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揺れる信用度2

ここまでのあらすじ


町のそばでドロスグロスという強い魔物を倒したコウたち。

その頃説得に失敗したルルーは次の手を進めることにした。


それから2週間近く、コウたちは毎日コツコツと火ウサギ狩りの仕事を続けた。

1日だけ火ウサギを見つけきれずに依頼達成できなかった日があったが、それ以外は淡々と仕事をこなしており多くの傭兵団から少しずつ注目され始めている。


火ウサギは獰猛で攻撃性が高く、中堅から大規模もしくはハイレベルな傭兵団じゃないと無傷で狩りきるのは難しい。

特に群れになっているのがいやらしく敵対すると一斉に攻撃してくるので、個々がそれなりに強くないと被害が大きくなることもある。

さらに厄介なのが、近くに他の群れがいるとそっちも一緒になって攻撃してくるので危険極まりない魔物だ。


軍隊のように整列して一斉に攻撃し面制圧するのならまだいいが、個々が装備も魔法も戦闘スタイルも違う傭兵団では、慣れたパーティーでないと数に対抗するのは隙が生まれやすく死傷者が出やすい。

彼らはどちらかというと強敵1対を相手にした方が、期待以上の力が出せるのだ。


ちなみにコウたちは一斉に狩りつくすと翌日からクエスト達成がこんなになる可能性が高いということで

近くに群れがいくつもある場合は戦闘を避けており、少し離れた小規模の群れを狙っている。

それは索敵範囲が広く相手の感知範囲外から見つけられるコウがいるからこそなせる業だった。



「ふぅ、今日もこれで終わりだな」


11匹という数の多い群れに当たったため、コウが初撃で数を減らしたところをシーラがさらに追撃。

意図的にうち漏らした2匹をメルボンドがサポートを受けながら狩ったところで終了となった。


「後は戻るだけですね。相変わらずコウ様の手際は見事としか言いようがありません」


「メルボンドだってなかなかやるようになったじゃないか。勘が戻ってきたんじゃないか?」


そうやってのん気に話している時も、シーラとエニメットは周囲警戒を怠らない。

コウが野外で常時索敵していては負担が重くなるので、こういったタイミングでは別のメンバーが周囲を警戒している。


狩りを終え町へと戻る途中、膝丈まである草むらを抜け開けた平原を通っている時に正面に3人の人影が見えた。

向こうもこちらに気づいたようで、ゆっくりとだがこちらに向かってくる。


「他の傭兵団かな?この辺は弱い魔物も多いから3人でも行けるのかもな」


「ですが、このあたりの魔物はあまり討伐対象にならないはずですが…」


「魔石は売れるのでそれ目当てかもしれませんね。どちらにしても声掛けくらいはした方がよさそうです」


あまり警戒しすぎるのもそれはそれで失礼に当たる。


町の外で他の傭兵団を警戒するのは当たり前だが、それでもそこそこ顔見知りが増えてきている今では、挨拶もせず距離をとるのもあまり良くないとコウは判断した。

一番後ろにいるエニメットは念のため周囲の様子を確認していたが、見渡しのよい平原だけあって魔物がいる様子はない。


ある程度近づくと顔が分かったが、見たことのある顔ではなかった。

だが他の傭兵団の知り合いということもあるので、とりあえず声をかける。


「やぁ、そっちは今から狩りなのか?こっちは今終えてきたところだが」


コウの声に反応して彼らは互いを見合い、返事を返してくる。


「あぁ、そうだが…そっちは最近有名な流星の輝きのコウかな?」


「ああ、確かに俺がコウだが、別にそんな有名じゃないぞ。というか団の名前は流星の願いだ、間違わないでくれ」


俺って別に有名じゃないよなと、コウはシーラやメルボンドに目で尋ねる。

彼らも不思議そうにコウの話を肯定していた。


「そうか、悪かった。ところで俺たちは少し仕事があってだな、もしよかったら我々を手伝ってもらえるとありがたいのだが…」


リーダー格と思われる中心の人物がそう発言するとその左右にいた2人の足元から<光の鎖>が向かってきた。

それに気づいたシーラとエニメットがすぐに<光の盾>を張ると、輝く鎖が魔法障壁にくっつき引っ張られてはがされる。


と言っても一番低コストの魔法障壁、引きはがされたところですぐに張りなおせばいいだけの代物だ。

明確な攻撃とまでは言えないが、ほぼ敵対ともいえる行動にコウたちのスイッチが入る。


コウが即座にサーチ範囲を広げるとこちらから死角の地面が掘られており潜んでいる者がいることがわかった。

念話でその大まかな位置と数を全員に伝える。シーラとメルボンドはすでに攻撃魔法を、エニメットは2つの防御魔法を背中に用意し始めた。


「先ほどの行為、敵とみなす。仕掛けてきたことを後悔しろ」


ルルーからの、もしくはポトフ王子からの刺客?それとも他の傭兵団からの嫌がらせ?

いくつか考えられる事はあるが、どちらにしても友好的な相手ではない。


コウは発言と同時に<光一閃>を、先ほど光の鎖を放ってきた相手に向けて放った。

だが2人は動くことなく目の前に<光の強化盾>を張って受け止める。

その間シーラはコウとの情報共有を密にするためゴーグルを装着した。


「ふん、後悔しろとか…甘いな、やれっ」


向かってくる2人の敵から<光一閃>が放たれるが、今度はメルボンドとエニメットがコウたちの正面に<光の強化盾>を張り相手の攻撃を防ぐ。

その間最速で型を組んだコウとシーラは2個ずつの<8光折>を同時に放った。

16本ずつの光がそれぞれの敵へと向かう。


相手はそれに気づき慌てて下がりながらストックから取り出した<光の強化盾>を発動させ、その魔法障壁を微妙に動かしながら多くを受け止めようと防御姿勢をとる。

だが、それぞれ16本の光線は彼らを狙わずに、目標から離れるように左右に曲がった。


一瞬相手は面食らっていたが、3人のうち真ん中にいたリーダー格の男がすぐにその狙いに気づく。


「アルデデス、お前らが狙いだー!」


その声に反応したのか、16本の光線が曲がって向かった先に潜んでいた者たちが一斉に<光の盾>や<風の盾>を張る。

が、とっさのことで魔法障壁の耐久が低く10本以上が障壁を貫きそれぞれ目標に命中した。


さすがにこの程度では戦闘不能にならないのか、着弾地点からそれぞれ立ち上がる影が見える。


コウの風の力は自分の感知出る範囲で空気がいきわたるエリアならば、魔力と物体の形をある程度知ることができる。

そのため穴を掘ってコウたちからの死角に隠れたところで、コウには丸見えに近かった。

当然ゴーグルで情報を正確に共有できるシーラも相手の位置を完璧に特定できている。


不意を突くはずが逆に突かれてしまった彼らは、体の数か所から血を流しながら立ち上がる姿が見えた。


「ちっ、やるじゃねーか」


コウたちから見て左奥にいた者たちは思ったより傷が深いのか、立ち上がったまま動く気配を見せない。

逆の右奥に潜んでいた男は多少傷を負ったようだが、まだまだ問題ないとアピールしてくる。


それを見たコウは発言や他の者の反応からこいつがリーダー格と判断し、相手がバラバラの今のうちに各個撃破しようと<加圧弾>で一気に距離を詰める。


シーラはそれに反応するようにコウへ向かって先ほどから準備していた<光の防御陣>を使った。

コウは4つの光に囲まれながら右奥の相手へ距離を詰め、一撃で決めようと剣を振り下ろす。

それをリーダー格と思われるアルデデスはきっちりと受け止めた。


が、コウはその受け止め押し返そうとする力と加圧弾を利用して自分の体を斜め上に飛ばすと距離をとる。

それと同時に先ほどコウが突っ込んできた軌道上から、遅れて2枚の<風刃>がアルデデスへと向かって飛んできた。


横にいるサポート役が慌てて魔法障壁を張るが1枚には貫かれ、その風刃をアルデデスは左腕で受け止める。

横に数cmの切込みが入るものの、すでに威力を殺されていた風刃は大きなダメージを与えるには至らなかった。


「くそっ、お前ら、囲め!距離をとって削るんだ」


コウの力量を察してかアルデデスから指示が飛び、他の動ける6名は距離をとってからの遠距離攻撃に切り替える。

レーザーや魔法の槍が飛び交い、中には火属性と風属性のものもあった。


複数からの攻撃にあまり慣れていないコウは、相手の攻撃が飛んでくる場所は把握するも上手く回避できない。

何発かはシーラが張ってくれた防御陣により、コウの周囲に漂う光が円状に変化し攻撃を受け止める。だが既に数箇所かすり傷を負っていた。


そんな状況下でも何とか体勢を整え、コウは威力の低い魔法を撃ってきた相手に向かって突撃した。

手数で迫る攻撃を緩めるため、まずは弱いものを倒して数を減らすことを優先したのである。


「近づけさせるな!」


コウが間を詰めようとすると対象の者は下がり、進行方向には多数の魔法が放たれ無理をするのはまずいと突撃を諦める。

他に目標を急激に変えても、相手もなかなかのチームプレイでなかなか近づけさせてもらえない。


「くそっ」


上手く流れを作られてコウはなかなか次の一手が見いだせなかった。

と言っても、それはコウが1人だけで戦った場合のことである。


コウが攻撃を一手に引き受けることでその分詠唱時間を確保できたシーラたちは次の一手への準備が完了した。


「師匠、援護します」


シーラの声とともに3人から一斉に魔法が放たれる。

狙いはリーダーと思しきアルデデス…ではなく彼をサポートするために近くにいる補助師だった。


シーラの<収束砲>に気づき受け止めようと強化盾を張るが、それを貫かれ彼女は幅広い光線に左肩から先を飲み込まれる。

着ていた服の左肩から先は光の粒子となって消滅し、腕の各所から出血した彼女は痛みを感じながらも、コウの攻撃からアルデデスを守る。


さらに追撃として放たれたメルボンドの<8光折>とエニメットの<光の槍>は、その補助士にとって致命傷となりうるものであり

慌てたアルデデスが防御魔法を使ってカバーに入り受け止めた。


「ちっ、こっち狙いかよ」


てっきり無視してコウへの攻撃を援護すると思われていたアルデデスが攻撃を放棄して仲間を守る。

補助士というのは部隊の中でも実力者にのみ付けられる存在なので使い捨てにされる場合もあるが、相手は意外にも彼女を守る行動に出た。


だが、そのおかげでコウへの攻撃の圧がかなり薄くなった。


包囲に一番力を発揮していたアルデデスが防御に回ることで圧が減り、コウは他の攻撃を防いだりかわしたりしながら少しずつ準備していた<百の風矢>をアルデデスたち2人に向かって放ち

さらに<加圧弾>で一気に距離を詰める。


コウが放った風の矢はある程度広範囲に放たれており、手負いの補助士を抱えたままその範囲から逃れることは難しい。

簡単には身動きの取れない状況に、アルデデスはそのままコウの接近を許してしまった。

敵の一部はコウではなく、後方のシーラたちを妨害するため攻撃対象を移すが既に遅い。


エニメットが防御に回るとメルボンドとシーラが再び<8光折>を放ち、さらにシーラがストックから型を取り出す。

訓練通り的確に相手の攻撃を受け止めるエニメットの横から、8本のレーザーが2セット放たれる。


慌てた敵の補助師はリーダーであるアルデデスの周囲に広めの<光の強化盾>を張り、8本の光線を受け止めるが

自分の方に突然曲がった残り8本の光線を防ぐことはできず、魔法を使った直後だったことからその光線をもろに食らう。


数本が腕などの細い部分を貫き、胸や腹部に当たった光線は表面から数cm食い込む程度で貫通はしなかったものの

傷口からは大量に出血し、彼女はその場でうずくまり倒れる。


そこへコウがアルデデスを剣の攻撃で押し切ろうとし、シーラたちは他の5名に対して攻撃を開始した。

体勢を立て直そうとするアルデデスはコウの1撃を受け止めるとすぐに距離をとろうとするが、それを見抜いていたのかコウは<加圧弾>でそばにうずくまる補助師をアルデデスに向かって飛ばす。


「なんてことしや…」


仲間を自分の元へと弾き飛ばされ、やむを得ず受け止めたところにコウが間を詰め、再び剣を振り下ろす。

コウは抗議する暇すら与えない冷静な動きだった。


不利な体勢でもなんとか手持ちの斧で受け止めたアルデデスだったが、なぜかコウの握る剣は上へとはじかれたかと思うと、即座にそのまま再び振り下ろされる。

そのままの軌道ならばこのまま斧で再度受け止められるので、アルデデスは再び剣を振り下ろす意味が分からなかったが、その剣は突然右側へとはじかれたかのように動き

斧を持った右手に向かって角度をつけて振り下ろされる。


その一撃は咄嗟に張られた<光の盾>を難なく切り抜き、右上腕を骨に届くまで切り込まれた。


不自然な体勢で切りつけたコウは転がったと思いきや体勢を整えすぐに立ち上がり、斧を手放し仲間をそばに置くアルデデスを見下ろす。

うずくまる仲間に手荒な真似をし見下してくるコウを睨み返すが、その瞳は冷たく感情を感じさせないものであり、その目に威圧されアルデデスは怖くなった。


「お前ら、退けー!」


勝負あったと判断したのかアルデデスは退却を叫び、仲間たちは2人を見捨てるかのように急いでこの場を去っていく。

他の手負いの者もは仲間が強引に引っ張り、風の板に乗せていた。

逃げていく先は町とは違う方向なので、どうやらオクタスタウンにいる傭兵団ではなく他から来た者たちのようだった。


久々のちゃんとした戦闘回でしたので…修正に苦労した回でした。

そして、ついにブクマが300を超えました。読んでくださる皆さまには、感謝、感謝であります。

記念のイラストは…ちょっとすぐには用意できそうにないですが、皆さんが忘れた頃くらいには披露したです(オイ


気に入っていただければ、ブクマとか評価とか感想とか頂けるとすごくうれしいです。

誤字脱字を発見しましたら、ご指摘いただけると助かります。


次話は10/16(金)更新予定です。

ブクマ300記念で連続更新したいところなのですが、ちょっと余裕がない日々になっており難しく申し訳ありません。

改めて、今後ともよろしくお願いいたします。では。

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