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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
2章 下級貴族:アイリーシア家の過去 (18話~46話)
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幻術士のミントの戦い

ここまでのあらすじ


話し合いの結果、クエスに続き妹のミントも決闘に挑むことになる。

そこでミントは相手が姉のエリスをあんな目に追いやった者だと知った。


ミントに攻撃する様子が無いとわかってかオブニールは牽制しつつの防御体制からから攻撃に転じる。

とはいえミントの幻術魔法の範囲がわからないこともあり、まずは遠距離で様子を見ていくことにした。


短槍に<斬撃光>を発動させ、槍で突きや切りで斬撃を飛ばすもミントはうまくかわしていく。

ここまではまだ普通の戦闘風景だった。


テンポよく詠唱の集中力を切るような攻撃をしてくるオブニールだったが、ミントはクエスとの訓練で鍛えられており、この程度の攻撃では魔法の型組や詠唱にほとんど影響をうけない。

そして魔法の準備を終えたのかミントは魔法を発動する。


まずは背中で隠す様に型を組んだ<認識阻害>を発動させ、夢魔法を受ける感覚を鈍くしてレジスト率を大幅場に落とす。

夢属性は範囲対象のものがほとんどになるので、型による推測も発動タイミングもわからないままオブニールは魔法を受ける。


ミントは夢魔法を使う時、周囲に魔力を拡散しその一部を魔法範囲の基準点として使っている。

その為元々気付かれにくい魔法なのが更に気づかれにくくなり、オブニールも気づいた様子は全く見られない。


さらにミントは脇にダミーの魔核を散らして相手の警戒タイミングをずらし、<ぼやけた世界>をリングをカバーする範囲に発動させオブニールの視界と魔力探知を同時に狂わせる。

これは一定距離目標と離れた状態でのみ効果が表れる魔法で、その効果はすぐに表れた。


この魔法は複数相手の状況ならば、相手は味方が魔法にかかったかどうかわかるので狙いがずれていることを伝え正気に戻すこともできるが、1対1ならばそうはいかない。

何か魔法が発動したか?とオブニールは少し警戒するものの、<ぼやけた世界>の効果にはまっていることに気付かずに行動する。


ミントが一定距離離れている時は幻術効果が発動し、オブニールはミントの居場所を誤認してミントがいない場所に斬撃を飛ばし始める。

この魔法の誤認識させる位置は本人の近くになりがちなので、ミントの近くに飛んでくる攻撃を警戒しつつも、さらに次の魔法を準備する。


ミントは試すようにオブニールに<聴覚阻害>もかける。これでオブニールは自分が飛ばした斬撃が着弾する音すら聞きずらくなる。

オブニールは何か違和感を感じ、何らかの幻術によりおかしな状況に置かれていると判断して、自分の魔力の流れを感じ取ってみた。


幻術系に代表されるような症状は明らかな魔力の流れの異常だ。

幻属性ならば幻術を見せている指示を出すポイントがわかるのだが、夢属性は脳に誤認識させる類のものが多く自分の魔力の流れを見ても気づきにくい。


そうとは知らずオブニールは自分の魔力の流れの異常を見つけようと体内の魔力の流れを今一度確認するが異常は見つからない。

ミントはそれを見てふっと軽く笑い飛ばした。


「ちゃんと幻術への対処法知ってるのね。それは幻属性の方の対処法だけど・・」

そういいながら楽しそうにそれをも狂わせる<魔力拡散>をオブニールにかけた。


何とか自分の状況を確認しようと感知していた魔力の流れが急に変わり、今度は自分の意思とは関係なく魔力がどんどんと外に放出されていくのに気づく。

これはかなり危険な状況と判断し、何かこの状況を打破するいい道具がないかと考えるが焦っているのか思いつかない。

ミントはその様子を伺いながら<思考の覗き見>を使いオブニールの思考をより深く観察する。



一方のオブニールはどんどん魔力が抜けていくのを感じるものの、対処法は思いつかない。

自分が幻術にかかりおかしな状態になっているのに気付いている人がいるのでは?と期待するも、周囲からの試合終了の合図はないため試合は終わらない。


考えてみれば、周囲にとってはオブニールがミント攻撃し続け、それを避けられたり受け止められたりしているだけの状況だ。

そんな状況では危険だと判断し周囲の誰かが試合終了の行動をとるのを期待するには無理がある。


だが今自分はかなりやばい状況だとオブニールは理解していた。

自分から降参すれば罰を受けるだろうと思いつつも、オブニールはこのままでは勝ち目がないと思い降参を決断した。


が、それを察知したミントは用意していた<感情反転>をかける。

オブニールは途端に今こそが勝機という気分になり、またも幻影に向かって斬撃などを飛ばし始めた。


「うーん、いい感じにはまってるなぁ・・でも、もうそろそろ終わらせよう。こんな奴が生きていること自体許されるはずがないんだから」


ミントがそう言うと<痛覚遮断>をかけ、今までかけた魔法が痛みで解けることを防いでおいて

杖を左手に持ち替えて右手に剣を取り出し、オブニールの動きの隙を狙い左手首を切り落とす。


痛覚を無効にしたのは、何もされてないと思っているのに急に痛みが出ると、その違和感を基に夢属性による幻術の一部が解除されかねないからだ。

その結果、血が噴き出るもののお構いなしにミントへ向かってオブニールは攻撃を続ける。


「そろそろ達成感を持たせるように攻撃対象を変えてみようかな。さらに何か話すかもしれないし」

ミントはそう言って<目標の変更>をつかいオブニールが戦うべき相手を足元のリングの石にした。


幻術を受けると、オブニールはとっさに飛びあがり地面に向かって深く槍を突き刺し笑顔になる。

左手首からはどんどん出血し魔力も放出し続けているにもかかわらず勝利を確信した表情をする。

彼には自分がミントに槍が届き突き刺した光景が見えていた。


ミントに止めを刺し、勝利を確信して気が緩んだのかオブニールの口から言葉が漏れる。

「やったか、これであの時バカス様が止めたことを知られることはないはずだ」


その言葉を傍で聞いたミントは表情がこわばる。

自分の家を滅ぼし姉のエリスが死んだあの一件は当主のバカスまで絡んでいたと確信したからだった。


だがすぐにミントは心を落ち着け、出来るだけ冷静に考える。

さすがに当主を手にかければ家の再興は不可能になる。

ならば姉のエリスの捜索はさらに遅れることになる・・どうしようもないことを悟り、ミントにやり場のない怒りが湧いてくる。


ふつふつと抑えようのない怒りがミントの体を震わせる。

結果、その怒りの全ては目の前で奇怪な行動をとっているオブニールへと向けられることになった。


「こいつが・・こいつが・・あの悲劇は・・エリスお姉ちゃんを・・返せ!返せ!返せ!かせぇぇぇーー」

急にスイッチが入ったかのように、ミントは多数の<光一閃>を詠唱し続けオブニールの体を貫いていく。

普段ならオブニールの周囲には簡単には貫かれないくらいの魔力障壁があるのだが、オブニールの魔力は霧散し続けて防げるほどの濃度を保てていない。


「こいつが、こいつが、こいつが、こいつが、しね、しね、しね、消えてしまえぇぇぇ」


ミントは1分ほど強化した<光一閃>を打ち続けただろうか。

オブニールは体のあちこちに穴が出来てそこから出血し続けて倒れていた。


途中、オブニールは<光一閃>を食らい続け槍が持てなくなったところで

自分場見ている幻術と現実に大きな違いがあることに気付き、槍を突き刺した相手がリング状の石であることに気付く。


さらに意思の反転による好戦的な心情も解け、訳も分からないままとにかく助けを呼ぼうとするも

ミントが放つ数十発の光線によりまともに声をも出すこともできないまま、ついには息絶えてしまった。



その様子を観覧席から見ていたクエスは、途中で試合を止める行動をとらなかった自分を反省しつつも、複雑な表情で女王様にお願いする。

「すみません女王様、すぐに決闘終了の合図をお願いできませんか?」


傍にいるクエスから試合終了のお願いをされて女王は不思議に思う。

女王の目にはミントが優勢で押したままの状況ではあるものの、勝敗が明らかに付いたように見えなかったからだ。


「もういいの?勝敗は微妙な状況よ」


女王の確認の問いかけにも疲れた表情をしつつも、諦めたかのようにクエスはただ頷く。

クエスの行動を不思議に思いつつも、女王が決闘の終了を告げる。


「これ・・ミントの夢魔法<各々が望む世界>だと思うんだけど、いつ解けるんだろう。そう長く持つ魔法じゃないはずだけど。後始末大変そう・・」


そう思いながら疲れた表情を浮かべるクエス。

ミントは終了を聞き、我に返ったようだった。


とにかく一刻も早く、魔法で別の情景を見ている状態を解除させたくて女王様に話しかけるも

言葉もうまく通じていないようでなかなか話が通じない


「女王様は今、ミントの幻術にかかっていますので女王様ご自身の魔力の流れをご確認ください」

とクエスは進言するものの


「特に問題ないわ。それより、これなら何とか妹さんの勝ちでしょうね」

と笑顔で女王は返答する。


「これは・・やっぱり言葉まで通じないとなると、手っ取り早く解除するため殴る・・わけにもいかないし解けるまで待つしかないか」

クエスはリングから戻って来る笑顔のミントを見て力ない笑顔で迎えるしかなかった。


数分後女王様をはじめ数名の上級貴族が徐々にミントの幻術魔法から解け、慌ただしい状況になっていた。

先ほどまではいい勝負をしていたミントとオブニール、という認識だったのに気が付くとオブニールは体中に表面が削られたくぼみがあり血だまりの中に伏して絶命している。

クエスはミントを謝罪させると同時に、望んだ世界を見てしまう魔法の説明に追われた。


「この魔法はそうなるだろうと本人が望んでる状況を見てしまうものですが、傷を受けたり想定してない攻撃を受けるとすぐに解けるんです。大きな害を与えるものではなく・・」


その説明に女王はじめ上級貴族たちはしぶしぶ納得はするものの、ミントに対してわずかな怒りと警戒心を持つことになった。

ミントもクエスに指摘されて今は何度も頭を下げて平謝りをしていた。


「もういいわ」

結果的に女王の疲れ果てた諦めの言葉で幕引きすることとなった。


上級貴族の当主たちも今は本当に正常な状態なんだろうな?と質問する状況で、追及するどころではなかったからだ。



その後落ち着いて確認したところ、クエスやミントの言う通り実害はなかった。

正確にはバカスの部下がまた死んだが、決闘なのでいくら事前に安全策を講じてでもこの結果はやむを得ないと判断された。


ミントにも厳重に注意し味方である以上はこういった危険な魔法は使用しないと約束させたが、レジスト出来ずまんまと幻術にはまった自分達にも問題があり

この話が広がると上位者の権威が落ちるためか、今回の2戦目の決闘自体を秘密ということで話を進めることになった。


読んでいただいた皆様、本当にありがとうございます。

時間がありましたら、ブクマや感想、評価やご指摘などいただけると嬉しいです。


魔法紹介

<ぼやけた世界>夢:目標がぼやけたかのように見え、魔力索敵の感覚も狂う。


<魔力拡散>夢:対象を常時魔力を無駄に放出し続ける状態にする。


<思考の覗き見>夢:相手の思考を正確に覗き見る。


<目標の変更>夢:攻撃的な状態の相手に、指定した対象を攻撃(破壊)すべきと思いこませる。元々特定の敵(1人)を目標にしている相手にしか効果がない。


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