異世界への移動
今回は切りどころがわからなくて短くなってしまった。
1話の長さを安定させるのはすごく難しいな。
テレポートで俺は少し暗い場所へと飛んできた。
洞窟の中みたいな場所だけど周りは不思議な明かりで照らされている。
「ここは…洞窟?学校の近くですか?」
辺りを見回しながら俺が尋ねると
「ええ、学校からちょっと北側に行ったところの地下ね」
「ち、地下ですか」
出口あるのかな?と思わずきょろきょろとしてしまう。
そもそもなんで地下にとか、なぜ明るいのかとか、色々聞きたいが今は素直についていくことにする。
「ん、どうしたの?」
「いや、出口とか。換気とかどうなっているのかと思って」
俺の不安そうな様子を見て悟ったのだろう。俺が聞く前に一番疑問に思ったことを説明してくれる。
「一応地上まで縦穴は掘って換気口は作っていたわよ。もう埋めたけど」
「え?」
生き埋めっすか?なになに、もしかして罠だったの?なんて考えてると、呆れ顔のクエス師匠が説明してくれる。
「生き埋めって…もうここは用済みだから破棄するだけ、さっさと行くわよ」
うーん、また考えてることを読まれてしまった。
この人とは微妙に話ずらくて困る。
この穴というか空間はあちこちに置いてある石が明るく光るので歩く分には問題ないが、どうやらここは数mの円柱状に掘られた空間のようだ。
正直言って、ここから異世界に行けるとはとても思えない。
と思っているとクエスが土壁に手を当てる。土壁が光りだして、あっという間に消え去ってしまった。
「さぁ、こっちよ」
今更いちいち驚いても仕方ないのかもしれないが、目の前のことがとても現実とは思えない。
「あー、そうだ。向こうに着く前にこれを渡しておくわね」
そういってクエスは小さな銀色のイヤリングを手渡してきた。
イヤリングと言っても耳たぶを挟んで装着するタイプの銀色の四角い金属でデザイン性は無い。
「これ、なんですか?」
「それね、便利アイテム翻訳君。えーと正式名称は忘れちゃった」
てへへ、っと誤魔化した感じでクエスが笑う。
うむむ、厳しい表情じゃないときのクエス師匠は綺麗さに愛らしさが追加されて対応に困る。
ガチで俺の警戒心を消しに来るからだ。
「それをつけると聞いた言葉が鋼のわかる言葉になり、話したい相手に向けた言葉が相手のわかる言葉に変わるものよ」
えっ!?何それ、凄すぎじゃ。
あまりにすごすぎて言葉が出ない。この地球なら誰もが欲しがる一品なんじゃ。これいくらするんだか。
「これといい、あの検出紙?といい高いものばかり貰ってる気がして申し訳ないんですが」
「んー、別に気にしなくていいよ。必要なものなんだから」
「いつか偉くなったら返し…」
あまり親切にされたことがないので不安になり、ちゃんと返すとアピールしたつもりだったが言い終わる前に言葉をかぶせられる。
「あはは、本当に気にしなくっていいって。師匠としてこれくらいは当然でしょ」
全く気にしていない様子のクエスに安心するものの
大きな借りはこれからもできそうなのでそのことを考えながらも俺は思う。
いつかすごい魔法使いになって、この恩はきっと返そうと。
手渡されたイヤリングを片耳につけてクエスの後をついていくとすぐに怪しいものが目に入る。
周りは土壁で何もない空間に、円状の別世界に繋がっていそうな窓が出来ていて、その中は紫色の世界に星がちりばめられてるような場所が見える。
「さぁ、こちらの世界へようこそ」
と言ってクエス師匠は強引に手をつかんで鋼を引き込んだ。
円状の窓?の中に入るとすぐ別世界に行くのかと思ってドキドキしたが
かれこれ5分ほどはこの全方位紫色であちこち白く光っている不気味な宇宙空間みたいな所を歩き続けている。
足場もないようにしか見えないのに足が着くのも不思議な感じだ。
強引に引っ張られていなかったら、足を踏み出そうなんてとても思えない場所だ。
こんなところを漂うとか映画とかで見る宇宙放流の刑じゃないかと思えてしまう。
まぁ、宇宙と違ってここは歩けるんですけど。
「ん、もうそろそろ着くわよ」
どこへ向かっているかもわからないし、ゴールらしきものも見えないのに着くとか言われても訳が分からないが、俺はただ彼女の後を歩き続けるしかない。
「この空間はね、私もよくは理解してないけど緩衝材みたいなものらしいのよ。私のいた世界と別の世界をつなぐ、ね」
「は、はぁ」
それどころじゃない状況で説明されても頭には何も入ってこない。
「そして歩き続けると唐突に出口が出てくる仕組みなのよ」
何それ的な展開に思わず状況に対する恐怖も吹き飛んで、心の中で「なんだそれ!」と突っ込みを入れてしまう。
「ただ出口が出てきそう!ってのはわかるのよね~、本当に不思議」
「ええと、俺には何もわからないし全部が不思議なんですけど…」
そして数秒後に突然出口らしいものが現れる。
「ふー、やっと帰宅かぁ。長かったわ。この先は私がいる隠れ家、あなたの修行の場所にもなるわ」
そう言うと、俺の手を強引に引きクエスは表面が真っ白の円状の枠の中に入った。
着いた先は木製の板で囲まれた広い部屋。全壁木製の板とわかる塗装のないこげ茶色の壁
ただ床は白っぽい木の板にワックスらしきものが塗ってあるように見える。
「あ、そうそう、ここでは靴を脱いでよね」
クエスの呼びかけに慌てて靴を脱いで、よこせと言わんばかりに差し出された彼女の手に靴を渡す。
受け取った彼女は、俺の靴をすぐにどこかへと消し去った。
落ち着いてこの部屋を見渡すと
周りにはたぶんこのゲート維持していると思われる道具やアイテムが置いてある。
ガラスっぽい塊が光ったりゲートの外側を囲むようにして配置された機械についてる石みたいなものが穏やかに点滅してる。
怪しげな研究室みたいだなと思いつつ今まで見たことのないものばかりで異世界に来た実感がわいてくる。
「ここから新しい人生になるんだ、とにかく頑張ろう…」
自分を鼓舞するかのように言い聞かせている俺を見て
師匠となるクエスは二コリと微笑んだ。
修正履歴
19/01/30 改行修正
19/06/30 表現を一部修正
20/07/18 おかしな部分を修正