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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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修行:水属性の練習

ここまでのあらすじ


午前中、ボサツ師匠の講義でこの世界の基本的なことを教わる。

そして午後もクエス師匠が出かけているため、ボサツ師匠からの指導となった。


座学が終わった後、昼食はボサツ師匠がささっと用意してくれる。

皿が宙を舞うし野菜は空中で自ら細かくなり勝手に皿へ配置される。

なんか魔法のすばらしさを感じたと言うより手品、いや、曲芸を見せられている気分だった。


(料理アニメのような包丁一振りで野菜が空中でみじん切りになるとか普通に再現できそうだな、これは)

そう思いながら師匠の準備の様子を眺めつつ、午前中の座学を振り返る。


少なくともこの世界は貴族と一般市民は色々と区別されているらしい。となると俺はどういう扱いになるのだろうか?

貴族じゃなくても魔法が使えるものがいるのだろうか?


考え込んでいるとボサツ師匠が席に着くように呼んでいた。

いつの間にやら昼食が出来たらしい。

10分も経っていない気がするが、まぁそういうものなんだろう。


野菜が水の中にダイブして勝手に切れて、横では鍋に入ったスープが温まったかと思うと中のスープが皿に移動する。

これじゃそりゃ早いよな・・・しかも俺が手伝えそうな部分がない。

これは食事の用意を手伝うだけでも魔法の修行が必要そうだ。


席について食事に手を付けながら、さっき考えていたことを思い切って師匠に聞いてみることにした。

手をいったん止めて軽く右手を上げる。


正面に座っている師匠が俺の行動に気が付き目を合わせてきた。

師匠とはいえ正面から見つめるとちょっと幼く見える金髪のきれいな女性だ。


そんなに目を合わせられると少し話しにくいんだけど・・まぁ、ここで一方的に照れていても仕方がないのでとりあえず質問する。


「師匠、気になったのですが俺はいったいどういう立場になるのでしょうか?」

俺の質問があやふやすぎて意図が分かりにくかったのか、師匠は軽く首を傾ける。


「いや、俺はもちろん貴族の出ではないですし。貴族じゃなくても魔法使いとして存在できるのなら俺はその立場になるのかと思って」

再度言い直すと、師匠は「あぁ」といった感じの表情で俺を見てくる。


「まずコウの立場ですが、もうすぐクエスが弟子としての申請書を出すと同時に身元保証人となる予定ですので、そうなればコウは準貴族になりますね」


え!?準貴族?俺が?

なんか気付かないうちに思いもしない方向に話が進んでいる。


というか準貴族って偉いのかな?

貴族に準ずるってことなんだろうし、多分市民よりは偉いんだろうけど・・良くわからん。


混乱している俺を見て師匠はふふっと笑っている。

普段はとても丁寧で優しいボサツ師匠だが、時々ちょっとした意地悪をして楽しむ雰囲気を見せる。

意地悪といってもかわいい部類に入る程度の意地悪だが。


「準貴族は大雑把に言えば領主などの責任ある立場を持たない貴族になります。他家の貴族からは下に見られますが、一般的な優遇面ではほぼ貴族扱いになりますよ」


責任ある立場を持たないが一応上流階級に属するということだろうか?

上流階級に仲間入りできるのはありがたい話なんだけど、正直複雑な気持ちでもある。

俺は礼儀作法も何も身に着けていないし・・あぁ、そうか、多分これから学ぶことになるのだろう。


とりあえず準貴族になったらその時にでも聞けばいいか。

今現在、俺は魔法を習得することで毎日の予定がいっぱいだし、それ以外は礼儀どころか常識を覚えるのが先の状態だ。


そういったことを考えると、ボサツ師匠から準貴族の立場が約束されていると言われてもあまり喜びはわかなかった。

結局、なんとなく状況は理解しましたという空虚な返事を返すだけで再び食事に戻る。



ボサツはコウのあまり興味のなさそうな反応を見て少し意外だった。

ハーレム願望があると聞いていたので、権力的な願望もあるのかと思っていたからだ。


(もっと派手に喜ぶかと思っていたのですが・・貴族の価値をわかっていないのでしょうか?)

そう思いながら食事に夢中なコウを見つめる。


ボサツにとってのコウはクエスと同様弟子なのだが、クエスと違って兄弟的な感覚は全くない。

むしろ才能のある上にややこしい家ごとの縛りがない存在なので、将来的にはパートナーにする候補としてみているところもある。


コウと結婚しようものなら、ボサツは自分の家の跡継ぎとして逃れられなくなるのは理解しているが

コウのような才能を持つ者が、しがらみ無しの状態で手に入ることは今後数百年経っても無いこともボサツはわかっていた。


「くーちゃんが義理の姉っていうのも案外悪くないかもしれませんね」


ボサツは複雑な表情を浮かべながらも、コウに聞こえないように注意しつつそう小声でつぶやいた。



昼からは外に出て魔法の修行だ。

最初はまず30分瞑想から始める。


瞑想は1日の調子を整えるのにもよく使われるらしく、朝から5分程瞑想を行うのは魔法使いの日課らしい。

とはいえ現状では、よほどまじめな奴じゃないとやっていないらしいが。


俺はまだまだど新人なので、基礎訓練を欠かすつもりはない。

ただ俺が指示されている瞑想は、5分ではなく30分もやっているし、全力で魔力を放出するので非常に疲れるだけどね。


瞑想を始めてから15分ほどしてからか、師匠が急に声をかけてきた。


「コウ、いまは属性のない魔力を使って瞑想していますね、普段朝からの感覚調整のための瞑想はそれで構いません。

 ですが今からはその魔力に属性をつけて瞑想を続けてみてください。・・そうですね、コウにとって少し苦手意識のある水属性でやってみましょうか」


急に話しかけられたことで俺は動揺して、さっきまで必死になって自分の周りに密度を高め維持していた魔力を思わず霧散させそうになる。

魔力を留めていた球上の範囲がグニャグニャと歪むものの、必死になって魔力を球型の範囲に押しとどめ再び形を維持する。


「なかなかできるようになりましたね、コウ」


師匠が少しうれしそうに話すのを聞いて、やっぱり意図的に驚かせたのか、と少し不満に思いつつも今度は崩すまいと集中し続ける。

せめて魔力を維持しながらも普通に話せるくらいを目指しましょうと言われたが、今の俺ではその領域はまだまだ遠く感じる。


「では、少し難しいですが先ほど言ったようにその放出している魔力を無属性から水属性に変換してください」


この全力で放出と維持をしている魔力を変換しろと。

無茶を言わないでくれと言いたくなったがこれも修行、まずは水属性の感覚を思い出す。


俺はまともに水属性の魔力を扱うのはこれが初めてだが、感覚がないわけではない。

あの時、そう、水の精霊と契約した時に感じた魔力の感覚だ。

それを思い出しながら周囲の魔力もそのようなものだと考えイメージを広げていく。


徐々に自分の周囲の魔力が今までとは違うものに変わっていく。多分これが水属性の魔力で合っているはずだ。

なんせボサツ師匠から何も言われないのだから。


だがそう考えている余裕も次第になくなっていく。

今まではそれなりに維持できていた魔力が、水属性の魔力に変えた途端維持するのがとてもきつくなる。


特にきついのが俺の周囲に均等に広げる感覚で、どうやってもなぜか下の方に魔力がだぶつく感じになっている。

逆に上の方は密度が下がっているのが俺にもはっきり感じとれていた。


「コウ、なんだか下に魔力が溜まっていってますよ」


師匠のありがたいご指摘だが、それは十分に理解している。理解しているがどうにもうまくいかない。

このままだと俺の水属性の魔力の分布を球状の形に維持することすら難しくなっている。


俺はとにかく必死な状況で師匠から助言をもらう余裕もない。

何とか思いついた方法は、水が俺の周りをぐるぐると回るイメージで球状の範囲内の魔力を均等にするものだ。


洗濯機の回転中の水みたいに魔力を回しながら上へ上へと持っていくが、無理に動かし制御できなくなった魔力が球状の形を崩し辺りに散らばって次第に霧散していく。

結局魔力を球状に張り巡らせることが上手くいかず、俺は瞑想を中断せざるを得なかった。


これじゃない感はあったものの、結局いい感覚が思いつかず失敗して俺は凹む。


「うーん、もう少し魔力の濃度が低かったらいけたかもしれないけど」


そんな風に少し言い訳がましくぼやく俺に師匠は鋭く切り込む。


「多量の魔力を扱えないのでしたら、高度な魔法は使えないということになりますよ」


初めてなんだから愚痴ぐらい、と喉まで出かかったが何とかそれを呑み込む。

師匠の行っていることはほぼ正しいのだろう。

最初から愚痴を言って難題から目をそらしてはいけない、とにかくやれるだけのことをやってみるべきだ。


「そうですね、この魔力濃度でもやり遂げて見せます」


その返事に師匠は嬉しそうに微笑む、と同時に遠慮のない言葉が飛んだ。


「さぁ、コウのやる気も確認できましたので、今日はこれが出来るまでは他の修行は置いておきましょう」


えっ、マジ?と思ったが宣言した以上後には引けない。

容赦ない師匠の一言を頭から切り離し、いったん心を落ち着かせ水属性での瞑想を試みる。


が、その後何度となく水属性の魔力を周囲に張り巡らそうとするも、なかなかうまくいかない。

水というイメージが頭にこびりついているからだろうか、自分の周囲を囲む球体内で魔力を均等に配置仕様とするがどうしても下に偏る。


なんか水の中で頭だけ出している感覚だ。多分この感覚がいけないんだろうが。

桶のようなもので上にぶちまけるイメージでやってみるがこれがダメなのだろう。


1時間ほど経っただろうか、何度も失敗してはやり直す俺の状況に、さすがに師匠も見るに見かねたのだろう。

少し心配そうに俺に声をかけてくれた。


「コウは何か・・水から顔を出さなきゃいけないイメージを抱いていませんか?」


均等にならない魔力の球体を必死に維持しながら俺は答える。


「水というと、その、そういうイメージしかなくて」

「水中にいるイメージをもってください。周り全てが水のイメージです」


一瞬、ああ、なるほど!と思ったが同時にそれだと溺れるじゃん、そう思って眉をしかめる。

その表情を見たのだろう、師匠が更に言葉を追加する。


「コウは水属性が使えるのですから水に怖いイメージを持ってはいけません。しかも今周りに展開しているのは水ではなく水属性の魔力です。ちなみに上達すると水の中でも溺れずに・・」


ああ、そうか。どうしても溺れるイメージがあってか、無意識に自ら顔を出した状態のイメージでこの瞑想をやっていた。

だからどうしても上の魔力濃度が薄くなり、均一感がなかったのか。


よし、水の中にいるイメージだな、と思った俺は師匠のアドバイスの最後の方は聞くこともなく

今までとは違う広い広い水中に漂いながらそれを操るイメージで瞑想を行う。

徐々に球体の上部まで濃い魔力で満たされていき個人的には完璧な瞑想の状態が出来た。


「おお~、コウは本当に呑み込みが早いですね。それではそれを30分続けましょう」


師匠の言葉に「よしっ!」と思いつつ今の状態を維持するが、、さっきからの失敗続きでかなり疲弊してきているのか維持するにもやっとの状態だ。


「辛くても投げ出してはいけませんよ。どんな状況でも集中することが魔法にはとても大切です」


師匠の厳しい言葉を心に留め、その後30分俺を中心に1m半ほどの水属性の魔力を何とか維持し続けた。



師匠の終了の合図を聞いたときは力尽きたように魔力のコントロールを手放し、維持していた魔力は放り投げるように霧散させながら

俺は石の上に仰向けになった後、横にごろごろと転がり芝生の上に大の字になって寝転がった。


あぁ、わずかな風が気持ちいい・・そう思いながらそのまま空を見上げた。


「では少し休憩にしましょう」


そういうと師匠は前にももらったあのヤ〇ルトくらいの小瓶に入った魔力回復薬を側においてくれた。

俺は顔だけを動かして左側に置かれたその瓶を見る。

起き上がって飲みたいのだが、精神的に疲れ切ってて動ける気がしない。


「師匠、ちょっときつくて・・すぐには動けません」

「では少し落ち着いてから飲んでください。置いておきますので」


そう言うと師匠は俺の回復まで時間がかかるのふんだのだろう、家の中へ入っていった。

さすがに飲ませてくれるようなご褒美はないらしい。実に残念だ。


空を見上げながらさっきの感覚を思い出す。

周囲を水の魔力で囲まれている・・水で囲まれている感覚だ。

今度瞑想する時はそれを動かすことも考えないといけない。


俺は順調に上達しているのだろうか?と少し不安になったが、比較対象がないのでそれ以上は考えないことにした。

とにかく与えられた課題をこなしていくことだけを考えよう、そうすれば少しずつでも上達するはず。


そう思い大きく息を吸い込んで吐き出すと、なんとか起き上がり回復薬を飲んだ。

体中に水分なのか魔力なのか、とにかく何かがいきわたる感じがする。

がそれでも少し頭がぼーっとするので再び芝生の上に寝転がった。


いつも読んでくれている皆様、ありがとうございます。

時間に余裕がある方は、ブクマや感想、評価など戴けると嬉しいです。


前回で50話になっていたのか。あるお方が小説書きは忍耐と言っていたが

確かにそういう部分もあるのではないかと思わされるこの頃です。


風邪は喉の調子が戻りませんがテキストを打つ分には大きな支障はないので助かる・・。

でも早く治ってほしい。

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