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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
2章 下級貴族:アイリーシア家の過去 (18話~46話)
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ルキュル対クエス決着、そして

ここまでのあらすじ


家の再興をかけたクエスの決闘、決め技を放ったルキュルだったが逆にその隙をつかれクエスが有利を取る。


まさかの逆転劇に外で観察していた上級貴族をはじめ、周囲にいた各兵士たちもどよめきを上げる。

バカスは驚愕し何を言えばいいかわからず声が出ない。


最初はこの決闘にさほど興味を示していなかった面倒くさがりのメルティアも

「ほほぅ、これはすごいわね」

思わず声を上げていた。


「あ・・これ、お姉ちゃん殺す気だ・・」

リングの様子を見てミントはぼそりつとつぶやく。


他のものは聞こえていなかったが、女王はわずかに聞こえたのかミントのほうを見てすぐにリングの方を向きなおした。

女王は一瞬試合を止めることも頭によぎったが、クエスの実力の底を見たい気持ちが勝り動かなかった。



倒れこんだルキュルに対してクエスは確実に止めを刺せるよう手を休めない。

すかさず魔力を展開すると同時に星の力を発動させる。クエスの額に五芒星が現れ周囲にクエスの魔力があふれ雰囲気が一変する。


クエスの雰囲気を見て、観戦していた女王と上級貴族のボルティスとアイが「これほどとは」と思わず口に出した。

クエスは詠唱中の強化した<光の軌跡>を少し遅らせるように発動させると、すぐにストックしていた2つの<光の軌跡>の型を取り出し発動まで持っていく。


倒れているルキュルの足元へ向かう3セットの2本の光の直線が発生し、各2本の光の線がタイミングがズレたまま同じ軌跡をたどりルキュルの足元へ向かう。

そして倒れたルキュルの足から肩まで真っ直ぐなぞっていきそのままその先の地まで進んでいった。


このままではまずい。

そう思ったルキュルは全身の光の線が残る部分に必死に魔力を集中させ、せめて光の軌跡による斬撃の威力を抑えようとするも

まだ魔力が通常の状態まで回復しきれてない為だろうか、魔力が均一に体全体に広がったまま動かせない。


ルキュルは焦る。

光の線跡から発せられる先ほどより強い魔力を感じ、このままでは致命傷になりかねない。

だが、魔力を集中させられさえすれば何とかなるはずだと思うものの、一向に魔力が上手く動かせない。


これは魔力大量消費後の不安定感じゃない。

何かクエスに何かしらの魔法をかけられて魔力のコントロールが上手くいかなくなっている。

ルキュルはそう気づくものの、すでに遅かった。


そのまま線跡が強く光り、その軌跡の場所に3重の斬撃を発する。

場所によっては骨をも真っ二つに割るほどの食い込む亀裂となり、2本の直線の軌跡通りに赤い泉を噴出させた。


その線跡が強く光る直前、すでにクエスは追撃の準備を終えていた。

線が光り斬撃となるその時クエスは両手を左右に伸ばす。

そして<包み込む光の球>が発動、2本の直線に沿った血の泉を見ながらクエスは左右に伸ばした手を合わせた。

左右の半球が倒れたルキュルを浮かび上がらせた後、ルキュルを包み込むように合わさり球体となり、強い光を発した。


そのすさまじい光景に見とれていた女王は、はっと我に返りすぐ止めなければと思うが光の球が発動してしまう。

「試合はそこまで!終了!終了よ!救護班はすぐに準備を!」


魔道具で増幅された女王の大声が訓練場内に響き渡る。

その大声以外は誰も言葉を発さず訓練場内は静かになった。

他の者たちも見とれていたのか、目の前で見たすさまじい戦いに皆が何も言わずすぐに行動には移らなかった。


クエスは閉じた手を下ろし、自分が間違いなく勝利したこと確信しその光の球体を背にしてリングの端まで移動しする。

そしてふらつきつつも、女王たちのいる貴族用の観覧エリアに向かって戦闘時の厳しい表情のまま礼をした。


「シ、シールドを今すぐ解け。救護隊早く向かわんか!」


信じられない光景を目にして思わず動けなかったものの

はっと我に返って慌てて怒鳴りながら命令を下すバカス。


解かれたシールドを見て急いで訓練場を出ると、クエスはミントやメルルのいるところまで走って近づき笑顔で手を振った。


時間が経ち、貴族たちも何とか平静を取り戻し口々に語り始める。

「うーん、こりゃまずいね・・これは想像以上の爆弾娘じゃないか。何とかうちに欲しいとは思うが・・少なくとも絶対に喧嘩は売れないねぇ」

シザーズは呆れた顔をしながら頭をかいて、いつもより少し遅い口調でクエスの評価を口に出す。


「どぉーい」

同派閥のメルティアも顔をしかめながら力なく同意を呟き、クエスを遠巻きに見つめる。


「あれは・・包み込む光の球、でしたよね。あれが使えるということは光44は確実ということですか」

同じく同派閥のアイはリングを見ながら感心したようにつぶやいていた。


レディはリング状にあるやっと光が薄れていく球体をみながらつぶやく。

「ずいぶんな娘を無理に叩きましたね、あの馬鹿バカスは。これでは逆効果です。・・が、これは貴重な戦力でもあります・・」


勝利を確信しているのか訓練場を振り返ることなくミントとハイタッチしているクエスをみて、レディはつぶやきながらクエスに不安と期待を抱いた。


クエスがメルルやミントにお疲れ様と声をかけられてる中、クエスの近くにリリスがやってくる。


「おめでとう、あれではたとえルキュルが生きていても貴方の勝ちは揺るがないわ」

そう言ってリリスは握手を求めて手を伸ばしてきた。


「リリス様、お褒め頂き有難うございます」

そう言ってクエスはリリスの手をとらずに頭を下げる。


今は戦闘直後で魔力の状態も高ぶっている。

こういう時に接触した場合、相手の体内の魔力を感じ取り大体の強さを測れるものも多い。

そういう知識があったクエスは敢えてリリスの手をとらずに頭を下げたのだった。


「うーん、あまり警戒はしないで欲しいわね~、一応同じ派閥なのだから仲良くしましょ」


リリスは参った、両手を軽く上げてクエスから1歩後ずさる。

リリスなりにクエスの警戒に自分は気にしてないわよとアピールした形だ。

クエスはそれを理解してか何も答えず、再び頭を下げた。


クエスの対応にもう少し踏み込めるかな、と思いリリスは再度顔を近づけて

にっこりと笑うとクエスに語りかける。


「クエスちゃん、ボルティスが貴方達の体を求めて迫ってくるようならぜひ私に連絡してね。私が全力で守ってあげ、げ、げ」

そう言って立ち去ろうとしたが、言い終わる前にボルティスから頭を両手で掴まれ怒られていた。


「私はそんなことはせぬ。部下に私のイメージを下げる発言を勝手にしないでもらいたい」

「わ、わかったから痛いって」


そんな雰囲気を見て、クエスは少し心が和んだ。

そして思った。これなら派閥内でもなんとかやっていけそうだな、と。



女王はリングを見つめる。光の球が消えた後ルキュルは手足が付け根まで無くなっており全く動きもしない。

そしてすぐに体全体が魔力の粒子となっていき、魔石を残して消えてしまった。


「オーバーキルね、これは」

バカスがリング状でその魔石を手に取りながら地面に怒りをぶつけているのを見て女王がつぶやく。

その様子を見つつも、光の女王はクエスへと近づき声をかけた。


「結果は貴方の勝ちよ。いいえ完勝ね」

女王は勝敗の決定を述べた。


「ありがとうございます」

クエスは笑顔で頭を下げる。


「しかし大したものね、ルキュルは相当の腕のはずよ。それをああも簡単に倒してしまうなんて」

感心しながら女王はクエスを褒めるがクエスは即座に


「いえ、かなり苦戦しましたし油断できない戦いでした。最後は相手の隙に付け込んだだけですので」

と謙遜気味に語る。

そんな状況に我を忘れたかのように怒り散らしながらバカスが割り込んできた。


「クエスとやら、貴様は・・うちの副将を殺っておいてただで済むと思っているのか!」

クエスの胸元を掴もうとするバカスをミントが静止しようと動くが、それより前に女王が立ちはだかった。


「待ちなさいバカス。決闘が終わった後はお互いそれ以上争わない、そう決まっているはずよ」


「ちょっと待て女王、この女は女王の終了の言葉に従わず最後まで技を決めやがった、ルール違反だろうが!」


「ルール違反じゃないわ。光の球は一度発動して当てればその後は止められない。あれより前で貴方が止めるべきだったのよ」


女王はバカスを制止すると共に冷たく言い放つ。

女王とはいえ、下級貴族ならまだしも上級貴族であればおいそれと敵に回したくはない相手だ。


だが決闘の内容はルールどおりで全うに終了している。

それに、クエスの実力を目の当たりにした以上、女王はこの子を敵に回すのは不味いと思った。

むしろ味方アピールであわよくば恩を売りたいという思いが強くなったのだ。


それでも諦めの悪いバカスはさらに提案してくる。

「ならそっちの妹の方とも戦わせろ、決闘だ」


「1人と言ったはずよ、バカス。先ほどの勝敗でバルードエルス家の滅亡は貴方も不問とするはずでしょ?ルキュルの死も貴方が止めなかった判断ミスでしかないわ」

女王は毅然とした態度でバカスを止める。


周りの上級貴族たちも呆れつつも、徐々に近づきながらその様子を伺っていた。

そして、もしバカスが動こうものなら、即座に間に入ってクエスやミントを守り恩を売ろうと狙っている。



そんな状況の中、ミントが平然とした表情で声を上げる。

「あの、私なら決闘やっても構いませんよ」


その声を聞き、多くのものがミントに注目する。

クエスの強さは想定外だったとはいえ、それなり以上の実力があることはすでに確認されていた。

だが妹の方は未知数だったので、上級貴族や女王までもその実力を少しでも観察したいと思っていたのだ。


「ちょっと、やめなさいミント。もう必要な戦いは終わったのよ。それにミント、あなたは基本的に補助士でしょ。あなたが出ると話がややこしくなるわ」

クエスはなんとかミントを抑えようとするが、周囲は興味津々でクエスに止められるのは惜しいと思ったのか積極的に動き出す。


「どうだろう、決闘ではなく試合形式でやってみてるのはアリじゃない?」

仲裁は任せろといわんばかりに中立派のシザーズが女王とバカスの間に割って入った。


「ですが・・」とクエスは出来るだけ止めようとするものの、相手が上級貴族では強気で反対するのははばかられた。

「えー、試合形式だと相手を殺せないよ・・」


ごちゃごちゃしてきたところにミントはさらに爆弾を投げ込む。

クエスは頭を抱える。


悪い方向に積極的なミントを、この混沌とした策謀渦巻くこの場から引き剥がそうと

正面から腰を抱き込みつつ、押しながらこの場から引きはがそうとする。

だが、その言葉を聴いたバカスがニヤニヤと笑い出した。


「相手も乗り気なんだ、やらない手は無いだろ」

そういうと勝手に条件を出し始める。


「うちが負けなら、アイリーシア家には今後一切手を出さないことを誓おう。手を出したことが証明できれば容赦なく処断されて構わん。俺も例外じゃなくていいぞ。

さらにこの約束は両家が続くまで永久に続けて構わない。どうだ、なかなかの条件だろう」


無茶を言い出したバカスに対して他の上級貴族の全当主が呆れ果てる。

なかには抗議しようとバカスに詰め寄るものも出てくる。

上級貴族が下級貴族と立場が逆転するような永続的な取り決めをするのは、上級貴族の地位と品位に関わるからだ。


そんな抗議を聞くつもりはないと、バカスは両手を払いのけるように振り乱し黙れとばかりに制止する。


「なんだ、うちとこいつの家だけでの取り決めだ。別に上級貴族の価値を貶めるつもりはないぞ!」

一応地位や品位の問題があることは理解しているようだが、バカスは譲らない。


「それで、俺たちが勝ったらミント、お前が俺のものになる、どうだ?」


クエスもミントもあまりに身勝手なバカスの言い分に殺気をむき出しにする。

バカスのライノセラス家は、憎きバルードエルス家の保護者だ。


つまり、クエスとミントにとってバカスも決して無罪とは言えない対象なのだ。

そんなところへ結婚しに行くなんて死んでもお断りだった。

そんな怒りを込めた強烈な2人の殺気にバカスが一歩引くが、頭に来たクエスはそれだけで収めるつもりはない。


「今からあんたを殺してあげる。二度と何も話すことができないようにね」


クエスの発言を聞き、メルルが慌ててクエスを止めるように抱きついて抑える。

バカスもさすがに肝が冷えたのかそれ以上は何も言わなかった。


いくら上級貴族の当主といえども一門内最強というわけではない。

せいぜい自国の兵士の副将と同格かちょっとしたくらいの場合が多い。

ただ腕っぷしがすごいだけで当主になれるほど上級貴族の当主の仕事は楽ではないからだ。


ブックマークがまた増えていました、本当にありがとうございます!

これからも頑張って書いていきますのでよろしくお願いいたします。

いつも読んでいただいてる皆様、皆様のおかげで頑張れます、ありがとうございます。


今回は新しく出した魔法・・ないよね?(汗

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