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中立地帯での生活2

ここまでのあらすじ


中立地帯に隣接する都市ピーッツオへとやってきたコウ一行は、両替を済ませた後

メルボンドの提案で移動部屋なるものを見に行くことになった。


店の中では先に入った2人がよさそうな移動部屋の魔動具を選んでいる。


大きければ後はどれも変わらないだろ?と思いつつコウが近づいていくと、各魔道具の前に完成後の移動部屋の立体見本が置いてあった。

大きさの違いだけでなく、設備にもかなり差があって驚かされる。


四角い箱型の左右に窓が2つずつ付いているだけのシンプルタイプから、屋根に上るはしごが付いており屋根の周りには手すり柵が付いていて監視や攻撃ができる物など

ただの風の板に乗って進むだけだと思っていたコウは、キャンピングカーみたなものだとわかり目を輝かせる。


中には対魔物用の武器が付いている物もあり、ミニ移動要塞と言っても過言じゃないものまであった。


「うーん、これは十分な性能のようですが魔石を食い過ぎではありませんか?マナ殿やコウ様のような攻撃要員がいるのであれば、ここまでの武装は必要ないかと」


「でもあったらメルボンドたちもサポートできるよ?」


「それはそうですが…魔道具の固定兵器はあまり融通の利くタイプが少ないと聞きますし」


「そっかぁ、以前私が襲撃したやつに付いていたのも全然役に立ってなかったしなぁ…」


一部不穏な会話が混ざっているが、マナとメルボンドはあれにしよう、これにしようと色々と迷っている。

コウは個人的に居住性を重視したかったが、都市外の危険度がわからない以上、ここは経験のありそうな2人に任せるのが妥当だと判断して、見て支払うだけの役に徹する。


ここで口を出せば2人の性格上、少々難があってもコウが選んだものに決定しそうだったからだ。


しばらくどれにしようかと2人が話し合い、候補が絞られてくるにつれて互いの主張がかみ合わなくなり移動部屋選びが難航し始める。

こうなったらコウに決めてもらった方が早いとマナは考えた。


「ねぇ、師匠はどれがいいと思う?」


せっかく見るだけに徹していたのに、マナはコウにも選ぶよう勧めてくる。

だがコウはあくまで出しゃばらない方がいいという考えの元、2人に選ばせるように徹した。


「俺はこういうの初めて見たからなぁ。初心者の俺よりもマナやメルボンドが選んだ方がいいものを選べると思うよ」


「そっかぁ…じゃ、やっぱりこっちがいいと思うよ、メルボンド」


「いえいえ、マナ殿。こちら方が魔力の効率は良さそうですし、ある程度色々な状況に対応できそうです」


「ダメダメ、性能は尖らせてこそ意味があるんだって。平均的なものは器用貧乏になっちゃうよ」


「コウ様やマナ殿がおられるのですから、乗り物はそつのない方を選んだ方がよいと思いますが…」


2人の会話を聞きこれは終わりそうにないなと思いつつ2人が推す商品の模型を見比べる。

マナの意見が推し通ってしまうと自分が選んだのよりもまずくなりそうだと思ったコウは

一度は2人に任せようとした考え方を改め、2人の会話の中へと混ざることにした。


「防衛面が要らないとは言わないが、9人もいるんだしある程度広さが欲しくないか?」


「確かに…師匠の言う通り広さは欲しいなぁ」


「ならこのあたりでしょうか?1階部分は就寝スペースになっており、2階部分は広く窓もありモニターで周囲が観察できます。

 屋根部分には手すり柵もついておりここから攻撃もできそうです」


「うーん、こっちの攻撃兵器盛りだくさんの方が格好いいのになぁ…でもこっちだとちょっと狭いし仕方がないか」


マナが推していたものは60m範囲の索敵に、その一帯に<百の光矢>を放つことができる範囲殲滅兵器が2門搭載された動くミニ要塞みたいなやつだった。

車の後ろと前方左右には30m程離れた相手に爆発魔法を放つ小さな砲門が2つずつ付いている。

それを見てコウは思わず盗賊のアジトにでも突撃する気かよと思ってしまった。


「少々燃費が悪いのが玉に瑕ですが…広さに関しては申し分ない性能です。コウ様、いかがでしょうか?」


値段は250万ルピ、ちょっと小さな動く一軒家だと思えば…妥当な値段と言えなくも……いや、正直かなり高い。

とはいえ居住空間の広さは捨てがたいし、やむを得ず同意することにした。


魔力感知範囲は40mほどしかないが、そこはコウがカバーすればいいだけなので妥協できる点だ。

速度は時速25kmほどしか出ないが、居住空間が快適ならかかる時間は気にならない。別に急ぐ旅ではないのだから。


「まぁ、これでいいか…。これなら目的地までは8時間くらいか?」


「実際はもう少しかかると思ってよいでしょう。何のアクシデントもなくまっすぐ進めばそれくらいの距離になります」


一応店員から説明を受け、コウはプレート部分に掌を置いて支払いを済ませた。

支払いを終え店員が丁寧にコウに手渡したのは25cm程の立方体であり、風の板をベースとした移動部屋を生成させる核となるものだ。


大部分は金属で一部木製の部分があり、表面に2つかなり大きめの魔石が埋め込んであった。

更にメルボンドの勧めで追加のエネルギー源となる魔石を入れる補助装置を1機購入しておく。


本体に充填された魔力を使い切った場合に消費する予備の燃料タンクみたいなものだ。

20分ほど経って外に出てくると、シーラとメイネアスたちが待ちくたびれていた。


「ずいぶん時間がかかりましたね」


「まぁ、その分快適そうなものを買ったからさ」


コウの言葉にメイネアスの顔がほころぶ。

コウの性格から考えて、ここから中立地帯の町に行くのに数時間、厳しい移動になることは避けられたと思っていたがそれは杞憂に終わった。


その隣で聞いていたシーラは移動部屋に対する知識がなく、どういうものを買ったのかいまいち想像がつかなかったので、あまり気にしていないようだった。


「さぁ、魔石は結構持ってきているし、もう出発するか。どうせなら朝には向こうに着きたいしな」


コウの言葉に皆がうなずき、そのまま平民街を抜けエリア3まで行き外門まで進む。

外に繋がる門まで来ると、兵士たちが気づいて話しかけてきた。


「おい、そこの……いや、そちらの皆様方、お出かけでしょうか?」


「あぁ、これからちょっと外に出ようと思ってね」


途中でコウたちが身分の高い御一行だと気付くと、兵士たちは急に言葉づかいを変えて丁寧に対応する。


「この時間帯は外はかなり暗くなっており、あまりお勧めはできませんが。もしよかったら明日の早朝ではいかがでしょうか?」


「まぁ、そうしたいところなんだけど都合があってね、今からちょっと旅に出なければならないんだ」


そう言ってコウは身分証を見せる。

ここはややこしいことにならないよう強権で睨みをきかせるためにも貴族の身分証を提示した。


「貴族様でしたか、わかりました。では、こちらに全員の名前と身分を書いていただけませんか?

 何かあった場合、こちらから所属する貴族家の方へと連絡いたしますので」


「ああ、わかった」


そう言ってコウは全員の名前と身分を書き終えて兵士へと渡した。

メンバーが2家にわたっており、準貴族も混じっている。

それを確認した別の兵士がコウに声をかけた。


「コウ様。準貴族の方がおられますが、家の許可なく中立地帯へと足を踏み入れれば貴族位がはく奪となることがあります。

 ご注意とご警告の方をよろしくお願いいたします」


「もちろん言っておくよ。ありがとう」


礼を言うと大きな門の横にある小さなプレート部分に魔力が込められ、大きな門がゆっくりと開かれる。

9人の一行は堂々とした足取りで門の外へと歩き出した。




外へと出て門が閉じられたことを確認すると、コウは先ほど購入した移動用の魔道具を取り出す。

ずっしりと重くサイズもかなりでかいのでコウは両手で抱えていた。


「これに魔力を込めて起動すればいいのか?」


「はい、やってみてください」


メルボンドに確認してコウはその魔道具を起動する。

すぐに大きな立方体が宙に浮くと少し移動して距離を取り、立方体の下に風の板が形成されその立方体は風の板の上に乗った形になる。


そこから柱のようなものが立方体の下から伸びて押し上げ、もう1枚風の板が形成され2階の床ができる。

更に四方に不透過の魔法障壁が張られて壁となり、それぞれ囲まれた部屋が出来上がった。

外から見ると黄色の壁でできた巨大な部屋が地面から10cmほどの高さに浮かんでいるように見える。


外観は魔法障壁で作られた面白みのない壁だが、横が約4m、縦は8m弱あり、一般家庭の1LDKが入るくらいの広さの部屋が浮いている感じだ。

このような長距離移動部屋を見たことがなかったコウとシーラとエニメットはあまりの大きさにびっくりして言葉が出てこない。


マナとメイネアスははなかなかの大きさだと満足げにしており、メイネアスやメルボンドについてきた従者たちは快適な旅になりそうだと笑顔になっていた。


「すごいな……これ」


ようやくコウが一言発すると、メルボンドが先に乗るようコウに勧める。

周りからもコウが買ったのだからと押されコウは後ろの入り口から中に入った。


入り口はそのまま2階につながる階段になっており、天井のまでの高さも2m以上あって快適だ。

部屋の中心には先ほど起動させた魔道具が台の上に鎮座しており、これに触れて魔力を補充することでこの建物の形を維持できるようになっている。


階段はさらに上へと続いており、店で見た模型と同じように屋根へと出られるようになっている。

屋上は手すり柵が一周囲んでおり簡単に落ちることはない。


2階からは垂直のはしご階段で1階に降りることができ、高さ1mちょっとの2階とほぼ同じスペースの部屋があった。

ここは物置や寝室として使用できるようになっている。

壁には魔道具で明かりを調整できる照明がついており、ご丁寧に周囲の音が聞こえないよう<静寂の結界>の魔法がかかっていた。


外の魔法障壁がダメージを受けた緊急時には、それを知らせる警告音が鳴るようになっているが、普段は外の音など全く聞こえないので静かに寝られる。


「すげぇ、これめちゃくちゃすごいじゃん。おお!ここもいいな。これいいねー」


コウが部屋の中でしばらく興奮して騒ぎまくっているのを外のメンバーは微笑ましく聞いていた。


「さぁ、そろそろ私たちも行きましょうか」


コウもそろそろ落ち着いた頃だろうと見計らい、残り8名全員が中へと入る。

2階の部屋は内蔵のスイッチで長めのテーブルや座席が出し入れできる。もちろん大半が魔法で作られた固定台になる。

座席部分はちょっと手を加えてあり、水の魔法による程よいクッション性能を保ったもので座り心地も悪くない。


都市の外での移動はある程度危険から身を守る必要があるため、魔法障壁などで一定の防御能力を持ったこのようなものが傭兵たちに重宝されている。

と言ってもせいぜい中に2,3人入れる程度の個室タイプであり、ここまで大きく贅沢な移動部屋を持っている傭兵団は少ない。


貴族たちはと言えば都市の外をゆったりと移動することはほとんどなく、こういったものはせいぜい金持ちの商人が一応所持していたり

軍が貴族様を都市外の戦地へと移動させる際に、これよりもう少し攻撃や防御に特化したものを所有している程度だ。


ほとんどの貴族は都市内を移動するために特製の馬車を使っており、あえて馬を使って引かせたり、外装を豪華にすることで金持ちぶりをアピールするので

こういったシンプルな外装のものは貴族にも受けが悪い。


もちろん外装をある程度豪華にすることも可能だが、無駄に魔石を食うだけだし、ものによっては魔道具を起動する度に装飾を施さねばならないので、

結局音と生き物で威圧感のある馬車の方が良いという結論になる。


「うん、これはなかなかすごいね。模型よりもいい感じに見えるし」


「このようなものがあるなんて初めて知りました」


マナは嬉しそうに歩き回り、シーラは座席に腰かけて周囲を見回している。


「これ結構高かったんじゃない?」


「これから度々使う可能性がありますから、妥協のない投資をと思いまして。兵装がほとんどない分価格は意外と抑えられていますよ」


メイネアスはさっそくお金のことを気にし始めたが、メルボンドが購入の妥当性を説き始めた。

その後、メルボンドが中央にある立方体の魔道具の前に座り黒いモニターを4個くっつけて接続すると、周囲の地図が表示される。


「おぉ、これ地図?カーナビじゃん」


「えぇ、現在地を表示でき周囲の案内もある程度できます。ですが、完ぺきではないので外の景色も見えるようにしておいた方がいいでしょう」


そう言うとメルボンドはマニュアルを見ながら魔道具に触れて別の機能を作動させる。

周囲の左右の魔法障壁に2つずつ、前後の魔法障壁に1つずつ大きな映像が表示された。


ちょうどそこから見たときと同じ外の光景が見えるようになっており、映像の拡大も可能になっている。

換気用の小さな窓は四角の浮き出ている部分に触れると、障壁の一部に穴ができる仕組みによって開くようになっている。


それ以外の機能をメルボンドがマニュアルを見ながら説明しているうちに、メイネアスはメルボンドが連れてきた従者2名と自分が連れてきた1名を連れ1階に降り

簡単に仮眠が取れるよう布団などの準備を始めていた。


「それでこれが魔力反応の索敵範囲になります、一応動く物体も感知しますがある程度の大きさの物だけです」


「なるほどな…」


「ようやく下の準備が整いましたので仮眠できますが」


メイネアスがはしごで2階へと戻ってきてコウたちに声をかける。


「そうか、じゃあさっき話したように最初の1時間程は俺とシーラ、エニメットが仮眠をとる。それ以降はメルボンドとメイネアスが仮眠をとってくれ。

 従者たちは…どうする?」


「彼らは一番最後に。あと、何かあったら起こしますので」


「もちろん、遠慮せず起こしてくれ」


そう言ってコウとシーラは2人、1階へと降りて行った。


こんばんわ。今話も読んでいただきありがとうございます。

最初は少々まったりの6章ですが、個人的には大事な章と位置付けているつもりです。

これからの展開、頑張って書いていこうと思います。

ブクマとか頂けるとうれしいです。感想も貴重な意見として受け止めさせていただきます。

誤字脱字が目につきましたら、ご指摘いただければ幸いです。(要ログイン)


次話は8/4(金)更新予定となります。 では。


【修正履歴】

20/09/04 本文最後辺りを数行修正。

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