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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
2章 下級貴族:アイリーシア家の過去 (18話~46話)
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ミントも戦いの場へ

ここまでのあらすじ


家の再興をかけた決闘でクエスは勝利するが、相手を殺してしまう。

部下を殺されたバカスは頭に血が上り、クエスの妹であるミントとも決闘をさせろと要求してきた。


「いい加減にしなさい、二人とも。ここでトラブルを起こすのなら私が相手になるわ」

そう言って場を収めると女王はクエスを睨む。

このままでは家の再興にも影響すると思ったのか、クエスはしぶしぶと矛を収める。


場が少し落ち着いたのを見て女王はこの場からクエスとミントとメルル、そしてボルティスを連れ出す。

そして皆が集まっている場から少し離れて、遮音エリアを魔道具で作り出すとミントに尋ねだした。


「えっと、ミントだったわよね。貴方は戦う意志があるの?」

「はい。姉と家を馬鹿にしたことはきっちりとけじめをつけたいと思っています」

「いやね、ミント。わからなくは・・」

クエスはミントが何とか戦うのを止めようと割り込んで説得しようとするが女王が止める。


「クエス、妹の実力を知ってる貴方に聞くわ。ルキュルより強いやつが出てきてもミントは勝算があるのかしら?

私はこんなことで遺恨を残したくないの、気持ちよく貴方たちを迎えたいのよ」


クエスはもちろんミントを戦わせたくはなかった。

だが自分がバルードエルス家の者たちを全て殺害したことでクエスはミントに少し負い目があったのだ。

自分はエリスに仇を討ったよと言えるが、ミントは直接手を下してないので、結果的に自分が仇討ちを独占してしまったと思っていたのだ。


今回も私だけが事を成したということになれば、妹のミントに対して申し訳ないという思いがミントを止めたい気持ちに勝ってしまう。

結果、女王の質問に少し迷ったクエスだったが、しばらくして迷いを振り切り女王に対して答えた。


「ミントの持つ夢属性によほど抵抗力が無い限り、1対1でミントに勝てるのは難しいかと思います」


夢属性を上げられて女王は驚く。

姉が勝てる要因に夢属性を上げるくらいなので、ミントの第一属性は夢なのだろう。

それならば先ほどクエスが言った補助士というのも納得いく話だ。


ただ、第一属性が夢というのは女王にとって想定外だった。

まずアイリーシア家の情報では、主たる属性は宙が多く夢は補助的な扱いだと聞いていたからだ。


更に今の光の連合で夢属性を使える者自体ほとんどいない。それが第一属性となるとさすがに驚きもする。

その情報を元に女王はミントを試合や決闘に参加させるか考える。


夢属性は主に状態異常にしたり幻術を見せる類の属性だ。

戦闘においても補助的な役目を果たすことが多く、基本的な殺傷能力は低かったはず。

それならば早い段階で試合を止めれば何とかなるのでは?と考える。


「女王様、言わせてもらうがこれ以上バカスに引っ掻き回されてはどう転がってもどちらかに遺恨が残りかねんぞ。さすがにここは中止すべきではないか」


ボルティスは冷静に提案するも女王のミントに対する興味を薄めることは出来なかった。

夢属性の精霊の御子クラスがどういう戦いをするのか知っておけば、万が一のときアイリーシア家の対抗策にもなるからだ。


「一つ提案があるのだけど」

女王がミントのほうを向いて話始める。


「あなたたちに損はさせない。決闘も激しくならないうちに止める、だから決闘を受けてほしい。今回は・・」

「はい、頑張ります」

女王の言葉を最後まで聞くことなくミントは即座に了承し頭を下げる。

その様子を見て姉のクエスは右手を額に当てて困り果てた様子だった。

クエスの態度は妹への過保護ゆえだと女王は判断したが、それは正しかったのか、間違っていたのか。



ひとまずアイリーシア家側との話し合いがまとまったので、次に女王はバカスへ近寄り耳打ちする。


「これ以上遺恨が残る行為は出来るだけ避ける。試合も早めに止める。勝った側にクロスシティーの運営権を移譲する。それ以外の条件は無し。それが不満なら決闘は行わない、どう?」

「ちっ、まぁいいかそれで。向こうの嬢ちゃんは腕はいいんだろうが補助士らしいしな、うちは訓練部の長、オブニールを出す」

「わかったわ、それでいくわね」


こうして女王は話をまとめて、再度決闘が行われることとなった。


決闘前にクエスはミントと二人だけになる。

その隙にクエスはミントに釘を刺すことにした。


「ミント、無茶苦茶にはしないでねお願いだから。少なくとも再興がご破算になるようなことだけは」

「・・うーん、わかったよクエスお姉ちゃん。でもあんなことを言うやつの部下はきっちりと倒すから、それはいいでしょ?」


「はぁ、そうね。でももし危険だと感じたら私が途中で試合を止めても恨まないでね」

「うん、クエスお姉ちゃんの指示ならちゃんと従うよ」


そう言って女王の元へ戻っていくミント。正直、クエスは今回の戦いが色んな意味で心配でしかなかったが

妹には何もさせなかった負い目からか、どうしても強くは言えなかった。


数分後、両者合意の元決闘が始まる。

無関係な5人の当主たちは楽しみが増えたと言わんばかりに、観覧席から訓練場を眺める。


「補助士が1対1の戦闘とはね、女王様の意図がいまいちわからないねぇ」

シザーズは少しにやつきながらも他の当主たちに語り掛けるように話し出す。


「ふん、直ぐに試合を中断する気さ」

メルティアはバカスの機嫌取りに付き合わせるなよ、と言わんばかりに不満をたれる。


「でもさ、妹ちゃんの実力だって見ておきたいでしょ。だったらいい判断だと私は思うな」

リリスは嬉しそうに所見を述べる。


「確かに見ておきたいね、ミントだったっけ、彼女の実力」

「ええ、万が一の時の為にも情報はあった方がいいわ。女王のファインプレーだと私は思う」


シザーズはクエスの側にいるミントを見ながらリリスに同意する。

アイも万が一の裏切りの為と前置きしつつも、リリスの意見に同意した形だ。


「あの姉より強いってことはないですね。それならそれで妹の方が仇を討つ実行犯になったはずです」

レディもミントを見ながら淡々と感想を述べる。



いよいよ開始となり、ミントとオブニールがそれぞれ訓練場にあるリングへと向かう。

リングへ向かう途中にミントが服装を変える。


その服装は、薄いピンクの膝が隠れるスカートに、上は巫女服のような白を基調として首下で両側を斜めに合わせたもので

細長い三角の後ろに伸びた襟が左右それぞれに肩部についていて、歩くたびにたなびく。

その襟部分の後方はピンク色をしている。


その服装に変えたと同時にミントは歩きながら周囲を警戒するが、移動中の自分を注意深く見ている者はいなさそうだった。

そのためミントは隙を見て、歩いている足元に魔法の発動箇所をセットする。


「ミント・・・」

ミントの行動に気が付き、何をする気か大体理解したクエスは呆れかえり視線を逸らすが、それに反応する者は周囲にはいなかった。

女王は何か違和感を感じていたようだったが、特に何も言わなかった。


一方のオブニールも軽装の鎧を身にまとい、リングの上に上がる。

ミントとオブニールが二人ともリングの上で向き合う。オブニールが礼をしたのでミントも礼を返す。

試合前にもかかわらず、ミントはこっそりとオブニールに魔法を使う。相手の知っている情報を探るための心を覗き見る魔法だ。


「ねぇ、オブニールさん」

ミントは突然話しかけた。

ちょうどリング周辺に円柱状のシールドが再度張りなおされてるときだった。


「なんでしょうか?」

「あなた、うちの家が滅んだ時、保護者側として事前に情報を聞いたりしてなかったの?まさか見て見ぬふりとかしてないよね?」

ミントの表情が笑顔からみるみる冷静な顔つきになっていく。


「昔のことなのであまりはっきりとは覚えていないが、そんな真似は私はしていません」


表情を変えることなくオブニールはミントに返答したが、ミントは冷静な表情からやや怒りを抑えた表情に変化していく。

オブニールの心の中では当時を思い出し、自分が事前にバルードエルス家の襲撃の情報を掴みながらも何も動かなかったことを思い出していた。

そして、その心で思い出していた内容をミントははっきりと知ってしまった。


「嘘は良くないと思う」

怒りを我慢した低い声でミントは続ける。

「当時報告を受けながらどうすればいいか兵士に問われたのに、任せておけと言いながら動いていないじゃない」


ミントの発言を受け、オブニールは動揺する。

なぜ目の前の少女がそんなことを知っているのかと。


「なっ、どこでそんな話を・・。決して私はそんなことはしていない」

「ふーん、いいよもう。とうに過ぎたことだし。それより先に言っておくね、貴方はエリス姉さんの仇。ここで貴方を・・始末する」


殺気溢れるミントの言葉に危険を感じて、女王の開始の合図もないうちにオブニールは短槍を持った右手後ろに引いて、左手に持った大きめの盾を前に出し構えた。


そして女王の開始の大声が響き渡った。

オブニールはミントが見た目よりやばいタイプだと判断してまずは様子を見つつ、防御に徹することにする。

特に事前にバカスに告げられたミントの特性、夢属性系統の幻術には気を付けようと

魔力を展開しつつ定期的に自分の魔力の状態をチェックすることにした。


ミントはオブニールの行動が防御に徹すると知るや、ずっとストックしておいた魔法を発動する。

発動起点はこの小リングを囲む障壁の外、先ほど服装を変えた時に歩いていた場所だ。

そこからこの訓練場全体に魔法が発動する。夢属性で幻想を見せるために。


クエスはその魔法の発動を予見していたので即座にレジスト出来たが、他の上級貴族や女王をはじめとする大勢は一瞬魔法の発動に気付くものの

何か起きた様子も自分の魔力の流れも問題が見られず、障壁の一部に問題があったのか程度で気にしなかった。



オブニールはその魔法の対象外にしてあり障壁の内部にいたためか、その状況に気付くことなく目の前にいる要注意人物に対して

警戒しつつもストックに防御魔法を仕込んでいく。


「バカス様には出来るだけ圧勝しろ言われたが・・これは無理そうだ、この娘、想定以上の怪物のようですな」

そう呟くと<光の槍>を2発飛ばすと同時にやや距離を開けてるよう後方へ少し下がり、防御系の魔法の2個目をストックすべく詠唱を始めた。


ミントは冷静に様子を見る。2つ飛んできた光の槍は1つだけ<光の強化盾>で防ぎ威力を確かめる。

問題なく受け止めることはできたが、この時点で光同士でぶつけ合うとかなり膠着した試合になる相手だとミントは考える。


ミントの光のLVは30に第二属性の効果で+11程度、相手は威力から見てLV40前後と想定できたので互角に近い。

これなら威力は互角か少しミントが上だが、魔法のバリエーションはLV30しかないミントの不利、そういう判断だった。

そして、ミントは確実な勝利に向け避けに徹しつつ型を作り詠唱を続けた。


いつも読んでいただいている皆様、本当にありがとうございます。

更新ペースがやや落ちていて申し訳ありません。文章の直しで行ったり来たりしてご迷惑をおかけしています。


文章書くのはまだまだど素人ですが、これからも精進してまいりますので

よろしくお願いいたします。



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