で並行してミニイベントも進める予定です。


日常回は好きなんですが、表現力がない私ではのっぺりした話が続くだけになりそう(-ω-;)

魔法紹介は文中で紹介されるので、修行回ではやらない予定です。


修正履歴

19/03/21 本文最後5行の内容を微修正。

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