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頂上対決8

ここまでのあらすじ


闇の国最強の男ミョウコクは、光の連合最強の女クエスと森の中で戦う。

必殺の一撃を交わされたミョウコクは、牙をむいたクエスの攻撃を何とかしのぎきるが

とつぜん右腕を切り落とされてしまった。

「なっ……」


何が起きたのかわからなかった。

飛ばしてきた斬撃は障壁で確実に受け止めていたはずだ。貫通などしていない。


彼女は今も目の前にいる。すぐ隣にテレポートして切り落としたわけでもない。

今までの状況から言って、こちらが認識できない早さで瞬間移動して攻撃できるはずがない。


なのに私の右腕は防ぐ行動すらとれず切断された。


そもそも斬撃を飛ばした程度では私の腕を切るだけの威力は出せないはず。あれは直接切り付けるのよりも威力が落ちるからだ。

ならば直接切られたと考えるべきだが…。原理がわからずに右腕を失った以上、ここは撤退するしかない。


切られた部分が右腕ではなく首だったら……私はここに倒れていただろう。もはや勝ち目などないと考えるべきだ。

即信号弾を2発上空へと放つが、それは見越していたのかクエスは見逃さず2発とも撃ち落とす。


が、その隙を見逃さず私が<暗黒砲>を放つと相殺する余裕もなかったのか<宙の集中盾>で受け止めた。

その隙に再び信号弾を3発出すとさすがに撃ち落とせなかったようで、森の上で信号が輝く。


「ちょっと、逃げる気?」


「負けは認める。今の私では貴公には勝てない。ならば撤退あるのみだ」


勝てないと悟った戦いを続けることほど意味のない行為はない。

クエスが後ろから非難の声を上げるが、私はそれを無視して後方の部下がいる方へと走り出した。


状況をひっくり返す程の強力な援軍が来るのならここで粘る意味もあるが、最強の駒である私が失われるだけなら闇の国にとっては大きな損失となる。

たとえ1万の兵を犠牲にしてでも、私は生き残らなければならない。


決して認めたくないことだが、私にはそれだけの価値があるらしいのだ。

切り落とされた手に握られた精霊武器は既に回収済みだ。後は私の命を回収することが私の使命だった。


「待ちなさいよ!」


クエスが怒って追いかけてくるが止まるつもりはない。

信号弾に反応したのだろう、目の前には精鋭百名程の部下が待機しているのを感じた。


「追手を足止めしろ。あくまで足止めだ。後は全力で退け」


私の真剣な言葉に兵士たちは何も聞かず即行動する。私の周囲には20名ほどの部下が付き添い、残りはクエスを足止めするために向かった。


後ろで早速魔法の打ち合いが始まりだしたが、結果など見なくてもわかっている。

私は彼らの犠牲により稼いだ時間でとにかく逃げ続けた。


来た道はちゃんと記録しており、それに対応した風の板に乗ってすいすいと森の中を抜けていく。

多大な犠牲は払ったが何とか逃げ切ったと思った時だった。


真後ろから光の直線が2本、こちらに向かって飛んできた。

守ろうとする兵士の前に私が<雷の強化盾>を張って防ぐと、周囲の者たちはいっせいに光が飛んできた方へ向かって反撃する。


「止めろ、奴はすでにそこにはいない。あれは宙属性の瞬間移動で位置を変える天才だ。魔力を展開し防御に徹し…」


私の言葉を最後まで聞くことなく、斜め右後ろから飛んできた光が周囲にいた部下の2人が頭や体を貫いて、彼らは風の板から落ちた。

最適な道順を辿っている風の板に追いつける相手、この状況に味方は恐怖に包まれる。


「第2プラン、発動せよ」


私の指示で4名の部下が私の魔力を垂れ流しながら別の方向へと逃げていく。

以前ボサツ相手に撤退した屈辱を思い出したが、今は感情に振り回されている場合ではない。


これで何とか撒ければいいのだがと思ったが、この相手はどうやらボサツよりたちが悪いらしい。

今度は真横に近い方向から2本の光が飛んでくる。


1発は防いだが、もう1発は兵士に当たった。


「ダメです、完全に捉えられています」


副隊長ラシカクが悲壮のこもった声で報告する。


『天才』『規格外』そう呼ばれたこともあった私だが、本物の規格外を目の前にし自分の実力のなさを嘆く。

だが、そんな暇も与えないと次々といろいろな方向から光が放たれて、防げなかった部下が体を射抜かれて脱落していく。


私くらいの実力であればどこから飛んでこようと反応できるよう訓練しているが、精鋭と言えども所詮は兵士。

どこから飛んでくるのかわからない攻撃を素早く防御すると言う訓練などやっていない。


優秀な指揮官の元で集団となって戦う彼らは、元々そんな状況に個々で対処しないからだ。


「敵は…1人とは思えません。いったいどうなっているんですか!」


「落ち着け、とにかく魔力を周囲に流しながら警戒し続けろ。相手はこちらの魔力がない場所にしかテレポートできない。

 近づかれたらそれこそ終わりだぞ」


おそらく近づこうとしても近づけず、テレポートを繰り返して左右からこちらを射抜いているものと思われる。

一見非効率なやり方に見えるが、ラシカクの震えた声から察するに効果は抜群のようだ。


しかも光一閃の威力が馬鹿げており油断すれば私の腕くらいは貫けそうな気がする。

ここまで威力のある光一閃を放てる者などそうそういないはずだ。さらに瞬間移動との組み合わせでこちらの防御を集中させない。


光一閃だけなら中程度の実力者であれば使える魔法だが、こんな視界の悪い森の中で瞬間移動と併用すると最悪の組み合わせとしか言いようがない。

心を折り命をもぎ取りに来る…もはやあれは死神だ。


「ミョウコク様、いざという時は私が時間を稼ぎます。あの化け物との闘いの記録は、きっとこちらに多大な恩恵をもたらすはずです」


「あぁ、わかっている。だが、今はむやみに飛び出すな。相手がどの方向から追ってきているのかすらこちらはわからんのだからな。

 思い込みで飛び出せば、お前は盾より使えない存在となるぞ」


「は、はい…」


たかが戦場から素早く離脱できるだけの能力…クエスがわが軍に突貫してきたときの報告書ではそう思っていた。


だが実際に戦ってみた結果、彼女は一見役に立たないと思われてきた宙属性を見事なまでに昇華させた人物。このズレは必ず修正しなければならない。

この情報を必ず持って帰らねば。そう思いながらすでに止血した腕を見て私は周囲の状況に集中し続けた。


「来ます!」


ラシカクの声にこの大きな風の板に乗っている全員が反応した。

太い光がまっすぐにこちらに向かってきており、私をはじめ全員が魔法障壁を一斉に張る。


問題なく防げる障壁の威力だった…だが同時に私は嫌な予感がした。

先ほどからいけると思った時ほど、この相手はそこをついてくる。


そして最悪なことに私の勘は当たってしまった。

収束砲を受け止めたまではよかったが、森の外までの木々の位置をしっかりと記録していた風の板がなぜか木に衝突して壊れる。


当然乗っていた我々10人は全員地面へと堕ちてしまった。


データが間違っているはずはない、現に今まですいすいと木々の間を抜けて進んでいたからだ。

そう思って周囲を見てみると、われわれの目の前にある木々が途中から3m分の高さだけ右にズレており、切断された?木々が倒れていく。


明らかに自然現象ではなく、魔法によって何かが引き起こされていた。

一部の空間を強引に横にずらしたかのような現象…見たことも聞いたこともないような魔法だ。


「ミョウコク様、ご無事ですか?」


そんな私の無事を確かめるラシカクに、彼女の声が答える。


「無事よ、じゃないと困るわ。最強の敵を木にぶつけて倒したとか報告したら、私が笑われるじゃない」


「確かに…それはあまりに格好がつかないな」


私は立ち上がり鎧に着いた土ぼこりを落とす。

それを見たクエスは嬉しそうに私を見ていた。


「ここまでしつこく追ってくるとは思わなかったな」


「あら、知らないの?女は逃げると追ってきて、追ってくると逃げるものなのよ」


部下たちは思わずむきになって反論したがっていたが、私は笑ってしまった。

この状況で冗談が言える奴はなかなかいるものじゃない。敵ながらあっぱれだ。


「しかし追いつかれるとは思ってもみなかったな」


「私もこんなに早く逃げれるとは思ってなかったわよ。おかげで追いつくの苦労したんだから。途中のダミーも一瞬騙されたわよ」


「一瞬か…もう少ししっかり騙されてくれると助かったんだが」


「まぁ、こっちの方がたくさん護衛がいたし…あなたの魔力パターンの質が違ったから」


これは本格的に別の逃亡方法を考えておかなければと思いながら、なぜだか笑顔になってしまう。

わざわざこうやって種明かしをしてくれる敵など今までいなかったからだろうか。


今までのやつらは恨み言や自分の正義を語りながらこちらに向かってきたから、そう思ってしまうのかもしれない。


「ミョウコク様、ここは我々が時間を稼ぎます。ですから…」


そんな部下の声を拾ったのか、私が答える前にクエスが答える。


「止めときなさいって。それよりミョウコクだっけ、どう?都市を明け渡してみない?」


「だったら見逃すという話だったか?一度断ったはずだが」


「気が変わらないかと期待したのよ。こんな殺し合い、続けたって面白いものじゃないでしょ」


相変わらずの言い方だったが、私が呆れている間にラシカクが反論する。


「誰が面白くてこんなことをするものか!やめたいならそっちが黙って引けばいい話だろう!我々と光の奴等は互いに相容れぬ存在だろうが!!」


「はぁ、怒鳴り散らしても状況は変わらないと思うんだけど…仕方ない、始めましょうか」


一気にクエスの雰囲気が変わる。

私を始め部下たち全員が息をのんだのを感じた。


「防御に徹しながら援護して時間を稼げ。その間に私は隙を見て引く」


「はっ」


逃げれるとは思えない。

わかっていてもそう指示するしかなかった。


そんな私の意思を汲んでの返事だったのか、確認する間もなくクエスは動き出す。

8光折を4セットも同時に放ったと思うと、彼女は目の前から消えた。


32本もの光が木々の間をすり抜けるように折れ曲がりながらこちらへと迫ってくる。

クエスがどの方向にいるのかを探さなければならない上に、目の前の32本の光も注視しなければならない。


この場面だけを見たらとてもじゃないが1人を相手しているとは思えない。


「動け!」


全員が状況を把握することを優先しその場で足を止めてしまう。

それが向こうの目的だと気付き叫んだが既に遅かった。


右側に展開した3名が真横から飛んできた光一閃に貫かれ続けざまに倒れたかと思うと、32本の光が左側にいた3人を狙って曲がる。

それを守ろうと障壁を準備するが、クエスが近くに来たことを感じ咄嗟にそっち側を振り向くと、すでに<収束砲>が放たれていた。


「相変わらずでたらめな…」


愚痴りながらも私は<暗黒砲>を放ち相殺する。

が、その間クエスはまた別のところへと跳び気がつけば私の正面にいた兵士2人も倒れていた。


いくら集中していようが、どこから来るかわからない攻撃に対して対処するにも限度がある。

ましてや自分に向かって来ない攻撃まで感知して防いでやる動きなど訓練したことない。


彼らを守るだけの行動をとることなど、今の私にはできなかった。

だからといって逃げられるわけでもない。

瞬間移動した時点で、彼女は私の逃げた先に現れるかもしれないからだ。


結局彼らの命を使ってできたことは、彼女が他を攻撃している隙に信号弾を再び放てたくらいだ。


「あれ…何ですか?」


ラシカクがやや声を震わせながら尋ねる。

彼の視線の先はクエスだ。ご丁寧に再び我々の正面に瞬間移動したようだ。


威圧のためなのか何なのかわからないが、なかなかいい趣味をしている。


「あれが本当の化け物だ。常に近くに、常に全方位にあいつがいて囲まれていると思え」


「ちょっと…冗談きついですね」


ラシカクの言うことももっともだ。総LV50と思われる最強の敵に近距離・中距離全て囲まれていると思えだなんて、もう死んでいるぞということに等しい。


「だが、そうしないと反応が遅れ…殺られる」


「…はい」


おそらくラシカクには期待できない。

むしろ彼を気遣えばその分こちらが意識をとられてしまい、私に隙ができてしまう。


普通であれば正面の敵を2対1で役割分担することでこちらの負担が減るのだが、彼女相手ではむしろ負担が増えることになる。

今ならはっきりとわかる。あの時の彼女の言葉は本当だったと。


「あっさりと殺れるものだな」


「これくらいの雑魚じゃあなただって障害にすらならないでしょ?」


大して威力のない砲台とはいえ複数あれば、普通は多少厄介なのだが…それを言ったところで伝わる相手ではなさそうだ。

俺があきれた笑いを返すと彼女は剣を構えて止まる。


「どう、実にくだらない殺し合いでしょ?」


「殺し合いというよりは蹂躙に見えるが」


「まぁ…それが力なき者の運命よね。だけどそれが恨みとなり戦いは続く。

 殺した私が悪いのか、力なき者が悪いのか、それとも…」


クエスが話しながら夢属性の魔法を使ったようで、魔道具が反応し即座に私を正気へと戻してくれる。

気づくと目の前で体を盾にしているラシカクがふらついていたので、後ろから軽く殴って正気へと戻した。


距離関係なくいつどこから攻撃を仕掛けてくるかわからない上に、こうやって幻術系も混ぜ込んでくるのか。

瞬間移動で正面にいるのを相手すると思ってはいけない。幻術で正面にいないのかもしれない。


もはや笑うしかない。どう見てもまともに対処できる相手ではないことが分かった。


これが優秀な部下を犠牲にして得た唯一の戦果というのは悲しいが、何としてもこの情報を持ち帰らなければならない。

相当の対策を練った上で戦わねば、彼女に傷一つつけることなく我が国の将兵は殺されてしまうだろう。


そうやって国への貢献を考えると同時に、私の心のどこかに彼女との会話を楽しんでいる自分がいることを、この時の私は全く気付いていなかった。


「確かに力なき者が悪いという側面はあるだろう。だが、力なき者でもあがく権利はある」


「もちろん。でもそれが…結果につながるとは限らないわ。本当にあがきたいのなら力を持たなきゃ意味がない」


斬撃光の魔法が付与された剣をゆらゆらと揺らしながらクエスは語る。

既に攻撃準備は完了していると言わんばかりだ。


別の場所に跳んでから攻撃してくるか、先ほどのように正面から不可思議な手を使ってくるか…一挙手一投足見逃すわけにはいかない。

一振り、二振り、斬撃だけを飛ばしながらゆっくりと近づいてくるクエス。


それを障壁で受け止めながら私は彼女の周囲の魔力を注視する。今のところはあの腕を切り落とした一撃は使っていない。

そして三振り目、彼女の周囲の魔力が一気に消費される。


私が「避けろ!」と叫ぶ前に、ラシカクは目の前に障壁を張りながら私に体当たりをかましてきた。


その直後、副隊長ラシカクの体が私の目の前で二つに分かれる。

その時はっきりと見た。


一瞬の事だったが、確かに私の目の前で右上から左下に徐々に切れ込みが入っていったのだ。

見えない斬撃を飛ばしていたのなら、後ろで見ていた私には左右同時に切れ込みが入るはず、つまり彼女のあの技は…切っているのだ。


おそらく手に持っている剣の位置とは違う位置を切っていたのだろう。

タネが分かったからといって今すぐ対処法が思いつくわけではないが、これは大きな収穫だと言えた。


後はなんとかして逃げることができれば…そう思いカウンターを狙った私の<闇の千矢>が発動し、私を中心とした一帯に闇の矢が降り注ぐ。

これならば次の一手を打つことを相手は躊躇するはず、その考えは甘かった。


クエスは攻撃を受けるにもかかわらず、構わずにそのまま剣を振り切った。

もしかしてと思い私は体全体に力を入れ体内の魔力の密度を限界まで高めながら回避行動をとる。


見えない攻撃の回避行動をとると言うのも変な話だが、とにかく今いる位置から自分の体を必死に動かした。

もちろん避けられる保証などないのだが、今の私にはこれしか手が思いつかなかったのだ。


幸運にも位置がずれたのか、それとも高めた防御力のおかげなのか、私の左足が深く切り裂かれたが切断には至っていない。


私の魔法が降り注ぐ中、無理に攻撃を入れたことで闇の矢をクエスがくらう。

すぐに障壁を展開していたが、10発以上彼女の体には闇の矢が刺さりそこから血が流れていた。


が、被害は明らかにこちらの方が大きい。もはやこれではまともに動くことも出来ない。

彼女を目の前にして風の板で悠々と離脱することなど出来やしないのだから。


このまま終わると思った瞬間だった。無数の闇の魔力がこの一帯向かうのを感じた。


「来たかっ」


闇の矢を受けながら私の言葉に顔をゆがめるクエス。

どうやら彼女も何が来たのかを察したようだ。

まぁ、当然だろう。彼女の方が私よりも索敵範囲が広いのだから。


「ちっ」


防御に徹して動きを止めていたクエスを含め、私をも巻き込む形で一斉に大量の闇の矢や闇の槍が降り注ぐ。

その数は万単位、先ほどの一撃でかなりの魔力を使い果たした彼女はこの中で私に追撃を入れる余裕などないようだ。


いいタイミングで援護が来たことは幸運だった。

どうやら飛んでくる闇の魔法を防ぐだけで手一杯と見える。


「仕留め…そこなったわね」


その時の彼女の表情は悔しいというより、なぜか安堵しているように見えた。


「次はこんな無様な姿は見せん」


私はそれだけ伝えると降り注ぐ闇の魔法を防ぎながら、風の板に乗って撤退する。

一発一発は大した威力じゃないと言っても、負傷した上にこのまま大量の闇属性の攻撃を受けながら追ってくるのは彼女といえども難しいだろう。


瞬間移動は使えるだろうが、私を中心に百m以上の範囲で魔法攻撃が降り注いでいるのを悟れば近づくのは諦めるはず。

その予想は当たり私はどうにか都市まで帰還できた。


百名連れてきた精鋭は30程度しか戻ってこず、副隊長は死亡。

結果だけ見れば散々なものだが、一光との戦闘データという貴重な情報を得られたのは大きい。


この情報を知らずに他の者が戦っていたら、間違いなく情報を持って帰ることなく死んでいただろうから。


「しかし傷が酷いな…右足はなんとか止血したがほぼ動かないか。これはかなりの期間前線から離れることになるな…」


止むことのない闇の矢を防ぎながら、私を乗せた風の板は森の中をゆっくりと進む。

得たものは大きかったが、失ったものもまた大きかった。


「復讐も果たせず、また仲間を犠牲にして生き残ったか…」


無様だ…本当に無様だ。

そんな自分を見て思わず私は涙を流して笑った。



ボロボロになった私の帰還に対し敬意を持って迎える都市の仲間たち。

だが同時に私の傷を見て一部の上官たちが大騒ぎになっていた。


真っ当な報告をすることも出来ず、すぐに治療のため私はブラックフェーブルを離れ首都へと戻される。

再び味合わされた屈辱だったが…今回は特に感じることなどなかった。


「いや…違うな」


全てを出し切りそれでも負けた空虚な心の中にある言葉が響く。


『くだらない殺し合い』彼女のその言葉が私の心の隅に残り続けることとなった。


今話も読んでいただきありがとうございます。

遅くなってすみません。帰宅が遅い上に長めの話で修正に時間がかかり過ぎました。


変態的クエスの戦闘を敵視点で楽しんでもらえたなら…書いた甲斐があったかな?


誤字脱字等ありましたらご指摘ください。

ブクマ増えていてありがたいです。評価とか感想とかとか頂けると励みになります。


次話でこの章も終わり…だったかな?

その次話は1/7(木)更新予定です。 では。

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