揺れる信用度7
ここまでのあらすじ
コウは捉えた悪党を開放した。そして拠点へと戻ると傭兵ギルドから来た者たちが待っていた。
コウたちが座ると目の前にいるギルド職員たちは自己紹介を始める。
「はじめまして、私はオクタスタウン支部を任されているフューレンスといいます。今の状況を説明したくこちらから出向かせてもらいました」
整った身なりに丁寧なあいさつ。
のんきに構えて見れば初対面だからこそ丁寧に、と見えなくもないが、コウはその男から苛立ちや不満を感じていた。
ちなみにもう1人は名乗るほどの立場ではないのか、軽く会釈するにとどまりただの付き添いにも見える。
それに対してコウは、やや緊張しながらも笑顔で挨拶を返した。
「こちらこそはじめまして。俺はコウ。この傭兵団のリーダーをしている。両隣は副リーダーのマナとシーラだ」
名前を呼ばれそれに合わせて2人は軽く会釈する。
傭兵団の方針を決めるトップが全員そろっていることを黒いモニターで確認し、フューレンスはモニターの出力を切るとアイテムボックスへと収納した。
「さて、われわれが何の目的でこちらに来たかはわかっているでしょうか?」
少し回りくどい言い方だったが、それくらいはコウにだってわかっている。
もちろん彼らと正面から対立するのはまずいことも。
「はい。我々が捕らえた血の痕跡のメンバーに対する対応についてですよね?」
「ええ、その通りです。資料を」
彼女がそういうと、フューレンスの横にいた男がアイテムボックスからA4サイズくらいの黒いモニターを2個取り出し起動する。
そこには先ほどまで捕らえていたユユネネとアルデデスの2人の顔が映し出されていた。
正面から撮られた証明写真のような映像で、2人ともどことなく穏やかな表情をしており、どこで撮られたものなのかコウはちょっとだけ気になった。
「先ほどまで彼らを捕らえていたと聞きましたが…そのうち1人は解放したそうですね」
「ええ。訳あって解放しましたが、その理由は言えません」
どこからルルーやポトフ王子に伝わるかわからないので、今は言うわけにはいかないという態度を示す。
ギルドの支部長は軽く目を細めるがそれに対して突っ込むことはしなかった。
「なるほど、せっかく捕らえた彼を逃がすとはもったいないですね。これではあなた方の信用度に傷がついてしまいます。
どうせ逃がすのなら、わざわざ町中まで連れてこなくてもよかったのでは?」
「外でじっくりと話を聞くのは、相手の援軍が来ることを考えると得策じゃなかったんですよ」
「確かに。ですがいったん捕らえたのをアピールし開放したのでは、周囲の者たちからの心象はよくありません。
彼らは犯罪を行う盗賊団なのですから」
「もちろん最初から解放する気で連れてきたわけではありません。ただ話しているうちに開放するだけのメリットがこちらにあると提示され開放しただけです。
必ず引き渡すようにと言われた覚えもありませんし、彼らの情報はうちのユユネネから聞けるので問題ないはずですが」
幹部を逃がした後で下っ端から情報を聞き出してもさほど価値のある情報は得られない。
メンバーに関しては最新の情報が取れるが、重要な情報を得ることは難しく、聞き出した情報から拠点を叩こうにも逃げられている可能性が高い。
そのことをコウがわかって言っているように見えたので、ギルド職員たちは少し不服そうな態度を見せる。
だがコウたちはそれを見て特に反応することはなかった。
「確かに、彼らをどう扱うかは捕らえたあなたに権利があります。解放しようが引き渡そうが自由です。
ですがこちらが、そして他の傭兵団が、それをどう評価するか…理解していただきたいものですね」
「ええ、そこはわかっています」
少し挑発気味とも感じられる言葉に場の空気が悪くなるが、コウは表情を変えずにすぐ同意を示した。
時間を置けば、マナが何を言い出す変わらない雰囲気があったからだ。
これ以上解放したアルデデスの話はしても意味がないと思い、コウは別の話題を持ち出した。
「それで、ユユネネの件だが…彼女はすべて話すと言っている。厳しい尋問でなければこちらのメンバーが同席した上で何でも聞いてくれて構わない。
あまりに厳しい対応であればこちらから抗議させてもらう。彼女はすでにうちのメンバーなのだから」
「その件も聞いています。それで出来るだけ彼女の信用度を回復して欲しいだとか」
「あぁ。だがそれは、あくまでお願いの範囲だ。こればかりはそちらの専権事項だからな」
「お願いですか…なるほど。ですが、その点はかなり大きな問題となります。彼女を『流星の願い』に加入させるということですが…これに関しては団全体の信用度にかなり響くかと」
傭兵ギルドからの言葉は、辞めておけと言わんばかりの雰囲気だった。
信用というものは簡単に数値化できないものではあるが、それを何とかわかりやすくするためギルドは信用度に関してかなり腐心している。
信用度というのは町の出入りや仕事の受注範囲、サービスなどの待遇にまで関わるものであり
ある意味傭兵ギルドの利権ともいえるものなので、これを盾にとられると傭兵団側はかなり苦しくなる。
とはいえ、ある程度公共性を持たせる必要もあるので、ギルド側も不合理な賞罰を適用することはできない。
ギルド側が恣意的な運用を連発すれば、町の出入りや待遇に関して参考にしているサービス提供側が疑問を持ってしまうからだ。
信用度自体の信用が無くなれば利権としての価値もなくなるので、このあたりの加減は難しいところである。
コウがアルデデスとユユネネに行った、もしくは行おうとしていることは、見方を変えれば彼らの仲間もしくは協力者になったと受け止められても仕方のない行為だ。
ギルド側が強く警告を発するのも当然のことである。
とはいえ、普通の新規傭兵団が相手ならば彼らはここまで丁寧な対応をしない。
とっとと警告の一文を出して、従わないならランクを下げておしまいだ。
だがコウたちの傭兵団『流星の願い』はこの街にとって害になる火ウサギを連日狩っており、先日は報酬も得られないのに町に被害を及ぼすドロスグロスを退治している。
この1月も経っていない間に町に対してかなりの貢献を見せており、一部の高位の傭兵団からはそれなりの信頼や注目を得ている。
ギルド側としても切り捨てるには惜しい存在であったため、敢えてこうした対応に乗り出したのだった。
だが、コウはその警告を受け取らずに断る。
コウにとって彼らとの約束はそれだけ大切なものだった。
たとえランクDの者たちだとしても、その態度を見て信用したのなら約束を守るべきだと言うのが彼の考えだった。
それにもう一つコウには思う所があった。
この信用度のシステムは一回落ちると簡単には這い上がれないシステムになっているように見える。
しかも傭兵団に対して丸ごと評価されるものなので、あまりに個々を見ていないと考えていた。
だからこそコウは託された彼女を守ることに意義を感じていた。
「信用度に関しては先ほど言ったようにそちらの専権事項だから、こちらからはせいぜいお願いをするくらいしかできない。
ただ、ユユネネを加入させないと言う選択肢はこちらにはない。彼女はあくまでこのシステムで運悪く脱落した者だと思ったからだ。
うちに置けば真面目に信用度を積み重ねられる人物だと俺は考えている」
「システムに関する苦情でしたら、こちらとしてはお受けできません。これは長年かけて作り上げたものですから」
「別に信用度の仕組みを変えてくれというつもりはない。ただ彼女に信用を取り戻すチャンスを与えて欲しいと言っているだけだ。
それをうちがサポートすると言っている」
「……ふぅ」
フューレンスはコウの主張に眉を顰め息を吐く。
これでも出来るだけため息にはならないよう気を遣ったつもりだった。
傭兵ギルド側の反応はかなり悪いものだったが、それでもコウはさらに押し込んでいく。
彼女の身を預かること。これは同情で安易に決めたわけではないと主張するためにも。
「這い上がりにくいということは、一度落ちてしまえば盗賊になるしか道がないということになりかねない。
こういったチャンスが与えられることはあっていいのではないかと思うんだが」
「それに関しては我々も否定しません。ですが、それを新規結成のあなた方が行うべきことなのかと、我々は…」
「たまたま巡り合わせがうちだった。ある意味偏見のないうちだったからできたことかもしれない」
このコウの言い分は的を得ていた。
実際、こうやって盗賊から抜け出して元の表舞台に戻れる制度はあるが、それをサポートしようと言う傭兵団はまずいない。
何かやらかした時に巻き添えを食らって信用度が低下する危険性があるからだ。
上げるのはコツコツと頑張らねばならないのに、落ちるときは一瞬。
誰もそんなリスクなど負いたくはない。
ギルド側もコウの主張は理解できている。
だが、それを押し通されては困るのでより強く説得に出た。
「…はっきりと言いましょう。我々傭兵ギルドオクタスタウン支部は、あなた方『流星の願い』の存在を買っています。
だからこそ、彼女のような脱落した存在を取り込むことなく綺麗な道を歩んでいただきたいと考えているのです」
それに対して一瞬考えたコウは、両隣にいるマナとシーラを見た。
シーラは少しうれしそうに頭を縦に振り、マナは仕方がないねと言った表情でコウの手に触れる。
「買ってくれているのは素直にうれしいことだ。だが、我々はこういう集団だと理解してもらえれば助かる。
助けると決めた仲間を見捨てるつもりなどない。たとえどんな過去があっても、我々が問題ないと判断し、仲間に加えたのだから」
コウの言葉に先ほどから申し訳なく思っているユユネネが、後ろの方でうつむき小さく震えていた。
それを見たメルボンドが優しく腕に触れて落ち着かせようとする。
はっきりとしたコウの態度、それをサポートする周囲のメンバー、それを見て傭兵ギルド側はこれ以上の説得は無駄だと判断した。
「わかりました…。出来るだけこちらの今の信用度を維持できるよう対応しますが、C-への降格も覚悟してください」
少しだけ不満そうにしながらも、傭兵ギルド側はコウの主張をいったん受け止める。
脅しとも取れる彼らの言動に、コウは今後の自分たちの状況を尋ねた。
「それで…うちの傭兵団がC-になるとどうなる?町から追放にでもなるのか?」
「いえ、そこまではしません。一番大きな点は町の出入りが制限されます。ランクC以上の者たちと同行していなければ、たとえ討伐依頼を受けて出発もしくは戻ってきたとしても出入りできません。
簡単に言えば、警告を無視し勝手に出た場合は町の中に入れなくなります」
つまり共同受注でないと魔物討伐の仕事すら受けられないということだ。
もちろんC-の者たちと共同受注したがる傭兵団は少ない。
魔物討伐が出来ないのは、傭兵団の収入にとって大きな痛手となる。
たとえ依頼のない魔物でも、倒せば魔石が手に入り収入となる。それが禁止されるようなものだからだ。
ならば代わりに町中の仕事へと目を向けるしかないが、依頼自体が元々少ない上に、安全ということで各傭兵団内の実力のない者たちが取りあっている。
そういった状況でもコツコツと信用を積み上げたならば、信用度ランクCへの復帰も可能というわけだ。
ちなみに町中での仕事となると、受注可能なものは町中の治安維持(見回り)、清掃業務、外を警備する兵士のサポートくらいだ。
どれも報酬は微々たるもので魔石の入手などの副収入もなく、素体(一般人)の給料並みの報酬しか出ない。
魔法使いである傭兵にとってはなかなか屈辱的な仕事と言っても過言じゃない。
そんな状況に追い込まれるからかCーへと落ちた傭兵団はやってられなくなり、優秀な者は他の傭兵団に拾ってもらおうと離脱し始め団が崩壊してしまう。
そして残された者たちが行き場を失い、怪しい仕事に手を染めるようになる。
だが、コウたちの場合は少し様相が異なる。
コウたちは明らかに多額の資金を持っているし、無理して働かなくても食べていけることくらい、この拠点をポンと買ったことからも予想がついていた。
しかも追放期間は1年であることから、今更生活の為に依頼を頑張らなくても問題ない。1年経てば傭兵団ごっこは終わりということで解散すればいいのだ。
そして、そこが傭兵ギルドにとっては頭の痛いところであった。
実力があり積極的に町に有害な魔物を討伐してくれる優良傭兵団、これを敢えて無力化することはできるだけやりたくない。
だが、これまでとの整合性の都合上、C-のメンバーを受け入れるのであればそれ相応に団の信用度を落とさなくてはならない。
だからこそ、こうやって支部長が出張ってまでコウたちを説得していたのだった。
「狩りが出来なくなるのか。結構痛いな…うーん、メルボンド。その場合、生活への影響は大きいか?」
「一口には難しいところですが、生活するという点では問題ないでしょう。われわれは別に仕事をせずとも生きていくだけの金銭的余裕があります。
コウ様はいささか働きすぎですし、少し仕事から離れ訓練で体を動かす程度にとどめ、ゆっくりされるのもよいかと思います」
「私からも1つ。C-に落ちた傭兵団は大人くしていれば1年ほどでランクCに戻れることになっています。
メルボンドの言うように1年程ここで過ごされるだけでも、ユユネネを元のランクCに戻す目的は達成されるかと」
メイネアスの言葉にギルド側は顔をしかめた。
極秘事項というわけでもないが、彼女の言ったことはあまり公には発表されていない制度だ。
この制度は依頼を安易に受けて失敗ばかりを積み重ねた傭兵団に対し、一定期間C-で奉仕のような仕事をさせることにより
再びランクCに戻った時には依頼を慎重に選ぶようにさせるためのシステムである。
もちろんC-でも受けられる仕事をたくさんこなせば早く復帰できるので、黙っておくよりは仕事をした方がいいが
仕事が少ない町ではそれもままならない場合がある。
その辺を考慮して、Cーに落ちても頑張っている傭兵団には、一定期間でCへと戻れることをギルド側が教えていた。
ちなみに何度もC-に落ちた場合、Cへと復帰できる時間は長くなっていくのだがこれはほとんど知られていない。
何度もC-に落ちるような傭兵団は、信用度がCへと回復することなく分裂し消滅してしまうからだ。
この「もうC-には戻りたくない!」と思わせるためのシステムだが、コウたちにとっては何の痛みもなく意味がない。
ユユネネはきっと申し訳なくなるだろうから彼女に対しては効果があるが、それだけだ。
それに対してギルドや町が受ける損失を考えると、『流星の願い』をC-に落とすことはギルド側丸損と言ってもいい。
それを伝えられ悪くないなと感心するコウに、ギルド側は苦虫を噛み潰したような気持ちになった。
「なるほど…だったら、そちらがどうしようがユユネネを受け入れることに支障はない。それと彼女への質問や調査はこちらから立ち会い人を立てさせてもらう。
厳しすぎる対応はこちらが許可しない。そもそも加入にあたってDにいた頃の情報開示は義務じゃないしな。
それで我々がC-へと落ちるのであれば、我々はそれを許容する」
今後も問題ないことを確認したコウは、再度きっぱりと傭兵団のトップとしての意思を示した。
これ以上は何を言っても無駄という態度を示すコウに、フューレンスは無表情のまま立ち上がる。
「わかりました。では、彼女のメンバー入りの正式な登録と尋問への立ち会いをお願いします」
なら俺が行こうかとコウが動く前に、シーラがすぐさま立ち上がった。
「私が行ってきます。メンバーの加入手続きは副リーダーの私でもできますから」
「そうか、すまないがよろしく頼む。あと1人、誰かシーラについて行ってやってくれ」
コウの指示のもと、メルボンドの従者の女性がシーラと一緒に行くことになった。
話し合いを終え、ギルドへと戻るフューレンスの足取りは重い。
傭兵団は大抵独自のルールを持っており、傭兵ギルドの思惑通りには動いてくれないことが多い。
それだけ彼らは自由な存在であり、そこが兵士とは違った魅力となっている。
自由がないのであれば、給料も待遇もいい光の連合や闇の国の兵士に就いた方がいいのだから当然だ。
そのため今回もかなり言葉を選らび良い形へと誘導しようとしたが、コウの意志は固くギルド側の失敗に終わった。
「こういった話し合いは上手くいかないことが多いが、今回は特に残念だよ」
後ろにいるシーラたちに聞こえるように話すフューレンス。
だがシーラは落ち着いた声で答えた。
「こちらにとっては特に残念でもありません。あくまで私たちにとって信用度はあればお得くらいのものであって、なくてはならないものではないのです」
そりゃ貴族様のあんたにはそうだろうよと思いながら、フューレンスはギルドへと向かう。
副リーダーの彼女をもし説得できればと思ったが、それも一言で片づけられてしまった。
これから内部の会議や他の傭兵団の意見聴取で揉めそうだと思うと、さすがのフューレンスも頭が痛くなる。
町の入出管理すら操れる立場になる傭兵ギルド支部長とはいえ、基本はまとめ役に回ることが多い。
優秀な傭兵団が少ない、小規模の町の支部ならではの悩みだった。
ギルドに着き職員用の通路を通って奥へと進む。
奥にはすでに3名のギルド職員が立っており、ユユネネは少し恐怖を感じた。
「出来るだけ迅速に持っている情報を聞かせてもらう」
その言葉に強い意志を持って彼女はうなずく。
自分には戻る場所があり、付き添ってくれる仲間がいる。
そのことがC-に落ちて行く当てもなく仕方なく盗賊へと身を落とした頃とは大きく違っていた。
一方その頃、ギルド職員らが出ていった流星の願いの拠点ではコウが残った全メンバーを集めていた。
集めた皆に向かって最初に示したのはコウの謝罪だった。
「すまん、俺の判断で信用度を失うこととなった。だが、一度約束した手前、どうしても破るべきではないと思ったんだ。
身勝手な言い分だが、ここはどうか飲み込んでほしい…」
頭を下げ、再び頭を上げると半数はあきれ顔で、残り半分は立場上困った表情をしている。
「師匠が謝ることないって…ちょっとギルド側が強気に出すぎだよ」
さっきの態度からギルド側に不満があるようで、殴りたかったと言わんばかりに右のこぶしを突きだす。
「今回はこちらが好きにしていい事案です。向こうにああまで言われる筋合いはありません」
「あれでよかったと思います。たとえ依頼があったとしても、報酬を貰う貰わないはこちらに決める権利があるのですから」
メルボンドとメイネアスも当然と言わんばかりで、コウの謝罪など気にもしていない。
一番新人であるエンデリンも自分の後輩と呼べる存在ができたからか、ちょっとうれしそうだ。
最初はコウの謝罪に困惑していた者たちも、皆が問題なく受け入れる態度を示したのでそれに乗っかる。
誰もが問題ないとしていたが、コウはそれでも申し訳なく思っていた。
今回の決定はコウが強く押し進めたものであり、それによる負担は全員にのしかかるからだ。
「ん…だが迷惑をかけるのは…」
そこまでコウが言おうとしたところで、マナが背中からコウを押してその場を無理やり退場させる。
「はいはい。師匠がこれくらいのことをするくらい予想の範囲内だから、みんな気にしていないよ~」
「ちょ、えっ、おい…マナっ」
「大丈夫だから、あっちでちょっと話そ」
「わ、わかったから押すなって…って、おいおいおい…」
押すなと言われたマナはコウの手を取り引っ張っていく。
そうして、せっかく皆を集めた部屋からコウは退場させられてしまった。
残されたメンバーはやや呆れつつも、その光景を微笑ましく思っていた。
「しかし…思い付きで行動されて後から謝ってくるのは変わりませんな。あれは悪癖でしょう」
2人が出ていった扉を見ながらメルボンドがため息交じりに話す。
だが、その表情はどこかうれしそうにも見えた。
「その悪癖を直してもらいたいものですが、アイデンティティーとも言えますし…こればかりは難しそうです」
メイネアスが頭を抱えたポーズをとると従者やエニメットからも笑いが出る。
エンデリンだけがその場の雰囲気についていけなかったが、居心地の良さを感じてか、いつの間にか笑顔になっていた。
今話も読んでいただきありがとうございます。
切りどころが難しく長くなりました。最近は小説書く時間がなかなか取れず厳しいですが
このペースは守っていくつもりです。
誤字脱字がありましたらご指摘ください。
気に入っていただければ、ブクマや評価をもらえるとうれしいです。
次話は10/31(土)更新予定です。 では。




