決闘 ルキュル対クエス 続き
ここまでのあらすじ
アイリーシア家を再興するため、バカスの物言いでクエスは決闘を行うことになった。
その後2分ほどはクエスの防戦一方だった。ルキュルからテンポよく放たれる牽制を交えた魔法に対して
クエスは回避や程よい強度のシールドで対処するも反撃の隙はつかめないかのように手を出さない。
時々牽制のようにクエスも攻撃するものの、ルキュルもある程度余裕をもって回避していた。
「防戦一方ねお嬢さん、攻撃しないと勝てないと学んでこなかったのかしら?」
そうルキュルは挑発はするものの焦りもある。
なんせ一度でもクエスの魔法障壁を砕くことは出来ていないし、擦り傷一つ与えられていない。
こちらは最初の攻防で1切かすった程度だが、ダメージの状況から見てこちらが勝ったと言い張れる状況ではなかった。
一方のクエスはルキュルの危険そうな攻撃魔法をけん制の<光一閃>や光の矢系統で妨害しつつ、相手の動きを見定めていた。
(簡単に大技を撃つほど間抜けな相手じゃないのは確かね。大きな隙は見せないし防御にもきっちり魔力を回している。強化を重ねないとまともには通らないか)
そう思いながら、クエスは強化を付加した決め用の魔法の型を次々と作成してはストックしていく。
そのため派手な攻撃には出ずに防御に徹していたのだ。
攻撃も挑発も平然と受け流すクエスに対して、ルキュルは膠着を打破すべく威力を一段階上げた魔法を混ぜた重攻撃にシフトする。
高威力・高レベルの魔法を使えば、クエスはそれだけ受けや回避もも厳しくはなるが、攻め手のルキュルの魔力消費も大きく防御面は薄くなる。
リスクを取ってリターンを取りに来た形だ。
結果を出さないといけないルキュルは、焦りもあったのかもしれない。
今までの戦闘の流れから、クエスを自分よりやや格下と判断し勝負を決めにかかったのだ。
ルキュルは2つのストックに攻撃魔法を込めクエスとの距離を2m程まで詰める。
ルキュルの左手側に光が集まる。クエスはそれを見て即<光の槍>飛ばしその光に当てようとするがルキュルは右側に飛んで回避する。
その回避先を読んでいたのだろう、クエスは槍より速度の速い<光一閃>を放ちルキュルの左手にある光の魔力の集まりを貫いた。
魔法核の一部が砕け、精霊によりチャージされていた魔力が型からあふれ出し霧散し始める。
「なっ」
今までにない正確な攻撃に驚くと同時にルキュルの左手に集まった魔力が霧散し慌てる。
更に光のビームが左手に当たり、ルキュルの左手が後方へはじかれ思わずバランスを崩す。
クエスはそれを見ると同時に突進しながら、両肩の上の方から2つの<光一閃>を放つ。
ルキュルは後手に回ったかと思いつつも<光の盾>を2枚生成。
が、クエスの<光一閃>が先ほどまでのものより威力が上がっていて、盾を貫きルキュルの左肩と右わき腹に当たり後ろに押された。
ルキュルは背中に<光の盾>を作り、後ろに倒れるのを防ぎつつ、足を地面にこすりながらも後に滑りながら態勢を整える。
そこへストックしていたのか詠唱長めの<光の斧>を剣に重ねたクエスが右斜め上から叩きつけてくる。
ルキュルもストックしていた<光の斧>を剣に重ね、上の方でその一撃を受け止めた。
両者の光の斧が鈍い音を立てて激突すると、双方にひびが入る。
と同時にクエスは足元に<光の軌跡>を放つ。
光の斧を受け止めているルキュルの足から腰くらいまで光が真っ直ぐに進んで行き斬撃に変わる。
ルキュルは体内の魔力を必死に下半身に集めガードするもその軌跡通りに表皮は切られ出血した。
クエスは軌跡が進んでいる間に左側に飛び、そのまま飛ぶ前に型をストックから取り出し左手で<収束砲>を放った。
クエスによって放たれた直径10㎝程の光のビームが、ルキュルのローブを簡単に貫き右肋骨を数本砕く。
ルキュルの右胸当たりは皮膚や肋骨がわずかに光子化したのだろう。光の粒がキラキラと霧散し出血もしていた。
ルキュルはとっさに<痛覚鈍化>を使いつつ一撃を受けた部分を<輝く保護布>で傷口を押さえ、クエスとの距離を取った。
クエスはルキュルの戦闘センスの高さに感心した。軌跡でのダメージを抑える為に間違いなく下半身に魔力を集中させたはずなのに
とっさに右胸付近にも魔力を集め被害を最小限にしている。下手をすれば背中まで貫通できる威力で放ったつもりだからだ。
「もう十分でしょ、貴方の負けを認めるには」
クエスは魔力は展開しつつも剣を下へ下ろしルキュルに降参を進めるがルキュルはクエスをにらみ返す。
実力ではもしかしてクエスの方が上かも?と思いつつも、上位貴族の面前で自分をコケにされたのが許せなかった。
「勝った気になるなんて・・なめやがって。私の本気を思い知らせてやる」
その反応を聞き、クエスは思わず少しにやっと笑ってしまう。
この時最早クエスは、ルキュルを降参させるつもりなど微塵もなかったからだ。
会話はむしろ挑発し、相手を引き下がらせないために行ったものだった。
女王は一連のクエスの戦いに見とれている。
「ルキュル程の者を手玉に取れる程とは、これはすごいわね」
感心のあまり女王は独り言のようにつぶやいていた。
周囲の上級貴族たちもほぼ同様の感想を抱いたようで、感心したり女王のつぶやきに首を縦に振ったりしている。
面白くないのはバカスだ。
副将軍ではなく自国最強の将軍を出せばよかったと後悔してるものの、まだクエスに勝利出来る望みをあきらめてはいない。
バカスはこの戦いで勝利し、女王の裁定を潰した上で
自分の部下になる形でクエスたちを許し、アイリーシア家を一門に取り込む計画だった。
その相手が強いならなお欲しくなるため、より諦めにくくなるのはバカスにとって想定外だったかもしれない。
「けっ、この程度で勝ち誇りやがって。だがまだまだ、うちのルキュルは決めの一撃を出してはいない。あれで形勢などひっくり返るわ」
何とか強気をアピールするバカスに呆れてか、シザーズが口を出す。
「だがこの辺で終わりにしてはどうかな?ルキュルがこれ以上の怪我を負うとバカスも困るんじゃないかい?」
「ふん、ボロボロになり降参するのはあの小娘の方さ」
困ったものだとシザーズは口を歪めるが必死なバカスをこれ以上挑発するのも得策じゃないと、シザーズは何も言わず引き下がった。
「ボルティス、貴方ついてるじゃない」
そう話し掛けてきたのは住民との融和に重きを置く同派閥のリリス・レンディアート。
アイリーシア家を再興するなら当然メルルの保護家の下級貴族としてだろうから、ボルティスは門閥内に戦力として大きいクエスを取り込むことになる。
リリスはそのことを羨ましがっていた。
「メルルちゃんのところが体制が整わなかったらうちに声をかけてよね。うちの門閥からもいくらでも人を出せるよう準備はしておくよ」
「メルルのところが厳しければうちからも支援を出すつもりだ。外部の支援は要らんぞ」
そういってボルティスは断固拒否の姿勢を示した。
いくら同派閥といえども貴重な戦力を引き抜くようなきっかけを作る隙は与えるつもりはない。。
ボルティスはこの調子だと他所からの引き抜きも考慮しないといけないか、と戦いの様子を見ながら頭を抱えた。
「そうね、だったら貴方に実力の差を教え込まないとね。完膚なきまでに」
そういって剣を構えると同時に<8光折>を使う。
クエスの背中から8本の光がばらばらの速度でルキュルの左右に向かって飛んでいく。
「ちっ、いつの間に」
クエスの魔法の速さに舌打しつつ、ルキュルは全力で周囲に魔力を放出する。
それと同時にルキュルの体から光の魔力があふれ出る。ルキュルは光属性の魔力を強化する光のオーラを発動させて強力な魔力を放出し守りを固める。
そして放出した魔力のみで相手の魔法を打ち消しながら型を組み上げ、反撃する手に出た。
光のオーラによる大量の魔力を使い魔力障壁のみで防ぐつもりとみたクエスは、ルキュルに止めを刺すべく8つの光をコントロールしながら魔法の型を作り始める。
最初の3発は展開された膨大な魔力だけによる魔力障壁でルキュルの体まで到達することなく消滅する。
すぐ後に2発が方向を曲げルキュルに向かうも、これも難なく消滅させられたがそのすぐ後を光りが再び屈折し
直前に消滅させられた場所とほぼ同じ場所を通って、残りの2発と1発がルキュルに向かう。
クエスが放った光の魔法を消滅させるときに魔力障壁が薄くなっていたのか、その3発はルキュルの体に到達し、右腕に2発、左腰に1発が直撃する。
2発あたった右腕は強い衝撃を連続で受け止め骨を損傷させるような様子をうかがわせ、受け止めた部分は光子化すると共に出血する。
1発当たった腰の方も黄色いローブにうっすらと赤いしみが出来てそれなりのダメージを窺わせた。
ルキュルはそれでも平然としたまま詠唱を続け、クエスに向かって両手を伸ばした。
「これでくたばれ、たかが小娘が」
ルキュルは放出した膨大な魔力を使い<全てを裁く光の柱>を使う。
クエスの上下には2mサイズの光属性の精霊のマークが連なった魔法陣が現れまばゆく光りだす。
「この状況で完成させるなんて、本当にうざいわね」
そういうとクエスは急ぎ後ろに飛んでルキュルとの距離を開けるが、上下の魔方陣は既にクエスを中心にロックしており共に動く。
「この全力でいい加減くたばりなさいよ」
ルキュルはとどめと言わんばかりに魔法を発動させる。
ロックされている上下の魔方陣からクエスに向かって強烈な魔力と光が放たれ、巨大な光の円柱を作り出した。
その発動と同じタイミングで、クエスも防御魔法を使う。
念のためストックしておいたものだが、相手に光の柱が直撃したと思わせるためぎりぎりまで使用せずにいた。
<光り輝く生命の卵>
クエスを中心に縦3m横1mちょっとの立った状態の卵形のシールドが展開され光の柱に耐える。
「まったく・・相手のスキを突くためとはいえ、ここまでの大技をまともに受ける羽目になるなんて」
ぼやきながらも光の柱を受け止めつつ、わずかずつだがクエスは肉体的疲労を癒していく。
光の柱が発動し、クエスがその柱の中にのみ込まれると会場がどよめいた。
「よし決まったな」
バカスは満足そうに笑みを浮かべ、右手を握り締める。
バカスは受けきったとしても追い討ちであの娘は大きなダメージを負い降参するだろうと想定していた。
「ふーん、クエスという子は油断したみたいね。削りきるか、発動を妨害すればよかったのに」
アイ・エレファシナは残念ね~、といった口調で語った。
「さらに光の柱から追撃だよなぁ、やっぱ手堅く<収束砲>かねぇ」
シザーズがこの先を予想すると
「既に両手を上げて降参しているかもしれないな、治療師たちはすぐに動けるよう準備しておけよ」
と笑いながらバカスが返答していた。
メルルは顔が真っ青になる。<全てを裁く光の柱>は追撃まで余裕で入れられる決め技だ。
光に包まれる直前、クエスはガードもしていないように見えたので光が止んだ後まともに立っていられるとは思えなかった。
「ど、どうしよう。とにかく負けを宣言しなきゃ」
そう言って立ち上がろうとするメルルの右腕をミントが掴み首をぶんぶんと振って否定した。
「メルル様、あれはクエス姉さまが油断させる為によく使う手です。私も練習で似たような手を何度もやられたので大丈夫です」
そう言ってミントはメルルを安心させる。
それを聞いた女王はミントに尋ねる。
「へぇ、それでこの後はどういう感じになるのかしら?」
「はい、相手が下手に追撃を入れ魔力の大量消費でへばったら姉さまの勝ちが決まると思います」
ミントは何の心配もなさそうにリングの上を見つめていた。
その発言と平然とした妹の様子を見て、女王もこの試合を止めることをせず見守ることを決める。
止めることもできなくなって不安なメルルだけがずっと心配そうにそわそわしていた。
20秒過ぎた頃光がやや収まり、光の柱の中がうっすらと見えてくる。
だがルキュルは確認などする間もなく追撃、そして止めとして両手に集めた魔力の光を<収束砲>として放つ。
剣を離した状態で左、右と2発だ。
ルキュルが2撃を放った直後くらいか、光の柱が消えかけ、中に輝く光の卵形をしたシールドが見えた。
ルキュルはその存在に気づいたものの、すでに確定させた2発の収束砲は止められない。
クエスはルキュルが収束砲を放ったことを確認すると同時に卵形のシールドの右側だけを割り
魔法も終わりかけで薄くなっている光の柱をくらいながらも外に出て<光の鞭>を左手側だけルキュルに向ける。
魔力の一時的な大量消費で少しボーっとしていたルキュルだが、光の鞭が飛んでくるのをみて右手で地面に刺していた剣を取りきり払おうとするも間に合わない。
ルキュルの左手に鞭が絡まりクエスの目の前まで引っ張られる。
一気に消費した魔力がまだ上手く放出できない状態なのか、ほぼ抵抗できないまま宙を舞うルキュル。
ルキュルは何とか力を振り絞り引っ張られた勢いのままクエスに剣を振り下ろすが、クエスの右から振りぬかれた剣とぶつかり衝撃が生まれる。
空中で衝撃を受け止められないルキュルはそのままはじかれ飛ばされる。
ルキュルが空中で飛ばされている時に、クエスはルキュルに<魔力撹拌>を使った。
その瞬間は受身を取ることとクエスの直接の追撃に集中しててルキュルはその魔法に気づけなかった。
ルキュルは光の鞭でつながっているため、クエスから1mもない距離で地面に倒れこむ。
ここでクエスは勝ちを確信し、確実に殺すと言わんばかりの殺気を込めルキュルを睨む。
「殺す」と殺意を込めた目を向けるクエスにルキュルは明確な死の恐怖を感じた。
今回も読んでくれた皆様ありがとうございました。
だんだんどの魔法を紹介欄に書いたかわからなくなってきました・・
抜けているものがあるかもしれませんので、その時は申し訳ありません。
時間がありましたら、ブクマや感想などなど・・をいただけると励みになります。
よろしくお願いいたします。
魔法紹介
<全てを裁く光の柱>光:相手の足元と5mほど上空に直径2mほどの魔方陣を展開し、その後上下から膨大な光がターゲットに向かって発せられ巨大な光の柱に見える魔法。普通は光の柱と言われる。
<光り輝く生命の卵>光:卵形状の光のシールドを展開。中では傷口などのダメージを回復でき、貫通や光線系に対して相当の防御力を発揮する。
<魔力撹拌>夢:対象の体内の魔力を強制的に均衡化させ集中的な防御をできなくさせる。直前にかけないとすぐ効果がきれるので使いどころが難しい。




