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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
2章 下級貴族:アイリーシア家の過去 (18話~46話)
33/483

姉妹の復讐劇7

2章の胸糞回は多分ここまでとなります。


ここまでのあらすじ

クエスは自分の家を滅ぼした一家を皆殺しにするため城内へ侵入。

直系の父親と子供たちを殺し、残すは第3・5・6の子供たちのみとなった。


地下で激しい戦闘が行われている頃

クエスは残りのターゲットを探し続けていた。


先ほど第3王女のラベンは部屋にいたところを侍女のふりをしたクエスが一閃。

ラベンはとっさに<光の盾>を張るも、あっさりと深手を負い、さらなる一撃で死亡した。

残るは2人、第5王女と第6王女だ。


「あと2人か、あまり気が進まないわねぇ」

そういいながらも、大体のめぼしがついている居場所へ向かうクエス。


残りの目標2人とは10歳と1歳半ぐらいで、12歳から魔法使いになれるこの世界ではまだ普通の人(素体)なのは確実だった。

そして素体であるが故か、王族がいるエリアには部屋がなく正確な居場所がわからなかったので探し回っているのだ。


抵抗もまともにできない素体の者を殺すのは気が引ける、クエスはそう思う部分もあったが

残しておいたところで自分の様に復讐者となりいつかは殺しあう運命。


更に直系の者は残しておくと家が存続してしまう。

クエスはバルードエルス家を存続させる気などない。

自分たちが受けたことと同じように、この家を断絶させ消し去ると決めたのだ。


考え事をしながら王族エリアと分けられた、居住区の上等な絨毯の上を歩いていると

前方の1つの扉が開いて侍女が頭を下げて部屋を出る。


時間が時間だからかあまり廊下を歩いている者がいないので、情報を聞く相手が見つからなかったがちょうどいい相手を見つけた。

部屋を出て、クエスとは反対側に背を向けて歩き出す侍女を呼び止める。


「ごめんなさい、ちょっと聞きたいことがあるのですが」

その侍女は振り返り何か言おうとしたが直ぐに止め、深く頭を下げる。


「失礼しました。王族係の方が私に何か御用でしょうか?」


クエスは相手の服を見てその発言に気付く。

クエスが拝借した服は紺と白を基調として、他の色は光を表す黄色がわずかにある程度。

そして首元には小さくて星形の赤いブローチが付いている。


対して相手の侍女は紺よりも白地が多い服装で黄色は一切ない。

首元の襟にあるのは小さくて四角い青のピンバッチだった。

どうやら侍女にも身分の違いがあるらしい。


「ええ、ちょっと確認したいのだけど第5王女様はどちらおられるかご存知ですか?」

自分の身分が上なのを理解しつつも丁寧にクエスは尋ねる。


「はい、本日は私がお世話係でしたので…先ほど私が出た部屋におられますが」

その侍女は少し怪訝そうな顔をしつつも第5王女ロリアのいる場所を教えてくれた。


「少し話があるのよ、よかったら一緒に来てくれるかしら?」

「はい、わかりました。まだお休みにはなってられないと思いますので、お話はできると思います」


クエスはこの侍女がなぜ部屋を出たのか、またすぐに戻って来る可能性があったため、侍女を一緒に部屋に連れていくことにした。

ここで侍女がなぜ部屋を出たのかまで聞けば巻き込むことを避けられたが、それを聞くのはさすがに不自然すぎる。



侍女は先ほど出て来た部屋に向かい扉の前に立ち

コン、コン、と少し間を置くノックをして部屋の中に話しかける。


「ロリア様、王族係の侍女の方がお見えになられていますがよろしいでしょうか?」

「はい、まだ寝てはいませんのでどうぞ」

中から小さな声で反応がある。


「大丈夫のようですね」そうクエスの方を振り返り笑顔を見せると

その侍女は扉を開け「失礼します」と頭を下げて部屋に入る。

クエスもそのあとに続き同様に頭を下げて部屋に入った。


部屋はそこそこ広いものの服が収納されているであろうクローゼットと机が一つ、それにベッドとシンプルなものだった。

しかもそれ以外に部屋はなさそうで、素体とはいえ仮にも王族の住まいにしてはやや寂しく感じる。


「それでどのような御用ですか?」

第5王女のロリアはベッドの上で布団から上半身だけを起こしてこちらを向いている。

このバルードエルス家は先ほど見た夫人も入れて全員が金髪のようで、目の前の少女も肩まで伸びた金髪を輝かせていた。


先ほどの侍女はベッドの横にある椅子に腰かけていた。

かなり親しいのだろうか、腰掛ける侍女の行動を見てもロリアは気にしていない。

クエスは一度頭を下げて、第5王女である彼女に告げる。


「申し訳ありません、第5王女ロリア様」

そこでいったん発言を止めるクエス。ロリアは何のことだろうかと首を傾げた。


<光の鎖>

クエスは突然魔法を使用し、椅子に腰かけた侍女の身動きを取れない用にする。


ロリアはクエスが兄弟か父母の差金(さしがね)と思ったのか

自分と親しい侍女が酷い目に遭わされてもすぐに行動には出ずただクエスを軽くにらみつけた。


「突然どういうことですか、フロイアが何かしたのですか?」


ロリアは侍女のフロイアが何か失敗をして、わざわざ自分の前で罰を与えられるのだと理解したようで

布団を両手で力強く握ってクエスに向かって抗議の目を向ける。


クエスはその状況を無表情で見つめる。

そういえば…私にもよくしてくれた侍女がいたわね。同じ立場なら私も怒っただろうな。

一瞬楽しかった頃を思い出すがすぐに冷静な自分に戻りロリアに冷たく告げる。


「すみません、ロリア様。あなたの命を頂きにまいりました」


クエスは腰に固定していた剣を左手で外して鞘を外して右手で持ち、ロリア王女の前に剣先を向ける。


「悪いけど……死んでいただけないでしょうか?」

ロリアは布団を強く握ったまま目の前に向けられた死に対して恐怖し少し体を震わせる。


いきなりの展開に最初はついていけなかったが、ロリアは何とか心を落ち着かせる。

ロリアは冷静にクエスを王族の侍女ではなく不審者だと判断した。


ただ、クエスが不審者だと気付くものの、彼女の目的がわからずどうしていいか悩み

ロリアは何とか話をして解決か時間を稼ごうと会話を試みる。


「あ、あなたは…誰なの?なぜ私を、私を殺そうと?」


わずかに震えながらも、剣を向けたクエスに対して必死に抵抗の意思を向けるロリア。

椅子に縛られた侍女のフロイアは必死にもがくも、魔法使いではないようで光の鎖を解くことはできない。


侍女がせめて助けを呼ぼうと叫び始めたため

クエスは傷口を塞ぐために使う<輝く保護布>をフロイアの口に使った。

フロイアは必死に声を出すが、くぐもった声しか出せない。


「そんなに騒がないでくれる?あなたから先に殺すわよ」


クエスが冷たく言い放つが、侍女フロイアはうーうーと叫び声を止めようとしない。

はぁ、とクエスはため息をつくとロリアに向けた剣をフロイアに向けた。


フロイアの首に剣先が当たるまで近づけると

「いいわね」と短く言い放ち黙らせる。


しかしそれでもフロイアは黙ることなく、王女の危機を誰かに伝えようとうーうーとうなり続ける。

彼女もまたクエスを必死に睨みつけ一歩も引くつもりはない意思を見せつけた。


クエスは大きくため息をつく。

<聴覚阻害>が城内に効いているようなので、少々くぐもった声を出そうが他の者にはまず聞こえはしないだろう。


壁1枚でも隔たりがあればあの魔法はかなりの効果を発揮するからだ。だがさすがに放っておけば気に障る。

ひとまず気絶でもさせるかと大きなため息をすると剣を持つ右手に力を入れる。


その時、ベッドにいるロリアが大きな声で叫んだ。

「待って!お願い」

クエスは振り返るとロリアは布団から足を出して両手を開いて突き出し待ってほしいと訴えかけていた。


「はぁ、いいわ。だったらあなたが彼女を静かにさせてくれないかな」

そう言って剣先はフロイアを向けたままロリアがフロイアの前に来れるように横にずれる。


この間もクエスは詠唱をストックし、部屋中に魔力を発散して不穏な動きは察知・対応できるよう警戒していた。


「お願い静かにして、フロイア」

よく側にいた侍女として王女の性格を把握していたからだろうか。

覚悟を決めている王女を理解したかのようにフロイアは静かになり、目を閉じてうなだれた。


「希望通りにしましたよ、殺し屋さん」

そういいながらロリアは再びベッドに腰かけてクエスを見つめる。


「ありがとう、そして覚悟も決めてくれたみたいね。それじゃ…」

クエスがそう言いかけるとロリアは

「もう少し待って、お願い」と再び発言し、クエスの行動を制した。


「あなたには意味のない事でしょうけど、なぜ私を殺すか知りたいの」

真剣なまなざしでクエスを見つめる。


「あなたはなぜ、私を殺しに来たの?お父様やお母様も?」


クエスは黙ってロリアを見つめていたが、一旦目を閉じて自分を落ち着かせるとやがて口を開いた。

「ええ、そうよ。バルードエルス家の直系全員を殺しに来たわ。理由は……仇、私たち一家を、父を、母を、妹を殺し国まで奪ったからよ!」


クエスは話しているうちに、段々と自分が怒りをぶちまけてることに気付き、すぐに気持ちを落ち着かせる。

怒りに任せて殺してもいいが、魔法使いではない彼女を殺すのに怒りに任せではさすがに貴族として魔法使いとしてどうだろうと思ったからだ。


「えっ、仇……国を?」

今まで聞いたことがなかったのだろう、驚きと戸惑いを隠せず慌てた様子のロリア。


「ええ、そうよ。それに私たち姉妹をあなたの父にあてがう予定だったらしいわ。上手くいっていればあなたの母は私だったかもね」


今度は淡々と話すクエスだったが、ロリアは恐ろしいことを聞かされたようで言葉が出てこない。

ロリアの今までの父に対する印象は豪快だが優しい人だった。


そもそも貴族同士が殺し合うことは禁止されていることをロリアは知っている。

そんな禁止事項を自分の父がするはずなんてない、ロリアはそう思いたかった。

目の前にいる殺し屋の言葉なんて信じたくもなかった。


でも、目の前にいる女性の先ほどからの表情、怒りや落ち着き

そこから仇という状況に嘘があるとも思えなかった。


「なので、仇・復讐、そんな感じよ。あなたが悪くないことはわかってるわ。でもね」

「一家の罪……ということですね?」

「ええ」


なかなか聡明な子みたいね。クエスはそう思いながらロリアを見つめる。

途中、本当に殺すべき相手なのかと少し躊躇するも、その聡明さも鑑みてやはり確実に殺すべきだと心に刻む。


「ではフロイアは無関係ということになりませんか?せめて彼女は助けてほしいのです」


自分の命よりも侍女の命を懇願する貴族などそうそういるものじゃない。

もし魔法の才能があれば素晴らしい王になれるんじゃないかとも思うが、そんなことは今更どうでもいいことだろう。

ロリアはクエスにとって絶対に殺さなければならないターゲットでしかない。


確かに彼女を連れ去って生かすという手もないことはないが

それはまさに自分たちがされそうになったことなので、さすがにそういうことをする気にもならなかった。


「へぇ、侍女を?……考えたけどあまり私にメリットはないわね」

命の捨てた申し出だったがクエスは冷たくあしらった。


「フロイアはあまり体が強くない私をとても大切にしてくれたのです。いつか恩を返したいと思っていました。私がもう死ぬのなら恩を返すのはここしかないのです」

必死にロリアは訴えかけてくる。


椅子に座って鎖で手足を固定されている侍女を見ると、侍女は涙を流しながら横に首を振っている。


「気持ちはわかったわ。だけどあなたの父や祖父は私たちのそういう関係などお構いなしに、私の国を混乱に陥らせ滅ぼした。同情はするけど、助ける理由にはならないわね」

「なら、何かメリットを……私が知っていることならすべてお話します」

必死にロリアは訴え続ける。


「あなたの知っていることね…。特に知りたい事はないと思うけど」

「ならば、妹のいる場所を教えますので」


意外な発言が出てきたのでクエスは面食らう。

こういう時に「あなたの国をお返ししますので」などとできもしないことを言ってくるなら、子供の発言として予想通りなのだが

まさか兄弟を売ってまで侍女を助けようとするなんて思ってもみなかったのだ。


「1歳の妹を売ってまでも助けたいの?」

驚き少し呆れたかのように聞き返すクエスに対してロリアは少し迷った表情を見せたが、それでも覚悟をもって話し始める。


「歳も知っていましたか…なら妹も必ず殺すのですよね?どうせ殺されるのなら…探す時間を減らせるメリットを提供……しようかと…」

最後はやや力ない言葉になるところに葛藤は見られたが、大した子だとクエスは思った。

と同時にその判断力にますます危険さを感じる。


「そうね、ありがたい話だけどもう場所の見当はついてるから。この子を見逃してすぐに私の身が判明する方がデメリットが大きいわ」

悪いわね、という表情をしてクエスは視線をフロイアに向けた。

これ以上交渉で時間を使う方がデメリットだ。恨まれるだろうが元々それは覚悟のうえで来ている。


「待って、待って」

「悪いけど時間に余裕が無くてね、でもまずあなたが先ね」

そう言って剣をロリアに向ける。


「そうだ!宝物庫の場所を教えるわ。特別なものを保管している場所よ」

ロリアは必至で考え付いたのか、最後の最後にカードとしてとっておいたのかわからないが宝物庫の話をしだした。


「地下のは場所も知ってるわ。それに金は目的じゃないの、私は盗賊になったつもりなんてないわ」

クエスは感心しながらも、もともと興味がないので軽く一蹴する。


「違うわ、城内にある他国からの物を集めたものを入れていると聞いた保管庫なの。父があなたの国を滅ぼしたのならそこに何か……」


それを聞いて体がびくっとする。

父と母、妹たちに囲まれ過ごした時間。その中に存在していた魔道具や装飾品。

もし取り戻せるのならもちろん取り戻したい。

クエスはとても心が惹かれてロリアが言い終える前に問いただした。


「どこ、それはどこなの?教えてくれれば約束は守るわ」


急にせかしだすクエスを見てロリアはほっと一息ついた。

「場所はここから……」

丁寧に説明するロリア。とはいえ露骨な時間稼ぎをする様子ではなくクエスは少し不思議に思う。


「私を信用…しているの?」

「はい」

笑いはしないもののまっすぐな目を向けられてクエスは少しまいってしまう。


「どうせ私には助かる力も術はありませんので。せめて信頼することがあなたへの武器になれば、と」


「そう…約束は守るわ、必ず。ただしばらくはあの侍女も拘束させてもらうけどね」

「ありがとうございます」


深々と頭を下げる少女。

年齢は10歳そこらだったはずだ。どういう教育を受ければこう育つのやら、そう思いながらも自分のやるべきことを思い出す。

クエスは瞬時に頭を切り替えた。


「それじゃ、悪いけどあなたは死んでもらう」

そういうと手をロリアに向けて詠唱に入る。


「魔法は要りませんよ。覚悟はできましたから」

「……気まぐれよ。痛覚も切って、眠らせてからとどめを刺すわ」

「あはは、ありがとうございます」


力なく笑うロリアだが本当に強くて優しい子だと感じさせる。

ロリアはベッドに入り布団をかぶって目をどじる。覚悟はできたということだろうか。


自分の残酷さを脇に置きつつも、こんなところに生まれてこなければ立派になっただろうに、そう思いつつクエスは魔法を唱えた。

<痛覚遮断>そして<昏睡>


2つの魔法をかけるとロリアは熟睡したかのように動かなくなる。寝息だけがロリアの体を小さく揺らしていた。

そしてクエスはロリアの心臓の位置に布団越しに剣を突き刺し、光の魔力を流しだす。


光の魔力が彼女の心臓を消し去り、彼女の体を包んだ布団が微かに光る。

せめてもの対応だったのだろうか、クエスは<光の清浄>を唱え溢れ出る大量の血を光の粒子に変え消し去っていく。

そして第5王女ロリアはこの世を去った。



次はフロイアの番と言わんばかりにクエスは身動きできない侍女の前に立ち、口を塞いでいた<輝く保護布>を取り去った。

フロイアは恐怖で震えながらもクエスをわずかに睨みながら言葉を絞り出す。


「あ、あなたは……お、おじょう、様を」

「ええ、そしてあなたは約束通り生かすことにしたわ。まぁ元々余程邪魔をしない限り殺すつもりなんてなかったんだけどね」

クエスは左手で軽く頭を掻きながら少し困惑した表情を見せる。


命を懸けたロリアの行動をまるで全否定されたかのようで、侍女のフロイアは怒りで状況を忘れてしまった。


「あんたは、あんたは本当に悪魔だ!苦しみながら一生を終えるよう毎日祈り続けてやるわ!ロリア様の命を懸けた行動を…行動を馬鹿に…して…」


涙を流しながらも怒りをぶつけ続けるフロイアを冷静に見続けるクエス。

そんな彼女を見て、全てを憎み破壊してやると誓った昔を少しだけ思い出した。もちろん今ではそこまで思っていない。


「まぁ、聞いて。あの子の要求を聞いたようにしたのはせめてもの満足と安らぎを与えるため。問答無用でもよかったんだけどね……」

クエスが言った意味を理解出来ないのか、キョトンとした顔をするフロイア。


「最初は貴方を救えない後悔を抱かせたまま死んでもらうのもありだと思ったわ。でも…まぁ、これであの子も少しは何かをしてあげれたと思って旅立てたでしょ……私は何もできなかったからね」

クエスは少しだけ何もない壁を見つめる。そして視線を侍女に戻すと再び<輝く保護布>を使って口を閉じさせた。


「1時間もすればそれは両方とも解けるから」

そう言って部屋を出た。



非常に不機嫌そうな表情で部屋を出ると最後のターゲットのもとへ急ぐ。そろそろ場内が騒がしくなってもおかしくない頃だ。

急ぐと言ってもやや早歩きで廊下を進む。進みながら先ほどのことを思い出す。


「後味悪過ぎね。妹の場所で応じなかったのもあの子に不名誉を押し付けない為だったけど、まぁこれは告げる必要もないか」

あの侍女なら死んだロリアの名誉を汚すことはないだろうとクエスは思っていた。


そんな考え事をしながら進むと侍女が一人立っている部屋が目についた。

「多分あそこね。殺して突破した方が早いかな」


とつぶやきながら左手で腰の剣に触れるものの思いとどまる。ひとまずは会話でやってみることにしたのだった。

これはロリアと十分な会話したせいかもしれない。無用に侍女を切り殺すことを少しためらったのだ。


クエスは扉の前にいる侍女に対して、走って急いでいるかのようにして駆けつけると

「第6王女はこちらにいらっしゃいますか?緊急の対応です」

王族担当の侍女の格好をした者が緊急と言うのを聞いてその侍女は何事かと驚く。


「どうやら城内に賊が侵入している模様で、急いで王女様を保護したいのです。まだこちらにいらっしゃいますか?」


慌てるクエスの様子に急がなければいけないと思ったのか、その侍女はノックもせず扉を開けると

その小さな部屋の真ん中にある小さなベッドの上に寝かせられた、まだまだ小さい子供をそっと抱きかかえる。


「こちらが第6王女です。安全な場所までよろしくお願いします」

そう言って侍女はまだ小さい王女をクエスに手渡した。


そのあと侍女は部屋の中にいて第6王女の様子を見守っていた別の侍女に状況を説明している。

「ありがとうございます」そう言ってクエスは部屋を出た。


部屋を出るとクエスはすぐに抱えた子供に<昏睡>の魔法をかける。

運が悪いとこの年齢の子供は状態変化の魔法だけで死んでしまう場合もあるが

第6王女はそういった様子はなく、すやすやと眠り続けている。


「こういう時に限って死なないのね……仕方ないか」

そうつぶやくとこの子供に<生命感知>の魔法をかけ

布を取り出し抱えた子供の口や鼻を中心にぐるぐると巻き付けて息をできなくする。

そのまま大きめの木の箱を虚空から取り出すと、その中に子供を入れて目的の保管庫へ行く途中にあった物置のようなところに木の箱ごと置いた。


箱を置いて数十秒したくらいだろうか。クエスが生命反応を感じなくなって第6王女が亡くなったことに気づく。

「やっと…終わったわね。後は……保管庫か」


そう寂しくつぶやくと意識を周囲の警戒に回して保管庫へと走った。

殺し合いは当たり前の世界とはいえ、1歳の子供に対してまで手をかける自分にむなしさと苛立ちを感じながら。


いつも読んでくれている皆様方、本当にありがとうございます。

皆様のおかげでアップロードにもやる気が出るというものです。

感想・ブクマ・ご意見(誤字報告等も)、大大大歓迎です。余力がありましたら是非お願いいたします。


魔法紹介

<痛覚遮断>夢:対象の痛みを完全に感じなくする魔法。ちなみに通常魔法の<痛覚鈍化>は他人にはかけられない。

<生命感知>光:対象が生きているか遠くから判定できる魔法。術者が一定距離離れると継続効果も切れ判らなくなる。


修正履歴

19/07/25 命の捨てた→命を捨てた に修正。

20/07/22 一部表現と誤字を修正

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