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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
2章 下級貴族:アイリーシア家の過去 (18話~46話)
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光の女王の裁定

これまでのあらすじ


一貴族を滅ぼしたクエスたちは元守護者であるメルルと共に

無罪放免と家の再興を判断していただくため光の女王の元へ向かう。


楽しい談笑が10分ほど続いたころだろうか、急に遠くの方で兵士の動きがあわただしくなり騒がしくなっている。

この場にいる全員が察する、光の女王様からの呼び出しだろう。


「女王様の元へ行かなきゃね。ふーっ、すんなり話が進めばいいんだけど」

「万が一の時はクエスお姉ちゃんを全力で守るからね」

「そうですね。何事もなければいいんですが・・そうそう、ルバールさんはお留守番をお願いしますね」


ルバールは正確には貴族位ではない。準貴族に当たる。

滅亡してしまった家の者たちの扱いは、正式な家長系列から外れた者は貴族ではなく準貴族へと格下げになる。

これは直系以外が滅亡した家を継げないようにするために取られる措置だ。

そしてルバールのような準貴族では、女王や他の上級貴族たちと会うことすら無礼という立場になる。


「はい、クエス様、ミント様どうかご無事で・・」

ルバールが姉妹に頭を下げると、向きなおしてメルルに頭を下げる。

メルルはにっこり微笑んで軽く左手を上げて答えた。

  

誰かが近づいてくる。頭まで隠れる黄色いローブを着たこの場では浮いている二人組だ。

二人が近づいてくるのを見て、メルルはクエスたちの前に出る。


「予想はついていますが、どちら様でしょうか?」

「我々は光の女王様の使者としてこちらに使わされたものです。メルル様とクエス様とミント様を女王様の元へご案内いたします」


メルルは使者たちの言葉を聞き終え、確認のため後ろにいるクエスとミントの様子をちらっと見た。

覚悟を決めていたとはいえミントは少し嫌悪感を覚えたのか1歩後ずさっている。


「わかりました。クエス、ミントもう準備はよろしいですか?」


メルルに聞かれてクエスはミントを見る。

クエスの目を見て思い出したのか、表情を引き締めてミントはそれに反応して頷く。


「すみません、少しだけ時間を頂けませんか?」


そういうとミントは別荘宅の方を指さす。

用を足すのだろうと雰囲気を察し、メルルは兵士に案内させた。


「すみません、いつ来るものかわからなかったもので・・少しお時間を頂きますね」


メルルは使者たちに顔を斜めにし笑顔を向ける。

使者はただ頷きメルルとクエスに対してやや背を向け周囲を警戒するような態度を取る。


使者が後ろを向いた隙に、メルルはクエスに近付き小声でミントのことを尋ねる。

普通に考えればミントは緊張して用を足しに行ったと思えるが

メルルはクエスが使者が来ても落ち着き払っているのを思い出し、少し引っかかるものがあったからだ。


「何か良からぬこと・・ではないですよね?」

「いえ、保険みたいなものかと思います」


とメルルの心配に対して大丈夫そうに返した。

保険?と思うものの、メルルはそれ以上は深く立ち入ることはしなかった。

今はクエスたちの信用を得ることを優先すべきだと判断したからだ。


通常時のメルルは割とのんびりした性格で、バックアップの計画を用意しつつどうなるかしら~と物事を進めていくことが多いが

今回の件だけは失敗するわけにはいかないと気合を入れている。


20年も雲隠れした挙句、仇討ちを難なくこなすクエスたちがこの場だけで自分の事を完全に信用したとメルルは思っていない。

だからこそメルルはクエスたちに相当気を使っていた。



やがてミントが戻ってきて一行は転移門まで移動し少し待つ。

使者たちが光の女王の元の転移門まで飛べるように設定に協力していた。


数分して準備ができたようで、使者たちがメルルの元に戻ってきて最後の確認をしてくる。

メルルは今度は彼女たちを守り切るという覚悟を持ちつつ、クエスたちに向かって笑顔を向けた。


「それでは皆様、よろしいでしょうか?あと、出来るだけ失礼のないようにお願いいたします」

と確認と注意事項を述べる使者に対して


「はい」

「ええ」

「もちろんです」


と、それぞれのはっきりと返答した。

その後、一同は中サイズの転移門を使って女王の様の待つ場所まで転移した。




転移した先の転移門を出ると全体的に白基調の綺麗な部屋に出た。転送先の転移門は小サイズで一度に8人ほどしか飛べないサイズだ。

転移門の周囲は強力な防壁が3重に張り巡らされていて、案内役の者たちが外にいる責任者に説明をしつつカードサイズの金属のプレートを見せている。


確認が取れたのだろう、先ほどの魔法防壁が1つ、また1つと解除されていき

部屋の正面の大きな扉が開かれて、先へ進むことができるようになった。


使者が先導し、扉を抜けてクエスたちの案内を続ける。

部屋から出た通路は左右に等間隔に柱が並んでおり、柱も壁も光っているのかとても明るい。

天井まで光っているためか、外から遮蔽された通路にもかかわらず高い天井もはっきりと見える。


クエスとミントはルーデンリア光国城内に来るのが初めての為か、この通路の豪華な作りにきょろきょろとしていて

その様子を見たメルルは微笑ましい光景だと優しい笑みを浮かべていた。


そうこうしているうちにやけにしっかりとした門の前まで案内される。

「こちらで光の女王様と上級貴族の皆様がお待ちです、どうぞ」と使者が門を開こうとする。


メルルはとても嫌な予感がした。

(ここはこの城の中で一番広い訓練場の・・確か観覧エリアへの入り口、これは・・まさか)

そう思うが今更ここで引き返すことはできない。

メルルはクエスとミントの先頭に立ち、大勢の上位者が待つ訓練部屋へと覚悟をもって進んだ。


訓練部屋の貴族用と思われる観覧エリアに一人の女性とその後ろに7人の男女が立っている。

先頭にいる女性は赤色がベースの豪華な服を着ており所々に十字の黄色いマークが入っている。

頭には小さな王冠を載せているこの女性こそ、光の女王フェニー・シヴィエット、第69代の女王だ。


「ここまでお疲れ様、来てくれてうれしいわ。私は光の女王フェニーよ」


女王と名乗るフェニーは両手を広げて歓迎の言葉を述べた。

後ろにいる7名は特に表情も変えず、クエスとミントを品定めするかのように眺めている。


メルルは光の女王に対して左膝をついて頭を下げクエスたちを紹介する。

「女王様、こちらがアイリーシア家の長女クエスと三女ミントになります。そして次女のエリスですが、どうもあの時にいなくなったようです」


そしてクエスたちを振り返って確認すると

「クエス、ミント挨拶を」

そう促し、立ち上がって両者の視線に入らない横の方へと下がった。


「女王様、お初にお目にかかります。アイリーシア家長女、クエスと申します」

「女王様、同じくアイリーシア家三女、ミントと申します」

二人ともメルルと同様に左膝をつき、頭を下げながら自己紹介をした。


「ええ、よろしくね。ところで立って顔を上げてくれない?堅苦しい礼儀も悪くはないけど、せっかくのあなたたちの表情が見えないわ」


そういうと女王は二人に立つことを促した。

互いに顔を見合わせたクエスとミントは、少し畏れ多いと思いながらもゆっくりと立ち上がり女王を正面から見つめた。


「うん、ありがとうよく見えるわ。クエスの方は少し薄めの緑の髪に同じ色の瞳、ミントの方は濃い緑の髪にクエスと同じ薄い緑の瞳ね。二人とも素敵じゃない、そして情報通りね」


情報通りという言葉にクエスとミントは緊張し警戒するが、女王には他意は無いようだった。

そして女王は優しく微笑むとクエスたちへの今回の対応を話し始める。


「まずは二人に確認したいんだけど、あなたたちがバルードエルス家を滅ぼしたことは間違いないわね」

「はい」

女王の質問に、クエスとエリスは同時に答えた。


「殺害した実行犯も二人だけでってことでいいかしら?」


クエスが一度頭を下げて自分が答えることをアピールし、一呼吸おいて発言する。


「バルードエルス家の一族全員を切ったのは私です。兵士たちは適当に引き入れた盗賊たちの被害に遭った可能性はありますが」

「そう、では妹のミントは何をしていたのかしら?」

「私は正門で待機していました。目標が逃げてきた場合の保険としてですが」


やや目を細める女王。3姉妹は全員強者だと聞いていたのでミントを弱いとは思っていないし、対峙した今ある程度の強者であることはわかっている。


しかしクエスほどではなさそうので、女王は姉妹全員に期待していたけどいまいちみたいねと少し落胆した。

さらに次女のエリスはいないとなれば、これは予想していたほどの戦力増強にはならないかもしれない。


とはいえ、一人で中級貴族を滅ぼせる力を持つクエスを引き入れるだけでも、戦力として十分価値はあると判断し

予定通りの対応でこのまま進行することを決めた。


「もう聞いているとは思うのだけど、今回の一件あなたたちの行動の一切を不問とします。特例にはなるけど貴族の復讐法を適用させ今回の事件を決闘の結果とするわ」


クエスとミントは一瞬ほっとした表情になるも、すぐに姿勢を正し深々と礼をした。

「ありがとうございます」


その対応に後ろの7人の上級貴族たちも納得しているかのように特に動かない。


「それとこれからあなたたちが我々光の連合に協力してくれるのなら、都市アイリーを与えアイリーシア家の再興を認めるわ。

あなたたちにも我々連合や貴族たちに言いたいことはあるだろうけど・・どう?それを呑み込んで協力してもらえないかしら?」


クエスたちはもちろん復讐の意味合いが強かったが、結果としては貴族のけじめとしてバルードエルス家を叩いただけだった。

バルードエルス家に関わった者たちを侍女とか兵士とか無差別に、次から次へと殲滅していったわけではない。


さらに連合に対しては最初の方こそ不満があったが、その後の対応の情報を得ると

何とかアイリーシア家を存続できないか配慮した対応をしていたのを知ったので、今は恨むほどの感情はない。


「はい、私たちには全く不満のない裁定です。家を再興していただいた暁には全力で光の連合にお仕え致します」

再び姉妹は深々と礼をした。


順調に今回の件の不問と家の再興が言い渡されて、横にいるメルルはほっと胸をなでおろす。

しかし、この場にいる多くがこれで問題なく終わるとは思っていなかった。

光の女王フェニーとバカスは事前に相談していたから知っているが、その他の貴族たちもこの訓練場に集まった時点で何かあると見越していたのだ。


今回は非常に切りの悪いところになりましたが文章量の都合上ここで切らせていただきました。

少し短くて申し訳ない。


いつも読んでくれている皆様、本当にありがとうございます。

可能な限り走り続け高ペースの更新を続けられればと思っています!

感想やブクマ、ご指摘などなんでも大歓迎ですのでよろしくお願いいたします。

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